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For freedom―悪魔の力を宿した男―  作者: シロ/クロ
第1章:Provocation To this Kingdom
21/28

番外編:異世界に転生した俺は最強の《魔法》を持っていました!①〜あれ?俺何かやりました?〜

初代王のお話です。

 

 俺の名前は黒根くろね寛輝ひろき。四十五歳の普通のサラリーマンだ。

 なぜサラリーマンが昼下がりの街を歩いているかだって?

 それはだな……今日は息子の二十歳の誕生日だからだー!!!!!!

 ヒューヒュー!!!!パフパフ!!!!


 有給を使って今日の会社は休み。

 息子には会社に行ってくると伝えてあるが、サプライズというやつだ。

 息子は午前中大学の講義を受けて夜ご飯には帰ってくるらしい。

 それまでに準備せにゃならん。


 今の時代二十五歳で一人目の子供は早いだって?

 察してくれ。つまりはそういうことだ。

 だが妻とはちゃんと愛し合っていたからな。今でもイチャイチャしてるんだぜ?

 子どもたちには嫌な顔されるが、気にしてちゃ負けだ。


 そんな俺に妻と娘から与えられたミッションは「デパートで旨そうなご馳走を買ってくる」というものだ。

 娘は部屋の装飾、妻はケーキを焼くらしい。

 手先が不器用な俺はお荷物になるから家からいなくなれと女性陣にお尻を蹴られて出てきたというわけだ。


 やれやれ、複数人から愛される男ってのは疲れるぜ。



 んで、今は家に帰るところだ。

 旨そうな飯は片っ端から買ってきた。

 なんたって愛する息子の二十歳の誕生日だからな。

 金なんていくらでもかけてやらー!!



 さてと、マンションに着いた。

 ここのマンションの三階に俺は住んでいる。


 ……ん?エントランスに見たことない人がいるな。別の棟の人か?

 最近は物騒な世の中になってきたから気を付けないとな。


「あらこんにちわ」


 前から隣のおばさん(つっても六十ぐらいか。人生百年時代っていうぐらいだから六十だとまだ若い方か?いやばあさんには変わらないな)が挨拶してきた。


「あんた今日仕事はないの?」

「いやー今日は息子の二十歳の誕生日でして、誕生会なんですわ」

「あらそう。あの子がもう二十歳。あんたたちが引っ越してきた時はあんなに小さかったのに。おめでとうございます」

「あはは、ありがとうございます。ではまた」


 なかなかやるだろ?

