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Prototype Of Thousand Years Chronicle~想いを紡ぐ悠久の物語~  作者: 伊勢沢舞姫
序章 始まりは出会いと共に
4/4

脱出にはトラブルが付き物

「いったあああぁぁぁぁぁい!」

と、白い狐の面を被った襲撃者が頭を抱えながら涙声で叫んだ。

「痛いよ!今のいつもより痛いよ!頭蓋骨に一瞬ヒビ入った!」

「確かに、今のゲンコツは通常よりも威力が強かったな。少しは謝ったらどうだ?」

「あーハイハイ、悪かったよ。」

「「オイ。」」

「でもさー、こいつすぐに怪我治るんだから別に謝らなくても良くね?」

「ふむ、それもそうだな。」

「いや納得しないでよ!てゆーか結局どっちの味方なの!?ねえ!」

と、襲撃者達が痴話喧嘩をしている中、なんとか起き上がった銀色に近い白銀の髪を持つ少年は、この様子に唖然として、

(一体何がどうなっているんだろう?それよりも、あのお面の人、なんで生きてるんだろう?それに、ここどこだろう?あの人達は一体誰なんだろう?)

と、考えをめぐらしていた。

「あの。」

「ん?」「ああ?」「にゅ?」

(ひっ、ちょっと怖いな。)

「えっと、その…。」

「なんだ?」「な〜に〜?」「どうかしたのか?」

「その、ここどこですか?」

「ここか、ここは東京都の檜原村にある培養研究所だ。」

「ばいようけんきゅうじょ?」

と、首を傾げる少年。

「あの。」

「なんだ?」

「とーきょーってなんですか?」

と、少年が聞くと、

「「「えっ!」」」

と、驚き戸惑う襲撃者達。

「お前、名前はなんて言うんだ?」

「なまえってなんですか?」

「質問を変えるぞ。いいか、お前はなんて呼ばれているんだ?」

「えっと…、ごめんなさい、わかりません。」

「どこから来たの?」

「えっと…その…」

「わからない?」

「はい、わかりません。」

「いくつだ。」

「ヘっ?!」

「何年生きた。」

「ごめんなさい!よくわかりません!」

と、少年が答えると、

「「「あぁ〜。」」」

と襲撃者達が言うと、

「お前、記憶喪失か。」

と、長いスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者が言った。

「きおくそーしつ?」

「記憶喪失つーのは記憶を失くしちまうことだ。お前、自分の名前とか年齢がわかんねーんだろ?」

「…はい。」

「だから記憶喪失だって判断したんだ。」

と、長いスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者が言ったその時、

「動くな!」

と、鋭い言葉が部屋中に響いた。

襲撃者達と小年が振り返って見ると、そこには、警察の特殊部隊に所属している警察官のような格好をした連中が拳銃を構えて立っていた。その動きからして、おそらく軍人だろう。拳銃の銃口は襲撃者達に向けられていた。そして、先頭にいた人物が、

「動いたらすぐに撃ち殺す。」

と、襲撃者達に向かって言い放った。

「両手を頭の上に上げて降伏しろ。そうすれば、命までは取らないで置いてやる。」

と言う人物に対し、襲撃者達は、

(((うっわ、何こいつ。クソうぜぇしむっちゃくちゃ腹立つ。)))

