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世廻ノ章4『氷炎の剣』

久しぶり……(吐血)

なんとなく書きたくなったので4話更新です。

えっ?5話?書きたくなったら書きます((((((

 “大災厄の魔女”の弟子になってから早くも2ヶ月が経過した。そして現在、ウォックは近辺の森を訪れている。食料調達のためだ。


「よっ__!」


 軽く力を込め、ナイフを投げる。ナイフの刃には人間は害がない特殊な麻痺毒が塗られている。小動物程度なら擦っただけでも痺れてしばらくは動けないだろう。


「きゅい!?」


 ウサギ…のような生物の背にナイフが刺さると、ウサギモドキは声を上げてその場に倒れる。


「まず1匹、今日は幸先いいぞこれ! でもこのウサギモドキ……一体名前はなんて言うんだ? 帰ったら師匠に聞くか。……おっ、あのキノコは旨いんだったな」


 ウォックはそう言うと木の幹に生えている紅いキノコをむしり採る。紅いキノコなんて毒にしか見えないが、紅い理由は恐ろしく辛いからだ。しかしこのキノコ、不思議なことに他の野菜……主に葉物と炒めるとピリ辛程度になってとても美味しく仕上がる。また矢先にエキスを塗ると当たった相手は傷口がヒリヒリするので良い武器にもある。ちなみにこのキノコの名前はドラゴベニダケだ。


「…ん? この臭い……《ヒュドラ》か!」


 突然の異臭にウォックは顔をしかめながら鼻をつまむ。独特な臭いを発する竜、《ヒュドラ》。臭いの原因は《ヒュドラ》の身体からにじむ強い酸性の汗によるものだ。その酸性の汗により周りの木々などが腐蝕してしまうのでウォックは害獣と見ているが、“大災厄の魔女”が言うには酸性の汗はいろいろな物に調合でき、しっかりと下処理をすれば肉も美味しく食えるらしい。

 ……というかここは魔女が作った世界なので、ほぼ全ての生物は食料になるし、調合素材にもなる。しかし森を腐蝕するので害が無いわけではない。放置すれば森が大変なことになるのでウォックは2ヶ月間の修行を生かし、初めて大型の敵の討伐を試みる。


「目標発見! 先手必勝! 【ファイア】ッ!」


 臭いを頼りに森を駆け、《ヒュドラ》を発見したウォックは【ファイア】を球状にして放つ。2ヶ月間の修行と言っても、精々覚えられた魔法は【ファイア】と【アイス】の2種類だけだ。初級中の初級魔法なので使用魔力は少ないが……魔力が少ないのであれば威力は期待できない。しかし、魔女の記憶の一部を受け取っているウォックは《ヒュドラ》の弱点や倒し方も全てわかっている。


 まず《ヒュドラ》の汗は高熱を受けると粘着性が生まれ、やがて固まる。だからウォックは【ファイア】を《ヒュドラ》の顔、主に鼻を狙った。するとどうだろう、《ヒュドラ》の鼻は火による高熱で固まった汗で塞がれ、口呼吸をしなくてはならなくなる。


「今だ、【アイス】!!」


 そして呼吸をするために《ヒュドラ》が口を開けた瞬間、ウォックは【アイス】で《ヒュドラ》の口内を凍らせる。これでもう《ヒュドラ》は呼吸する手段がない……と、普通は思うだろうが《ヒュドラ》には腹にもうひとつの口がある。やろうと思えばそこからも空気を吸うことも出来るのだ。そして、《ヒュドラ》の弱点というのはその腹の口なのだ。


『ゴォォォォ……ッッ!』


「そこが開けば俺の勝ちだよ! 【アイス】!」


 ウォックは【アイス】で剣状の氷を作り出すと、それを両手で握り、続けて【ファイア】を発動する。


「よし、名付けて《氷炎(ヒエン)(ツルギ)》の完成だ!」


 簡単にやって見せたが、これは永続的に【ファイア】と【アイス】を発動していなければならない。理由は簡単だ。【ファイア】を発動し続けていないと氷の剣は燃えないし、【アイス】で氷の剣を形成し続けないと【ファイア】の熱で溶けてしまうからだ。ちなみにこの2つを合わせる……氷を燃やす理由は特に無い。あるとすればウォックが“やってみたかったから”とか、“かっこいいから”とかいうしょうもない理由だ。


