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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第五章 新たなる舞台へ
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神様と眷属二人

視点がアイラに戻ります。

 アストラント王国からグレイシア王国へと移り、セリアや彼女の仲間たちに迎えられ、新たな居場所でセリアと一緒にベッドに入り、久々に親友と気分良く寝れたと思ったら…。


「なんで移住一日目っていう一番疲れやすい日に天神界に呼ばれんのよー!」

「まったくだね。でも一緒に天神界に呼ばれるのは初めてだね」


 私とセリアは揃って天神界に呼ばれていた。二人並んでここにいるのは初めてだ。

 しかも就寝時に服を脱いでいたはずなのに、私もセリアも部屋着を着ている状態になっている。不思議だ。


「グッモーニン!お二人さん!」

「「朝じゃねーよ」」


 正確な時間は分からないけど、おそらく深夜の時間帯であろう時に朝の挨拶をしてきた神様に、私とセリアは同時にツッコむ。


「あのですね、神様。今私はとても疲れているって解ってます?寝たいんですよ、私もセリアも。呼ぶなら就寝直後か起床直前にしてくれます?」

「嫌がらせだよね?悪質な嫌がらせだよね?神としてどうなの?挨拶もそうだけど、神としての自覚が足りないんじゃない?基礎から勉強し直した方が良いと思うよ」

「私…、ヒドイ言われよう…」

「神様がいけないんです。そもそもせっかくの美人なのに中身残念だし、神様っぽいところたまにしか見ないし、もうちょっとしっかりしてくださいよ」

「接し方も軽すぎない?私達を再会させてくれた事は感謝してるし、そんな恩人に言う事じゃないかもしれないけど、もっと威厳を持ちなよ」

「分かった!分かったから!もうそれ以上言わないで!」


 私とセリアが揃って神様に説教すると、神様は涙目になりながら説教を止めてきた。

 こんな説教に負ける時点で、神様としてどうかと思う。


「言いたい事は解ったから本題に行かせて。伝えたい事が多めなの」

「あ~、話逸らした~」

「逸らしたね。それはそうと本題に行く前に一つ質問良い?」

「ん?何かしら?」


 本題に行こうとする神様に私は不満の声を上げたけど、セリアは聞きたい事があるようで、本題に行くのを止めた。


「なんで今まで私とアイラを一緒に天神界に飛ばさなかったのさ?」

「あぁ、言われてみれば」


 私はセリアの疑問に同調する。

 確かに一緒にここへ飛ばす事は可能だったはずだ。


「地上からこの天神界へ意識を飛ばす行為において複数の意識を同時に飛ばす場合、ある条件が発生しないと一緒に飛ばせないの」

「「条件?」」

「その者達がすぐ傍にいる事が条件なの。離れてしまってると一緒には飛ばせないのよ」

「つまり今まで私がアストラントにいて、セリアがグレイシアにいたから、別々にするしかなかったっていう事ですか?」

「そういうこと」

「ふ~ん、なら納得」


 今まで私とセリアは離れた位置にいた。しかし私がセリアの傍に移った事で、同時に天神界へ呼び出す事が可能になった。ということか。


「もう質問は良いかしら?本題に移るわね。

 まずは一つ目。アイラがグレイシア王国入りした辺りに、私と部下達で会議を開いたの。それで「こっちの関係者と二人を早めに交流させるのはどうか」ていう意見が出てね、一部の者をあなた達のもとに送る事が決定したの」

「神様の部下と会うって事ですか?どこでどうやって?」

「あなた達のいるグレイシア王国に人として降りるわ。あなた達の事を色々サポートする事になってる」

「ふ~ん。ま、適当に理由作って迎え入れるよ。で、その人達は私達とは神の世界で言うどういう関係になるわけ?」

「私の下に眷属であるあなた達。その下に部下達がいるわ」

「てことは神様とその部下達の間に私とアイラがいるってわけか」

「なんか中間管理職みたい」

「アイラ、それ言い得て妙だね」


 きっと部下達の方が色々経験豊富だろうし、そういった人達がサポートしてくれるのはありがたい。

 でも天神界での仕事は大丈夫なのかしら?


