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For freedom―悪魔の力を宿した男―  作者: シロ/クロ
第2章:Venture Into the Unknown
22/28

第1話:英雄の帰還

第2章の始まりです。


感想・ブックマークなどよろしくお願いします。

「外はこんな感じになってたんだなぁ」


 十年近くジンヤパ王国に住んでいたとはいえ、アランフットが「王都」から外に出たことは五年前に国王たちから逃げるために出た一回きりだ。

 そのため、今「守護山」の外側に立つと不思議と感慨が込み上げてきていた。この五年間『物自体界』でいろいろな体験をしてきたが、「王都」の外に出たという体験もまた新鮮だ。


 ジンヤパ王国には国王が住む「王都」にあたる「北宮(きたのみや)」の他に、「南宮(みなみのみや)」「東宮(ひがしのみや)」「西宮(にしのみや)」もある。


 いつか行ってみたものだと「北宮」から「南宮」まで続く一直線の大路を地平線まで目を凝らし見ていたアランフットに、「王都」の内部を探索していたソイが話しかける。


主人(マスター)!王国内はちょっと大変なことになってますよ」


 ニヤニヤしながらソイはたった今探ってきた「王都」の情勢を報告する。

 アランフットにはわかっている。ソイがにやけた面をしている時は大抵アランフットに何か不都合がある時だ。


 ソイは主を敬うという思考を全く持ち合わせていない。


「何がどのようにどうなってんだ?」


「街のあちこちに張り紙があるんですよ。アランフット・クローネが見かけたら即刻王宮に連れて来いって。こういうのなんて言うんでしたっけ?えーと……」


 ソイは「あれですあれ」と言葉を思い出すため、こめかみに指を当てる。


「指名手配!」


 恐悦至極と言ったような表情を浮かべて報告するソイの首を絞めてやりたい気持ちにアランフットは駆られたが、そこはぐっと抑える。


 もうここは『物自体界』ではない。誰がどこで見ているかわからない。

 女児虐待か動物虐待か、そのどちらの罪を問われるのかソイに限っては判断しかねるが、どちらにせよ印象は良くない。


「ラミとかシュナに見られたら絶対怒られる」


 五年ぶりの再会が最悪の心証というのは避けたい。


 アランフットは幼馴染であり親友であるラミとシュナイトに会うことを目的にジンヤパ王国に来ていた。『物自体界』から『人間界』に出る時は自分が行ったことのある場所にしか出ることができないため、どの道ジンヤパ王国に一度立ち寄る必要はあったのだが。


「国王様はブチギレるだろうなぁ」


 アランフットは身震いをした。


 五年前国王から命を狙われ辛うじて逃げ出したアランフット。いくら五年の月日を経ていようと、一度殺すと決めたアランフットをみすみす見逃すことは無いだろう。寧ろアランフットの危険性は高くなっているため、より確実に殺しに来るに違いない。


 アランフットは命がけで親友に会いに来ている。


「たしかケレスは「王都」に踏み入った瞬間に国王に感知されるって言ってたよな?」


「はい。地面には王の《純魔力(テフラ)》が張り巡らされているので、おそらく主人(マスター)の足が「王都」内の土地を踏んだ瞬間に《魔法》が発動して拘束されます」


「けっこうめんどくせェな……」


 アランフットはガシガシと頭を掻く。

 なるべく国王には感知されないように「王都」に侵入し、ラミとシュナイトに再開した後、またすぐにバレないように外へ逃げ出さなくてはならない。


 ほぼ不可能に近いためアランフットは若干諦めモードだが、最善は尽くすつもりだ。なにせ死にたくない。死んでしまったらこの五年間の厳しい修業の日々も全て水の泡となって消える。


 国王に気づかれないように親友に会いに行くという久しぶりの無理難題ミッションの達成を目指して、まずは――


「よっこらせっと」


「な、何するんですか!!」


 アランフットはソイを片手で持ち上げ、肩にかけた。不意に持ち上げられ困惑したソイは懸命に抵抗した。だがそれをアランフットが気にすることはない。


 小さな手で背中をバシバシと叩くソイを尻目に、アランフットは【制限解除(リミッターリリース)】をする。


 一気に辺りに緋色の輝く粒子が拡散し、空間がぼんやりと赤く染まった。


「頼むぜアリー」


(「はいよー」)


