世廻ノ章3『魔法の使い方』
シチューを食べ終え、家を出て広い庭に来た魔女とウォックは、早速魔女から魔法を学ぶ。
「んー、そうだな…まずは君が出来るものを見せてくれないか?」
「了解だ、師匠!」
ウォックは元気よく返事をすると、右手を大きく広げ、光を一点に集めて発光体を作り出す。
「ぐぬぬぬぬ……!」
「ふむ……それ、自由に動かせるかい?」
「や…それは、無理だ!」
ウォックは光を一点に集めて発光体を作り出す、言わば初級の光魔法もどきを作って言う。
「独学で光を集めることが出来たのは褒めてやろう、だが力みすぎだ、それでは動いた瞬間に消えてしまうぞ」
「うぅ、だよなぁ」
ウォックは発光体を消して、肩を落として言う。
「そう落ち込むな、魔力が足りないということもだが、ただ単にちゃんとしたやり方をわかっていないからだ」
「やり方?」
ウォックがそう言うと、魔女は人差し指を立てて光を集めて発光体を作る。
「お、おお! いとも簡単に…さすが魔女……!」
「まぁな、ほらよく私を見ろ、私は何一つ力を入れてないだろう?」
「あぁ、じゃあ俺も…!」
ウォックはそう言うと深呼吸をして落ち着かせ目を瞑り、魔女を見習い力を入れずに光を集めてみる。
「おぉ……なんかいい感じかも……」
「ウォック」
「ほんとに力を入れないだけでスゲー作りやすい、光がどんどん集まってくるのがわかる……!」
「ウォック!」
「うぐぉえええええ!!?」
魔女がキツく呼び止めながらウォックの身体が2倍重くする。【ヘビー・グラビティー】を操作したのだろう。ウォックは急に重くなったことで地面にめり込む。
「やりすぎだ馬鹿者!」
「あんたもだよ!!!」
ウォックは勢いよく起き上がると魔女にそう言う。しかし、やりすぎ…ということは魔女がウォックから受け取った発光体を見てわかった。
「で…でっかぁ……」
「全く、調子に乗りすぎだぞ」
魔女はそう言うと発光体を一瞬で消し去る。
「……ウォック、君の魔力は数値で言うといくつだ?」
魔女がふと、急にそんなことを聞く。
「えーっと……3だ!」
魔力3、それは一番魔力が低いとされる《ゴブリン》が魔力5なので、ウォックの魔力は《ゴブリン》以下となる。
「……なぜその魔力量でここまで……まあ、いいか」
魔女はそう呟くと、さらに疑問が出てくる。
「ちょっと待てウォック、君、確か今【ヘビー・グラビティー】の効果を受けているよな?」
「え、ああそうだったな! ってあれ? 重くない?」
ついさっき、さらに2倍重くしていたはずだが、ウォックは今気付いてキョトンとする。魔女も訳がわからず、同じくキョトンとする。
「君、いろいろおかしな身体をしているな」
「ははっ、よく言われる」
「それは…妹にか?」
「あぁ、よくグーパンチを受けてたよ」
そう言ってしみじみと過去を思い出しながら、ウォックは左頬を擦る。
「そうか……そういえば君は村の人達を助けたいとか言って…はいなかったな……まぁ私に関係はないが、最低でも君には魔法を2年は学んでもらうよ」
「ちょ、ちょっと待て! 2年!? 魔法を教えてもらうのはありがたいが、そんな時間はないぞ!?」
2年も期間を空けていたら、妹達がどうなっているか……ウォックは想像もしたくなかった。
「そうは言ってもな……ウォック、君は村の人達を国に連れていかれたらしいが、それはどっちの国だ?」
「それ…は……」
どっちの国か、正直全くわからない。兵士の鎧の装飾から予測できるだろうが、どれがどれだかわからない。
「……だがまぁ、確かに2年も空くとさぞ妹が心配だろう、だから時を止めた」
「はっ? 止めた? え?」
「あぁ、あの世界の全ての生物の時を止めたんだ、君が…えー、気絶してから……そうだな、5分も経ってないんじゃないか?」
「なら、その状態で行けば妹達に追い付けるかも!」
確かに時が止まっていれば簡単だろう。しかしそれは魔女が許さない。
「ダメだ、まずそもそも戻った瞬間に君の時間も止まる、それに私は君に力を貸すつもりはない、教えるだけだ」
「っ! ……いや、そうだな…俺の力でやらなきゃな」
魔女の力を借りれば、妹達を助けるだけならそれでいい。だがウォックは両国に敵対、殺された村の人達の敵討ちをする。それは魔女の力ではなく、自分の力でやらなくては意味がない。
「あぁ、だから、安心して存分に学ぶといい」
「りょーかいだ、師匠、ポンコツな俺を最強にして見せてくれよ?」
笑いかけて言う魔女に、ウォックはそう言い返す。
「任せろ! なに、壊れたらキメラと混ぜてやるさ」
「それはやめてくれ」
キメラの件が冗談に聞こえないので、とりあえずウォックは、キメラと混ざらないように強くなることにした。
こうして2年という月日の中で、ウォックは魔法を学んでいくことになる……。
《人間界》または《元世界》-“大災厄の魔女”の魔法により全生物の時が停止中。
《魔女の世界》-“大災厄の魔女”が作り出した世界。日が昇ったり降りたりしているが魔女の趣味によるもの。絵本の中のような不思議な世界。