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Cafe Shelly

Cafe Shelly ウルトラファイト!

作者: 日向ひなた

 またか。これで何度目だろう。

「ちょっと、もっとどうにかならないの?」

 意味もないクレーム。この仕事をしていると、よくこんな声を聞く。

 私の仕事はビルや店舗を掃除する仕事。いわゆるお掃除屋さん。社員をかかえて、今日も夜中にスーパーのフロア掃除を行ったのだが。こちらとしてはかなり念入りに、きれいにしたつもり。特にトイレ掃除は力を入れた。

 仕事が終わって一度会社に戻る。ほっと一息ついていたところに、依頼主の総務部長からそんな電話を受けた。

「ど、どこか至らない箇所があったでしょうか?」

 社長を出せ、ということだったので私が対応したのだが。いきなりその言葉である。

「あんたのところにまかせたらピカピカになるって聞いたけど。喫煙所のところ、あれどうなってんの?」

 やはり言われたか。けれど、ここは事前にお断りしたはずなのだが。この店舗の社員喫煙所、排煙設備が壊れているのでヤニがすごく溜まっている。ここはうちの技術ではさすがにある程度以上は無理。まずは排煙設備の修理をと言っておいたのだが。

 しかし、ここで反論しても意味は無い。昔、反論をして取引を断られたこともある。

「すいません」

 またこの言葉を言わなければいけない。

 このお掃除の仕事はキツイ、汚い、危険の3K仕事の代表のようなもの。さらにその苦労の割には賃金が安い。おかげで社会的に低くみられがちな仕事である。

 私がどうしてそんな仕事をしているのか。それは父親の仕事を引き継いだから。引き継いだといっても、父の時代からは負の資産しか受け継いでいない。それどころか、資金難に陥り何度も倒産の危機に。そのたびに取引先は減っていき、それをなんとかするべく必死になっていた。

 仕事がそんなにないときには、深夜のファミレスでアルバイトもした。だが、その稼ぎのほとんどは自分の生活費ではなく会社のために消えていった。そんな苦労を重ねてきたが、結婚し子どもができてから風向きが変わってきた。

 その頃薦められて、中小企業の経営者の勉強会に参加するようになった。そのおかげで仲間が増え、仕事を紹介してくれるところも出てきた。けれど自分の仕事の社会的な地位は相変わらず低い。

「社長、またお掃除のクレームでしたね」

 専務である妻がお茶を差し出しながらそう言う。

「はぁ、どうやったらこの仕事の社会的な地位をもっと向上させられるんだろう…」

 こんな仕事、求人を出しても喜んで応募してくる人はいない。しかし、働いている社員は不満は持っていない。いや、むしろ一生懸命やってくれる人ばかりだ。だからこそ、私はこの社員にもっと胸を張った仕事をして欲しいと常々思っている。

「社長、ちょっとご相談が…」

 社員の一人、松本君が何やら神妙な顔つきで私のところにやってきた。

「どうしたんだ?」

「実は…今度結婚しようと思っているのですが…」

「おぉ、それはおめでとう!」

 とても喜ばしい話。なのに、松本君の顔つきはなぜだか重苦しい。

「どうしたんだい?」

「実は…結婚の条件として、今の仕事を変わってくれとむこうの両親に言われまして…」

「ど、どうして?」

「掃除みたいな仕事じゃなく、ちゃんとした仕事をしてくれと言われまして…でも、ボクはこの仕事に誇りを持っているんです。この仕事は決して楽な仕事じゃないし、賃金もそんなに高くはありません。でも、子どもに誇れる仕事だと思っています」

 松本君の言葉に、私は声が出なくなった。私の子どもの頃を思い出したからだ。

 私が小学生の頃、父は独立して掃除の仕事を始めた。私は長男で、二人の弟、妹の世話をしながら休みの日を過ごした。母も父と一緒に仕事をしていたので、一家団欒には無縁の生活を送っていた。

 掃除の仕事。私はこの仕事に対していい思い出がない。子どもに誇れる仕事か。そう言われるととても胸が痛い。

 会社を経営していながら、どこか後ろめたい気持がないわけでもない。家族を犠牲にし、子どもから後ろ指を指される。そんな気持がまだ心の奥にある。けれど、この周りからの偏見を取り除きたい。社員のためにも、業界のためにも、そして自分のためにも。