 五年間の修業でアリーと心を通わせ本当の〈妖精術〉を獲得したアランフット。


 かつてはアランフットがどう動きたいのか、どう戦いたいのかをアリーが自ら察知して〈妖精術〉を発動していたが、今は違う。互いにビジョンを共有し、より確実な動きを自然力で再現できる。


 〈妖精術〉とは妖精と協力して自然力を扱うことを言う。


 ゴオッという音と共に花緑青色の風がアランフットの身体に纏わりつく。


「じゃあ行くか!」


「ちょ、ちょ、ちょっと?もしかして飛んで行くつもりですか?」


「当然だろ?地面に足を付けたら一発で捕まるんだぜ?」


「そうですけど、わたくしを外に出したまま行く必要はないじゃないですか!!」


 極度に高い場所が苦手なソイは猛烈に反発する。

 だがアランフットは他に良い案が思いつかない上に、一度やると決めたことはなるべく変更したくない。


「うるせェ!行くぞ!」


「ひえぇぇぇぇ」


 ソイの悲鳴を地上に残し、アランフットは一気に上空に移動した。

 そして一度空中で静止し、「王都」の方へ目を凝らす。


「んー……シュナの家はここからじゃさすがに見えないな。仕方ねェ。真っすぐ行くか」


 ソイの有り得ないくらいの罵詈雑言は全く無視し、アランフットはシュナイトの家がある左京三条へと全速力で飛んで行く。



 ○○○



「いやぁ懐かしいなぁ」


 アランフットは少し速度を落とし、眼下に広がる「北宮」の景色を眺めていた。


 必要以上に「北宮」に入ることを許されておらず、必要以上に入ることもなかったアランフットだが、やはり五年ぶりに見る故郷の景色は懐かしいと感じるものだった。


「降ろしてー!怖いー!助けてー!」


 だが深い感慨までには至らない。肩に乗る生物、否、実体化した概念体がアランフットの感動の邪魔をする。


「耳元でぎゃーぎゃーうるせェんだよお前は!!」


「早く降ろしてくださいぃ!死んじゃいますぅ!一巻の終わりですぅ!」


 ソイは涙を浮かべ必死に懇願するがアランフットは止まる気配を見せない。今ソイの姿を消す手間よりもシュナイトの家に速く飛んで着く方が良い。


「もう少しの辛抱だって。それにお前は妖精と違って完璧な概念体なんだから簡単に死なないだろ!」


「そういう問題じゃないんですっ!離して離して離して離して!!」


 全身を使って暴れまわるソイをアランフットは面倒くさそうに治めようとするが、ソイは止まらなかった。


 腕をばたつかせ、脚をばたつかせ、上半身をうねらせ、下半身をうねらせ。その身体の部位という部位がアランフットの背中や腹を強打する。


「う゛ぇ……」


 ちょうど具合の悪い場所に当たってしまったアランフットはえずいた。


「ぎゃあぁぁぁぁ」


 もはや恒例となったソイの悲鳴が大空に響き渡る。


 アランフットは逆さまになって降下を始めてしまったがそれは止まることがなかった。


 原因は二つ。


 一つ目の原因は、アランフットがソイの反撃によって一瞬身体的な意味で気が緩んでしまい、【制限解除(リミッターリリース)】が解けてしまったこと。すぐに正気に戻ったがその隙は大きな意味を持ってしまった。


 アランフットの手の拘束が緩んだことで、ソイはアランフットの束縛から抜け出し姿を消した。



 二つ目の原因はさらに深刻だった。


「アリー!!風を出せ!!」


(「ん~むにゃむにゃ……」)


「おい!アリー!!風をくれ!!」


(「う~、うるしゃい!」)


 ――プツン……


 アリーが全く反応しなくなってしまったのだ。


 アリーがいないとアランフットは自然力を扱うことはできるが、〈妖精術〉を使うことはできない。


 かつてサリエリと戦った時に風のみを動かそうとした時が自力で自然力のみを使った状態だ。その時は上手く力を集中することができず、その効力を発揮することができなかった。