「次に二つ目。部下を地上に降ろす話を友人にしたら、友人も行動を開始したのよ」

「神様のご友人ですか?」

「友達いたんだ。意外」

「私だって友人の一人や二人くらいいるわよ!失礼ね!」


 神様の友人と聞いた直後、セリアがサラッと失礼な発言をした。

 それを受けた神様はめずらしく憤慨してる。


「はいはい神様落ち着いて。そのご友人がどうされたんですか?」

「あなた達に仲間を連れて会うって言い出したの。これはアイラ、あなたにとても関わる事よ」

「え?私に?」


 神様に落ち着くよう宥めると、神様はすぐに落ち着きを取り戻し、説明を再開させた。

 神様の友人の行動が私に大きく関わるらしい。どういうこと?


「そいつはアイラに何かしようってわけ?」

「そいつなんて言っちゃいけないわ。彼女はとても高位な存在よ」


 私に関わると聞いて警戒したセリアの言葉を神様は指摘する。

 神様が「彼女」と言った以上、友人は女性だろう。神様と知り合いな時点で高位だろうし。


「その神様のご友人と仲間って何者なんですか?」


 私は改めて友人とその仲間というのが何なのか質問する。

 すると神様の口から、とんでもない言葉が出てきた。


「私の友人は、精霊女王オリジン・ユグドラシル。仲間というのは精霊達の事よ」

「精霊女王!?え?精霊!?」

「精霊に王なんていたんだ…。しかも精霊の名前なんて初めて聞いた…」


 神様が言った伝説級の存在に、私もセリアも驚愕する。

 私はふと、以前神様から説明を受けていたある事を思い出した。


「えっと、確か私が精霊と契約したら…」

「魔法が使えるようになるわ。オリジンは契約する気満々みたいよ」

「おぉ~。アイラすごいじゃん。魔法使えるようになるよ。これでうちの国の農作は安泰だね!」

「コラ。私の魔法をさっそく農業に使おうとしてんじゃないわよ」


 精霊側は私と契約する気らしい。

 セリアは私が魔法を使えるようになったら、それを農業に使おうとしてきやがった。

 しかし精霊一体どころか、全ての精霊、ましてや精霊の女王と契約したら、私の力はどうなるのかしら?


「三つ目。オリジンの動きを察知した神獣達がオリジンを通じて私に念話でアイラの事を聞いてきてね、説明したら神獣達もアイラと契約する気になったみたい。各地に散らばってた神獣達が、一斉にグレイシアへ向かってるみたいよ」

「え…?えええぇぇぇぇぇ!!?」

「わーお。アイラすげー」


 精霊のみならず同格の伝説である神獣が私のもとに向かってきている…。私と契約しに…。

 セリアは何故か棒読みで拍手している。


「あの、私が神獣と契約したら、私と神獣の関係は…」

「もちろんみんなあなたに従うわ。魔法の力もアップよ」


 あぁ~、予想通りの答えが返ってきた…。


「ヤバ、お腹痛い…」

「ここってトイレある?」

「だからそういう痛いじゃないって言ってんでしょうが!」


 およそ数時間前と同じボケをセリアが言って、同じツッコミをする私。

 侯爵の地位を貰って、偉い立場に就いて、神の世界から降りた人達のサポートも貰って、精霊のサポートも付いて、神獣を従えて…。

 いやもう何が何だか分かんない!


「四つ目」

「まだあるんですか!?」

「まだあるのよ」


 私の混乱をよそに話を進める神様。まだ話はあるらしい。


「あなた達は『シュバルラング龍帝国』って国を知ってるわよね?」

「はい。神龍伝説が有名な国ですし、竜族の暮らす所ですから」

「グレイシアとは隣国になるしね。交流したことないけど」


 シュバルラング龍帝国。

 竜族が住まう島国で、グレイシア王国とは海を挟んで隣に位置する。

 基本的に他国とは交流を持たない国だけど、過去に遭難した船乗りを助けたりした事が何度かあって、各国からの印象は良い。

 この国は『神龍伝説』が有名で、どこの国でも必ず語られる伝説がある。

 それは、龍帝国には神龍という龍が存在していて、その龍が人と契約した時、世界が大きく変わる。というものだ。

 過去に神龍と契約した者は龍帝に着任し、その歴代龍帝は神龍とともに世界の文明や価値観を大きく変えたと言われている。

 そして歴代龍帝はみんな尋常ではない程強かったとも言われている。

 誰が神龍と契約するかは、竜族の『選定の儀式』というもので選ばれるらしいけど、年に一回のその儀式をやっても該当者が出ない場合ばかりらしい。ちなみに竜族じゃなくても該当するんだとか。

 歴史上だと、最後の龍帝はおよそ二千年前。それ以降神龍と契約を成した者はいない。


 で、なんでそんな国の名前を出してきたの?神様は。嫌な予感がするんだけど…。


「実は神龍とは知り合いでね、精霊と神獣の動きを察したみたいで、私に念話してきたのよ」


 あれ?これさっきと同じパターンだそ?