「松本くん、ありがとう。そう言ってくれるととても心強いよ」

「社長、ありがとうございます。それで、社長にお願いがありまして」

「なんだい?」

「社長も同席していただき、むこうの親や親類にこの仕事を説明していただけないかと。掃除の仕事に対しての偏見をなくして欲しいんです」

 そう言われて考えてしまった。偏見をなくす。どうやって? けれど、ここで動かなければ松本くんに対して申し訳ない。

「わかった、なんとかする」

 そう返事をしたものの、具体的にどうすればいいのかさっぱり見当がつかない。専務である妻にも相談してみた。

「そうねぇ…確かにこの仕事は社会的に低くみられがちだけど。でも、大切なお仕事だってことをわかってもらいたいよね」

 妻も同じ思いのようだ。さて、どうしたものか…。

 その日の夜、経営者の勉強会の集まりが開催された。この席で今の悩みを打ち明けてみた。

「和久さん、堂々としていればいいんですよ」

「掃除の会社を下に見るなんてまだまだ人間ができていませんね」

 そんな風に励ましてくれる言葉はたくさんもらった。けれど、具体的な解決策をアドバイスしてくれる人は出てこない。そんな中、ある人がこんな事を言ってくれた。

「そういう悩みだったら、カフェ・シェリーに行くといいかもしれませんよ」

「カフェ・シェリー? なんですか、それは?」

「喫茶店なんですけどね。そこのお店で出している魔法のコーヒーシェリー・ブレンド。こいつを飲むと今欲しがっている答えが見つかるかもしれませんよ」

 魔法のコーヒーって、どうしてコーヒーで答えが見つかるのか。そこは疑問だったが。

「まぁ、騙されたと思って一度行ってみてください」

 うぅん、何も答えが出ないよりはいいのかもしれない。アドバイスをくれた人からカフェ・シェリーの場所を聞く。そういえばこの人は初めて見るな。あとから聞いたところ、文具屋を営んでいる人らしい。今回はゲストでこの勉強会に参加したとか。うっかりして名刺をもらわなかったな。とにかく行ってみるか。

 翌日、午前中に掃除の仕事を行った後、会社のことは妻に任せて早速カフェ・シェリーへと足を運んだ。渡された地図を頼りに街に出る。

「この通りか…」

 そこは少し異空間のように思えた。

 通りはパステル色で敷き詰められたタイル。その両側にはレンガでできた花壇が彩りを添えている。通りにいる人はそんなに多くはないが、それなりの賑やかさがある。

 私はその通りの両端に目をやる。驚いたことに、ゴミが落ちていない。私はついこういうところに目がいってしまう。職業病だな。

 それにしても、この通りのお店の人の意識の高さには驚かされる。普通ならば何かしらのゴミが必ず落ちているものだが。普段からこういう掃除の意識を持っていれば、もっと私の仕事も評価されるのだろうが。

「ここだな」

 しばらく歩くと、Cafe Shellyと書かれた黒板の看板が目に入る。そこには手書きでこんな言葉が。

「自分に自信を持つ人は誰にでも輝いて見えますよ」

 自分に自信をもつ人。ちょっとドキッとした。私は自分の仕事、いや自分自身に自信を持っているのだろうか。今の私に何かを投げかけられたような気持ちだ。なんだか不思議な気持ちのまま、ビルの二階、カフェ・シェリーへと足を運んだ。

