第1話①:アランフット・クローネ 『ようせい??』
何度も改稿しましたが、やっと及第点に乗ったと思います。
よろしくお願いします。
赤みがかった大地に草木の一つもない荒野。枯れた風が吹き荒れる。
対峙する二人の男。
互いに動きはなく、ただ珍しいものを見るかのように、互いの姿を睨め回していた。
「本当に俺を殺すって言うのかよ」
短髪の男が問う。
「うん。『世界』を存続させるには君が死ぬのが一番簡単だし確実なんだ」
長髪の男はそれがさした問題でもないように答える。
「そっか……お前も変わっちまったな」
「なにも変わっていないよ。初めから、生まれるよりも前からずっとこうなることは決まっていたのさ」
それを聞いた短髪の男はため息をつく。
頭を掻きむしり、「くそっ!」と消化しきれない苛立ちを吐き出した。
「もうお前と話し合う余地もねェんだな」
「――そうだね。じっとしていてくれたら苦しまないように殺してあげるよ」
長髪の男は薄ら笑いを顔に浮かべている。それを見た短髪の男は乱暴に唾を吐き出した。
「それは俺が一番嫌いなことだって知ってんだろぉっ!!」
「賢明な方法を教えてあげただけだよ!!」
両者の力が体内から爆発したように溢れ出る。
それは戦闘開始の合図。この後二人の間に会話は生まれなかった。
「「【制限解除】!!」」
後世に語られる聖戦が始まった――――
――――――――――――――――――――――
春の陽気を受けて輝く若葉の山。風に吹かれた草々は柔らかい音を奏でながら小さく揺れている。
大きな木の陰の下、一人の少年が優しく吹き抜ける風の中で気持ちよさそうに鼻提灯を膨らませていた。
そこに忍び寄る一つの小さな影。宙に浮かぶそれは、酒に酔っているかのようにふらふら、ふらふらと少年の元へと近づいていった。
「うんしょっと」
小さな生き物はなんとか少年の額に止まると、目の前で定期的に膨らみ萎む風船に気が付く。何を思ったのか、恐る恐るといった面持ちでその風船に手を伸ばすと――
「――っん……なんだ?」
ぱちんと鼻提灯がはじけた。
黒い髪に黒い装束。全身を黒色に包んだ十歳の少年アランフット・クローネは、気持ちの良いうたたねを阻害した何かに気が付き、薄眼を開けた。
瞼の内から出てきた黒い瞳は粘液で潤み、眠りを邪魔したその違和感への不快感を体現しているかのようだ。
「えっ!なにっ!?」
緊急事態悟った脳は一斉に全身に向け信号を送り、そのためアランフットの身体は急激に目覚め、反応の第一段階として立毛筋を収縮させ皮膚を毛根から隆起させる。
そして全身の鳥肌を感じ取ったアランフットは急いで上半身を引き起こした。
「きゃぁぁぁぁ」
「なんだぁぁぁぁぁ!!」
アランフットの額に座っていた小さな生物はアランフットの身体の動きに伴って地面に転げ落ち、悲鳴を上げる。アランフットもその悲鳴を聞き、驚きの声を上げた。
「いったたった……」
地面に頭から落ちた小さな生物は、後頭部を摩りながら自身の何倍もの大きさがあるアランフットを不満気な目で見上げる。そんな彼は今自分の身に起きている状況を全く理解できずに「なんの声だ、どこから聞こえた」と、辺りをきょろきょろと見渡していた。
その様子を見て、小さな生物は頬を膨らませる。
「ここですー!!」
「えっ?どこ?」
アランフットは声を聞き取ることはできたが、それがどこから発せられているのかを特定することはできないでいた。
上ばかり探すアランフットを見て小さな生物はますます頬を膨らませ、もうはち切れんばかりになっている。
「ここ!」「どこ?」「ここだ!」「どこだよ!」と、どこにいるのか論争がしばらく続いた後、小さな生物は見つけてもらうことを遂に諦め、その所在を明かした。
