葬儀
私はヘルモルト邸を訪れていた。理由はレイリー嬢のご遺体と会うため。
相変わらず使用人がいない屋敷をノワールの案内で歩き、以前レイリー嬢と会話した部屋へ入った。
部屋のベッドには眠っているかのような安らかな顔であおむけになっているレイリー嬢がいた。
「お姉様を診ていただいたお医者様と屋敷の一部の使用人が、お姉様をこの状態にしてくれました」
「ご両親は?」
「使用人から報告は受けているはずなのですが、外出先から帰ってくる様子はありません」
自分の子供を看取る事もせず、亡くなった知らせが来ても帰らないとか、家族云々以前に最低だわ。
「お姉様は、私の事をアイラ様に託していたのですね」
「あら、知ってたの?」
「亡くなる直前に言われたんです。これからはアイラ様を頼るようにと。そう言われて気付きました」
「そう…。私と話していた時も、自分の事よりあなたの事を気にしていたわ。本当、良いお姉さんね」
「はい、自慢の姉でした…」
次の日。レイリー嬢の葬儀が行われた。
とは言っても参列者はほとんどいない。ノワールいわく、レイリー嬢は特に親しい友人を作らなかったんだそう。さらにそこに監獄送りや病気等があったため、余計知り合いがいなかったらしい。
だとしても、貴族の葬式に王族が来ないってどういう事よ。いくら関わりなくても王子くらい来なさいよ。学院始まったら王子殿下を問い詰めよう。
私は葬儀の間、ずっとノワールに寄り添っていた。彼女の精神状態が不安で仕方なかった。時々震えてもいる。
葬儀を進行する喪主のグラマン・ヘルモルト伯爵なのだけど、悲しむ様子もなければ進行も雑。面倒臭そうな感じがあって、見ていて気分が悪かった。
ノワールの母親であるサッキーナ伯爵夫人は、さっきレイリー嬢のご遺体を恐る恐る触っていたけど、その後はぼんやりした様子のままだった。いまいち良く分からない。
ノワールの兄のパーマ子息はいない。家族が参列すらしないつもりか。
葬儀終了後、参列者もいなくなった後を見計らって、私はノワールを連れて人がいないところにやってきた。
「アイラ様?一体どうされたのですか?」
私に連れてこられたノワールは困惑気味。そんなノワールを私は何も言わずに抱きしめた。
「アイラ様?」
「ノワール。あなた泣くの我慢してるでしょ?ずっと震えているの分かってるのよ」
「……」
「泣きなさい。泣いて良いの。ここなら誰も見てないし、私が付いてるから。無理しなくて良いの。辛い時は思いきり泣いて、そして前を向くの。そうしてみんな成長していくの。辛さを乗り越えていくのよ。だから今は、ね?」
「う…、うぅ…」
「涙も流さず良く頑張りました。すごいわ、ノワール」
「うわあぁぁぁぁぁん!!うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」
大粒の涙を流し叫ぶように泣き始めたノワールは、私にしがみついたままその場に崩れた。
「お姉様が…、大好きだった…。ひっく!もっともっと、えぐっ!一緒にいたかった…」
「……」
私は黙ったまま、ノワールが泣き止むまでずっと抱き続けていた。それしか出来なかった。
前世の記憶を持って神の力さえ持っているのに、こういう時に何もしてあげられない、気の利く言葉も浮かばない自分に腹が立った。