カラン・コロン・カラン

 扉を開けると、心地よいカウベルの音が鳴り響く。それと同時に漂ってくるコーヒーの香り。その中に甘い香りも混ざって、そこは今までとは違う心地よさを感じさせてくれる。

「いらっしゃいませ」

 女性店員の声が私を迎えてくれる。

「いらっしゃいませ」

 少し遅れて、カウンターから男性の低くて渋い声。私はちょっとキョロキョロ。すると、カウンター席に見覚えのある顔が。

「あ、こちらがさっき話していたお掃除屋さんですよ」

 なんと、私にこのお店を紹介してくれた文具屋さんがいるじゃないか。

「あ、昨日はありがとうございます」

「早速来てくれたんですね。うれしいなぁ」

 そういえば、と思って私はあわてて名刺を取り出した。

「昨日は名刺交換もせずにすいません。改めまして」

 そう言って名刺を差し出す。するとむこうも同じように名刺を私にくれる。

「加藤さん…ですね」

「隆史でいいですよ。和久さんとお呼びしてもいいですか?」

「えぇ、構いませんよ」

 なんかすごく気さくな人だな。

「さっきマスターとも話していたんですよ。お掃除の仕事に対して熱心な方がいるって。私も何か手助けできないかなって思って、カフェ・シェリーを紹介したんです」

「ありがとうございます。ところで、魔法のコーヒーで答えが見つかるっていうことだったのですが」

「百聞は一見にしかず。まずは飲んでみてくださいよ」

 隆史さんはにこやかにそう答える。私は隆史さんの横に座り、マスターにそのコーヒーを注文した。

「マイちゃん、この人お掃除のプロだから困ったことがあったらなんでも聞いてみるといいよ」

 隆史さん、女性店員を呼んで私をそう紹介する。なんだか気恥ずかしいが、掃除に関しての知識なら豊富なのは間違いない。

「わぁ、じゃぁ一つ聞いてもいいですか? 台所の油汚れなんですけど…」

 マイさんと呼ばれた店員さんの悩みは一般的にありがちなこと。これに対しては簡単に答えられる。

「なるほどぉ、そうやって汚れを落とせばいいんですね。ありがとうございます」

 私にとっては当たり前のこと。しかし、知らない人にとってはとても貴重なんだな。

「はい、おまたせしました。当店のオリジナルコーヒー、シェリー・ブレンドです」

 そうしているとコーヒーができあがった。

「飲んだら感想をぜひ聞かせてくださいね」

 マスターがそう一言添える。私は早速そのコーヒーを口元に運ぶ。

 いい香りだ。それだけで心が落ち着く感じがする。そのコーヒーを口に入れる。

 一瞬苦味が走るが、そのあとまろやかに口の中に甘みが広がる。コーヒーってこんな味だったっけ? そう錯覚させるようなものだ。

 いや、コーヒーって苦いって思い込みがあったんじゃないかな。実はもっと深くて味わいのあるもの。それを知らなかっただけ。コーヒーの本質をもっと人に知ってもらえれば、こんな味を楽しめる人がもっと増えるはずだ。

 お掃除の世界も同じじゃないかな。掃除って、お寺なんかでは精神修行の一つにも使われたりする。住まいが綺麗になれば気持も綺麗になれる。そういえばイエローハットの鍵山さんも、トイレ掃除が原点だっておっしゃってたじゃないか。

 掃除は決して見下された仕事ではない。むしろ、心を磨くためにも必要な仕事なんだ。それをたくさんの人に知ってもらうことができれば。掃除を楽しむ人も増えるはずだ。そういう教育を学校なんかに取り入れるといいのに。

 いや、待っていちゃダメだ。それを自分がやらないと。お掃除学校、いいね、それ。クリーンアカデミー、なんて名前はどうだろう。どうせならかっこ良く、ウルトラ・クリーンアカデミーって名前がいいな。そんな思いが一気に頭の中に広がっていった。

「お味はいかがでしたか?」

 マスターの声にハッとさせられた。いつの間にか自分の中の空想の世界に入り込んでしまったようだ。

「え、えぇ、とてもおいしかったです」

 あわててそう答えるが、味よりもむしろウルトラクリーンアカデミーのことで頭がいっぱいになっていた。

「和久さん、何かイメージが思い浮かんだんじゃないですか?」

 隆史さんの言葉に驚いた。

「えっ、どうしてそれが?」

「ははは、マスター、説明してあげてよ」

「はい。このシェリー・ブレンドは、飲んだ人が望んでいる味がするんです。その味から、人によっては望んでいるものの映像が思い浮かんだりすることもあります。ですから、和久さんが思い浮かべたこと。それが今、和久さんが望んでいるものの答えになっているんじゃないでしょうか」

 そう言われて、あらためてまじまじとシェリー・ブレンドのカップを眺める。なるほど、だから魔法のコーヒーなのか。

「確かに、私はどうやったらお掃除の仕事が社会的な認知を得て、その仕事の価値を高められるかを考えていました。その答えが見えた気がします」

「良かったら聞かせてください」

「はい、ウルトラクリーンアカデミーです」

「なんだかおもしろそう」

 店員のマイさんも話に加わってきた。

「どんなイメージだったのか、ぜひ聞かせてください」

「はい、お掃除の仕事って軽く見られがちですが。実はお掃除っていうのは精神修行なんかにとてもいいんです。きちんとした掃除のやり方を学んで、そういった心の面を磨くような場があれば。そういう学校をつくってみると面白いって思ったんです」

 口からどんどん言葉が出てくる。思いながら語り、語りながら納得。語れば語るほど、お掃除学校「ウルトラクリーンアカデミー」の概要が固まってくる。

「へぇ、それはおもしろいですね。和久さん、それ、ぜひ実現させましょうよ!」

 隆史さんはノリノリで私の話を聞いてくれる。

「私もそんな学校があったら、ぜひ勉強してみたいな。お掃除のコツだけじゃなく、心も磨かれるんでしょ。私、心理学にはとても興味があるから。そういった見地からも学んでみたいな」

 マイさんも私の言葉に同調してくれる。

「子どもの頃からそういうところできちんとしたお掃除を学べば。こういう仕事に憧れを持つ人も増えてくるでしょうね」

 お掃除の仕事に憧れを持つ。それだ、そんな社会を作ってみたいんだ。私の胸の中は徐々に燃えたぎる思いで溢れてきた。

 この熱い思いが廃れないうちに。私はカフェ・シェリーから戻って早速妻にこのことを話してみた。

「すごい、すごいすごい!」

 妻は興奮して私の話を聞いてくれる。

「ウルトラクリーンアカデミーかぁ。そんな学校つくりたいなぁ」

 私以上に、妻は空想をふくらませているようだ。勢い余って、事務の社員に私が伝えたことを話し始めた。

「社長、その話をぜひみんなにしてくださいよ。きっとワクワクして話を聞いてくれますよ」

 社員からそんな言葉が出てくるんだから。私の思いは間違っていない。この仕事に関わる人すべての人を、いや、社会にまで良い影響を与えるに違いない。核心はないけれど、今はそんな思いでいっぱいになっている。

