胸糞悪い動機
「否定しても無駄ですよ。四天王からその時の映像―――魔王の記憶を魔法でコピーした物です―――や宰相や騎士団長が我が身可愛さに色々と話してくれたので。貴方達は一族が納めている領地から鉱山が出た報告を受けた。キチンと調べれば価値が低い鉱山だと言う事に気が付く筈でしたが貴方方は焦っていた。
何せ貴方方は国家の予算を勝手に私用で使い込んでいて、その事を私の母上である王妃と側妃達にバレる寸前だった。
母上は遠縁ではありますが、前教皇の親戚筋で尚且つ現教皇とはお互いの顔と名前を知っている仲。第一側妃はエトワール王国よりも大きい国の王女で、第二側妃は我が国の公爵令嬢ですが一族の人間は皆向上心が強い方ばかりで有名な方。こんな事がバレれば貴方達の地位も名誉も全て奪われる可能性があった」
その第二側妃は自分の息子達(三人産んでいて全員男)の誰かを国王にしようと暗躍していたが、この事が発覚して我が子を泥船に乗せる訳がいけないので諦めた。その代わり息子達はそれぞれ他国の王配として婿入りさせたし、空席となった役職に一族の人間を座らせる事が出来たので結果オーライと言った所。因みに第二側妃の一族は野心家ではあるが汚職等の不正等はしない派の者達なので(理由としては『自分の首を絞める様な事はしない』だとか)終戦後は寝る間を惜しんで大いに活躍して貰った。
……話を戻すと国王とその一派の体たらくに危機感を持った正義感の強い王妃に王妃を尊敬している第一側妃、野心家な第二側妃が手を組み、王位継承第一位のアルスを国王にして国王達を追い出し(第二側妃はその後に自分の息子を国王にするつもりではあったが)国王達にはそれぞれが犯した罪に応じた処罰を行う予定だった。
「それを知っていた貴方方は国家予算を横領していた事が王妃達にバレれば自分達の地位も何もかもが奪われ、それ所か裁かれる。そんな時に鉱山。
その鉱山を奪おうとして彼らに冤罪をかけて鉱山のある領地を奪い、そこから出た宝石を売って穴埋めをしようとした。―――その領地が一時的ですが教皇管轄になった事と鉱山には貴重な宝石がなかった事は貴方達にとって想定外だった様ですが」
仕方がなく横領した国家予算の補填はそれぞれが隠し持っていた財産で補填した様だが、怪しい金の動きに気付いた第一王子派の文官が調べ上げてアルスと王子に報告しているのでどっちにしろ発覚する未来は変わらない。
「私が分からないのはどうして冤罪をかけた彼等にあそこまでの仕打ちをしたのか。それだけはどう考えても分からなかった。一体彼等に何の恨みがあってあんな事をしたのです?」
四天王のリーダーが見せたのは言葉にするにも憚れる物だった。
歴戦のベテラン兵士もあまりにの惨状に吐き、新兵の誰かは人目を憚らず泣いてしまった。ザックは怒りのあまり牙を剥き出し、メディペルはデボラの両目と両耳を覆い隠していたがその顔は苦悶の一色。デボラは直接見聞きする事はなかったが、漏れ聞こえる内容を察して顔を青ざめるしかなかった。
惨劇を全て見終えたのはアルスと側近、そして勇者勇気を含めた指で数えられる程の数しかいなかった。
剣を突き立てられた国王は顔を青ざめながらも下品な笑みで吐き気がする様な理由を話したのだ。
「ど、どうせ殺すなら楽しんだ後に殺した方が言いだろう? だから騎士団長のアイツは甚振ったし小児趣味の宰相は色々と出来ない事をしたし、ワシだって国王なんだから民達をどう扱おうとかっブッゲラッ!!!!!!!!」
……勇気が顔面を蹴り飛ばしたので国王のゴミの様な妄言は中断する事となった。