第0話:サーマ・ヴェーダ
拙い文章ですが楽しんで頂けたら幸いです。投稿頻度は少なめかもしれませんがよろしくお願いします。
[1章]
透明な世界は「善」と「悪」に呑み込まれる。
穢れなき神秘の地は「明白の光」と「暗黒の闇」に凌辱される。
安寧秩序、不闘の世界は終焉を迎える。
純藍の天使・光明の善神アフラ=マズダ率いる『天界』からの天使。
雑緋の悪魔・暗黒の悪神アンリ=マユ率いる『地界』からの悪魔。
双方は時を同じくして『人間界』へ目を付けた。
『人間界』の人間は豊穣な地に敬意を示し、相互扶助の精神を保ち、争いを知らない。
だが白も黒もない、光も闇もない透明な『人間界』が染まってしまうのは一瞬。
領域拡大、種族繁栄。利己的欲求に塗れた白黒の思想は色無き世界の汚点となり刹那に蔓延する。
相反する存在が万一にも相対してしまった時、そこに生まれる争いは必定。
天使に憑依された人間、悪魔に憑依された人間。戦闘の概念すら存在しなかった世界を戦争が席巻する。
鎬を削る戦闘に終戦の兆しは見えない。
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[3章]
長きに渡る汚戦は唐突に収斂を迎える。
東の『青龍』、西の『白虎』、南の『朱雀』、北の『玄武』。『人間界』の四神が現れ、光明の善神、暗黒の悪神、異界の神たちの立ち居振る舞いに一矢を報いる。
二神は急激な弱体化を被り、両軍の勢力も衰退へと向かう。果たして『人間界』に屯していた天使と悪魔は自らの神を担ぎ自界へと踵を返す。
だが一度染まってしまった透明を元に戻すことはできない。
平生の安寧は姿を消した。
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