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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第一章 全ての始まり
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神様のお話

 神様が私に伝えなきゃいけない事って……なんだか嫌な予感がするのは私の気のせい?


「まず、あなたは前世の記憶を持っているでしょ?その事についてよ」

「私の記憶について?」

「本来ね、前世の記憶が復活することはありえない事なの。人間をはじめ、動物や魔物や植物。全ての命あるものの肉体が滅びる時、つまり死ぬ時ね。その魂はこの天国へと来て、生きていた頃の記憶を全て消去された状態で新たなる肉体へと転生していくの」

「つまり私は、記憶を消去される段階で何らかのトラブルが発生して、記憶が消去される事なく、記憶を眠らせたまま転生してしまった、という事ですか?」

「ご名答。消される事なく眠ったままだった記憶が起こされたから、あなたは前世の記憶を持っている状態になったってわけ。ちなみに、どういう風に思い出したか教えてくれる?」

「睡眠中に夢を見て、それで思い出しました。初めて夢で見てからは、何度も前世の頃の夢を見て少しづつ思い出しました。でも、たまに普段の生活の中で突然思い出す事もあります」


 ほんの何回かだけだけど、移動中や誰かと会話をしている時に思い出した事もある。でもこの場合で思い出す事はだいたいどうでも良い事が多い。炒飯の作り方とか、スマートフォンの操作方法とか、50メートルを何秒で走っていたとか。

 今は貴族令嬢だから料理しないし、この世界にスマートフォン無いし、基本的に走る事無いし。


「なるほどね。何回も分割的に思い出してるという事は、これから思い出す事もまだあるでしょう」

「はい。私もそう思っています」

「それで、何故記憶が消去されなかったかだけど、これはね、私のせいなのよ」

「神様のせい…ですか?」


 電子機器でいう『エラー』なら話は分かるけど、神様の様子を見るかぎり、どうやら違うみたい。


「消去や転生の作業はね、基本的に私の部下が行うの。でも稀に私が行う事もあるのよ。そしてあなたの魂が来た時に、偶然私がその作業を行っていたの」


 神様の表情がだんだん暗くなっていく。

 もしかして、神様が作業をミスって私の前世の記憶がそのままになったのかな?

 いや、神様ともあろう者がミスるわけないか。やっぱり私の魂が何らかのトラブルに巻き込まれたのかな?


「あの時、私はある悪魔に襲われてね。それであなたの記憶の消去に失敗したの」


 ええ~~!!!予想の遥か上だった!襲われたって!?しかも悪魔に!?


「それ、大丈夫だったんですか!?ていうか、ここ神様の領域ですよね?天国ですよね?なのにどうして悪魔がいるんですか?そもそも、どういう悪魔なんですか?」


 天国なのに、ましてや神の領域に悪魔がいる。普通に考えてみれば不自然すぎる。一体どういうこと?


「その悪魔は姿が見えないの。でもいるのよ。天国にも、あなたが今暮らしている世界にも。そして、あなたが前世で暮らしていた世界にも……『睡魔』という悪魔がね!」

「……」


 えぇ~…。悪魔ってそういう事?単に眠かっただけじゃん。なにウトウトしながら仕事してんのよ。そもそも神様も眠くなったりするの?ていうか、結局神様のミスじゃん。

 さっきの言葉修正。予想の遥か下でした。心配して損した。


「それで、神様がウトウトしていたせいで私は記憶を持ったままになったと」

「ごめんね。てへっ!」


 私が目を細めたのに対し、神とは思えない腹の立つ態度で謝ってくる神様。私の中でだんだん神様の威厳と神々しさが薄れていく。


「それで話の続きだけど、私はすぐにあなたの記憶を消していない事に気が付いて、慌てて消去を試みたのよ。だけど、その時に焦ってしまったせいで、あなたの魂に神の力を注いでしまったの」

「…神の力、ですか?」


 なんだか話の内容が大きくなってきた。私にはチートはないってずっと思ってきたけど、これって実はあります的な展開?


「そう。その結果、あなたは前世の記憶がある上に、神に近い、つまり私に近い存在となったのよ。肉体面含めてね」


(キターー!!きましたーー!!転生者のよくある話ー!)