 しかし自然力のコントロールはかなりの集中力を要するため、大空からの落下中にはとてもじゃないが成せるものではない。

 つまりアランフットは現在、アリーの補助で発動する〈妖精術〉でしか身を守ることができない。

 したがってアランフットは今この降下を続ける現状を自力で脱却することができない。


「うわあぁぁぁぁ」


 身体が逆転し、どんどん地面が近づいてくる。アランフットは涙を浮かべ叫び声をあげた。


 だがアランフットが大きな声で何を叫ぼうと、絶命という回避不可能な運命を前にして成す術は無い。


 このまま真っすぐ落ちれば地面に直撃。死は免れられない。もうだめか、とアランフットは思う。

 しかし少し目を横にやれば何やら建造物の屋根が見える。


「行くしかねェ」


 アランフットは全力で空を泳ぎ、何とか建物の屋根の上空へ入ろうとする。


「あれ、なんかこれ記憶にあるぞ……」


 勢いそのまま建物の屋根に激突する。

 だがそこで留まることはできず、屋根を突き破りアランフットはそのまま屋内へと落ちていった。



 ボッチャーーーン



 大きな水柱が立った。


 自然力で防壁を作ったためアランフットの身体にダメージは無い。だがこの温水に入った感じ、アランフットには覚えがあった。


「ここはまさか……」


 視界は白い靄で包まれている。


 アランフットは温水から這いずり出た。周りの人影が自分を警戒していることは明らかだった。


 アランフットには理解できた。二回目ともなればさすがに分かる。


 ということは、ここらで背後から――


「ちょっとあなた!何をしているの!?」


 記憶にある声とは少し変わっているが、非常に懐かしい声が耳に入った。

 何故こんな昼間から風呂にいるのだろうという思考が一瞬頭によぎったが、五年ぶりの再会の感動の方が比重は重い。


 アランフットは振り向きながら笑顔を浮かべ話しかける。


「よおラミ!久しぶりだ……」


 ラミの姿が視界に入った瞬間、「ひさしぶりだな」の「な」までを言葉にすることはできず、アランフットは言葉を失う。


 アランフットは自分が五年の時を経て『人間界』に戻ってきたことを完全に忘れていた。


 正確には見た目に何の変化もない人物しか『物自体界』にいなかった弊害で、人間が五年で、成長期に突入する子供が五年で、どれほど変化するものか全く理解していなかった。


 自分の身体の変化はあまり自覚できるものではない。完全に失念していた。


 つまりラミは五年の月日を経て別れた時の記憶からはかけ離れた変化をしているわけで。その変化を認識したアランフットの目は飛び出たわけだ。


「ア、ア、ア」


 鼻の穴を膨らませたアランフットにかまわず、ラミはわなわなと震えだし涙を浮かべる。


「アラン!!!!」


 ラミは自分の今の状態など一切気にせずにアランフットに飛びついた。


 むにゅっとした感触がアランフットの胸に広がる。ラミよりもアランフットの方が身長も高くなっており、濡れた深紅の髪が放つ香りがアランフットの鼻をくすぐった。


「きゅうぅぅぅぅ」


 情けない悲鳴と共に、アランフットは盛大に鼻血を吹き出し意識を失った。



 〇〇〇



「……ろ……きろ……起きろ!!」


 耳元で大声で叫ばれ、アランフットは意識を吹き戻す。目を開けるとそこは見覚えのある場所だった。