と、イライラしながら感じていた。

「な、に?」

と、少年が困惑していると、

「そこの君。」

と、先頭にいる軍人と思わしき人物が、少年に声をかけてきた。

「?」

「そこに座り込んでいる君のことを言っているんだよ。」

「ぼ、く…?」

「そう、君だよ。ダメじゃないか、ポッドの外から出るなんて。T_3578、君は一体何を考えているんだい?」

「てぃーさんごーななはち?」

「あぁそうか〜、君、自分がなんて呼ばれているのか知らないんだったね。T_3578ってゆうのはね、君が呼ばれている名前のことだよ。」

「ぼくの、なま…え。」

「ああそうさ。君はこの研究所にとって、()()()重要な被験者(モルモット)なのだからね。」

「そん…な…。」

「まぁ、とりあえずこっちに来なよ。そいつらは危険だからさ。」

そう言って、軍人が少年に手を差し伸ばしたその時、

「何言ってんの?危険なのはあんたたちの方でしょ?」

と、白い狐の面を被った襲撃者が言った。

「お前今なんて言った。」

「聞こえなかった?あたしはね、あんたたちの方が危険だって言ったのよ。」

「なんだと。」

「なんとでも言ってやるわ。この犯罪者!」

「黙れ。」

「あんたたちはいつも誰かの命と人生を奪っているの。そのせいで一体どのくらいの人達が悲しんだと思っているの?苦しんだと思っているの?悔やんだと思っているの?それを考えたことはあるの?」

「黙れ。」

「あんたたちのせいで全て奪われたやつがいる。あんたたちは人でなしのクズだよ。」

「黙れっつってんだろーがあああぁぁぁ!」

と叫び、軍人が白い狐の面を被った襲撃者に拳銃を向けた。

「黙らない。あんたたちがやったことは最低だ。なんの意味もない。それに、そいつの名前はそんな番号じゃない。」

と、白い狐の面を被った襲撃者は言った。

「もういい、お前死ね。」


パアァァァァァン


部屋中に銃声が鳴り響く

床を満たしている淡い光を放つ緑色の精霊保存溶液に真紅の液体が飛び散る

そしてゆっくりと、まるでスローモーションのように後ろに倒れていく白い狐の面を被った襲撃者


ドサッ


辺りに静寂が生まれる

床の上に倒れた白い狐の面を被った襲撃者の額には人差し指が入りそうな大きさの穴が空いている

その穴から真紅の液体が流れ出ている

突然の出来事に固まる小年

冷静な様子で立ちすくむスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者と覆面のような布を顔の前に下げた襲撃者

銃口から白い煙を立ち上らせる拳銃

それを持った軍人


「ふぅ、これで邪魔者が()()()減ったね。さあ、こっちに来なよ。T_35「お前はアホか?」あ''?」

そう言ったのはスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者だった。

「一体全体どういう意味だ?」

「そのままの意味だよ。」

「ほう?つまりお前は、俺のことを()()だと言いたいんだな?」

「ああそうだぜ。おまけにバカでマヌケでクズなクソやろうってことだよ!」

「なんだと?」

「確かにな。貴様のような大うつけがいるとは、実に滑稽だな。」

「お前ら、死にたいのか?!」

「別に良いけど?どうせ、そう簡単に死なねーし。」

「あと、もう大丈夫だと思うぞ。とっとと暴れたらどうだ?こちらは、暴れたくてウズウズしているぞ。」

「はぁ?お前ら、一体何言って「うわあああああああああ!」なんだ!」

軍人が振り向くと、そこには、なんと死んだはずの白い狐の面を被った襲撃者が立っていたのだ。

(一体、何が起きたんだろう。)

ここまでの一部始終を見ていた少年は、そう思った。

(お面の人は血を流して倒れていて、それで、お面の人の体が少しずつ灰色の粉になっていって、水に少しずつ溶けていって、それで、怖い人の後ろに立っていて…。)

そう、少年が振り返りをしていると、

「あ~あ。お面壊れちゃった。これ、結構気に入ってたのにな〜。」

と、のんきに白い狐の面を外した。

「「「「「「えっ…。」」」」」

その場にいた襲撃者達以外は唖然とした。

「ぼく?」

そう少年が言った。

身長程ある燃え盛る炎のように緋い紅緋色の長い髪。少年と同じように、透けるような白い肌。桜色の愛らしい唇。ややつり目気味の大きな赤紅色の瞳。なにより、少年とそっくりな顔立ちは、まさに天使のようである。