 私はこの時点で話に追いつけなくなって、頭の中で軽いパニックを起こしていた。


「いきなり言われて理解に苦しむとは思うけど、事実よ。あなたは特殊。他の人間とは違うわ」

「と、言われましても、今日まで前世の記憶の事以外、何も変わった事はありませんでしたよ?」


 何か特殊な出来事が起こった覚えはない。あれば必ず覚えているはず。しかし神様はそれを否定してきた。


「いいえ、私はあなたの事をここからずっと見てきたから分かっているわ。過去に転んだり、どこかにぶつけたりした時に、痛みはあったはずなのに傷もアザも無かったのは不自然に思わなかったかしら?」

「あっ!!」


 思い出した!そうだった!どれだけ派手に転んでも、どこにどうぶつけても、一瞬だけ痛みはあったのに傷やアザが全くなかった。その後痛みも出なかったし、変だな~とは思っていたけど…。


「通常の人間の身体より、回復速度が圧倒的に早いのよ。ケガを負った直後からおよそ2秒から4秒程度で完治するわ。ケガの深さ、大きさ、状態関係なくね」


 およそ2秒から4秒!?だから傷が無くて、痛みも一瞬だったんだ。というよりも、傷口やアザを確認しようとした時には既に完治してたんだ。


「それと、この世界に生まれてから病気ひとつしてないでしょ?」

「え?まさか、それも?」

「そう。病気への身体の抵抗力が無敵だから、病気にかかる事もないわ」


 色々納得はしてるけど、頭の中もうぐちゃぐちゃ。普通じゃない事だけは完全に理解した。

 でもこれって肉体的な事だよね?


「あの、さっき神様は『肉体面含めて近い存在となった』みたいな事言ってましたよね?ケガも病気も肉体面ですよね?そうなると、存在ってどういう意味ですか?」


 この世界に生まれてからずっと人間として生きているし、周囲にもちゃんと認知されている。魔法も使えないし、神的な要素は何もないはず。


「それはノリで言っただけ。存在とか言った方がカッコイイじゃない?」

「……」


 笑顔で全く共感できない事を言ってくる神様。しかもやたらと腹の立つ態度で。…ちょっと一発だけグーパンチしても良いかな?


「あと、他にもあるわ。あなたは神の力、いわゆる神力が使えるわ」

「神力ですか?いまいちピンと来ないんですけど…」

「簡単に説明すると魔法に近いわね。ただ、魔法とは規模が違うけど」

「魔法と規模がどう違うんですか?」

「例えば、火の魔法で木を燃やすとした場合、神力なら同じ用量で大きな都市一つを火の海に出来るわ。水の魔法でその場に水たまりを作るとしたら、神力なら洪水を起こせるし、回復魔法で軽度の切傷を治すとしたら、神力を使えば腕や足を切断された人の身体を元に戻すことが出来るわ」


 もはや規模云々ではない気がする。火の海だの洪水だの物騒な事言ってるし。


「あと、使い方を工夫すれば、瓦礫から一瞬で巨大な建物とか造れるし、地震や竜巻、火山噴火や山火事といった災害も起こせるわよ」


 後半は完全に人為的な天変地異。私いつかそれ使うのかな…。さよなら、私の普通の生活。


「ただし、これらを発動するには条件があるの」

「条件ですか?」

「ええ。精霊か神獣と契約しないと発動出来ないの」


 またファンタジーにありがちなのが出てきた…。契約しないと発動しないのか。

 ちなみに、精霊や神獣の話はこの世界でも有名で、目撃証言もある。ハルク教の総本山がある教皇国の教皇様も精霊と交信した事のある人として有名。


「それから、精霊と契約した場合、目的地への瞬間移動も可能になるわ」


 私、精霊や神獣と契約したら多分最強ね。


「それと初期段階の神力として、今現在のあなたの身体はどんな強い魔法も無効化するわ。物理攻撃も必ず自然と避けるか防ぐかするようになってるし、戦闘とかで相手がどれだけ素早く動こうが、必ず相手よりも早い速度で動けるわよ」


 現時点で最強超えて化物だよ、私…。


「まぁ、これらを知っていても今まで通りの生活は出来るから、安心しなさいな」


 安心できるか。もう自分で自分が恐いよ。まったく。


「さて、そろそろあなたの意識を元に戻さないと。伝えるべき事は伝えたしね」

「急に呼んどいて、言うだけ言って帰すなんて、神様はずいぶん勝手ですね」

「あはは、ごめんね?それじゃあね。もし機会があったらまた会いましょう」


 そう言って神様は、私をギュっと抱きしめた。やっぱりどうしてだか、神様に抱かれるとなぜか心地良い。

 そして神様が微笑みながら私から離れた瞬間、私の視界は再び真っ白な光に覆われた。

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