「よく帰って来たね」


 エッダだ。手をひらひら振りながらアランフットに笑いかけている。


「エッダさん……ここは王城ですよね?」


「ああ、そうだよ」


「じゃあ……また俺を殺そうとするんですか?」


 アランフットは作戦の失敗を悟った。ラミには一応出会ったが意味のある言葉は交わしていない。シュナイトに関しては顔すら見ていない。


 そんな中、国王側の人間に捕まってしまうのは最悪と言っていい状態だ。


「なぜそんなことを言う、英雄よ」


 謎の人物が声を発した。


「ん?誰だあんた」


 アランフットは首を傾げた。


 声を発した人物は王座に座っており、頭には王冠もある。見るからに国王で間違いないのだが、アランフットの知る国王ではない。


 顎には立派な白髭は無く、顔に深く刻まれた皺もない。がっしりとした体形と顔はよく似ているが、髪の毛は綺麗な金髪で髭もまだ短い。


「もしかして……若返った?」


 《純魔力(テフラ)》を無限に使えるなどというよくわからない無茶苦茶な能力を使っていた国王ならばそのくらいはしそうだとアランフットは思った。


「お主はおそらく父上の姿を私に重ねているのだろう」


「つまり……あなたはあの人の息子?」


「そうだ。私が五十一代目国王である。よくぞ帰って来てくれた、英雄よ」


 そう言って新国王は王座からおおむろに立ち上がりアランフットに近づく。


 アランフットは急いで立ち上がった。


 国王がなぜ代わったのか理由はわからないが、前国王が自分に何をしようとしているかは知っているはずだ。

 念のために臨戦態勢に入る。


「そう構えなくとも何もせぬ。前国王を守るため身を挺して戦った英雄に傷をつけたと知られれば王の名折れよ」


「英雄って俺の事かよ……」


 英雄という言葉は聞こえていたが、それがまさか自分に向けられた言葉とは思いもしなかった。


 五年前の出来事とはいえ、アランフットは正真正銘の叛逆者。間違っても国王から英雄と呼ばれるような人間ではない。


 アランフットは口を開き何かを言いかけるが、その前に視界にいる、いつの間にか王座の隣に移動したエッダが何やら奇妙な動きをしていることに気がつく。


「んん?」


 エッダは口パクで何かを伝えようとしているが全く理解はできない。だがアランフットはそのエッダのただならぬ気迫の籠った顔から、特別な事情があるのだろうと悟った。

 本来敵であるエッダの言うことを聞く必要はないが、話を聞いている感じだとアランフットに対する敵意は国王からは感じられない。


 アランフットはしばらく適当に話を合わせ様子を見ることにする。


「お主は先代の危機にいち早く気づき、命を狙われていたにも関わらず先代をかばって犯人に立ち向かった。その後誘拐されたと聞いたが、無事帰って来てくれた。私は非常に嬉しく思う」


「あーはいはい。そりゃあもう頑張って戦いましたよ。あれはたいへんだったなぁ」


「結果はどうであれ、深く感謝する」


「国王は、先代のじーさんはどうなったんだ?」


「残念ながら……殺された。憎き逆賊にな」


「なるほどな」とアランフットは頷いた。つまりケレスが先代国王殺害の犯人とされている。アランフットは五年前どのようにケレスと国王が決着をつけたのかは知らない。案外本当にケレスが犯人なのかもしれない。


