学院祭最終日
学院祭最終日。
今日は両親が学院に訪れることになっている。私と一緒に廻る予定。
他にもティナやホウの両親も来るらしく、その関係で各家の兵士が警備をある程度やってくれるらしい。なので今日ばかりは学院会も気楽。
そんな学院会のもとにレイジが戻ってきた。まだ包帯をいたる所に巻いてるし、杖をつきながらの歩行だけど、動けるまでには回復したみたい。
「すまない。いろいろと任せてしまって…」
「何言ってんのよ。当然の事でしょ」
「無事で良かったです。本当に」
警備部の仕事を任せきりにしてしまった事を気にするレイジをステラとニコルがフォローする。私もレイジが落ち着くのを見計らって声をかけた。
「おかえり、レイジ。早く復帰出来て何よりだわ」
「ああ、ただいま。思ってたより早く回復出来た。普通に動けるようになるのはもう少し先だけど」
「あんたの庭に押し込むっていう咄嗟の判断と、それに応えた警備部の働きが評価されてるわよ。みんな英雄扱いになってるわ」
「そうなのか?俺はアイラの活躍を聞いたぞ?連中の病室を遠くから少し覗いた時があったんだが、アイラ一体何をしたんだ?俺や警備部が負った怪我の比じゃないぞ。あれ」
「私はただ再起不能にしただけ。それ以外は何もしてないわ」
「そ、そうか?なんか精神が崩壊してる奴もいるって聞いてたから、相当恐怖に満ちた何かをしたのかと思ったんだが…」
そりゃ神力込めて殴ったし、神力込めた殺気を放ったから当然なんだけどね。
ちなみに今日の登校直後に聞いた情報によると、私にぶっ飛ばされた連中のほとんどが臓器に損傷が見られる程の状態だったらしい。
外傷のみだった警備部に対し、私と戦った連中は身体内部奥深くまでダメージが行っていたということ。ま、自業自得っしょ。
レイジはまだ普通には動けないので、学院内を廻ることは出来ない。なので学院会室で待機となる。
しかしずっと一人で何もないのはさすがに可哀想すぎるので、先生達や学院会が食べ物等を持ってくる事になった。
私は学院校門へ向かい、両親と合流した。
「学院なんていつぶりかしら?懐かしいわ~」
「そうだな。マリアと出会った頃を思い出す」
「ん?お父様とお母様って、学院で出会われたのですか?」
「そうよ。入学してすぐに知り合って、卒業時に告白してきたの。よく覚えているわ」
「そうだったな。あの頃のマリアは他の男子学生に人気だったからな。他の男に取られないか心配だった」
「逆に旦那様は恐れられていましたね。何もしていないのに。ふふ…」
「う、うむ…」
ふぇ~。そうだったんだ。お母様美人だもんな~。物腰柔らかいし、相当モテたんだろうな~。
お父様も想像出来る。がたい大きいし恐面だし、黙っていても話しても何か行動しても恐れられそう。
「そういえば旦那様が私に告白をしたと皆が聞いた時は、あちこちから驚愕の声が上がっていましたね。まさか旦那様が告白をして私が受け入れるとは思っていなかったらしいですから」
「当時は今より貴族と平民の差が激しかったからな。平民の者が貴族に嫁ぐなど、当時はほとんど例が無かったし、当然だったろうな」
「え?お母様って平民だったんですか!?」
「そうよ。言ってなかったかしら?」
「初耳です!」
「マリアは確かに平民だったが、容姿も気品も貴族に負けず劣らずだったぞ?初めてマリアを見た時はどこの貴族かと思ったものだ」
「それほどでもありませんよ。恥ずかしい…」
驚きだわ~。まさかお母様が平民出身とは…。どう見てもそうは見えない。
「しかしアイラ。今回の学院祭も学院会創設もお前の案だと聞いている。いくら王子殿下が近くにいるとはいえ、よくここまでのものを作り上げたな。お前と合流する前に学院長と話す時があったのだが、今までにない改革だと言っていた。職員一同感心ばかりだと。親としてお前を誇りに思うぞ。アイラ」
「本当ね。よくここまでの事を思いついたわ。アイラが活躍してくれて、お母様も嬉しいわ」
「お褒め頂き光栄です。でもそこまでの事はしていませんよ。私は案を出しただけです。後はみんな団結して出来た事ですから」
「そう謙遜せずともよい。団結するきっかけを、アイラは作ったのだからな」
「そうよ。誇って良い事よ」
褒められると身体がむず痒い。褒められるのは慣れてない。
そんなこんなで両親と廻るうちにあっという間に一日が過ぎて行き、学院祭は終了の時間を迎えた。両親は先に帰宅。私は学院会全員が集まる講堂へ向かった。
みんなと合流した後、ホウの表情が暗い事に気が付いた。何かあったのかしら?
「ホウ、どうかしたの?」
「両親が帰った後、ティナさんに私の持ち金全て持って行かれましたわ…」
「ホウが私の持ち金を奪い去ろうとするからではありませんか」
「あ、あははは…」
ホウがティナのお金を強奪しようとして、逆に強奪されたらしい。自業自得というか…、何ていうか…。私は苦笑いしか出てこなかった。
しばらくすると、王子殿下がみんなに感謝を述べた。
「みんな三日間本当にお疲れ様。とんでもない事件も発生したけど、何とか終える事が出来た。これもみんなの団結と頑張りがあったからこそ成功出来たのだと思う。本当にありがとう!」
王子殿下の言葉に拍手が起こる。既に空回り状態からは復活したらしい。ていうか、代わりに指揮してた私へのお礼は?
結局お礼は言われなかったけど、学院祭はこうして幕を閉じた。
色々あったけど、きっと来年も改良されて開催されるだろう。その時の学院会会長はシャルが良いな~。