 翌日、急遽全体ミーティングを開催することになった。夜の掃除の仕事明けで疲れている社員もいる。これから掃除の仕事に出かけるために準備をしている社員もいる。そんな中、十五分間だけみんなに集まる時間を作ってもらった。

「みなさん、お疲れの中、そして忙しい中に集まってくれてありがとう。みんなにどうしても今の私の思いを伝えたくて集まってもらいました」

 中にはすでにウトウトしている社員もいる。けれど、私は話を進めることにした。

「私は決断しました。このお掃除の仕事、これをみんなが胸を張って子どもに誇れる社会を作りたい。だから、お掃除の学校をつくりたいと考えています。名付けて、ウルトラクリーンアカデミー」

 真剣にみんなの目を見ながら話を進める。まだおぼろげではあるが、どんな学校にしたいのか、その学校が社会に及ぼす影響、そういったことを話し始めた。

「以上が私の今の思いです。まだ具体的に何から手を付ければいいのかはわかりません。けれど、これを絶対に実現させたい。その思いでいっぱいです」

 ここで再度みんなの顔を見る。みんなは真剣に私の方を向いてくれている。

「社長…」

 突然松本君が立ち上がった。

「あ、ありがとうございます」

 松本君は大きな声で私にその言葉を伝えた。この構想に至ったきっかけを作ってくれたのは松本くん。私こそ松本くんに感謝の言葉を述べなければいけないのに。社内は拍手の渦に包まれた。

 だが、一人だけ椅子に座って私を睨みつけている社員がいる。最近入った、私より年上の飯島さんである。

「社長、一言言わせてもらってもいいですか?」

 飯島さんは拍手が止むと、突然そう言い出した。

「ど、どうぞ」

「理想論を掲げるのはいいのですが…」

 私は飯島さんの次の言葉を、固唾を飲んで待った。

「理想論を掲げるのはいいのですが、それは社長のただの夢でしょう。たかが地方の小さなお掃除会社が、そんな学校をつくるなんて。できるわけないじゃないですか」

 椅子に座ったまま、腕と足を組んで斜に構えている飯島さん。確かに彼の言うことは正しい。まだ借金も抱えて、思ったように利益も出せない小さな会社。地方の中小企業の経営者がこんなに大きなことを言い出しても、誰もそれが現実になるとは思えないのかもしれない。

「そんなことはない!」

 その声をあげたのは、ふだんはおとなしい社員の早川くん。

「ボクは知っています。あのソフトバンクの孫社長も、まだ社員が数名しかいなかった頃から大きな夢を掲げて社員に話をしていました。社員は誰もそんなこと出来ないだろうと思っていたそうですけど。それが今では、あんなに大きな会社の社長になっています」

「だからといって、うちの社長がそうなるなんて思えるか?」

「できます。少なくともボクはそう思います」

 早川くんの言葉に私は心が震えた。

「私もできると思います」

 次にそう言ってくれたのは松本くん。

「ボクも」

「私も」

 次々と社員が共感の声をあげてくれる。

「ちっ、好きにしろ。ただし社長、あんたがこれからどんなことをするのかわからないけど。私に迷惑はかけないでくださいね。それと、給料はちゃんと払ってもらいますからね」

 飯島さんはそう捨てぜりふを残して、今からの掃除の仕事に出て行った。

「社長、飯島さんのことなんか気にしなくていいですよ」

 松本君はそう言ってくれたが、私はとても気になる。私の夢で社員に迷惑をかけるわけにはいかない。けれど、社員のことを考えるとウルトラクリーンアカデミーは絶対につくりたい。さて、大きな夢を掲げたのはいいが、これからどうすればいいのか。

「まずはこの構想を誰かに話してみるか」

 私は早速、一緒に経営の勉強会に参加している吉永さんのところへ行ってみた。彼は私より先輩経営者で、いつも私を励ましてくれる。

「なるほど、和久くんはそんな大きな夢を持っているんだ。それはぜひ応援したいな」

「ありがとうございます。でも、何から手を付ければいいのか…」

「簡単なことだよ」

「えっ、簡単って?」

 吉永さんの言葉に私はちょっと驚いた。何をすればいいというのだろうか?