 これはまさかのまさかして?


「それでアイラの事話したら、新しい契約者にしたいって」


 ハイ来ました~。予想通りのお言葉頂きました~。


「いや~、これでアイラ龍帝確実ね。おめでとう」

「はあぁぁぁぁぁ!?」


 神様は笑顔で拍手してる。私はもう驚く気にもなれない。

 大声を上げているのはセリア。


「あの、精霊と神獣の件は聞いてましたけど、神龍までなんて聞いてませんよ?」

「私も納得出来ない!神龍と契約したらシュバルラング龍帝国に移住になっちゃう!アイラは渡さない!」


 私は疑問の声を上げ、セリアは私に抱きついている。


「落ち着きなさいな。私個人として言わせてもらうと、精霊や神獣の行動と神龍の要望は一切予想しなかったし、皆が各自で動き出した事よ。

 契約を成すかはアイラ自身が決める事だし、契約に納得や覚悟が出来ないなら会った時に断れば良い事よ」

「神様はあくまでも情報提供役ってことですか?」

「そういうこと。それとグリセリア。あなたは勘違いをしているわ」

「私が勘違い?」

「神龍と契約を成した者が龍帝に就任するのは確かだし、龍帝の肩書きが付くのも確かよ。でもね、龍帝に就任した者がその後どういった行動をしていたか、学んできたこの世界の歴史を思い出せば、勘違いの意味が分かるはずよ」

「どういった行動って…」


 セリアは考え込む。私も話を聞いて過去に学んだ歴史を思い出していた。

 そんで、私もセリアもハッとした。


「確か龍帝は龍帝国に留まらないで、世界各地廻ってたんだよね?」

「自国に帰って生活してたとも聞いたような…。そういえば龍帝は政治的権限を持たないんだっけ」

「そういうこと。付け加えるなら龍帝の傍らには必ず龍帝国幹部の姿があった、ということね」


 そういえばそうだった。

 シュバルラング龍帝国は他の国々のように国王や大統領が政治の権限を持つのではなく、首相が存在していて、その首相が政治のトップとなる。龍帝は国の代表であり、一部の権限を持つ以外は基本的に自由という特徴がある。

 前世の頃にいた日本の皇室と内閣みたいな関係に似てる。


「そういえば龍帝は自由行動可能だったんだね」

「前龍帝も何かと兼任してたんだっけ?なんだ。問題ないや。アイラが龍帝になっても帰って来れんじゃん」


 セリアはすっかり落ち着いていた。

 私は天神界の空を見上げて、頭の中を整理する。


(えっと、今後はセリアから侯爵の地位を賜って、国家総合監査長官っていう仕事を与えてもらって、順番は分かんないけど天神界から降りてくる事実上の部下からのサポートをしてもらうのと、精霊との契約と、神獣との契約と、龍帝国に行って神龍と契約して龍帝に就任して…。

 …イベント盛り過ぎじゃない?ていうか、私の存在が人じゃなくなる気がするんだけど…)


