学院会創設メンバー決定
二度目の会議。前回会議に参加していなかったリィン、ニコル、ステラ、レイジも会議に加わった。私以外と関わりを持っていないノワールまで参加している。ちょっと意外。
さらに私のクラスメイトである双子の姉妹、イルマとエルマも参加を希望してきた。先生の話を聞いて興味を持ったらしい。
イルマとエルマは一卵性の双子姉妹の平民学院生。イルマが姉でエルマが妹らしいのだけど、見た目全く同じでどっちがどっちだか分からない。
みんなが席に着いたところで、私の進行で会議を始める。
「前回いなかった方がほとんどなので、まずは前回決定した事をおさらいするところから始めます」
前回決まった事はごく一部だけど、とりあえず説明しておく。
今回は『書記』を二人と、各部署の部長を決める事が議題となる。
「「書記ならお任せください!文字を素早く丁寧に書くのは得意なんです!」」
開始早々イルマとエルマの双子姉妹が書記に名乗り出た。これに関して反対意見は出ず、あっさり決定した。
「アイラ様」
「ん?ノワール、どした?」
書記決定直後、ノワールから声がかかった。
「私、特殊調査部の部長を希望したいのですが、良いでしょうか?」
ノワールの急な立候補に私以外のみんなは驚いてる。まさかノワールからそんな発言が出るとは思わなかったんだろう。
私は驚かなかった。私が各部署の説明を終えたあたりから、ノワールはずっと何かを考えている様子だった。きっと勇気を出して立候補したんだと思う。ノワールも少しずつ変わろうとしているのかもしれない。
「私は大歓迎よ。殿下、会長として異論はありますか?」
「…いや、無いね。みんなはどう?」
みんなから異論は出なかった。多分、出ないというより出せない。なにせ私以外ノワールがどういう人物かよく知らないのだから。
こうして会議開始早々二つの役職が決定したんだけど、その後が行き詰った。残りの部署の長が決まらない。
するとしびれを切らしたのか、ナナカ先生が私に一言。
「前回みたいにアイラちゃんが決めちゃって良いと思うよ?」
結局また私が決めるパターン…。
「では後は私が勝手に決めさせていただきます。経理部部長はステラ、お願いね」
「うぇ!?私!?経理のまとめ役!?」
「そうよ。文句ある?立候補もしてないし、割と計算早い方なんだから良いでしょ?」
「う、う~ん。でも…」
「……」
「…文句ない。やるわよ…」
「はいじゃあ、お願いね」
私がステラを経理部部長に任命した瞬間、驚きの反応とともに耳と尻尾をピーンとさせた。抵抗してきたので無言で圧力をかけると、彼女は渋々受け入れた。同時に耳がパタンと前に倒れ、尻尾が力なく下がった。もうホントその動きカワイイんですけど!
「アイラって既に学院会の裏支配者だよな~」
「なんですって?」
「…なんでもないです。ごめんなさい」
リィンが的を得ながらも失礼な事を言ってきたので、圧のある笑顔を向けるとすぐに謝罪してきた。
気を取り直して会議を進める。
「資料管理部部長はニコル、お願いね」
「は、はい!頑張ります!」
ニコルも仕切る立場になって発言力を付けてもらわないと。いつまでも引っ込み思案のドジ属性じゃ、シャロルに怒られっぱなしになってしまう。そのへんも考えて、ニコルを任命した。
「警備部部長はレイジね」
「あれ?リィンじゃないのか?」
「そうだぞ~。俺の存在忘れるなよ~」
レイジもリィンも警備部部長はリィンだと思っていたらしいけど、レイジを任命したのにはちゃんと理由がある。
「リィンは殿下の護衛でしょ。緊急時こそ殿下の傍にいなきゃいけない存在がどうやって警備部仕切るのよ。それにレイジは騎士目指してるんでしょ?ここで警備部部長として結果残して、もしもそれが国の軍の人の目に留まったら…」
「と、留まったら?」
「騎士に近づくどころか、出世街道登れるかもよ~?」
「やる!警備部部長やります!やらせてください!」
私の言葉にレイジはあっさり引っかかった。フッ、チョロイ。
「ちぇ~。俺は結局王子の護衛か~」
「僕の護衛は嫌かい?」
「嫌じゃねえけどさ、どこ行ってもやる事が同じだから刺激がなくてよぉ~」
「リィン。殿下を守るのがあんたの役目でしょ。殿下の気を使わせるような事言うんじゃないの」
「へ~い」
「良いんだよ、アイラ。昔からこうだから」
王子殿下を目の前にして愚痴るリィンを私は叱ったけど、王子殿下は笑顔で流していた。やっぱり長い付き合いだからなのかしら?リィンが愚痴っても殿下が平気なのは。
こうしてなんだかんだで、学院会創設メンバーが決定した。
会長 リベルト王子殿下
副会長 ホウ
会長補佐兼代行 ティナ
書記 イルマとエルマ
経理部部長 ステラ
警備部部長 レイジ
資料管理部部長 ニコル
特殊調査部部長 ノワール
特別顧問 私
見届け人 ナナカ先生
ようやく地盤が固まった。あとは役員を募るだけね。