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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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百合興奮少女との再会

 一夜明けて翌日。午前中からメイド候補達の実務試験が開始された。

 私は実務試験に関してはノンタッチ。けどシャロルが朝から試験監督として動かなければいけなかったため、今日の私の身の回りのお世話はジーナが務めてる。


 私は昨日の面接時用地味服装からいつもの露出ドレスへと戻して行動。

 今日はアテーナとアルテの護衛二人とジーナを連れてメイド候補達の様子見へ。アンは何も言わずに当たり前かのように陰から私を見てる。シャーリィやナタリアと遭遇したら戦闘になったりしないかしら…?

 当初はこのメンツで行く予定だったんだけど、ノワールが昨日興味を示したクルヴィの存在がどうしても気になるらしく、一緒に様子見に行くことになった。





 試験会場やメイド候補達がいる区画に近づくと、アテーナとアルテが足を止めた。


「先程アルテとも話したのですが、受験者の負担を少しでも軽減するため我々はここで待機します」

「何かあれば念話でお呼びください。トイレ行ってたらごめんなさい」


 アテーナとアルテはメイド候補達の配慮のためにあえて私やノワールとは同行しないらしい。

 おそらく危険性がないという点と、貴族がメイドならともかく護衛まで連れて堂々と歩いていればメイド候補達に負担が掛かるという点を踏まえて判断したんだと思う。うん、そういう事は事前に言ってほしかった。

 若干不満はあったけど二人の判断を拒否する理由はなかったから私はこれを了承。トイレの可能性を言ってたアルテはアテーナに平手で頭叩かれてた。

 同時にノワールも「クルヴィを探す」と言って単独行動に移ってしまった。理由聞きそびれちゃってるから分かんないけど、やたらクルヴィに執着してるわね…。






 実務試験は受験者の動作等を始め様々な内容をいろんな角度から見て採点しないといけないらしい。だから受験者一人に対して複数人の試験監督が付く。けど城の使用人や執事が総出で試験監督になるわけではない。

 だから決められた人数で採点をする実務試験は一人当たりの試験時間が長いだけでなく、一人ひとり受けさせるため、全員が終えるまで数日かかる。

 既に試験を終えた者、もしくはこれから順番が回ってくる者は区画内で待機していなければならない。

 もちろん待っている間も関係者の目があるから、メイド候補達はみんな気の抜けない時間を送っている。


 ……と、思ってたんだけど…。


「ハァ…、ハァ…」


 私が受験者達のいる区画に入って間もなく、仲良く談笑している城のメイド達を廊下の影から眺めつつ興奮している人物が一人。

 その動き、興奮の仕方、間違いなくミルカ・ヴィーナス。元高校の同級生の井端美香利である。


「やっと百合に近い光景を眺められた…。本腰入れた百合じゃないみたいだけど、これでどうにか百合要素を補給できた…。ぬふふふ…」


 前世の頃と変わらず女子同士のイチャイチャと百合を求めてるのかこの子は。あと「本腰入れた百合」ってなによ。笑い方キモイし。

 ふとジーナの方を見ると、ジーナは美香利を見て明らかにドン引きしている。「うわぁ…」みたいな感情が何も言ってなくても伝わってくる。


「ハァ…、ハァ…。ヌフフ…」


 気持ち悪い息使いと笑いを続ける美香利。

 私もジーナ程ではないけど若干引きつつ、美香利の真後ろで彼女が私の存在に気付くのを待つ。


 しばらくするとメイド達は会話しながら遠ざかって行った。


「いやぁ、眼福眼福。試験も全部やり切ったし、見たいものも見れたし、あとは結果出るまでゆっくり…、ほぎゅぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


 美香利は振り返った瞬間に私が立ってたもんだから、飛び上がるように驚いてた。ナイスリアクション。でも叫び方が変。


「……」

「……」

「……」


 美香利は驚いた時の姿勢のまま固まり、私は無表情で美香利を見つめる。私の後ろでジーナも黙ったままで、場に沈黙が流れる。


「……」

「……」

「……」


 状況が変わらないから、私は微笑みを見せてみた。すると美香利も軽くヘラっとした。


「…あ、あの、失礼致しました~…。私はこれで…」


 そう言ってその場から立ち去ろうとした美香利の肩を私はすかさず掴んだ。


「ヒッ…!」


 立ち去ろうと背を向けた直後に肩を掴まれたせいか美香利は身体をビクッとさせて、壊れかけの機械かのように首をギギギギ…という感じに動かして私の方を見た。汗ダラダラなのが分かる。


「ア、アノ…。マダ、ナニカ…?」


 言葉の発し方まで壊れかけの機械っぽくなってる美香利。ここまで来るとドン引き越して面白い。

 彼女に対して私は笑みを向ける。


「あなたは今回の試験の受験者よね?手が空いているのならちょっとお時間よろしいかしら?」

「え…?あの…」

「良いわよね?」

「えと…」

「良 い わ よ ね ?」

「ヒィ!!は、はいぃ…!」


 美香利から無理矢理了承を取った私は、そのまま彼女を連れて区画内にある空き部屋に入った。

 この空き部屋は関係者がフリーで使って良いらしく、さっき通りすがりに覗いたら誰もいなかったから利用させてもらうことにした。


「どうぞ、お座りになって」

「は、はい…」


 私に誘導されるがままぎこちなく私と対面側のソファに腰かける美香利。

 彼女は汗を流しながら若干震えている様子が窺える。見られたくなかった趣味をばっちり見られてしまったからなのか、それともこれが原因で試験失格の烙印を押されるとでも思っているのか。