「下だよ下!ふつー声が聞こえてくる方向ぐらいわかるでしょ!」
何度言っても自分のことを全く見つけないアランフットに、小さな生物は地団太を踏みながら不満をぶつける。
「したぁ?」
アランフットは聞こえた内容が信じられない。一体全体なにがどうなったら座っている自分の、つまり目線がかなり低くなっている自分の、そのさらに下から声を発するなんて状態が起こり得ようか。膝枕をしているのならまだしも、それなら既に声の主に気付いているはずだ。
「おちょくるのも大概にしろよ」
と言いつつも、アランフットは聞こえた主張に合わせて首を垂れる。
「ほらっ!だから言ったでしょ!ウチはずっとここに居ましたから!アンタが見つけなかっただけですから!!」
「――――」
アランフットは言葉を失った。確かに下に何かがいた。見たこともないような何かがいた。
「はぁ……まあいいわ。ウチはアリー、妖精よ。よろしくね」
なにやら挨拶をしているらしいということはアランフットにも理解はできた。理解はできるが、しかし許容はできていなかった。
アランフットが見たものは異形そのものだったのだ。
その生物は手のひらから指先まで程の大きさで、髪は金髪で背丈と同じほどの長さ、瞳も同じ色で綺麗に輝いている。尖った耳と鼻も特徴的だ。服は淡い緑色のドレスのようなものを着ており、どことなく気品と高貴さを感じさせる。
大きさと人外の美しさ以外は概ね人間と変わりない。だからここまでは良い。
しかし、何よりも受け付けられない禍々しい存在がその背後に堂々と備わっている。それだけが――否、それによってアリーの全てがアランフットにとっては受け入れ難いものになっていた。
「おまっ……その背中の……」
「ああこれ?そうよね、人間には珍しいわよね。いいでしょこれ。ふふん」
アランフットに指摘されたアリーは自慢げに背中の半透明の「羽」を見せつけた。
アリーの背中に備わる四枚の羽。トンボの羽とほぼ相違なく、透き通った下地にいくつもの脈が通っている。羽を広げると陽の光を反射して綺麗に――本来ならば綺麗に輝くのだろうが、アランフットには嫌悪感しか抱かせなかった。
そんなことは露知らず、自身の羽を褒められたと勘違いしているアリーは「ふんふんっ」と鼻唄を歌いながらアランフットの顔の周りをブンブン飛んでいる。
「はぁ……」
ため息を吐きつつも、その様子をしばらく見ていると、不思議と不快感のようなものが消えていっていることにアランフットは気が付く。
初めは人体に羽が付いている異形を見て困惑していたが、それがそうであると受け入れてしまえば案外気にならないものであった。
緊張感が解けたアランフットは思ったことを素直に言葉にする。
「こうやって顔の周りをブンブン飛んでると、お前虫みてェだな!」
「死にてぇのかごらぁ!!」
アランフットが「虫」と発言した瞬間、アリーは鬼のような形相をし、もうスピードでアランフットの頬へ殴り込んだ。
彼自身へのダメージはなく、ただ頬が力に沿って凹んだだけであったが。
「だれが虫だぁ!!訂正しろ!訂正しなきゃ許さない!殺してやる!!」
アランフットの髪を引っ張ったり鼻を引っ張ったりしてアリーは彼の発言に抗議する。アランフットはなされるがままだが、発言を撤回する気はない。
「妖精を虫けらなんかと一緒にするなんて!こんにゃろこんにゃろこんにゃろこんにゃろ!」
「もぉーやめろって」
小さい足でアランフットの頭を何度も踏みつけるアリー。アランフットもそろそろ鬱陶しくなりアリーの身体を掴む。
そうしてアリーを顔の前まで持って来て、アランフットは目をむいた。
「そうそうそうそう、もっともっと力を入れてぎゅっと」
「きもちわりぃよ!」
