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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第三章 学院生活 二年目
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ノワールへの説明

 レイリー嬢の葬儀が行われた日の夜。私は自室で考え事をしていた。

 それは、私とノワールのこれからの事だ。


 私はレイリー嬢にノワールの事を託された。私にはノワールが幸せを掴むまでの間、彼女を見守り続けるという義務がある。

 現状自ら変わろうとしているノワールだが、それでも心の拠り所にしているのはおそらく私だけだろう。彼女の普段の行動を見る限り、誰かと話してはいるもののレイリー嬢を除いて私以外に頼っているところを見たことがない。

 しかし今の私には問題がある。それはセリアが教えてくれた、アストラント政府が私を借金返済の代わりにしようとしている問題だ。

 もし私が本当にグレイシアへ行く事になれば、ノワールの事を見れなくなる。レイリー嬢の願いを裏切る事になるのだ。私としてはそれは嫌だ。

 この先近いうちにノワールが幸せを手に入れる可能性は十分ある。しかし私にアストラント政府がどう仕掛けてくるかも分からない。私が動けなくなってしまえば、ノワールが幸せを手に入れる前に突き放される可能性がある。

 なのでいっその事ノワールに私の全てを話して、本人が今後どうしたいか判断してもらおうと考えていた。


「私以外に秘密をお話になるのですか?信じていただけるでしょうか?」

「分かんない。でも他に方法がない」

「私は別に構いませんが…」

「ねぇ。シャロルはもし私がグレイシアに行く事になったとしたら、その後…」

「私もお嬢様とともにグレイシアへ同行させていただきます。家族と離れる覚悟は既に出来ております」


 私がグレイシアへ行く事になったらシャロルはどうするのか聞こうとしたら、超即答で返事が返ってきた。

 シャロルが冗談を言っている様子はなく、表情はいつも通りにこやかだけど目だけは真剣だった。


(自分の事だってあるでしょうに…。本当、シャロルは私の理解者だわ。私の行く所どこでも追ってくるつもりね)









 次の日。私はノワールのもとを訪れた。


「どう?だいぶ落ち着いた?」

「はい…。ありがとうございました。お恥ずかしい限りで」

「何言ってるのよ。恥ずかしい事じゃないわ」


 昨日、私にしがみついたまま泣いていたノワールは、泣いた影響で体力を使い切ってしまい、その後まともに動ける状態ではなくなってしまっていた。

 今はある程度回復し、精神状態も落ち着いているようだ。

 この短時間で身体と心の状態を修復しようとしているのだから、ノワールは強い。

 私はそんなノワールの様子を窺いつつ、話をきりだすことにした。


「あのね、ノワール。こんな時に言うべきか迷ったんだけど…、聞いてほしい話があるの」

「はい、なんでしょうか?」

「その前に、今から話す内容は他の人には絶対言わないで」

「はあ…、分かりました…」


 キョトンとしているノワールに私は話を始める。

 およそ一年以上前からセリアと密書を交わし続けていること。

 アストラントがグレイシアに巨額の借金をしていること。そしてそれは国家機密ということ。

 その借金の代わりとして、私がグレイシアへ飛ばされる可能性があること。


 驚いていたノワールだが、話し終わると落ち着いた表情で少し考え込んだ後、真剣な表情に変わって口を開いた。


「アイラ様が行かれるのなら、私も同行させてください。ともにグレイシアへ参ります」

「え?でも学院は?卒業まで約一年あるわよ?」


 セリアが教えてくれた極秘会合が行われた時を考えると、アストラント政府が私へ何かを仕掛けてくるのはおそらく学院卒業よりも前だろう。さすがにノワールを卒業させずに同行させるのは気が引ける。

 しかし、ノワールが放った言葉は驚くべきことだった。


「学院は問題ありません。二学年最終日をもって退学しますので。三学年には上がりません」

「うぇ!?なんで!?」

「実は学院に通うための学費はお姉様が自分の貯金から出していたようなのです。二学年までの学費は既に学院に収まっているようで、その学費を使い切る形で学院を辞めるつもりでいます。学院会の特殊調査部の部長職を投げ出してしまうのは申し訳ないですが…」


 妹の学費まで出してたんだ…。ということはノワールを学院に行かせたのはレイリー嬢か。

 本当、どこまで妹想いなんだか。


「あなたが私と一緒に歩むというなら、私の存在に関しても話しておかないとね」

「え?存在?」


 私は再び話を始めた。

 天神界という場所が天界にあり、そこにいる神様の眷属であるということ。

 通常の人間の身体とは異なる身体であること。

 前世の記憶を持っているということ。

 セリアも同じ存在で、私とは親友の間柄であること。

 私の専属メイドであるシャロルだけが全て知っているということ。


 話終えると、ノワールはポカーンとしたまま動かなくなっていた。


「あれ?お~い、ノワール?お~い」

「……アイラ様…」

「あ、動いた。何?」

「アイラ様は、神々の一員ということですか?」

「う~ん…、違うけど当ってる」


 眷属ではあるけど人間の扱いでもあるから、微妙な立ち位置なんだよなぁ…。


「これまでのアイラ様の素晴らしい功績はそのために…は!まさかお姉様はこの事に気付いていて私を!?」


 私の過去の事を評価してくれてるのは嬉しいけど、レイリー嬢はさすがにそこまで気付いてないと思うよ?


「私、アイラ様と出会えて本当に良かったです。これからもどうかよろしくお願い致します」


 なんか勝手に自己解決してあっさり話を受け入れたノワールは、私に丁寧に挨拶してきた。

 なんだかツッコむ気にもなれなかった私は、口外しない事を念押しして話を終わらせた。

 ノワールが意外とアッサリしていたのはけっこう助かった。


(レイリー様、ノワールは強く生きています。後の事は私にお任せしてゆっくりお休みください。私が責任持って見守りますから。

 神様、レイリー嬢の魂の丁重な管理、どうかお願いします)


 私は帰りの馬車の中で、レイリー嬢と神様に心の中でメッセージを送った。

 届くかどうか分からないけど、何故か伝えたくて仕方なかった。



 ……そういえば最近、天神界に行ってないな。

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