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卯月

卯月(うづき)



どこまでも広がる田園風景に心が洗われるようだ。


縁側に腰掛け、長閑な景色を胸に刻む。

花が咲き、空は青く澄み渡り、爽やかな風が吹き抜ける。


田畑の畦道には卯木(うつぎ)が植えられ、真白い花が垂れるように咲き乱れている。


桜茶と共に供されたのは、おからの炒り煮と卯の花汁、卯の花飯に卯の花の和え物。


かつては乏月(ぼうづき)と呼ばれるほどに食物が欠乏しがちな月でしたのよ…と語るのは屋敷の主人である卯月(うづき)で、奉公人の牡丹(ぼたん)はもう何百回も聞かされていますとばかりに辟易とした表情を浮かべている。


真白く清廉な卯の花と、豪華で艶やかな牡丹。

どちらもがそれぞれの良さに満ち、時に互いを引き立てあう主従の姿に笑みを溢し、大きく開かれた窓の外を見遣る。


田起こしと畦塗りの済んだ田畑に、さぁと柔らかな雨が降る。


「恵みの雨ですね」


と呟いた奉公人の穀雨(こくう)は、雨の音を心地良さそうに聞いている。


春の息吹を運ぶ風に、淡い陽光と土の匂いが混ざる。


やがて優しい雨があがると空には虹がかかり、その下を雁の群れが飛んでいく。

北へ帰る鳥たちは、また冬の頃になれば南へと渡るのだろう。




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