勇者の剣
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何故勇気がそう思ったのは此処はまるで中世のヨーロッパの様なお城の中で、フードを被った人達に囲まれる様に勇気がいて、周りには色とりどりのドレスを着た女の人とロココ調の服の男性。そして勇気の目の前には王冠を被ったいかにも『王様』のイメージその物の太った男の人が玉座に座っていた。
「成功だ!」
「勇者様が降臨なさったぞ‼」
周りにいた人々は勇気が此処にいる事を歓迎しているのか建物が揺れる様に歓声を上げていた。勇気は何が何だか分からなかったが、目の前の王様がニヤリと悪意の笑みを浮かべたのを見逃さなかった。
勇気は『エストワーレ王国』によって勇者として召喚された。
エストワーレ王国は突然現れた『魔王』によって滅亡の危機に瀕していた。
そもそもこの世界は人間とは違う種族が存在する。
エルフ・ドワーフ・獣人等の種族は人間に好意的だが、魔族は人々の『負』の感情を吸収してそれを己の魔力に変換させる種族だ。それ故に他の種族から恐れられているが、彼等は排他的な性質の種族だったから自分の国でひっそりと暮らしていたが、今代の魔王になってから突然エストワーレ王国に侵略する様になってしまった。
周りの国に援軍を頼もうとしたが、魔族によって妨害されているのか救援の連絡一つもなく、王国は段々と土地を奪われていった。
王国滅亡の危機を脱出する為に彼等は異世界にいる『勇者』を召喚する事にし、現れた勇者こそが勇気だったのだ。
……そんな説明をこの国の王位継承第一位の王子であるイケメンで金髪碧眼のアルスから聞かされた勇気。
アルスの眼や声が嘘をついていないと何故か分かり(後で賢者から聞けば勇者には召喚された時の『特典』を与えられるそうだ)本当に自分が勇者だと理解するしかなかった。
「だけど俺は身体を鍛えていないし、下手したらこの世界の一般人よりも弱い気がするけど……」
「勇者にしか使えない剣があるのです。それを持てば只の人でも魔族と同等に戦えます」
「はっーマジでRPGみたいな世界だなぁ……それでその剣は?」
「今から私が転移して保管されている場所まで向かいます。こう見えて魔術師としては王国一だと自負しておりますので」
アルスが小さく何か唱えると一瞬身体が浮遊したと思えば、先程まで勇気達がいた豪華な客室ではなく、神殿の様な場所にいつの間にか瞬間移動していたのだ。
勇気はまるで遊園地のアトラクションの様な体験に目を輝かせて周りをキョロキョロと見回した。
「この扉の先に勇者の剣があります」
アルスが荘厳な扉を開くとその部屋は―――
一番奥に剣が突き刺さっていたがこの剣を周りを囲む様に炎が燃えていた。正確に言えばこの部屋が火事になっていたのだ。