「和久くんの夢をこうやって多くの人に語っていけばいいんだよ」

「それだけでいいんですか?」

「そこに熱意と本気さが伝われば、周りの人がかならず助けてくれる。そういうものだよ」

 確かに、今までそうやって周りの人に助けられてきた。お掃除の仕事を父から譲り受けたはいいが資金難で何度も倒産の危機にあった。けれどそのたびに、本気でこの仕事に取り組もうということを周りに伝えて。そしていろいろな人に助けられてここまでやってこれた。

 今までは、いかにしてマイナスをゼロに戻すかしか考えられなかった。けれど今度は違う。今の状態をいかにしてプラスにしていくのか。自分のためにも、社員のためにも、そして社会のためにも。

「今の話、ウルトラクリーンアカデミーをわかりやすく伝える企画書を書くといいよ。あ、企画書といってもクソ真面目なのはダメだ。うぅん、紙芝居みたいなのがいいな。どんな学校にしたいのか、そこからどんな社会を作りたいのか。あ、そうだ、私の知り合いに独立したばかりのイラストレーターがいるから。彼女を紹介しよう」

「あ、ありがとうございます!」

 なんだか話がトントン拍子に進んでいく。そんな感触を受けた。

 私は早速吉永さんから紹介されたイラストレーターの谷川さんの元へ。会ってみてびっくり。まだ若い女性だった。

「わぁ、素晴らしい話ですね。私のイラストで良ければぜひ協力させてください」

 谷川さん、目をキラキラさせて私の話を聞いてくれた。その上でイラストの協力をしてくれるとのこと。

「お礼はどのくらいお支払いすれば…」

 恐る恐る聞いてみた。すると意外な返事。

「お金はいいです。私、この仕事で独立したばかりで。だから、このイラストを私が描いたってことを宣伝してくれれば。私、自分のイラストで食べていけるようになるのが目下の目標なんですけど。和久さんと同じように、大きな夢があるんです」

 今度は谷川さんの夢を聞く側に回った。谷川さんの夢、それはイラスト教室を開いて子どもたちに夢を描いてもらうこと。子どもたちだけじゃなくそれを大人にも広げていくこと。まさにそのスタートとなる仕事が舞い込んできたので、ぜひ私には夢を叶えてほしい。そう切望された。

「夢を描くイラストレーター、いいですね。私が自分の夢を叶えることで、谷川さんの夢も叶うってことですね」

「はい、だから協力させて欲しいんです」

「わかりました。がんばります」

 こうして私の夢を形にする第一歩がスタートした。

 谷川さんと打ち合わせをするのに使ったのはカフェ・シェリー。シェリー・ブレンドを飲みながら話をすると、目の前に自分が描きたいものが鮮明に見えてくる。そのことを話しながらその場で谷川さんがラフ図を描いてくれる。こうして自分の夢を語る紙芝居ができあがった。

「これ、ぜったい聞いた人はワクワクしますよ。お掃除の仕事がこんなにもステキで、そして楽しいものだって思えます」

 谷川さんのその言葉に、私も自信が湧いてきた。私たちの話を聞いていたマスターやマイさんも同じ意見だ。

「和久さん、そこで語られている喫茶コーナー、ぜひ私に協力させてくださいね」

「もちろん。この学校でシェリー・ブレンドを飲んで夢を語り合えたらすばらしいだろうなぁ」

 私の頭の中は、すでにできあがっているウルトラクリーンアカデミーでいっぱいだ。イラストはこれからペン入れをして一週間で完成とのこと。出来上がりが楽しみだ。

 だが、物事は順調には進まないもの。

「社長、いつまで夢に浸っているんですか」

 そう私に釘をさしたのは飯島さん。私が昼間にちょこちょこと事務所を抜けて、ウルトラクリーンアカデミーの打ち合わせに出ているものだから。そこが気になっているようだ。

「みんなには迷惑かけないようにしているつもりだけど…」

「社長の行為そのものが気になるんですよ。

 いくら現場を持っていないからといって、もうちょっと会社の現状を真剣に考えてくれませんかねぇ」

「いや、考えているからこそこうやって…」

「ふん、社長ってのはいい身分ですね。社員に働かせて、自分は椅子の上でふんぞり返って夢を語っていればいいんですからね」

 嫌味たっぷりの飯島さんの言葉。だが、決してそんなことはない。あくまでも合間の時間を縫って考えているのであって。いつも以上に新規の顧客開拓や会社のマネジメントに対して行動しているつもりだ。飯島さんとの意識のギャップをどうやったら埋められるのだろうか?

 けれど、ウルトラクリーンアカデミーの夢はあきらめない。これができれば、社員みんなを幸せにできるはずだ。社員だけじゃなく、社会も明るくすることができる。まずは小さな行動を起こさないと。そんな悶々とした時間も、この電話でふっとんだ。

「和久さん、イラストできましたよ」

 谷川さんからのその言葉に私の心は胸が弾んできた。一週間かかると言っていたのに、わずか四日で完成。早速カフェ・シェリーで待ち合わせてそのイラストを受け取ることに。

「すごい、これとてもすごいですよ」

 私の目の前に現れたのは、シンプルだけど味があって、まさに私が理想としているウルトラクリーンアカデミーを反映させてくれているイラストの数々。

「じゃぁ、早速これを使っていろんな人に話をしてみます」

「ぜひどんな展開になったか、教えて下さいね」

 その時に飲んだシェリー・ブレンドの味。それは私がいろいろな人から励ましの言葉や援助をもらっている姿であった。私は早速経営の勉強会の場で十分ほど時間をもらって、このイラストを使ったプレゼンテーションをやらせてもらった。