「おいおい、それ(お面)外していいのかよ?」

「大丈夫だよ。どうせ誰だかわかりっこないし、それに。」

そう言うと、白い狐の面をつけていた襲撃者は右手の人差し指からろうそくほどの大きさの赤い炎を灯し

「こいつら、これからいなくなるんだから。」

そして、赤い炎に息を吹きかけた。


赤炎(せきえん)散華(さんげ)葬送(そうそう)不知火(しらぬい)


次の瞬間、息を吹きかけられた赤い炎は花びらと化し、軍人達に纏わりついた。その瞬間、軍人達は赤い炎に包まれた。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」「熱い!熱い〜!」「誰か助けてくれぇ!」「み、水、みずぅ〜。」「火を消してくれー!!!」「燃えるぅ〜。燃えちまうよ〜。俺の体が、溶けちまうよ〜。」

燃え盛り、発狂する軍人達。部屋中に響く断末魔に悲鳴。部屋中にたちこめる肉が焼け焦げる匂い。辺りは一瞬で、阿鼻叫喚の景色と変わり果てた。

「おおお前達何をやっているんだ。戦えー!」

生き延びていた軍人が後方に控えていた部隊に命令を叫んだ。

「無駄だろ。」

「お前達は、今この場で死ぬのだからな。」

いつのまにか軍人の目の前にいたスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者と覆面のような布を顔の前に下げた襲撃者は、それぞれ攻撃体制にはいっている。スカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者は拳を構え、覆面のような布を顔の前に下げた襲撃者は刀を構えている。


白蓮崩牙(はくれんほうが)


虚空夕雷斬(こくうせきらいざん)ー連ー


次の瞬間、赤い閃光と白い旋風が巻き起こり、軍人の後ろに控えていた部隊の人々は、鮮血を散らしながら、肉塊へと姿を変えていった。

「なっ…!」

「これで、この部隊は全滅だね♪」

「そうだな。」

「あとは貴様だけだ。覚悟しろ。」

「ひっ…!だ、誰がお前らなんかにやられてたまるもんか!」

そう言って、軍人は拳銃を白い狐の面をつけていた襲撃者からスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者に向けた。

(こいつは顔面になんもつけてねえから、銃弾はぜってー当たる!)

「死ね!」


パアァァァァァン


部屋中に銃声が鳴り響き、銃弾がスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者の頭を貫く…はずだった。なぜなら、スカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者が銃弾を右手で受け止めていたからだ。

「わーりぃ、受け止めちまった。」

と、笑いながら言うスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者。

「なっ!」

「つーかさー、もう黙ってくんね?こんな小道具使ってさー、正直言って、お前、うざいんだよ。」

そう言って、軍人の頭を掴むスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者。

「がっ!」

「だからよー、黙ってくんね?」


グチュッ


一瞬の出来事だった。スカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者が軍人の頭を握り潰したのだ。床を満たしている淡い光を放つ緑色の精霊保存溶液に再び真紅の液体が飛び散る。それと共に、血に濡れた柔らかいものと硬いものが辺り一面に飛び散った。