 かつてコミュ障だった俺でも社会の波に揉まれてりゃ世間話ぐらいはできるようになるさ。

 さてさて、早く帰って妻と娘にちょっかいでもかけてまた蹴られようか。


 そう思って三階まで階段で登る。

 階段だぞ。健康が少し気になりだした俺は運動もちゃんとする。


 あら、エントランスで見た、見たことのない男が俺の部屋の前に立っている。

 見た目はまだ若い。

 息子と同じぐらいだろう。


「君、俺の家の前でなにやってるの?」

「……ここはお前の家か……ちょうどいい」

「は?なにを言っているんだ。さ、どいたどいた。俺には今から愛する家族とパーティーがあるんでな。君みたいやつの相手をしてる暇はないの」

「お前からもこの部屋からも幸せの匂いがする。死にたいやつからは感じられない匂いだ。これを壊すために俺は……俺は……」

「君も早く帰りなよ」


 そう言って俺は家の扉を閉めようとした。

 しかし閉められなかった。

 とんでもない力で扉が抑えられている。

 俺は座り込むような姿勢になって全力でドアノブを引いた。


「な、なにをしているんだ!!」

「なになに?」

「どうしたのー」


 俺の怒号に反応して妻と娘が玄関に近寄ってくる。


「来るな!不審者だ!」

「騒がないでくれよ。恐怖に染まった臭いは嫌いだ」


 無理やり扉をこじ開けた男は俺の顔を蹴り飛ばし家の中へと入っていった。

 俺は後悔した。

 あいつの足を手で掴み転ばせてやればよかった。

 あいつはなんとなくやばい。ただの不審者ではなく常軌を逸している気がしたんだ。


 そしてすぐにそれは確信に変わった。


「キャー」


 妻の悲鳴だった。

 間違えるはずもない。何年一緒にいると思ってる。

 いや何年一緒にいても本当の悲鳴など聞いたことないが、だが絶対に間違えるはずはない。


 ドスンと重たい何かが床に落ちた音がした。


 俺は朦朧とした意識で、覚束ない足取りでリビングへ向かった。


 入るとそこは華やかな装飾には似合わない嫌な臭いがした。

 ケーキの甘い匂いとどこかで嗅いだことのある気がする嫌な臭いが混ざって臭い。


 だが臭いなんて気にしていられない光景が目に入った。

 妻が血を流して倒れている。

 頭が真っ白になった。


 だがすぐに正気を取り戻す。

 微かに妻が娘の名前を呼んだ気がしたんだ。


 こういう時こそ冷静に動かなくては。


 急いで周りを見渡すとリビングの入り口に娘の姿があった。

 妻の叫び声を聞いて駆けつけたらしい。


「っ!!」


 娘の名前を呼ぼうとした時後ろから影が迫っていることに気がついた。

 あの不審者だ。

 あの不審者がナイフを持って娘の背後にいる。


 何かの気配に気づき娘は振り返った。

 その瞬間娘もまた刺されてしまった。


「お前ぇ!」


 俺の怒りは頂点に達した。

 恐怖はなかった。

 愛する妻と娘を刺された。そのことの怒りで頭が狂いそうだった。


 だが案外冷静な部分もある。

 迂闊に近づけばナイフで刺されるだけだ。

 ここは一つ対話でもして隙を作ろう。


「なんでお前はこんなことを」

「なんで、か……。生を楽しんでいるやつを殺してみたくなったから……だ」

「……っざけんな!お前……そんな……そんなことが許されるとでも思ってんのか!!」

「別に許されなくてもいい。ただ気になっただけだ。今まで俺が殺したのは自殺志願者だけだった。生を楽しんでいないやつを殺すのはもう飽きたんだ」

「てめぇー」


 冷静な思考なんてほとんど残っていなかったな。

 やつの話を聞いているだけで我慢の限界が来ちまった。

 だから俺は素手で殴りにいった。

 別に撃退できるとは思っていない。

 ただ一矢報いてやりたかった。


 結果は残念だ。

 格闘技の経験もない、もともと運動神経がいいわけでもない俺はあっさり倒され、奴は俺に馬乗りになった。


「怒っているやつを殺すのも初めてだな」


 何度も刺しやがった。

 あいつは何度も俺の腹にナイフを突き立てやがった。

 痛いのなんのって、もう途中から感覚が麻痺したよ。


「ただいまー」


 なんとまあ間の悪いことに息子が帰ってきてしまった。


 予定大幅変更か?

