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誘拐事件

「お願いします殿下! 勇者様‼ 子供達を助けてください‼」


 アルス達が現れた瞬間に農民達は土下座の体制で嘆願した。突然の出来事に目を丸くするが、アルスは直ぐに我に返り、膝を下ろして農民達と同じ視線に合わせた。


「顔を上げて下さい! 子供達を助けて欲しいとはどういう事ですか!?」


 顔を上げた農民達の代表―――近くの農村の村長は弱弱しく語り出した。




「私共は近くの村で農業をして細々と生活をしておりました。しかしある日|騎士団と名乗る武装した兵士達が村にやってきて、『城の修繕費』とか『王都の用水路の修繕費』とか良く分からない事を言って我々に税金を払えと言い、あまりにも高額な金額で到底払う事は出来ないと言った所、代わりに子供達を奪われてっ」

「何だって!? 盗賊の(たぐい)が騎士団の名を語ったのではないのか!?」

「私は昔、王都に来た事があります。そこで騎士団長のお姿を拝見した事があります。そして、子供達を攫った男のリーダーが当時の記憶から老けた顔でしたが、()()()()()()そのものでした。それに王国の旗印も」


 あまりにも不敬過ぎる話に周りの兵士達は農民達をひっ捕らえ様としたが、勇気は手で制した。


「この人は嘘をついていない」


 勇気のギフトは周知の事実で、勇者の言葉を信じるしかなかった。

 誰もが混乱する中、流石賢者と言うべきかメディペルだけは冷静だった。


「子供達が連れ去られたのは何時?」

「半時前です。偶然勇者様達の情報が入った時だったので直ぐに此処に駆け付けました」

「ならばそう遠くには行っていない筈じゃ。アルス、近くに騎士団の屯所か屯所になりそうな場所は分かるか?」

「……宰相の別荘が、あります。彼等と父は竹馬の友の関係です。…………直ぐに賊徒から子供達を奪還する! (ただ)ちに宰相の別荘へと向かう!」


 アルスの号令に兵士達は雄叫びを挙げた。





 勇気は馬車の中でアルス達の会話と冤罪(ほぼ確定とみて間違いない)で処刑にされた一族、そして今回の魔族の襲撃と今回の騒動が個々の問題とは思えずにいた。まるで複雑に絡まってしまった電気コードの様だ

 賢者のメディペルの知恵を借りながら、絡まった電気コードを解く様に勇気の中に燻っているモヤモヤの原因を探る事にした。


「メディペルさん。魔族ってどうやって産まれるの?」

「基本は人間の様に男女が性交して赤ん坊が産まれる。ただ、大昔に憎悪のあまりに()()()()()()()と言う話がある」

「えっ? そんな事があったの?」

「かなりの大昔だからなぁ。当事者はもう皆死んでいるし、古い本でしかその事を乗っていない。本によれば負の感情―――特に憎悪が人一人の器を超えて魔族なったと書いてあった。その人から魔族になった者はそれは強い魔力を持ち、世界を荒廃一歩手前まで追い詰めたとされているが……昔は今よりも魔族達の数が少なかったから負の感情を吸収する事が出来なかったからなぁ」

「……それって、冤罪で一族全員が殺された場合はどうなる?」

「…………『特に無垢な子供の嘆きや悲しみは染まりやすいから負の感情が大人よりも膨大になる事もある』と、昔馴染みだった魔族から言われた事がある。しかし、先程言った通りに魔族達が世界にある負の感情を吸収しますから、恐らく勇気殿の考えている様な最悪な事はない、筈……」


 メディペルも脳裏に勇気と同じ事を浮かんだのか(しか)めた顔を作ってしまう。勇気はメディペルの話を無理やりでも納得したかったが、それでも嫌な予感が拭い切れない。








「前方に四つの影! 四天王です!!!!」




 その言葉に勇者メンバーは各々の武器を取り、馬車から飛び降りた。


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