『グルォォー……』


「ふぅ……討伐完了っと。しっかし2ヶ月で魔法の同時発動と持続発動しか出来ないのかぁぁ、先は長いなぁ……」


 ウォックはそう言うと《ヒュドラ》をヒョイっと持ち上げ、氷の塊で作った道しるべを頼りに魔女の待つ家に帰った。



* * *



「おかえりウォック。ところで成体の《ヒュドラ》は体重が6トンくらいあるはずなのだが……???」


 “大災厄の魔女”ともあろう者が状況を把握しきれていない顔をしている。魔女から見てもウォックの謎怪力は謎なのだ。


「え、そうだったのか……聞いた途端重く感じてきた」


「待て、そこに置かれては困る。風通しのいい庭に置いてくれ」


「あー、そうだな。こいつ臭いし」


 そう言うとウォックは魔女に従い、家の裏手にある庭に向かう。庭には魔女が育てている植物類があったり、よくわからない真四角の石……のようなものがあったりする。そんな場所に《ヒュドラ》をよっこらせとウォックは置く。


「ウォックー! 置いたかー?」


 と、玄関の方から魔女の声がする。


「置いたぞー! 解体しなくていいのかー!」


「そいつ苦手だから任せるー!」


「なぜ苦手なのにこの世界に居るんだぁぁぁ!!!」


「だってその汗は万能解毒剤の調合に使えるからなー! いろいろ便利なんだよー!」


 正直、触りたいとは思えない身体だ。何せ【ファイア】で高熱を与えたのでその例の汗がヌメっとしている。さらに鱗も結構硬い。この異臭の中で作業するのは骨が折れるだろう。


「汗、取るか……」


 腹を(くく)ってウォックは呟く。するとズボンのポケットからカッコイイサイン付きの布切れを取り出すと口元に巻いてマスクにする。そうしないとやってられない。

 汗を取るにはまず炙る。じっくりと高温で、汗が固形化しそうなほど炙る。余分な水分を抜くと何故か異臭が和らぐのだ。


「2時間炙り続けるのは面倒だなぁ……物凄く暇すぎるっっ」


 【ファイア】を長時間、それも高温を維持したまま発動する。これも修行なのだろう。


(師匠のこともちょっとずつだけどわかってきた……気がするな)


 “大災厄の魔女”の記憶の一部を引き継いだウォックは、その記憶を思い出す。やはり、どれも魔女より視点が高いような気がする。だがそれよりも気になるのは一番最初に見たアレだ。


「師匠に一体何があったんだ……」


 その魔女が大災厄と呼ばれるようになったのは数百年前……ウォックが見たあの瞬間が原因だ。理由はわからないが、処刑されそうになった魔女は一瞬で全ての火山を噴火させ、世界を嵐で覆い、後に“三魔人”と呼ばれる者達を生み出した。

 “三魔人”は魔女の力を一部貰い受けており、それぞれにちゃんと意思がある。そして、魔人を殺すことで魔女の力を得ることが出来ると言われていた。それが真実なのかは誰も魔人を倒してないので不明だが……ウォックの村を襲った両国が喉から手が出るほど欲しがっているものだ。


「__ウォック、焦げ臭いぞ」


「ハッ!? ボーっとしてた!」


 いろいろ考えていたら2時間なんてとうのとっくに過ぎていた。《ヒュドラ》の鱗も焼け焦げて剥がれ落ち、肉がかなりこんがりと……随分、真っ黒になっていた。


「全く、貴重な素材をこんなにして……一体何をしていた?」


「えっ、あー……空は青いなーって?」


 ウォックは誤魔化すために適当にそんなことを言ったが……忘れていた。この魔女には隠し事や嘘が通用しないということを。


「お前……何故私の過去を知っている」


 突然目の色が変化し、ウォックに対して殺意を剥き出しにして魔女はそう言った。

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