四天王
四天王は男三人と女一人、RBGの四天王のテンプレ的容姿をしていた。
しかも、流石四天王あってかその場にいるだけでどんでもないプレッシャーを兵士達に与え、新兵はそれに耐えきれず気絶してしまっている。
「四天王!」
アルス達は武器を構えて何時でも攻撃できる様に臨戦態勢を取る。四天王達も無表情のままでそれぞれの武器に魔力を込め、今にも戦闘開始する時だった。
「なぁアンタ等聞いても良いか?」
勇気だけは勇者の剣を腰に付けたままゆっくりと四天王達に話しかけた。
勇者の行動に誰もが動揺した。勇者か首を後ろに振り向いて目線で『大人しくして欲しい』と伝え、その意図を読み取ったアルスは手で兵士達を制した。
勇気は笑って口パクで『ありがとう』と言い、真っ直ぐ四天王達の顔を見上げた。
「何でアンタ等がエトワール王国を襲っていたのか分からなかった。襲ったとしても人間を傷つけず、家屋すら必要以上にダメにしなかった。しかも逃げた村人達を他の国に逃がしている。そしてアンタ等はただ真っ直ぐに王都へと向かっている。アンタ等の狙いは何?」
勇気の質問に四天王は黙ったままだ。しかし勇気のある一言で彼等の眉がピクッと動く。
「もしかして今の魔王は殺された一族の人間の誰か?」
その一言は後ろにいた兵士達には勇者の言っている言葉が殆ど理解出来ずにザワザワとしたが、全てを知っている勇者メンバーであるアルス達は驚愕のあまり大きく目を見開いていた。
「大昔に憎悪のあまりに人から魔族に生まれ変わった奴がいるって賢者から聞いた。魔王は魔族が吸収しきれない程の憎悪の末に生まれ変わったエトワール王国で国王達に罪を着せられて殺された一族の誰かだと俺は思っている。
そう考えた方がアンタ等の行動も納得出来る。無関係の人間を傷つけず、怨敵である王侯貴族達達がいる王都へ真っ直ぐ進行していただけだ。普通は復讐の鬼となってエトワール王国の人間なら誰でも殺されても可笑しくはないのに誰も殺していない。明らかに理性を持っているのは魔王が冷静だった事? それともアンタ等の独断?」
四天王達は相変わらず黙ったままだ。だけど、四天王の一人が何か話そうとした所を隣にいた同僚に肩をこつかれて黙っていた。
「…………黙るなら黙るままで良いよ。だけど戦闘なら後でで良いか? 今は攫われて子供達を急いで保護したいんだ。恐らく、いや犯人は国王とその奸臣達だ」
ついに四天王達の顔から驚きの表情を引き出す事に成功した勇気。後ろにいたアルスは黙ったままでいられなくなった様だ。
「もし我等王族が原因なら私は喜んで首を差し出そう! ただ、今は子供達の救出を優先させてくれ!」
事情を察したのか四天王の内、三人はリーダー格らしき先頭の男に視線を向けた。
リーダー格らしき男は重い口を開いた。
「その言葉を信用できるとも?」
「勇者の特典は知っているだろ? 俺のは『人の嘘を見抜く』事。だから俺は保障する。まぁ俺も嘘ついていると言われたら反論出来ないけど、せめて魔族がどうしてエトワール王国を襲撃したのかその理由だけは此処にいるエトワール王国の人間達に教えて欲しい。皆どうして襲ってきたのか分からないで混乱しているんだ」
「……本来ならば王都まで進行出来た時に全国民に向けて説明する筈だったが……」
四天王の男が話した事は勇気だけではなく、エトワール王国の人間全員が後頭部を鈍器で何度も叩き付けられる様な衝撃を受けた。ある者はあまりにも惨い話で吐しゃ物を吐く程だった。