「和久くん、それはぜひ実現させようよ。まずはそのお掃除学校ってのを開いてみないか」

 そう言ってくれたのはパソコン教室を営んでいる森さん。まずは教室を開いて、そこで一般の生徒を募集しないか、という話だ。さらにカリキュラムを組んで、国に申請をして職業訓練校として開講してみないか、という話にまで進んだ。森さんはそのやり方で、国の補助をもらってパソコンの訓練校を開設している。

「なるほど、そんなやり方があるんですね」

「今、ちょうどうちが入っているビルの二階が空き部屋になっているんだよ。オーナーに話をして、うちと同じ条件で安くで借りれないか聞いてみるよ」

 それはありがたい。私は早速お掃除学校のカリキュラム作成にとりかかることにした。

 まずはセミナー形式で毎週一回の教室を開くところからスタート。お掃除だけじゃなく、そこに伴う心の教育も入れるようにしてみた。ターゲットは主婦。お掃除のちょっとしたコツ、ポイントから徐々に本格的なお掃除のやり方に移っていくという講座。

 このカリキュラム作成については、以前知り合ったコーチングをやっているヒロキさんに手伝ってもらった。ヒロキさんの講座にはうちの妻が何度か出席したことがある。なかなかおもしろい講座をやってくれるので、参考にさせてもらった。

「それならば、最初は認知させるような簡単な内容がいいでしょうね。いきなり本格的なものよりも、低額で人を集めて。そこで次のステップを紹介していく感じかな。ゆくゆくは職業訓練にするならば、掃除だけじゃなくワークガイダンスというカリキュラムも組まないと」

 こういう講座を開催するのは始めて。まずは私が講師役をやってみることに。でも、人前に立って話をするなんて今までやったことがない。果たしてうまくいくだろうか?

「なぁに、心配するよりも動いてみれば意外にできちゃうものですよ」

 とにかく今はなんでもチャレンジしてみるしかない。そうこうしていると、いよいよ松本くんから結婚相手の親への説得の日が決まった。

「社長、来週の日曜日に時間を作っていただけるようになりました。なんとかお願いします」

 来週の日曜日かぁ。大きな役目を負うことになって緊張している。しかし自分の夢は明確になっている。

 そうだ、あの紙芝居を持って行って説明をすれば。だが相手は納得してくれるだろうか。聞けば松本君の結婚相手の親は体裁を気にするタイプらしい。そのため、自分の娘の結婚相手が掃除の仕事をしていることが気に入らないとか。できれば公務員とか、安定した仕事に就いている人を希望していたらしい。さて、この親相手にどこまで納得してくれるだろうか。

 いよいよその日曜日がやってきた。朝から妙な緊張。めったに着ないスーツに身を包んでいざ出陣!

 会う場所はホテルのロビー。このホテル、ありがたいことにうちの会社がフロアの掃除をやらせてもらっているところだ。こちらとしては気心が知れている場所なので少し安心。

「社長、来ました」

 松本君の目線の向こうには、スマートな紳士と上品な夫人、そして松本君の彼女の三人が姿を現した。

「はじめまして」

 緊張しながら先方に挨拶。相手は私よりも数段格上の紳士といった感じ。

「社長さん、うちの娘があなたのところの社員さんと結婚したいと言っているが。正直言って掃除の仕事を娘婿がやっているというのはちょっと体裁がよくなくてね」

 思っていることをズバズバと言われる方だ。ここで気後れしてはいけない。

「お父さん、聞いてください。私はこの掃除の仕事に誇りを持っています。そして、私には大きな夢があります」

 そう言ってウルトラクリーンアカデミーの紙芝居を取り出した。いきなり何を始めるのだ、そんな感じで私を見る両親。そんな視線に構わず、私は自分の夢の構想を語りはじめた。

 そこでは掃除のやり方を学んだ人たちが、笑顔で掃除に取り組む姿。掃除を通して心のありかたを学ぶ姿。さらには、この学校には全世界から視察が来て、そこで沢山の人が掃除を学ぶ。その中でうちの社員が講師となって、多くの掃除マンを育てていく姿。

「ゆくゆくは松本くんにも講師になってもらうつもりです。まだこの構想に至るまで時間はかかります。しかしその一歩を踏み出し始めました。今度、主婦をターゲットとしたお掃除教室を開講します」

 ここで両親の顔を見る。

「ねぇ、お掃除教室ってもう始まっているの? 私、お掃除苦手だからぜひそのコツを教えてもらいたいわぁ」

 お母さんは私の構想に乗り気。早速生徒になりたいという要望を口にしてくれた。肝心のお父さんは?

