服の試着
私の重圧による気疲れと、シャロルとノワールの興奮がある程度落ち着いたところで、改めてセリアが私の服の準備に取り掛かった。
自室へと向かったセリアは数分経ってダッシュで戻ってきた。
「はい、おまたせ~。準備出来たよ~。私の部屋に置いてるからおいで~。鏡もあるからね」
セリアの指示で私はセリアの部屋へと向かう。他のみんなも付いてくる。
あ~!前世ぶりに親友が作った服が着れる~!
セリアの部屋に入ると、服が無雑作に置かれていた。
服で小さな山が出来てる…。
「あんた…、こんなに作ったの?」
「バリエーションは多い方が良いでしょ?」
「そうだけど…。これが仕事サボってた結果というわけね」
「あはははは…」
「いえ、アイラ殿。それは少し違います」
私のチクチク刺さる発言に苦笑いを浮かべながら目を逸らすセリア。
しかしアリスはそれは違うと否定してきた。
「そーなんだよアイラ。私もちゃんと働いて…」
「女王陛下は服作りのための仕事丸投げだけでなく、外で草いじりしていたり、敷地内にある道具開発工場に入っては何かを作っていたりと、詳細までは分かりませんが公務と関係性のない事をやっていました。服の制作に全ての時間を使っていたわけではありません」
「…セリア?あんたいい加減にしなさいよ?」
セリアはアリスが味方してくれると思ったようだが、アリスは逆に丁寧にセリアのサボり話を暴露した。
私はそれを聞いてセリアを睨む。
「アリス、なんで次々暴露するのさ…。馬車の時といい…」
「アイラ殿には陛下の行いの全てを知っていただいた方が良いかと思いまして、思い出す度にお伝えするつもりでいます」
「むぅ~!良くないよ、それ!じゃあアリスは今後一切アイラに私の色々な事を暴露するの禁止ね!これは女王命令!分かったね!」
「アリス、私が国家総合監査長官に就任したら、真っ先に禁止を解いてあげるからね」
「ありがとうございます。お待ちしております」
「命令があっけなく崩されたぁ!?予期せぬ所に伏兵が!」
セリアはアリスがこれ以上暴露出来ないよう暴露禁止令を出すが、私がすかさずそれを打ち消す約束をした。
セリアは「畜生っ!」と悔しがっている。
「てか、そろそろ試着したいんだけど」
「へ~い。じゃあ、アイラ服脱いで~」
試着するので服を脱ぐのは当然。
私は下着姿になるけど、セリアは動きを止めたまま。
「アイラ。私が作る服なんだから、解るよね?」
「ん?ああ!そっか!」
セリアの言っている事をすぐに理解した私だけど、私とセリア以外の面々は首を傾げている。
私はそんな周囲を気にせず、下着を脱いで一糸纏わぬ姿になった。
私の行動にセリア以外の面々は驚いている。
「え!?お嬢様!?ちょっと!?」
「アイラ様…、お美しい身体…」
「全て脱ぎ去るとは…、そんなに特殊な形の服なのですか?」
シャロルは驚き、ノワールは私の身体に見惚れている。
アリスは私の行動よりも服の方に興味があるようだ。
「はい、作品第一号。着るの手伝うよ」
前世の頃からセリアの作る服は通常のシャツ等とは全く異なるため着方も違う。
なのでセリアのサポートを受けながら服を着る。勿論着方を理解すれば一人でも着れるけど。
「おお~、覚えがあると思ったらやっぱり~!」
「前世でアイラが寝間着にしてたのと同じに作った。サイズもピッタリみたいだね」
私が着たのはセーター。しかし普通のセーターではない。
首の部分から胴体の正面と腰周りにしか布が当たってない。つまりそれ以外は肌が露出している。
腕と脚はもちろん剥き出し。肩周りと胴体横部分、背中も丸出しで、腰部分も尾骶骨辺りが露出している。セーター自体の長さも本来下着で隠れる部分が隠れるかどうかギリギリな長さだ。
全体的に半裸と言って良い服装。そして私が前世でパジャマにしていた服そのままだった。
「懐かし~!そう!この着心地よ!ヤバい!解放感!さすがセリア!前世での技術は衰えてないね!」
「喜んでもらえて良かった。作ったかいがあるってもんだよ」
「ちょっとお待ちください!なんですかこれは!ほとんど裸ではありませんか!これでは見えてはいけない部分まで見えてしまいます!改良してください!」
「て、シャロルは言ってるけど?」
「嫌よ。これ以上布面積は欲しくないわ」
「お嬢様!?」
久々の感覚に喜んでいると、シャロルが服について抗議してきた。
私はシャロルの要求をキッパリ断る。
断られた事に驚いているシャロルは放っておいて次の服を着る。
今度は形状やデザインは同じだけど、胸の部分の中心が縦に裂けていて、私の胸の谷間がバッチリ見える状態になっている。
「おお~!さらに過激~!」
「アイラ前世の頃よりスタイル良いしさ、十分似合うと思って作ってみたんだ。私の想像通りだね。完璧」
「さっきより悪化しているではないですか!お嬢様!もうこれ以上はお止めください!」
私はせっかく楽しんでるのにシャロルがうるさい。
「シャロル。私はちゃんと説明したはずよ?あなたも理解しているものと思っていたんだけど?」
「確かに説明されたのは覚えていますが…、実際目にすると…、その、想像以上と言いますか…」
「そのうち慣れるわ。受け入れなさい」
「しかし…」
「……」
「…解りました」