身体を握られたアリーはなぜか恍惚とした表情を浮かべ更なる締め付けをアランフットに要求していた。アランフットはあまりのおぞましさに、咄嗟に傍の木の幹にアリーを叩きつける。
一瞬潰れてしまうのではないかと心配したが、「ひゃんっ」と高い悲鳴を上げた後、アリーはすぐにアランフットの顔の前まで浮きあがった。
そうしてしばらくアランフットの顔を見つめた後、アリーはアランフットに人差し指を向けた。
「そういえば名前を聞いてなかったわね。教えなさい」
「……アランフット・クローネ」
「ふぅん。いいわアランフット、アンタを特別に下僕って呼んであげる」
「いやけっこう」
意味不明な申し出を即座に断る。アリーはその反応に心底驚いたような顔をした。
「なんでなんでなんでよ!仲間はみんなこう言うと喜ぶのに!それにアンタ首に鎖の印があるから、てっきりそういう趣味があるのかと――」
「うっせェ!!」
アランフットは表情を曇らせ、すぐに首の濃い紫色の印を隠した。
それは国民のだれもが知る最低の証。アランフットの人生の最大の汚点。それを話の出汁に使われるのはたまったものではない。
「ご、ごめんなさい。アンタを怒らせる気はなかったの……」
「別にいいよ」
「ほんとにごめんね。……怒ってくれた方がウチとしてはその、ありがたいんだけど……」
「また意味わからないこと言ってるよ」と、アランフットは小さく息を吐きアリーの目を見た。
「で、妖精さんが俺になんの用だよ。昼寝の邪魔しやがって」
もう遊んでやる必要もないだろうと、アランフットはアリーの目的を探る。
もしくだらない理由で眠りを妨げたのだとしたら、横の大樹の枝に逆さで括り付けてやろうと考えていた。
「う、うん。あのね」
胸の前で人差し指を合わせるアリー。頬を赤らめ何やら恥ずかしそうにしている。
「わ、笑わないでね?」
「笑わないから早く言ってどっか行って?」
アランフットは優しい笑顔で頷く。
「あ、あのね、アランフットにね、ウチをね……殺してほしいの」
「笑えねェよ!!」
妖精の用事など全く予想できなかったが、その予想の範疇からも大きく外れた要求をされてアランフットはのけ反った。
「てめェさてはあれだな!お前こそそういう趣味だな!さっきからきもちわりぃ反応ばっかしやがって!」
「ちがうの!本当に殺してほしいの!」
アリーは身を乗りだしアランフットの額に自分の額を押し付ける。
「おねがぁい、殺してぇ」
「落ち着けって。こんなに話した後に殺せるわけないだろ。知性の無い虫だったら最悪殺しちゃっても大した罪悪感は残らないけど、同じ言葉を話す虫を殺したら罪悪感もりもりだろ」
「こんにゃろ!また虫って言いやがって!――虫でもいいので殺してくださぃぃ」
怒ったり泣いたり感情の入れ替わりは激しいが、アリーの「死にたい願望」に変化はないようだ。
「それにお前はなんでそんなに死にたいんだよ」
それが絶命志望者への適切な対応かはさておき、至極まっとうな感想を述べるアランフット。アリーは「今度も笑わないでね」と、念を押して理由を話す。
「自由になりたいのよ。今のウチの立場じゃ不自由が多すぎる。ただ自由になりたい、それだけの理由よ」
「……笑わねェよ」
アランフットは真剣な顔をしてアリーの言葉を聞いていた。思うところがあるのか、アリーの頭を人差し指で撫で優しく微笑みかける。
「お前の気持ち、すげェよくわかるよ」
「じゃあ――」
アリーの顔はぱあっと明るくなる。自分の意見を肯定してもらえたことに大きな喜びを感じていた。
そしてその勢いのままアランフットに殺害の依頼をしようとしたが――、
「だがそれとこれは話は別だ!だぁれが罪悪感を抱えてまで他人を自由にしてやるもんか!俺が自由じゃねェんだ!お前だけ自由になってたまるかよ!」