「これ…、笑えないわ…」

「まだお腹痛いの?ところで私と契約する奴はいないわけ?」

「あなたはいないわね。既にいろんな物斬る能力備わってるんだから良いじゃない。神々の中でも最強クラスの能力なのよ?」

「へ~、そーなんだ。じゃ、いいや」


 私がお腹を抱え込んでいる隣で、セリアは自身の持つ神力が最強クラスだと知って満足そうにしている。


「あ、そうそうアイラ。ここ最近のあなたの神力の事だけど」

「うぇ!?また何か発動しました!?」

「違うわ。最近あなたは記憶を思い出しても神力が上がらない状態で、神気も前に説明した時から変わってない状態なのは自覚出来てる?」

「…いえ、あんま。今考えてみたらそうだなって…」


 すっかり忘れてたけど、確かに最近の私は感覚も何も変わらない。


「アイラは学院で大勢半殺しにした時から現在まで神力が停滞した状態なの。一切強化されてないのよ」

「半殺しにはしてませんよ!病院送りにしただけです!」

「アイラ…、それは半殺しだよ…」


 セリアまで~。ちょっと殴ったり蹴ったりしただけなのに~。


「それで、どうして私の神力は上がらないんですか?」

「アイラの精神状態の揺らぎが原因ね。自分で正常だと思っていても、気が付かないうちに心のバランスが乱れている時もあるのよ」

「私の精神が揺らいでる…」

「確かにグレイシアに来てからほとんど経ってないし、来るまで色々あったろうし、気が付かないうちに精神が乱れてもおかしくないよ」


 セリアに言われてなんとなく納得した。

 学院会で放置されたり、アストラント政府の政策の道具にされたり、一緒に過ごした家族や友達とお別れしたり…。

 自覚の無いうちに、私の心は追いつめられていたのかもしれない。


「それで話の続きだけど、神力停滞状態も精霊、神獣、神龍どれでも契約したら解消されるから、私としてはぜひ契約してほしいわ」

「何かのアドバイスかと思ったら、ただの神様の願望じゃないですか!真面目に聞いて損したわ!」


 何か良い話が聞けると思ったのに。この神様は。


「待って待って。注意を伝えたかったの。契約すれば神力は上昇して、神気はどんどん溢れ出すわ。伝説三つと契約した場合、漏れ方が滝のようになるから。あなたに対する周囲の目が変わると思うからそのつもりでいてね」


 それを言いたかったのか。しかし滝って…。ダダ漏れを上回るってこと?


「さてと。これで全部かな?そろそろ意識を戻すわよ」

「また言いたい事だけ言って終わるパターン…」

「いい加減身勝手過ぎない?自己中心的なのもほどほどにしなよ。ホント色々学び直した方が良いよ?」

「もう分かったってば!お願いだから説教はヤメテ!」


 神様の進行に再び説教するセリア。

 神様は再び涙目。何か説教を受ける事にトラウマでもあるのかしら?

 そんな神様を見ていて、私はある疑問を浮かべた。


「神様。精霊女王様に名前があるってことは、神様にも名前があったり?」

「ええ、あるわよ。必要性がないから言わなかったけど」

「へ~。なんて名前なの?」


 私の疑問は当たりのようで、神様にも名前があるらしい。

 セリアが軽い口調で聞くが、神様から出た名前はまたとんでもない名だった。


「私の名前はハルクリーゼ・スウェーヤ。今はほとんど使ってない名だけどね」

「あれ?どっかで聞いたような…」

「私も。どっかで聞いた」

「そうでしょうね。あなた達も信仰してるからね。私を」

「「ああああああああ!!」」


 私とセリアは引っかかった部分を同時に思い出し、同時に声を上げた。


「ハルク教の神、ハルクリーゼ・スウェーヤ!」

「マジで?テキトーに信仰してたところの神だったんだ。驚き~」

「ちょっとグリセリア?あなた今テキトーって言ったでしょ?絶対テキトーって言ったでしょ?」

「空耳空耳~」


 アストラントやグレイシアを含め、この世界のほとんどの国や地域で信仰されるハルク教。

 そのハルク教において崇められている神、ハルクリーゼ・スウェーヤ。

 大昔のこの世界に現れ、当時世界中で発生していた戦争を止め、様々な国に当時としては画期的な政策を助言して人々の飢えを解消させ、自然と人の調和や命の大切さを教え込ませたとされる全能なる神。

 一部歴史資料だと、実在した人間だったと言われているけど、まさかこんな中身残念美人がその人物なんて…。


「アイラ。今あなた中身残念美人って思ったでしょ?」

「オモッテマセン」


 心の中覗かれた…。そういえば神様は見えるんだっけ。


「じゃあ、今度からはハルク様とお呼びしますね」

「別に神様で良いわよ。名前で呼ばれるとなんかくすぐったい」

「くすぐったくなる意味が分かんないんだけど…」


 私が名前で呼ぶと言うと、神様はモジモジしていた。

 そこをセリアが冷静にツッコんだ。


「質問は以上かしら?ホントそろそろ意識返すわよ?」

「私、起きてもスッキリしないとおもうなぁ…」

「私も同感」

「意識帰って起きても、時間的にはもう少し眠れるはずよ。グンナイ、二人とも!」

「「もう寝れねーよ」」


 天神界から出る時まで睡眠を考えてくれないハルク様に、私とセリアは来た時同様同時にツッコむのだった。

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