神様登場
しばらくして光が治まってきて視界が戻り、辺りを見わたすと私は知らないところにいた。
聖堂にいたはずなのに私は外にいて、近くの宮殿はおろか街すらなく、辺り一面お花畑が広がっている。本来青いはずの空は、薄いピンク色をしていた。周りにはシャロルも聖堂の関係者も誰一人おらず、目の前にあったはずの水晶すら無い。明らかに別世界であることは確かだった。
「一体、何が起こったの?ていうか、ここどこ?なんだか天国みたい……」
前世でよく、死ぬとお花畑が~なんて聞いたことがあったが、ここはまさしくあの世のよう。
「こんにちは。アイラ」
「!!」
どうしたら良いか分からず戸惑っていると、急に後ろから声をかけられた。
突然の声に驚いた私は咄嗟に振り返り、声の主から距離を置く。
「驚かせちゃったかしら?ごめんなさいね。でもそこまで警戒しなくても大丈夫よ」
私は一瞬見惚れてしまう。白く艶のあるウェーブのかかった髪をお腹辺りまで伸ばし、纏う服は真っ白な薄い生地のドレス。整った顔立ちのまるで女神とも思えるような神秘的な雰囲気の女性が微笑みながら私を見ていた。
(なんて綺麗な人なの……。でも今の今まで一切気配はなかったはず。この人一体……)
見惚れながらも警戒していると、突然その場から彼女が消えた…と思った瞬間、私の目の前に現れた。
「なっ!!!」
「はいはい、警戒しない。よしよし」
まるで瞬間移動のような動きをしてきた彼女に私は驚愕し、声を上げそうになったと同時に彼女が私を抱きしめ、私の頭を撫でてきた。私は抵抗しようとしたけど、抱きしめられているうちに何故か私の身体から力が抜けていき、立っていることすら出来なくなってその場に座りこみ、彼女に身を任す状態になってしまった。
彼女の温もりは不思議と居心地が良く、気が付くと私は混乱状態からすっかり落ち着いていた。
「あなたは一体…。それに、ここはどこ?」
落ち着いた私は疑問をぶつけてみる。彼女は微笑みながら答えだした。
「まずは名乗らなきゃね。初めまして、私は神。あなたが今生活している世界の創造神であり管理者というところかしら」
「…はい?か、神?創造神?管理者?」
「うん、そう。ざっくり言うと、神様」
突然自分は神だと名乗りだした女性に私はポカンとしてしまう。普通自分で様付けしないよ?
「まぁ、急に神と名乗られて戸惑うのは解るけど、神だから。好きなように呼んでちょうだいな」
と言ってウィンクする自称神様。神だからと言われても、どう反応しろってのさ。
「それと、ここは天神界。簡単に言うと天国のさらに上。私や私に近い存在しか入ることしか出来ない領域」
「天神界…」
やっぱりここあの世なんだ…。神様自身と神様に近い存在しか入れない…。つまり、神の領域ってやつね。
「それで、あなたは聖堂で水晶の前に立っていた。それは分かっているわよね?」
「はい。水晶に魔力を送った後、急に水晶が光りだして、気付いたらここに…」
「水晶の光は私が起こしたの。光であなたの意識をここへ持ってきたのよ」
「そうなんですか?ていうか、私の意識はここにあって、私の身体はどうなったんですか?まさか、私死んだんじゃないですよね?」
光は神様が起こしたらしい。でも意識がここにあるということは、私の身体からは離れているということになる。幽体離脱みたいなやつ?それとも、まさかの死?
「いいえ。意識がここにあるだけで、あなたの肉体は滅んではいないわ」
つまり死んではないのか。ちょっと安心。
「わざわざここへ私の意識を飛ばしたってことは、私に何かあるんですか?」
神様ともあろう者がわざわざ私の意識を天国へ、しかも神の領域まで飛ばしたということは、相当重要な理由があるはず。もしくは何らかのお仕置き。
(思い当たる事ないけどなぁ。あ、お茶会とかサボったのが良くなかったかなぁ。もしかして、前世の記憶に関してとか?)
私が考えているうちに、神様が質問に答える。
「私ね、あなたにどうしても伝えなきゃいけない事があるの。ずっとここからあなたを見ていて、そのチャンスを窺っていたのよ」
私に伝えなきゃいけない事?




