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ちょうだい妹に辟易した姉は悪魔を呼び出す儀式をする

作者: Ash
掲載日:2026/06/24

 何でも奪い取っていく妹が嫌いだ。

 物語にある父が愛する女性が産んだ異母妹なんかではなく、母を同じくする妹なのに、何でも奪い取っていく。

 お祖母様にもらったブローチも誕生日にもらったぬいぐるみも。

 サイズだって合わないドレスだって、そう。

 成長したら着れるようになるから、と母は言って。

 何でも譲れ、譲れ、と煩い。

 ちょうだい妹と譲れ母。

 そんな二人を止めずに同調する父。

 ああ、もう嫌だ。


 すべてが嫌になって、私は悪魔を呼び出す儀式というものをやってしまった。

 まず、生贄。

 これは血の滴るステーキのかけらで代用した。その代わり、その日の夕食のメインは血生臭かった。

 ステーキのかけらを口に入れて、夕食を途中退席して生贄を確保。戻って、血生臭いステーキの残りを頑張って食べた。

 やっぱり、ステーキはウェルダンに限る。

 生贄用のステーキの焼き加減を執事に言った時に、「背伸びしないほうがよろしいかと」と言われた通りだった。


 悪魔を呼び出す魔法陣。

 これは夜会で出会った人からの貰い物。

 どこまでも胡散臭いものだけど、元々、本当に悪魔を呼び出せるかどうか自体、眉唾物だから、気にしない。


 魔法陣を用意して、その中央に生贄を置いて・・・、一口サイズのステーキがちょこんと乗っていて、見栄えはテーブルから落ちたステーキが魔法陣に載っている状態。虚しい。


「悪魔よ、来たれ!」


 ストレス解消として言ってみる。生贄の代用がステーキのかけらだからね。

 来ないからね、こんなしょぼい生贄で。

 でも、悪魔を呼び出してあの妹をどうにかしてやりたい気持ちは強いから、ストレス解消に言ってみる。


 ぼわん、と黒い煙が魔法陣から上がって、


「汝の望みを言え」


 と声がした。


 あわわわわ・・・。


「汝の望みを言え」

「何でも奪い取っていく妹が嫌いだ。

 物語にある父が愛する女性が産んだ異母妹なんかではなく、母を同じくする妹なのに、何でも奪い取っていく。

 お祖母様にもらったブローチも誕生日にもらったぬいぐるみも。

 サイズだって合わないドレスだって、そう。

 成長したら着れるようになるから、と母は言って。

 何でも譲れ、譲れ、と煩い。

 ちょうだい妹と譲れ母。

 そんな二人を止めずに同調する父。

 ああ、もう嫌だ」

「わかった。望みを叶えよう」


 そう言って、黒い煙は魔法陣に吸い込まれて行った。


「・・・!」


 後に残ったのは、魔法陣が消えた紙とステーキの切れ端。


 その夜、家のどっかで騒ぎが起こったけど、変に首を突っ込んで妹や母にイチャモン付けられたくなかったから、スルーして寝た。




 ◇◆◇




「ありがとう! あの紙、役に立ったわ!」


 夜会で悪魔を呼び出す魔法陣が描かれた紙をくれた人を見かけたので、私はお礼を言った。


「どういたしまして。問題は解決しましたか?」

「それはもう、見事に解決よ!」

「喜んでいただけて、光栄です」

「どういう理屈かは聞かないけど、母と妹は修道院送り。父は愛人を屋敷に連れ込んで、仕切らせているわ。あら、父だけが得しているわね」


 そう。母と妹は修道院送りになったのだ。


 事の経緯はこうだ。

 あの夜の儀式で母と妹は身体が入れ替わってしまった。

 そんな二人を外には出せない、と父は外出禁止、家庭教師などの外部の人間の訪問も禁止したのだが、あの妹である。

 言い付けを破って、母と外出。

 その先で淑女とは思えぬ言動で母の評判を落とし、父の怒りを買った。

 母と妹を離れに軟禁。

 そして、家に寄り付かなくなった父が、屋敷を取りまとめさせようと愛人を連れて帰宅。

 妹を溺愛する馬鹿親は夫婦関係がまず破綻したのだった。

 更に私の婚約者の子どもができた、と妹が言い出す。

 私の婚約者は母と遊んだだけだ、と嘯いて責任逃れ。そりゃ、見かけは母だもんな。

 未亡人や人妻に自由恋愛は許されていても、遊び相手の子どもができたとなると、淑女としての敬意を失ってしまう。避妊失敗しただけで、と思われるかもしれないけど、未亡人も人妻も貞淑が建前なので、娼婦扱いされるようになる。

 未婚なら、人前でキスをしただけで婚約する間柄だと思われる。それが淑女の貞節だ。

 けど、男側はそうでもない。

 未婚の淑女とキスをしたのを見られても、結婚を拒否することができる。

 そして、泥をかぶるのは未婚なのにキスをするような、ふしだらな女側である。

 で、そんな妹を擁護する母を、愛人に甘やかされた父は大好きな娘共々、修道院送りにした。

 問題しか起こさない母娘を野放しにしておいて、それかよ。

 ついでに私の婚約も破談になった。理由は、婚約者が父の愛人に手を出しかねないとわかったから。


 そして、私は婚活に励むことになるんだけど・・・。


 魔法陣をくれた人は意味ありげに笑って、人の中に消えていった。




 ◇◇◆




 一枚目は長女。

 接触場所は夜会にて。

 生贄はステーキの切れ端。

 願いは家族崩壊。

 契約不成立。



 二枚目は父親。

 接触場所は紳士倶楽部にて。

 生贄はスラム街の住人。

 願いはかねてから目を付けていた女性を愛人に。

 契約成立。

 母親の願いを叶えて回収。



 三枚目は次女。

 接触場所は商店にて。

 生贄は下働きのメイド見習い。

 願いは姉の婚約者の心を奪う。

 契約成立。

 時期を見て回収。



 四枚目は母親。

 接触場所は修道院にて。

 生贄はシスターの手伝いをする孤児。

 願いは修道院に入れた夫への復讐。

 契約成立。

 時期を見て回収。



 長女の契約不成立理由:ステーキの切れ端を生贄に看做すことは、悪魔として大切な何かを失った気がする。

 よって、他三人に契約を持ちかける。

 回収に際して、堕落しきった魂なので天使共の妨害はない。



 そうだ。

 五枚目も渡そう。長女の元婚約者に。

 こちらも堕落しきった魂なので天使共の妨害はない。

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― 新着の感想 ―
生贄になった人が可哀想
長女が好みの女の子だったら、一度口に入れたステーキもご褒美たったのにね
しかも一回長女が口に入れたステーキだからね 余計悲しいよね
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