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エピローグ

「―――勇気! 勇気‼」


 誰かが自分の名前を必死に呼ぶ声がして、痛む頭を我慢して重い瞼を開けた。


「勇気! 目を覚ましたのね‼‼」


 目の前には涙で顔をぐちゃぐちゃになっている両親と忙しく動く看護師、そして勇気に話しかける医者がいた。









 どうやら勇気は石段から突き飛ばされたせいで、一時は命の危機に陥った様だ。

 峠を越えて医者から『話しかければもしかしたら意識が取り戻せるかもしれない』と言われて、両親は必死に自分の名前を呼びかけてやっと自分は目を覚ましたと言う訳だ。


 勇気を突き飛ばしたいじめグループは逃げようとして、偶々巡回していたおまわりさんに緊急逮捕された。もし救急車を呼ばれなかったら死んでたかもしれないと聞いて勇気達はゾッとした。


 未成年だが救急車も呼ばずに逃げようとした為、悪質だとされて少年院に入れられた。グループの保護者は何とか示談に持ち込もうとしたが怒り心頭の両親に拒否され、しかも警察の調べによって近隣のお店への万引きやカツアゲ、それだけではなく親父狩りまでやっていたから幾ら親達が示談に持ち込もうとしてもどうしようも出来ないのだ。

『受験のストレスと親達によるプレッシャー』が原因でも、大半の受験生は犯罪を犯さずに各々(おのおの)で解決しているから情状酌量の余地はない。


 勇気は奇跡的に後遺症はなく、一人部屋で安静し遂に退院の日となった。





 エストワーレ王国での冒険は全て夢とは思っていない。色褪せてはいたが、細部までしっかりと今でも覚えているからだ。


 アルスは王国を継いでからは大変だろう。父親達の仕出かした罪を償い信頼を失った他国との付き合い方も頭を悩ませているだろう。

 だけど彼ならきっと大丈夫だと確信している。何故なら彼の人柄もあるが、彼の周りには助言したり窘めたり出来る側近や家族がいるからだ。時間がかかるかもしれないがきっとより良い国になるだろう。


 賢者のメディペルはドワーフとは言え年が年だし、心配があるがしっかり者のエルフのデボラが面倒を見ている筈だ。もしかしたらメディペルはデボラを自分の後継者にするつもりかもしれない。


 ザックの性格上、一人で旅をしているかもしれないが優しい彼ならぶっきらぼうながらも魔族と他種族との交流の橋の架け橋になる筈だ(本人は不服かもしれないが)。もしかしたらあの小さな女の子が押しかけ女房になっているかも


 仲間達の事は心配していなかったが、彼の心残りは魔王の事だ。


 産まれた時から心が傷だらけだった幼い子供(魔王)。一緒に命を落とした後はどうなったのだろうか? 無事に優しい両親の元に転生出来れば良いが―――











 そんな風に考え込んでいた勇気は知らなかった。

 退院して自宅に戻って直ぐに両親が『重大なニュースがある』と言われる事を。

 勇気に年の離れた兄弟が産まれる事を。

 そして年の離れた弟は勇気が見覚えがある顔立ちである事を、元勇者だった勇気はまだ知らない。












 エストワーレ王国にはとある石像が幾つも建てられている。

 魔王を抱きしめて背中ら剣で突き刺さって一緒に死ぬ男の石像だ。そして必ずとある文章が石像の近くに記されてある。


 ―――彼は魔王の為に己の魂が消滅を恐れずに心中を選んだ心優しき勇者。魔族と他種族との今の良好な関係を作り出した立役者。()の名前はその行動と同じ意味である『ユウキ』と言う。王国の大罪を彼の勇気ある行動を後世に残す為に此処に記す。

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