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炎の試練

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「……ナニコレ?」

「盗人や力のない者が剣を抜かない様にこの部屋に高度な魔術が施されているのです。過去に何人もこの部屋の魔術を解こうとしたり無謀にも部屋に入りましたが、私含めて誰も解く事も出来ず、部屋に入った者は大火傷を負って部屋に追い出されてしまいました」

「えっー……」


 流石の勇気もこの部屋に入るには躊躇(ちゅうちょ)してしまう。


「絶対にあの部屋の奥にある剣を取らなければならないの?」

「そうでなければ力を発揮する事は出来ません」

「念の為にこの部屋に入るのを拒否する事は?」

「私としては拒否されても仕方がないと思いますが国王が……」

「ああ、父親が俺みたいな異分子のタダ飯喰らいを生かすのを許さないみたいな?」


 申し訳なさそうに無言で俯くアルスを見て、勇気は呼び出された時に見た悪意ある笑みが見間違いではない事を確信した。





「此処で王様について大丈夫な奴?」

「私と勇気様二人しかおりません。盗聴等は神殿に掛けられた魔術で仕掛ける事は絶対にありませんし、この部屋(今勇気達がいる場所)の外にいる兵士は私の派閥の者です」

「そうか…………アルスさんにとって父親でもある国王陛下は良き国王なの?」

「……残念ながら。暴君ではありませんが、民達が納めた税を私利私欲に使い、好臣を周りに固めています。このままでは暴君に変わるのもそう時間が掛からないでしょう」

「成程。下手すれば実の息子であるアルスさんも被害が出ると。最悪王位継承権を剥奪されるとか? ……よっしゃ。だったらあの剣を取って俺がアルスさんの陣営に味方に付くって言ったらアルスさんの陣営は大分有利になるんだろ?」

「ええ、まぁ、そうですが……えっ? 勇気様どうして衣服を脱ぐんですか? ああ! 下着まで脱ぐのはお止め下さい‼ 素足でこの部屋に行ったら、勇気様!」



 勇気は制止するアルスを無視して炎に包まれた部屋を少しの柔軟運動をした後に走る。

 全裸になったのは衣服に炎が引火しない様に素人知識でだ。決して勇気がそんな趣味と言う訳ではない。


 確かに部屋に入った瞬間、身体に炎が燃え移りそうな位に熱かったが、不思議な事に勇気が一般道を進める様に炎の勢いが弱まっていた。

 そして剣が刺さっていた台に付くと両手で剣を持つと、間髪入れずに力を込めて剣を引き抜いた。



 スポーン! とそんな効果音が聞こえる様に勇者の剣が、まるで大根を収穫する様に引っこ抜けたのだ。


 突然の出来事に背後にいたアルスは口を大きく開けてポカーンとしていた。剣が抜かれた瞬間に、あんなにも燃え上っていた炎がまるで陽炎の様に消え去り、勇者の剣が突き刺さっていた部屋は焦げた所が一つもない、真っ白な部屋へと変貌していた。


 勇気はアルスの元へ帰ろうとした時に、台座の隅に()()()()を見つけた。



「勇気様、何かあったのですか?」

「いや、何も」


 勇気が脱ぎ捨てた衣服を持って来たアルスに勇気は首を振って嘘を付く。

 何故ならその本の表紙には『来たるべきが来るまでに勇者以外が見る事を禁じる』と注意書きがされてあったからだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  確かに服にまで加護があるとは限らない。なんて知恵があるんだ勇者様。  とはいえ、後でサーガを歌う吟遊詩人は実態知ったら腹筋崩壊しそうな。
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