「社長さん、その学校というのはどこで開くんだ? もしよかったらいい物件があるんだが」

 急にビジネスモードに入るお父さん。そこからは松本君の結婚そっちのけで、私のウルトラクリーンアカデミー構想についての会話で盛り上がってしまった。

「ゆくゆくは彼も先生になるんだよな」

「はい、松本くんにはぜひそうなってもらいたいと思っています。彼は優秀な社員です。掃除に対しての熱意も持っています。彼なら間違い無くいい講師になれます」

 私は自信をもってそう伝えた。

「よし、わかった。いいじゃないか。先生と呼ばれる立場になってくれるというのは非常にうれしいものだな」

 最初のちょっと厳つい表情とは打って変わって、非常ににこやかな顔になっている。最後まで体裁を気にする方だとは思ったが、これで松本君の結婚はうまくいきそうだ。そうなると、ご両親との約束を守るためにもウルトラクリーンアカデミーは実現させないといけない。だが強い味方を付けた。

 そしていよいよ掃除教室が開講。口コミで十人ほどの主婦の方が集まった。もちろん、松本君の結婚相手のお母さんも参加してくれている。

 平日の昼間、二時間ずつの講義を毎週開催。終わったらお茶を飲みながらの座談会。ここでやってほしいことなどのリクエストをもらう。その上でカリキュラムを修正して、さらに興味をひく内容をつくっていく。その中でこんなリクエストが出てきた。

「うちの子、実はニートなのよ。といっても、働く意志はあるんだけど。社長さんみたいにお掃除の技術を身に付けさせて、この業界に就職するなんてことできるかしら?」

「もちろん可能ですよ。ただし、お掃除の仕事は体力を使いますから。さらに、何よりお客様のためを思ってやる仕事なので、そういった精神力も鍛えられますよ」

「ぜひそういうのを鍛える学校、つくってくれないかなぁ」

「はい、今の構想でそういうこともやろうと思っています」

 そう話すと、興味をひく主婦が多いことがわかった。もし働けるのだったら、自分もやってみたいという方もいた。掃除の仕事、今までは敬遠されていたものだと思っていたけれど。意外にもやってみたいという人がいるんだな。だんだん手応えを感じてきた。

 そんなある日、松本君の結婚相手のお父さんから直々に電話をもらった。話したいことがあるとのこと。会う場所を指定されたので、ふと思い立ってカフェ・シェリーを提案してみた。

 そして日曜日。妻もカフェ・シェリーに一度行ってみたいということだったので、一緒に行くことに。

カラン・コロン・カラン

「わぁ、ここがそうなのね」

 妻は思いっきりその空気を吸い込んでいる。

「社長さん、ここだ」

 先にお父さんは来ている。妻を紹介して早速話に入ることに。その前に、もちろんシェリー・ブレンドを注文。

「早速だが、この前の話を私の所属している経済団体にしてくれないか。ちょっと話をしたら、興味を引いた人が多くてね」

「あの…ちなみにそこってどういう方たちがいらっしゃるんですか?」

 妻がおそるおそる聞いてみた。

「四星商事を始めとした大手会社の役員さんや県議会議員、国会議員などが集まる経済談話会なんだがね」

 その顔ぶれを聞いてびっくり。私たち中小零細企業の経営者とは格が数段上の人達ばかりじゃないか。

「もちろん、喜んでやらせて頂きます」

 夢の実現に向けて、また一歩近づいてきた。そんな気がした。それと同時に、大きな流れを感じることが出来た。

 不思議なものだ。このカフェ・シェリーでどうやったらお掃除の仕事をみんなに認めてもらえるのか。それをイメージして口にしたのがわずか二ヶ月ちょっと前。そこからいろいろな人に伝え、いろいろなアドバイスをもらい。気がつけばお掃除教室もスタート。さらにその話が進んで、今度は大手の経営者たちの前で話をすることにまで発展した。お父さんいわく、このウルトラクリーンアカデミー構想には多額の融資が集まるだろうとのこと。本格的なお掃除学校を開くことができる。

 だからといって安心はしていない。まだまだ全国的に見れば、このお掃除の仕事はどうしても社会的な地位を低くみられてしまう。こういった仕事に就いている人たちに、もっと誇りを持って貰いたい。そして、自分の子供に自信を持って「お父さんはお掃除の仕事をしているんだよ」と伝えてほしい。その第一歩をこれからスタートさせるのだ。これは忙しくなるぞ。

 お掃除学校を卒業した人たちが仕事として始められる場もつくらないといけない。そのためには会社ももっと大きくしていかないと。働く場を確保することも私の仕事になる。そう考えると、教室の仕事は誰かに任せないと。

