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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第三章 学院生活 二年目
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新たな発案

視点がアイラに戻ります。

 学院会創設から時が経ち、そろそろ今年も武術大会を迎える頃になってきた。

 今年の武術大会は去年とは色々違う。

 今年は国王陛下や王妃殿下、セリアといった来賓はいない。でも大会の流れは同じ。じゃあ一体、何が違うのかと言うと…。


「私達が主導でやるとかキツすぎない?」

「俺はやる気満々だけどな!」

「頑張ろうよ、ステラちゃん。ね?」


 ステラが弱音を吐いて、レイジはやる気を見せ、ニコルがステラを励ましている。

 今私は学院会幹部やナナカ先生とともに学院会室にて会議に出席している。議題内容は『武術大会運営と新たな催し』というもの。


 今年の武術大会は学院会主導で行われる事が決まった。しかも大会後から近いうちに新たな催しを開催する事も決定している。

 この事は三日前、学院長から突然発表された。誰一人その事を知らなかった学院会の役員達は揃っててんやわんや。なので今日の会議も『緊急会議』となっている。先生達もダメね。報連相が出来てない。


 なお学院会役員、特に一学年に武術大会出場を希望している人がいるため、本来の人数よりも若干少ない状態での大会運営となる。幹部になっている役員に関しては指揮系統に乱れが出る可能性があるため、出場は見送られることが決まった。

 なので去年大会に参加した私、ティナ、ホウ、レイジも今年は出場せずに運営にまわる。


 さっきのステラ、レイジ、ニコルの会話は単なる無駄話。でも武術大会に関してはある程度決まったので誰も三人を責めない。


 会長であり総司令でもある王子殿下は、今年もリィンとともに実況席で解説を担当する。

 なので代役として副会長のホウが総司令に……と思いきや、ティナがその事に猛反対してきた。「何を仕出かすか分からない」というのがティナの反対理由。

 それを聞いたホウは憤慨していたけど、ティナに過去の失態や企み等をネチネチと責められ、それに反撃出来ず敗北したホウはノックアウトした。


 結局平等性を考えて多数決を取る事になったのだけど、なんと圧倒的票数で私が会長代理兼総司令になった。創設後からほとんど頼ってこなかったくせにこういう時だけ…。


 大会企画において重要視したのが警備面。去年の爆弾所持騒ぎの件を考えて、厳戒態勢を布く事になった。

 警備部が学院内の様々な個所で警備を行う。現場指揮は警備部部長のレイジがとる。

 それとは別に特殊調査部がフリーで学院内をくまなく動き回り、怪しい人物や挙動不審な人がいないか目を光らす。現場指揮は特殊調査部部長のノワールがとる。この時点で来賓がいた去年よりも遥かに厳重な警備体制。


 残りの学院会役員は学院生の誘導や警備部所属役員への伝令役、私や先生達への定期報告役に別れる。私は緊急事態に備え学院会室で待機する。

 私一人かと思ったけど、補佐でシャルがいてくれるので孤独にならずに済んだ。ていうか私とシャルで動かないって結局普段暇してる時と何も変わんないじゃん!


 ともかくこうして武術大会の流れや警備面等の内容は決まっていったけど、新たな催しの話が難航していた。

 この催し、最初は先生達が何か新しい催しをやろうという話から始まったらしい。テーマは『近隣の住民や学院生の保護者、卒業生等を呼び込み、学院生によってもてなす行事』だそう。

 しかし先生達の会議では何ひとつ決まらず、学院会に丸投げしてきた。

 決まらないのであれば止めれば良いものを、あろうことか先生達は近隣に催しを行う事を言ってしまったらしい。つまり既に後戻りは出来ない状態。ここまでくると馬鹿って言いたくなるよ。ホントに。


 しかしテーマを聞いた時に、私はすぐに閃いていた。前世の頃に学校でやっていたある行事が、テーマにピッタリ当てはまる。

 でも私はあえて言わないでいる。私が発案して採用されちゃったら、私主導になってしまう。

 学院会はみんなで意見を出し合って、会長がそれをまとめて指示を出すのが本来の形。私が前に出れば、私の独裁体制になってしまう。

 現在の幹部体勢だって私が決めたわけだし、いくら普段頼られないと言ってもそれはアドバイスの範囲であって、これ以上決定権を持ってしまうのはマズイ。

 なので、私はずっと黙っていたのだけど…。


「いやぁ、これはちょっとマズイかな…?」

「誰ももう発案できる状態ではなさそうですね…」

「わたくしもう限界ですわ~」


 話があまりに難航したために、王子殿下もティナもホウも音を上げた。他のみんなも完全にお手上げの様子。う~ん、結局私が案を出すしかないのかしら?


「あの、アイラ様。ちょっとよろしいでしょうか?」

「何?ノワール」

「ひょっとすると、アイラ様は既に案を持っているのではありませんか?」


 ドキッとした。ホント、ノワールは人を良く見てるっていうか、勘が良いというか。


「どうしてそう思ったの?」

「いえ、なんとなくです。単にそんな気がしたので」

「そう…」

「なによ、歯切れが悪いわね。あるの?ないの?」


 ノワールの察しにうまく反応出来ない私に不信感を抱いたステラが追及してくる。みんなも私を見てる。

 おそらく今私は、学院会発案以来の新たな発想があるのではないかという期待をされてる。そんな表情をみんなから感じる。しょうがない。言ってあげますか。


「案ならあるわよ。先生方から話を聞いた時点で浮かんでいたわ」


 私の発言に会議参加者全員がどよめく。


「ちょっと!だったらなんで言わないのよ!」

「「そうですよ!こんなに時間かけたのに!」」

「まあまあ、みんな落ち着いて。アイラちゃん、何か言えない理由があったの?」


 私が案を伏せていた事にステラが怒ってきて、イルマとエルマもそれに乗っかってきた。

 しかしこの双子姉妹は常にステレオ状態ね。ここまできれいに言葉が揃うとある意味気持ち良いわ。


 みんなが騒ぐのをナナカ先生が止め、私に理由を尋ねてきた。


「私は特別顧問です。意見は出来ても権力は持ちません。学院会は会長を軸に動きます。しかしながら学院会の発案者は私です。幹部を決めたのも私です。ですがこれ以上私が物事を決めてしまっては権力や決定権、軸そのものが私に傾きます。役員達が私に聞いてきてしまいます。

 助言程度はします。ですがそれ以上の事を私がすれば幹部の努力は丸潰れ。私の独裁状態になってしまいます。それを避けるために私は何も言いませんでした。

 新しい事やこれからの学院生活を決めるのは、私ではなく皆さんやこれから入学してくるであろう後輩達なんですから」


 伏せていた理由を話すと、みんな黙り込んでしまった。怒っていたステラやイルマエルマ姉妹も黙っている。


「納得してくれた?ステラ、イルマ、エルマ」

「う、うん…」

「「すいませんでした…」」

「そうだね…。アイラは学院生の心をひとつにするための基礎を作ってくれた。だったらそれを動かすのは僕達だね。今更になってそれが理解出来たよ。アイラだっていずれ卒業するもんね」

「そういうことです」


 みんな納得したのか、反論してくる人はいなかった。王子殿下も納得のコメントを出してる。


「アイラちゃん。今回ばかりは力を貸してあげて?これからはみんなもっと力を入れて物事と向き合うだろうし」

「分かりました」


 ナナカ先生もお願いしてきたので、私は頷いて了承する。





「私は新たなる行事として、『学院祭』の開催を進言致します」

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