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蚕のキス

作者: あさぎ


見たくない

もう見たくない

愛したものの行く末


もう自分から会いに行くことはないけれど

せめて穏やかな気持ちで別れたかった


まだ見ぬ未来を見守りたい

でも、見ていられない




時を経て変わり果てた姿

人はそれを盛んに持て囃す


まるで別もののようなあまりの変貌ぶりに

そうじゃないと叫びたくなる私は異端者


こってりとした癖の強さは消えて

あっさりと万人に合う味付け


私があれほど惚れ込んだ

あのくどいような風味は

綺麗さっぱり無くなってしまった




あくまで正しいことなのだ


時代と共に歩んでいる

正しい進化を遂げている


何もおかしくなったわけではない

狂っているのは私の方




でも、それでも

それでも駄目なのだ


新たな形を受け入れたい

受け入れてまだ愛し続けていたい

でも、どうしても駄目


ふとした時に見かけるたびに

掻きむしりたくなるほど心が疼き

違うんだと大声で叫びたくなる


まるで一方的に振られたかのような

行き場のない感情が胸の中で暴れ回る




時代は日々変わっていく

止まることなんてない


変わってしまったそれと

いつまでも変われない私


いずれ置いていかれるのは

分かりきっていた事


今を生き、未来に向かって進んでいく

そのはるか向こうに取り残された私は

離れていくそれを見つめる事しかできない


古い人間など世界は求めてはいない

ついていけなければ置いていかれる




どれだけ変わってしまっても

これはこれで良いと認められたら

どんなに楽だろう


今の時代に私がピタリと合ったなら

今も変わらず愛を注いでいられたら

どれほど幸せだろう




厳しい今のこの世界で

どうにか生き残り続けているのだから

本当は褒められるべき事


よかったね、おめでとう


荒れ狂う感情の波が去った後に

ほんの僅かだけ現れる私の良心




本当は大好き

心から本気で全力で愛していた


でも大嫌い

一目見るのも苦しいほどに


好きの反対は無関心

だけど、意識を逸らそうとすればするほど

どんどん嫌いになっていく


大好きであるが故の大嫌い




できる事ならまだ見ていたい

やってみたい


でも見たくもないし

やりたくもない



歳を重ねるにつれて、自分の好きだったものがどんどん変わってしまいました。


広告とかでふと見かける度にうっ!ってなるレベル。

もはや発作。


もはや別物なんだからって諦められればいいのに、好きでいた頃をまだ引きずって、未だに無関心でいられない……つらい。

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