シャルロッテの回想
視点がシャルロッテに移ります。
朝、学院の教室でぼんやりする私。
私はシャルロッテ・ミストルート。サブエル学院の一学年。
私は窓から見える景色を眺めながら、昨日の事を思い出していた。
「シャル~、おっはよ~」
「あ、うん。おはよ」
私に声をかけてきたのはクラスメイトのミリー。入学して一番最初に知り合った友人だ。
「なに~?元気ないじゃん。昨日何かあった?」
「う~ん、あったってわけじゃないけど…。昨日の事思い出しててさ」
「昨日の学院会どうだった?聞かせて!」
彼女は昨日、私が講堂へ向かう前に、明日話を聞かせてと言ってきていた。
私は昨日の事を頭の中で振り返りながら話をする。
「講堂へ着いた後、役員として迎えてくれたまでは良かったんだけどさ、その後私だけ各部署にまわされなくてね、一人取り残された状態になったんだよね」
「ええ~、ひど。じゃあ、どこの部署にも入れなかったって事?」
「うん。もう出ていこうかなって思ったんだけど、その時に声をかけられたの」
「誰に?」
「すごく長い髪の毛を三つ編みで一本にまとめて、胸の谷間を大胆に見せてて、スカートの丈が短い美人」
「いや、分かんない。見た目の想像がつかない。その人はなんなの?」
「どこの役職の人か分かんなかったんだけど、平民の先輩なんだろうな~とは思ってた。その人がいくつか質問してきたから答えてたら、少し話そうって言ってきてそのままずっとお話してた」
「何その謎な人。結局何者なの?」
「名前聞いて驚いたんだけど、その人貴族の令嬢だったの。先生から話を聞いてた学院会発案者のアイラ様だったの」
「うぇ!?ホントに!?それで、どうなったの!?」
ミリーは興奮した様子。
昨日講堂へ向かう前、私はミリーと一緒に担任の先生にアイラ先輩の事を聞いていた。ほんの興味本位だったんだけどね。
去年の武術大会優勝者で、爆弾所持犯を一人で解決させて、学年では次席の頭脳を持っていて、『才色兼備で武術最強の天才令嬢』と呼ばれてるなんて聞いた時は、どこの作り話かと思ったけど。
「最初は講堂で話して、その後庭に移動して二人でずっと雑談してた」
「ふぇ~。貴族の令嬢相手によく話せたわねぇ~」
「それがすごく話しやすい人だった。私の言葉使いや態度に何も言ってこないし、うっかり先輩って言っちゃった時もそう呼んでって言ってくれたし、先輩自身かなり砕けた態度だった」
「ふ~ん。そんな人もいるのねぇ」
実際話していて、貴族にもこんなに明るくて優しい差別なく接する人がいるんだと、私は感心していた。
でも気になる事がある。
「でもね、話してたら特殊調査部部長のノワール様がやってきて、アイラ先輩と少し話した後に言われたの。優しい人だけど本気で怒ればって」
「本気で怒れば…何なの?」
「そこから先は言わなかった。私もなんか怖くて聞けなかった」
「アイラ様って頭良くて戦えて、学院会発案出来るって事は王子殿下に近いってことでしょ?もし怒らせたら消される上に隠蔽されるんじゃない?裏じゃ何やってるか…」
「ちょっと、怖い事言わないでよ。そんな人じゃないよ。…多分」
「それはそうと、結局どこの部署に行くの?」
「それがね、アイラ先輩は特別顧問っていう役職に就いてるらしいんだけど、補佐をやらないかって言われた」
「あんた気に入られてんじゃん!で、どう答えたの?」
「まだ返答してない。でも受けるつもり。今日伝える予定」
「まぁ、そうよね。断ったら消されるもんね」
「だからそんなことしないって!」
「どうだかね~。あ、何か起きても私フォロー出来ないからね」
「分かってるよ。自分で頑張るもん」
直後、先生が来てホームルームが始まった。
でも私の頭の中は学院会の事になっていた。
ミリーの言う通り、貴族は裏で何をしているか分からない。過去に不正を働いて捕まった貴族なんて歴史上たくさんいる。
でもアイラ先輩は違う。私は昨日アイラ先輩と接してそう思った。今はアイラ先輩の事を信じる。
私はそう決意しながら、今日の授業に臨むのだった。