「なんですとぉ!」
「だいたい自由になるために俺に殺されたいって意味がわかんねェんだよ!俺を巻き込まないで勝手に死にやがれ!」
「もうっ!話が通じない男ね!!」
アリーは身体を空中で捻りアランフットの額を蹴る。そして一気に距離を取ると、空中で仁王立ちをしてアランフットを見下ろした。
「勝手にさせてもらうわ!覚悟なさい!!」
「わっ……ちょっ……」
びゅおっと風が吹き、アリーの身体には風が纏わりつく。
アリーを中心に風が渦巻いているため、アランフットにはそれが小さな竜巻のように見えていた。
「いっくぞぉぉぉぉ――」
アリーの掛け声のようなものが聞こえた時には、既にアリーはアランフットの眼前に迫っていた。
そのあまりの速さに驚いたアランフットは思わず口を大きく開けてしまう。それを見逃さなかったアリーは勢いそのままアランフットの口の中へと侵入する。
「もがぁっ!」
アランフットはその勢いに押され、頭を木の幹に強くぶつけた。
その衝撃で意識が薄れていく――。
○○○
「俺……食ったのか?」
意識が戻り、アランフットは頭を抱えた。アリーが口に飛び込んできた衝撃で意識を失ったものの、飛び込んできた瞬間は覚えており、口の中の異物があった感触も覚えている。
トンボが持つ羽の手触り。あれが口の中で、舌の上で綺麗に華麗に再現されていた。その気持ち悪さと言ったらない。有難みの欠片も無い、ただただ不愉快な感覚だ。
頭上では呑気な小鳥たちが楽しそうに囀るが、アランフットの背中には嫌な汗が流れ落ちていた。文字通り虫唾が走る感覚。
「……うっ、おぇ……おろろろろろろろろ」
アランフットは不意に襲ってきた吐き気に抵抗することもなく身を委ねた。地面に蹲り、ありったけの不快感を体の外に吐き出す。だが、嗚咽を漏らし吐き出そうとしても何も出てこず、ただ虚しく少し酸っぱい唾液が溢れ出るだけだ。
「アリー!出て来いよ!」
アランフットは唇に付いた嫌に粘着質な唾液を手で拭い眉を顰めた。小さな友人が悪戯をしてきただけで、実際はまだ生きていることを信じたい。否、特に生きている必要はアランフットにはないが、自分が食い殺したという事実だけは否定しておきたい。
「おい!出てこい羽虫!」
アリーは自身が虫と呼ばれることだけには強い拒否感を示していた。羽虫と呼んで挑発すれば我慢できずに反発してくるだろうという魂胆だったが、やかましかった妖精の姿はもうどこにも無かった。
「くそっ」
アランフットは地面に身を投げ出した。
もう諦めるしかない。あの手のひらよりも大きな羽虫を自分は食べたのだ。アランフットはその事実を認めようと自身に言い聞かせた。
「ちくしょう!あのクソ虫め!!」
だが、安易に許容できるような事実でもなく、アランフットは不快感と悔しさが混ざったような感覚で、握りしめた両手を地面に叩きつけた。
するとどうだ。
地面を叩いた衝撃で彼の全身はふわっと浮き上がり、意思に反して二足直立で視界の先を見据えていた。
「なんだこれ……」
身体の底から力が湧き出ている――気がする。
アランフットは両手を広げ頭を垂れ自分の身体を見るが、その変化が目に見えることはない。だが、それを勘違いで済ませることはできないほど確かな力を感じていた。
今なら何でもできるような、万能感に満ち溢れた、漠然とそんな気がしてしまうほどに力が湧き出ているのを感じる。
もはやアリーを食べたか食べていないかなど、アランフットにはどうでもよかった。
そしてもはや、彼の思考からアリーの影など消えていた。自身の興味だけに全力。それがアランフットという男だった。
具体的にこの力は何を可能とするのか。それを確かめる他、アランフットの頭によぎる行動の可能性などなかった。