このままではらちが明かないのでシャロルを説得したけど、シャロルは受け入れてくれる様子がなかったので、無言で圧力をかけておいた。
「話は良いかな?じゃあ次~」
そうして三着目に入る。
今度は黒色の太い布が網のように無雑作につながった物をセリアは出してきた。
セリアはそれを私の胸周りと腰周りに巻くと、同じく黒いスケスケのシャツを着せてきた。
「これで完了!どうよ?」
「なんか新感覚~。着てないようで着てるって言うか、なんか不思議」
「けっこうきわどいでしょ?前にこれの試作品をリリアに着せようとしたら、全力で逃げられた」
「何してんのよ…。あんたは…」
「付け加えますと、陛下は逃げたリリアをひたすら追い回し、結果リリアはその後三日間程出勤してきませんでした」
「あったね、そういえば。そんな事」
「いや、ほとんどイジメじゃん!可哀想でしょうが!なんで嫌がってるのに無理に追い回すのよ!」
「走りながら説得したんだけどなぁ。聞いてくれなかった」
「説得の内容がほとんど恐喝だったではありませんか。あれでは嫌がりますよ」
「セ~リ~ア~!!」
「その後謝罪としてボーナスあげたよ?あぁ~、痛いのは止めてください。お願いしますイデデデデデデ!!」
リリアちゃんイジメエピソードをアリスの付け加えで聞いた私は、セリアの腕を雑巾絞りする。
セリアは涙目になりながらもう片方の手で私を叩いてギブアップの意思表示をしてくる。
ホント、リリアちゃんは苦労してるなぁ…。
「……」
チラッとシャロルに目をやると、黙ってはいるが何か言いたげな表情をしている。
未だにセリアの作った服に不満があるようだ。
「シャロル。言いたい事があるなら言って。怒らないから」
「いえ、大丈夫です…」
何も言わないシャロルだが、動きに落ち着きがない。
「シャロル殿。一旦リビングで休憩しますか?」
「…そうですね。そうします」
「では行きましょう。陛下、お二方、一旦リビングで待機します。何かあればお呼びください」
「申し訳ありません。私も一旦失礼します」
「はいよ~」
「ええ。一旦落ち着いてちょうだい」
やりとりを見ていたアリスが気を利かせてシャロルをリビングへと移動させてくれた。
確かに今のシャロルがあのまま次々過激な服を見続けては、心臓に悪いかもしれない。
「私は居ても良いですか?見ていて楽しいです」
「ええ、良いわよ」
ノワールは私が下着を脱いだ辺りから、ずっとキラキラした表情で私が着る服を見ている。
多分ノワールの『楽しい』は私やセリアの『楽しい』とは違う。
その後も着ては脱いでを繰り返し、およそ30着程の服を全て着た。
どれも半端じゃない露出過激服で、私は久々の感覚に浸っていた。
中には水着もあったけど、その水着も水着の種類の中では最も隠れる面積が少ないマイクロビキニだった。これをシャロルが見ていたら、確実に倒れていただろう。
「はぁ~。楽しみました~。私、先にリビングに戻ってますね」
私が元々着ていた服へ戻った後、楽しんだらしいノワールは先にリビングへ移動していった。
「アイラ、ちょっと良いかな?シャロルの反応の事なんだけど…」
「あぁ、ごめんね?本人ちょっと驚いたみたいで。説明したはずなんだけど」
「見てて思ったんだけど、アストラントじゃあまり肌の露出をさせた服着てる人っていなくない?」
「準和服を大胆に崩して着てた友達はいたけど、今回セリアが用意した服程ではなかったわね」
アストラントではパーティードレス等を例外として、普段着では私が知っている中では私とホウが大胆組で、他に露出の多い格好をしている人はいなかった。
「おそらくアストラントとそれ以外の国の感覚の差だよ。グレイシアじゃ水着レベルの格好で街を歩く人なんてザラだよ。他の国でもね。寒冷地帯にある国なら当然着込むけど、温暖な地域にある国でそういった人がいない国はアストラントくらいだよ。
そのせいもあって、シャロルは受け止めきれなかったんじゃないかな?ましてや貴族の事を長い間見てきたわけでしょ?露出の多い格好をはしたないと思っても不思議じゃないよ」
なるほど、感覚の差か…。
私やセリアは前世の記憶があるが故に、色んな文化や風習に対応しやすい。前世で過ごした世界は情報化社会で、世界中の色んな文化や風習等もインターネットで知る事が出来たから。そういった対応力は出来上がっている。
でもシャロルはアストラントから出た事がなかった。私一筋で仕事してきた彼女は、きっと他国の話も見向きしなかっただろう。そう思えば今回のシャロルらしくない取り乱しも解る。
「説明して納得させた方が良いのかな?」
「変に刺激させるのも良くないよ。ここは何も言わずに時間をかけた方が良いんじゃないかな?アイラが露出の多い格好をし続けて、いずれ街中で同様に露出の多い格好の人を見かければ、自然と納得がいくでしょ」
「う~ん、それもそうね。ありがと、セリア」
「良いってこと。これから一緒なんだから、これくらいどうってことないよ」
服はまとめて私の部屋へ移動させ、二人でリビングへ戻った。
シャロルもすっかり落ち着いていて、口を挟んだ事を謝罪してきた。
私はそんなシャロルの頭を撫でて許してあげた。
その後は夕食時までしばらくみんなで談笑していた。