 だがアランフットの扱いは明らかにおかしい。アランフットがケレスに助けられ、自らついて行ったことはあの場にいた者ならば知っているはずだ。

 つまり何者かが、具体的にはあの場にいたエッダが、何か握っているに違いないとアランフットは結論付けた。


「国王様を助けることができず、申し訳ございませんでした」


 アランフットは頭を下げる。今これ以上話せばボロが出る。早い所国王との対話を終わらせ、エッダから詳しい話を聞きたいとアランフットは考えた。


「いや、お主はむしろ良くやってくれた。先代が何を考えお主を下落民としていたかは知らぬが、私はお主をジンヤパ王国の国民として歓迎する」


「えっ?ってことは「王都」に住んでいいのか?」


 アランフットは本格的に敵から味方へと、立場が一変していることを自覚した。


「もちろんだ。お主には右京三条の家を進呈しようと思っているのだが……」


「いや、「守護山」の中に俺が住んでた家があるんだ。そこでもいいか?」


「かまわないが……そこは下落民として過ごした、あまり気持ちの良くない家ではないのか?」


「いや、あそこがいいんだ」


 家自体は狭いが、それ以外のスペースが広い「守護山」がアランフットはお気に入りだった。

「北宮」は俯瞰の景色こそ綺麗だが、実際に入ってみると建物が所狭しと並んでおり息苦しい。だからアランフットは右京三条の家を拒んだ。


「そうか……。ならばそこで良い。だがこれからは普通に国民として生活して良い。「北宮」に入る時も無駄な手続きなどは必要ないからな」


「ありがとうございます」


 アランフットは再度頭を下げる。そして国王はふと思い出したように言う。


「……お主はまだ十五歳だったか?」


「はい」


「ほう。ならばコレジオにも通うといい。皆面白い成長を遂げているはずだ」


「ありがとうございます」


 アランフットは再々度頭を下げる。


「では話は終わりだ。懐かしの友人たちとの再会を楽しみたまえ」


「失礼します」


 アランフットはエッダを一瞥し王城を後にした。



 〇〇〇



 王城を出てすぐ、長い階段を下っている所ですぐにエッダはアランフットに追いついた。


「ちょっと待って、アランフット君」


 アランフットは声の方向へ振り返る。


「全部話してくださいよ」


「ありがとう。空気を読んでくれて」


 エッダは笑いかける。その笑みは不快なものだったが、アランフットは気に留めずに質問した。


「で、なんで俺が英雄になっているんですか?」


 エッダは困ったように頭を掻きながら説明を始めた。


「実は国王が何者に殺されたかわかっていないんだ」


「ケレスじゃないんですか?」


「ケレスさ……ケレスではないと思うんだ。先代を殺したのが猛毒が塗られた剣だった。彼女はそんな回りくどいことをしなくてもいいと思わないか?」


「たしかに……」


 ケレスは壮大な計画を立てている割には極度な面倒臭がりだ。

 長年一緒に過ごしたアランフットには、彼女が武器を持つとは思えなかった。


「残念ながら僕らはケレスに気絶させられていて、国王様を殺した犯人はわからない。だけど四眷属がいたにも関わらず最強の国王様が殺され、しかも犯人がわからないとなればこの国は恐怖のどん底に落ちてしまう。だから犯人を未知の存在であるケレスにして、失踪したアランフット君を犯人に立ち向かって誘拐された子供ということにしたんだ」


「なるほど……」


 なんとなく事情は理解したが、アランフットにはまだ懸念があった。


「エッダさんたちは俺の事殺さないんですか?」


 当然の疑問だ。


 五年前にアランフットの命を狙っていたのは国王だけではなかった。その国王に仕える最強の四人、四眷属もまたアランフットと一戦を交えた。


 前国王がいなくたとしても、四眷属がアランフットの命を狙うことは考えられないことではない。


「安心してくれ。僕らはあくまで国王様の命令で動いていただけだ。君に対する深い感情は無い。現国王様が何もしないと言うならば、僕らも何もしないよ」


「ありがとうございます」


 アランフットの平穏は保障された。

『人間界』に帰った後どこに姿を隠そうか決めあぐねていたため、ジンヤパ王国で安全に生活できるのはありがたい。


「じゃあ早くシュナイト様の家に行ってあげなさい。君に会えるのを待っているはずだ」


「はい!」


 アランフットはもう一度頭を下げ長い階段を下って行った。

 エッダはその背中を見て静かに呟く。


「さて、これからどうしたものか、本格的に動き始めなければな」




 ○○○




 王城のある「大内裏」から出てすぐ、「玄武門」の前に懐かしい二人は立っていた。


「シュナ!ラミ!」


 アランフットは五年ぶりに会う親友に駆け寄った。

 顔つきや背丈は変わっているが、幼い頃の面影はある。見間違えるはずはない。


「本当だってば。スケベアランは私の()()()()()()()を見て気絶したのよ」


「まあまあ。今はそれ、信じられなくもないけども……」


「アランは性懲りもなく女湯を覗きに来てたのよ」


 まさかそのことをシュナイトに報告されると思っていなかったアランフットは慌てて訂正をする。


「事故だって!」


 その声でアランフットが近づいて来たことに気が付いた二人は顔を上げ笑顔を浮かべる。


「あっ!アラン!!」


「久しぶりだねアラン。思ったよりも早く会えて嬉しいよ」


 アランフットは抱き着きたい気持ちを抑えつけ、二人に拳を差し出す。

 別れた時に最後に交わした挨拶がこれだった。


 二人もそれに気が付き拳を合わせる。


「ただいま。ここから俺の人生の新たな始まりだ!」

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