「身体がすっげェ軽い」
アランフットはその場で軽く跳ねてみるが、体感では通常の二倍近くは跳んでいた。視界のアップダウンが激しく酔いそうになるほどだ。
「ふむ」と腕を組んで傍らの大木を睨みつけるアランフット。何を思案しているのか、幹に軽く手を添える。
「……全力で跳んだらこのてっぺんまでならすぐに行けそうだよな」
その大木は自力で登ろうとすればいくら身のこなしが器用なアランフットとはいえ五分以上は登り続けなければいけない。彼の登頂挑戦回数は幾回か知らず、途中で断念したことしかない。
一回の跳躍で頂点まで届いてしまえば、それはもうバケモノが成す技だ。
「うんしょっ」
深く腰をかがめ、力強く地面を蹴ったアランフット。実際、彼が想像している以上に身体は軽くなっている。その軽さは比喩の範疇を超え、体重の大部分が消失しているかのよう。
ヒュンッ――と、地面に砂埃だけを残し、一瞬で少年の姿は地上から消えた。
「ぐぬぬぬぬ」
圧力に押され歯茎を剥き出しにしながらも歯を食いしばり、顔面に激突してくる木の枝にも耐える。
そして抜けた先には――
「おほー!!すげェー!!こっからだと「北宮」も全部見える!」
あっという間に大木の頂に手を掛け、仁王立ちになったアランフットは眼下の景色を見渡し、感嘆の息を漏らした。
生まれてから十年経つが、自分の住むジンヤパ王国を見下ろすのは初めての経験だった。
莫大な領土を保有するジンヤパ王国。その国家機能の中枢を担うのがアランフットが住む「王都」だ。
争いの絶えない世界情勢の中、ジンヤパ王国の「王都」が敵国軍に攻め入られたことは数少ない。勿論ジンヤパ王国の軍事力が世界最高水準であるのも要因ではあるが、地理的要因がその大部分を占めると言われている。
それは今アランフットがいる場所で、「北宮」「百姓街」の周辺を囲う、つまり「王都」全体を囲う「守護山」の存在だ。都壁とでも呼ぶべきか、城壁の上位互換の役割をこの「守護山」が担っている。
上空を移動する手段を多く持たない人々は、攻め入るのにリスクの多い山を登るか、わざわざ狭い関門をくぐる他ない。
十二個の連なったこの山々、「王都」を守る山「守護山」は、遥か昔、万世一系の王の初代、神話にしか存在しないと専ら噂の初代王が誰も見たことないほど強力な《土魔法》で創造したと言われている。
約一千年続く国史の中で幾たびの地殻変動にも揺るがないことから、ただの噂として簡単に片づけることはできなさそうではある。
また「北宮」は碁盤目状に街が区画されている。一条の「大内裏」から始まり七条まで均一に広がった町並みは壮観。
その整理された統一的な美しさがアランフットの今の感動を生み出しているのだろう。
「――なんか、飛べる気がする」
眼下の壮大な景色を見て感化されたアランフットは不意に意味不明な言葉を漏らした。何故その思考が生まれたのか。
だが彼はそう感じてしまった。そう感じてしまったからにはそうするしかない。彼はそういう人間だった。
アランフットの言葉に呼応するかのように、身体の底から湧き出ていた力が外に漏れだし、花緑青色の風が、みるみる、みるみる、みるみるうちにアランフットの身体を取り巻いていく。
風が大木を揺らし、強い力に煽られた木の葉は空高く巻き上がる。
「うしし、このまま飛んでってシュナを驚かせてやろっ」
つむじ風のようになった力はアランフットの身体を包み、更なる浮遊力を上乗せする。突如全身に駆け巡った興奮にゾクゾクと身体を震わせたアランフットは眼下の「北宮」を見据えた。
「せーのっ!」
アランフットは勢いよく大木を蹴った。
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