 ここで一つ案がひらめいた。早速そのアイデアを専務である妻に相談。

「うん、それいいかもしれない。やってみようよ」

 妻は私のアイデアに乗ってくれた。早速、翌日みんなを集めた。

「忙しいところ集まってくれてありがとう」

 前回の時と同様に、夜の清掃明けで眠たそうな顔をしている人もいる。これから掃除に向かうため、忙しく準備をしている人もいる。その合間を縫って、また時間を作ってもらった。

「これから大事なことをお話します。すでに御存知の通り、ウルトラクリーンアカデミーは主婦向けのお掃除教室からスタートし始めました」

 ここで何名かが拍手をくれた。

「さらに、今度は大きな会社の役員さんや国会議員の前でこの構想の話を行うことになりました」

 これにはほぼ全員が大きは拍手をくれた。ただ一人を除いて。

「おそらく、このウルトラクリーンアカデミーは大きな事業として周りから注目されるでしょう。そしてここで学ぶ人も増えてきます。そうなると、学んだ人が働ける場、これを作っていく必要があります。私はこれから、その場を作ることに専念します」

 みんな首を縦に振る。だが、先ほど拍手しなかった一人だけ斜に構えている。飯島さんだ。私はその存在を確認しつつ話を続ける。

「そのため、この掃除の学校の専任講師を皆さんにお願いしたいと考えています。みなさんにはローテーション式で必ず講師役をやって頂きます」

 ちょっとみんながざわつき始めた。ここで質問の手が挙がった。

「講師役なんてやったことないです。それでもいいんですか?」

「大丈夫です。そのために、専任の講師をやっていただく人を指名します。この人は学校の運営全般にかかわってもらうのと、講師としてのスキルを上げて他の講師役のサポートにまわってもらいます。もちろん、授業もやってもらいます」

 そう伝えると、みんなはちょっと安心した顔をした。だが問題は誰が専任の講師になるか、だ。

「では、その専任講師を発表します」

 場が緊張に包まれる。多くは自分がそれにならないように、と願っているようだ。だが、私の目をじっと見つめてその言葉を待っている人もいる。私はその人物の目を見て軽く頷いた。

「松本くん。君に専任講師をお願いします」

 会場は大きな拍手で包まれた。彼ならばやってくれる。そう感じたからだ。

「はい、喜んで受けさせて頂きます」

 だが私の話はこれで終わらない。

「この松本君をサポートしてもらうために、もう一名指名します」

 再び緊張感が漂う。私はもう一人の講師のそばに歩み寄る。そしてポンと肩を叩く。

「飯島さん、あなたにお願いしたいのです」

 えっ、という表情の飯島さん。

「ど、どうしてオレなんですか? だって、今まで社長のアイデアに反対してきたんですよ」

「飯島さん、あなたのお掃除にかける熱意は目を見張るものがあります。さらに持っているその技術。これをぜひ多くの人に伝えて欲しいんです」

「お、オレはそんなガラじゃないし…」

「私は知っています。飯島さん、後輩たちにちゃんとした掃除の指導を厳しくやってくれていることを。お掃除の職人として、誰よりも厳しく現場を見ていることを。飯島さんの技術のお陰で、我が社は多くのお客様に喜ばれているのです。その技術をぜひ多くの人に伝えてくれませんか?」

 飯島さんは黙って私の目を見る。その目が潤んでいるのがわかる。

「社長…お、オレが講師をやったら…き、厳しいですよ」

「それを望んでいるんです。掃除の技術と同時に、仕事に対しての考え方。これを学んでもらうのもこの学校の役目です。お掃除の仕事に対してのプライドを持つことをぜひ教えて欲しいんです」

 飯島さん、今度は目をふせている。そして、下を向いたままこんな言葉を発した。

「あ、ありがとうございます。おれ、正直うらやましかったんです。どうせ自分はどんなことをやってもただの掃除人にしかなれないって、そう思っていたから。それが先生になれるって…ありがとうございます」

 それが飯島さんの本音だったんだ。

 ここで思った。私はウルトラクリーンアカデミーをつくることで、自分の夢だけでなく周りの人の夢も実現させることができるはずだ。最初は松本君の夢である結婚を実現化させよう。そのつもりで彼を講師にした。そして飯島さんには純粋にその技術を伝えて欲しくて講師にしたのだが。そのことが飯島さんの夢を実現させることにつながった。

 こうやって多くの人の夢を実現させていく。これもウルトラクリーンアカデミーの役割の一つなんだ。これからも受講生、スタッフ、さらには地域社会の夢を実現させることにつなげてければ。

「みんな、これからウルトラクリーンアカデミーを盛り上げて、さらに大きなものにしていこう」

「社長、やりましょう」

 松本君が立ち上がってそう言ってくれた。その声にあわせて次々と立ち上がって拍手してくれる。

「よぉし、やるぞ」

 拳を握って、体いっぱいに天に腕を伸ばしてこう叫んだ。

「ウルトラファイト!」


<ウルトラファイト! 完>

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