 俺がもうちょっと帰ってくるの遅ければ家の前で鉢合わせするところだったじゃないか。

 そうなればサプライズなんてできたもんじゃない。

 昔から予定が変わる時は連絡を入れろと言っているのに。

 もう二十歳なんだから親に迷惑はかけるなよ。

 そろそろ一人暮らしをしたいと言っているんだから、親孝行を簡単にできるのはあと少しだぞ。


 あー、意識が遠のく。音もほとんど聞こえなくなってきた。

 血が抜けすぎたのか。

 刺されたところだけ熱くて、あとはなんも感じねーや。


 仕方ねえ。

 最後に息子孝行でもしてやるか。


「あ……ちに……ゃ……だ」


 くく、情けない。まともに声も出やしねえ。

 まあいい人生だったんじゃねえか。

 妻に息子に娘がいて、毎日が幸せだった。


 終わり良ければ全てよし、なんて言ったやつをここに連れてこい。

 俺の人生、終わり方は最悪だが、最高の人生だったと胸を張って言えるぜ。


 まあ死ぬのはなんとも寂しいが、運命っちゃ運命だからな。

 本当に仕方ねえことだ。


「……父さん……」


 ほら最期に息子が自分を呼ぶ声が聞こえたよ。

 ……なるほどな。

 これが終わり良ければ全てよしってことか。

 なかなかいいこと言うじゃねえか。


 どうかお前だけは無事でいてくれよ………………



 ……そして俺は死んだ。のだと思う。




 ◯◯◯




 目が覚めると俺は地獄にいた。

 いや、地獄のような場所に寝ころんでいた。


 視界は一面緋色。

 生物なんかとても存在していなさそうな場所だった。


 てっきり俺は三途の川を渡って、閻魔様に天国行きか地獄行きか判決を下されると思っていたから、まさかいきなり地獄に来るとは思えなかった。


 そんでまあ落ち着いて辺りを見渡してみれば鬼とかもいないわけだ。

 だからここは地獄ではなく()()()()()()()()なんだって思った。


 そこからしばらくぶらぶら歩いてみた。

 どこかで誰かに会うかもしれないし、同じ境遇にある人がいたら安心できるからな。


 でも案外人間が死んで行き着く場所はこういうところなのかもしれない。

 天国や地獄なんて人間が作り出した妄想でしかないし、死後の世界なんて誰にもわかりゃしないんだ。


 そんなこんな何日歩いたかわからないぐらい歩いていたら、久しぶりに視界が緋色以外の色を捉えた。

 そこはこの地獄なような場所との境界線だった。

 奥の方には人影も見える。


 俺は安心した。やっと人と出会えたんだ。

 もしかしたら彼らも死んだ後にここに放り出されたのかもしれないからな。

 とにかく助けを乞うことぐらいはできるだろう。


 いやでも待てよ。外国人だったらどうする。

 英語は学校で習ったぐらいしか話せないぞ。でも学校の英語って会話ではほとんど役に立たないって言うしな。

 学校自体ももう何十年も前の話だから英語なんて話せないかもしれない。

 どうしたものか。


 そう思って境界線に近づいていったら、武装した人々が待ち構えていた。

 死ぬ前もそうだったが、俺には強さというものが無い。

 だからあんな怖そうな連中と争うつもりなんて毛頭ない。


 俺が両手を上げて近づいていくと連中はなにやら俺のことを指さして話し合った後武器を下げてくれた。

 当たり前だ。俺は誰に対しても優しいんだ。

 さぞ柔和な顔で向こうも驚いたことだろう。


 そこで俺は違和感に気が付いた。

 俺……なんか発光してねえか?


 普通って怖い感覚だよな。

 この意味の分からない場所に来てからずっと一人だったから俺がすべての基準になっていたんだ。

 俺が普通だと思い込んでいたんだ。



 だが俺は異常だった。



 具体的には胸がとんでもなく発光していた。

 いや気づけよ!!っていう人がいるかもしれないが……ほんとそれな!!

 (若者ってこんな感じの話し方だよな)


 とにかく感覚が狂っていたのか何なのか、全く気付かなかったんだ。

 他の人と比較してみてやっとわかった。



「なんでそんなところから出てきたんだ!」


 境界線にさらに近づいていったら警戒された声で若い男に声をかけられた。

 息子ぐらいの年齢だ。

 そういえばあいつは大丈夫だっただろうか。まあ死んでるだろうな。

 案外あいつもこっちに来ていたりしてな。ははは。


 なんとか気の利いた返答をしようと思ったがうまい感じの言葉は出てこなかった。

 仕方ないから普通に名前でも名乗っておくか。


「………………」


 えっ……?