「わー派手にやったねー(棒読み)」

「だな。」

「棒読みやめろ。」

「まっ、とりあえずは、あらかた片付いたね♪」

「そうか。」

「んじゃ、とっととずらかろうぜ!コイツを連れて。」

そう言って、襲撃者達が後ろを振り向くと、座り込んで目を開けたまま気絶している少年がいた。

「おーい、起きろー。」

「きゅう…。」

白い狐の面をつけていた襲撃者が少年の体を揺すっても、少年は目を覚さない。

「ありゃま、起きないねぇ。」

「先程の頭を握り潰す姿を見て、ショックで気絶したのだろう。」

「「なるほど。」」

「はっ!」

そう、襲撃者達が話していると、少年が目を覚ました。

「あ、起きた。」

「あ、あたまが、ぐちゃって…。」

「とりあえず落ち着け。」

「ほかのひとたちは?」

「もういないよ~♪」

「えっ!なんで?」

「だって、み〜んな殺しちゃったんだもん♪!」

「えっ!ころ、し、たの?」

「そう、殺したの。」

「なん、で?」

「なんでって…、そりゃー殺られそうになったから殺っただけだよ。いまんよんなかじゃそんなもんだし。」

「ヘ?」

「今の世の中じゃそんなもんだって言ってんだよ。」

「そう、なの?」

「まあ、そんなもんだろ。」

「それより、早くここから脱出しよう。」

「おう。」「りょーかい!」

「え!ここから、でる、の?」

「出るが。」「出るぞ。」「出るよ。」

「でられる、の?」

「あったり前じゃん!」

「そもそも、我々がここに侵入したのは、お前を連れ出す為なのだからな。」

「ぼく、を?」

「そうだ。」

「どお、して?」

「そ~れ~は~、ここを出てから教えたげる!」

「おしえて、くれない、の?」

「だ~か~ら~、出たら教えたげるって言ってんでしょーがー!」

「とりあえず行くぞ。」

そう言って、スカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者が少年の手を取り、立ち上がらせる。

「んじゃ、出るぞ。」

「うん。」「嗚呼。」「はーい!」

そして、白い狐の面をつけていた襲撃者が一歩踏み出した瞬間、


カチッ


「「「「ん?」」」」


ビーッ!ビーッ!


「緊急ボタンガ押サレマシタ。タダ今ヨリ、証拠隠滅ノ為、当施設ヲ爆破シマス。ナオ、生存反応ガアル場合、各生存反応発生部分二転移魔法陣を起動サセマス。重要ナ書類オヨビ資料ハ直チニ回収シテ下サイ。マタ、転移魔法陣カラハ出ナイデ下サイ。50秒後二爆破シマス。」


「「「「えっ!?」」」」

「これってやばい奴なんじゃ…。」

「ば、く、は?」

「一大事だな。」

「いやっ、当たり前だろ!」

「なん、で?」

少年が襲撃者達に聞くと、

「「じ~っ…。」」

「えっ、何?もしかしてあたしのせい?」

「「そうに決まってるだろうがああああああぁぁぁぁぁ!」」


ドッガアアアアァァァン


スカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者と覆面のような布を顔の前に下げた襲撃者が白い狐の面をつけていた襲撃者の頭を勢い良く殴りつける。床にヒビがはしる。

「いったあああぁぁぁぁぁい!」

「あっ!」

「ん?」「どうした?」

何かに気づいた少年の声を聞き、問うスカーフのようなものを首に巻きつけている襲撃者と覆面のような布を顔の前に下げた襲撃者。

「もようが、ぼろぼ、ろ。」

「「えっ?」」

全員が足元を見る。

「あいたたたた。ん?ありゃ、これって、魔法陣かねぇ~。」

そこには、蜘蛛の巣のようなヒビが入った、白く輝く魔法陣があった。

「「えっ?」」


「エリア5ルーム502コードスピリットヨリエラーガ発生シマシタ。転移先ガ固定カラランダムヘト切リ替エマス。御足元ニ御注意下サイ。」


ピカッ


「わっ!」「きゃっ!」「うぉっ!」「なっ!」

アナウンスが終わると同時に、閃光が辺りを埋め尽くした。襲撃者達と少年は反射的に目を閉じる。そして、目を開けると、視界には青い世界が広がっていた。どこまでも広がる青。下を見てみると、そこには白と青の地面が見えた。しかし、地面に足がついている感覚はなく、むしろ下から風が吹いているようだった。まるで、浮いているかのように。

「まさか、ここって、空の、上?」

「てことは、下は、海、なのか?」

「つまり、我々は今。」

「おちて、る?」

そう、襲撃者達と少年は、空の上に転移してしまったのであった。そして現在、海に向かって落ちている最中であった。

「えええええええぇぇぇぇぇぇ!」

「なっ!」

「嘘だろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「うわあああああぁぁぁぁぁぁん!2人のバカあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うるっせえええぇぇぇぇぇぇぇ!」「うるさあぁぁぁぁぁぁぁぁい!」

落ちている最中でも、襲撃者達は喧嘩をするのであった。

もうすぐ、序章が終わります。

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