 声が出ない。おかしい。

 確かに死ぬ前は声が出なかった。

 だが今は身体に何の異常も感じない。

 しかし声は出なかった。



 でもまあよかった。向こうがしゃべっている言葉は理解できた。


 致し方なく俺は両手を上げたまま境界線を越えた。

 何となく向こうも察してくれたらしい。

 優しく迎え入れてくれた。いいやつらだ。


 どこかへ連れていかれる最中一人が


「なんでお前は【制限解除(リミッターリリース)】をしたままなんだ?」


 と聞いてきた。

 意味が分からない。

 俺の身体が発光していることのことを言っているのだろうか。

 確かに他の人は光っていないからな。

 でも俺の発光が先天的なものだったらどうするんだ。発言には気を付けないと気まずい感じになるぞ。

 今は多様性を認める時代なんだから。


 それにしても町並みは日本とはかけ離れたものだった。

 まあ死後の世界だから日本ではないことは確実なんだがな。

 それにしても廃れた農村みたいな風景が続いて俺はなんだかノスタルジックな気持ちになってしまった。


 しばらく歩くと今まで見た中では一番大きな建物に着いた。

 ジェスチャーで中に入れみたいなことをされたから迷わず入った。


 そこで俺は一番偉いんだろうなと思う人にいろいろと説明された。

 大抵はわけのわからない話だった。


 天使だの悪魔だの。

 《魔法》だの【制限(リミッター)】だの。

 ファンタジーでしか聞いたことのないような言葉がたくさん出てきた。


 とにかく俺が出てきた場所には入ってはいけないと言われたことは理解した。

 そして話せるようになるまではここに泊まっていいらしい。

 本当にいいやつらばっかりだ。



 つーわけでしばらくここで厄介になることになった。

 鏡を見せてもらったが俺の容姿はそんなに変わっていない。

 ちょっと若返ったぐらいか?でも他の人ともあんまり見た目の差がなくてよかった。


 お世話をしてくれるねーちゃんたちはかわいい人が多い。

 てか全員可愛い。

 例えるならそう漫画の世界みたいだ。

 ヒロインが可愛いのはもちろんのこと、モブキャラでさえ普通に可愛い現象だ。


 ……漫画の世界……。

 何かが引っ掛かるな。


 そう思ったら思い浮かぶ情景がある。

 年の若い社員が読んでいた本について話していた時の情景だ。

 彼は自分のことを「こう見えてもオタクなんです」とかなんとか言ってたな。


 彼が読んでいた本のタイトルは何だったか。

 あまり覚えていないが、確か異世界に行くって言ってたな。

 突然死んでしまった主人公が異世界に転生して強くなってモテモテハーレムになるって話だ。


 そーだったそーだった。

 モテないオタクたちはそうやって現実逃避をしているのかと言ったら彼は顔を真っ赤にして早口で何か言ってきていたな。



 そうか、俺はたぶん異世界転生とやらをしているな。

 この思考の展開は些か単純すぎるか?

 でも俺は何となくそんな気がする。


 だってここで生きている人たちは自分たちが死んでいるなんて思っていない。

 普通に生活しているんだ。


 それなら俺がこの世界では異物だと考えた方が理解しやすい。

 オタクたちが考え出した妄想は本当に実在していたらしい。

 っていうことは俺はこの世界でモテモテハーレムを作り上げるのか?


 すまない妻よ。

 俺はお前以外の女に手を出してしまうかもしれない。

 だが許してくれ。

 二十五歳というまだいろいろ盛んな時期にお前を孕ませてからは、本当にお前しか愛していなかった。


 だから今から俺がやることには目をつぶってくれ。

 死んだ男の妄想が作り上げたくだらない物語だと思って。


 なんかそう考えるとムラムラしてきたな。

 やばい、本当にムラムラしてきた。

 久しぶりに感じる感覚だ。


 叫びたい。

 耐えがたい衝動が今俺の内で暴れている。

 こりゃたぶんリビドーってやつだ。リビドーがドバドバだ。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ」


 俺は叫びながら走り出した。

 なんだ声出るじゃんと思いながら。


 村長の家を飛び出し(偉い感じの人は村長だった)、連れてきてもらった道順を逆走し、緋色の地面が広がっている所の境界線まで走ってきた。


 ここなら誰にも迷惑はかけないだろう。

 さあ解き放とう。どうやったらこれを発散できるかはわからないが適当にやってみよう。


 とりあえず地面に両手をつけてみた。

 手から何かが出る気がした。


「はあぁっ!!」


 そのあとに起きたことには本当に驚いた。

 眼が点になった。

 意味とか全然違うけど眼から鱗が落ちたと思うぐらい驚いた。

 もはや眼球が落ちた。

 とにかくそのくらい驚いた。


 知能指数をうんと下げて説明すると、目の前の緋色の大地は、

 ぐにゃんぐにゃんと動き、バキバキと割れたかと思うと、ゴロゴロとひっくり返ったり、盛り上がったり沈んだりした。


 とにかく一瞬で緋色の大地は消え去り、草木なんかがちょこちょこ生える生きた土地に大変身してしまったのだ!

「のだ!」とか言って俺がやったんだけどな。


 この騒ぎに気付いた住人たちが近づいてきた。

 彼らは目の前の光景に開いた口もふさがらないようだ。


「今のはどういうことだ!」「お前は一体何者なんだ!」


 とか言っちゃってる。

 どうやら相当興奮しているな。

 ははは、凄いだろう。

 なんたって俺はここでモテモテハーレムを作り出す男だからな。

 こんなことはお茶の子さいさいさ。


 さて彼らの質問にはなんて答えようか。

 あまり自分の力を誇示した言い方だと不快な感覚を抱かせてしまうかもしれないからな。

 ここはひとまず自分がやったことの重大さ、偉大さに気づいていないふりをしよう。


 いや、もちろん何となくは気づいてるぜ?

 周りの反応から見れば俺は相当すごい。

 今の大地の変化は俺からしても驚きだったが、彼らのほうがもっと驚いている。


 だからこそ、ここは謙虚に言うんだ。

 なんたって俺はモテたいからな。

 死んだ後なら夢を見たっていいじゃないか。


 そうして俺はこう言った。

 最高に謙虚にな。


「あれ?俺何かやりました?」


書くのめちゃくちゃ楽しいですね!!

さて一章が終わったので色々と改稿していきたいと思います。

ここまで読んでくださった方々ありがとうございました。

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