 ちなみにジーナは私の傍で立ってる。


「あなたは受験者の一人、ミルカ・ヴィーナスよね?」

「は、はい…」

「私はアイラ・ハミルトン。一応貴族よ。よろしく」

「は、はい…。よろしくお願いします…」


 名乗った際に「一応」って付けた理由は、万が一貴族として見られてなかったらどうしよう的な私の勝手な不安によるもの。

 対する美香利は語尾が尻つぼみになっている。


「試験は全項目終えたのよね?お疲れ様」

「は、はい…」

「手ごたえはどう?」

「手ごたえは…。あったような…、なかったような…」

「そう。過去にメイドの経験はあるのよね?」

「はい…」


 美香利ことミルカの履歴書は面接試験時に確認したから一応記憶してる。

 面接時に彼女も言ってたんだけど、彼女の実家はリナリアさんが治めるメディシン領にある。履歴書上で確認した情報だと、リナリアさんの実家であるエルメリア侯爵家屋敷でメイドとして働いてたみたい。


「…で。先程の行為は何なのかしら?」

「い、いえ!それは…!その…」


 質問した流れで百合みたいな光景に興奮するあの行為を訊ねてみたら、美香利は身体をビクッ!とさせてあたふたし始めた。ホント前世の頃そのまんま。むしろなんか逆に安心するわ。


「女性同士が仲良くしている様子を眺めるのが好きなの?」

「あー…、いや~…、えと…」


 もう一発質問してみると、美香利の目の方向が右へ左へ。マジで焦ってる様子。焦っている証拠にこの子は小声で「はわわわ…」って言ってる。

 前世の頃の彼女の特徴として、人のイチャイチャとかはこっそり笑顔で見るくせに、その眺めている状態を誰かに見られたり、その事を訊ねられるのを嫌がる点がある。

 今もそれは変わってないようで、けれども逃げられる状況じゃないからどうしたら良いか分かんなくて焦ってるんだと思う。


 しかしこのまま彼女の反応を見てても(らち)が明かない。だから私はちょっと閃いた事を行動に移すことにした。

 まず無言で立ち上がった私は、美香利が座っている側のソファへ移動。彼女の隣に座る。

 私の唐突な行動に美香利は小さな声で「え…?え…?」って言ってる。そんな彼女に私は笑みを見せる。


「人が仲良くしているのを眺めるくらいなら、自分で体感した方が良くなくて?」


 私は発言と同時に片腕を彼女の肩に回し、片方の手で彼女の頬を撫でる。そのまま美香利へ重心を傾けて身体を密着させ、顔の距離を超至近距離にする。


「ええぇぇぇぇ!?あ、あのお…!」


 突然私が密着してきた事に一気に顔を真っ赤にする美香利。これこそ彼女が前世の頃に最も苦手とした状況。

 美香利は百合を眺めている状況を見られるよりも、その事について質問されるよりも、自身がその当事者になる事を一番苦手としていた。今もやっぱりそれは変わってないみたい。現に私の行動に混乱し過ぎてショート寸前になってる。

 そういえばこの子、前世の頃に同級生の男子から告白されて、その事にパニックになって謝って逃げたんだっけ。男子は「フラれた」って落ち込んでたっけなぁ…。

 ちなみに私は普段からセリアのグウタラ甘えちゃん状態に対応しているため、前世の頃よりこういう密着状態に慣れちゃってる。だからなのか、全然恥ずかしさがないんだよね…。


「…!…ッ…!」


 美香利は何かを訴えたいみたいなんだけど、パニックになり過ぎていて声が出せていない。漫画で表現するところの目がぐるぐる状態。そろそろ解放してあげますか。このままだと気絶するだろうから。


「フ…、フフフフ。前世の頃と何も変わってないのね。美香利」

「……え?」


 私がクスクスと笑いながら前世の頃の名を出すと、美香利はパニック状態から一転、ポカンとしたまま止まった。

 彼女への密着をやめた私は、ちょっと乱れてしまっている彼女の髪を手櫛で整えてあげる。


「不思議な夢を見た事はないかしら?広大な花畑に立つ、美しい女性の夢」

「…!み、見ました。それでその人が、昔の友人に会いたいならグレイシアにいるアイラという貴族を頼りなさいって。……はっ!」


 なんか突然美香利がハッとした表情になった。


「もしかして…!あなたがそのアイラ様…!」


 いや気付いてなかったんかーい。夢でそこまで具体的に教えてもらってるのなら私が名乗った時点で気付きなさいよ。鈍すぎるでしょ…。


「そうよ。あなたが探していたであろうアイラは私の事」

「あなたは一体…。あの夢は何なんですか?どうして私の前世の名を…」


 さっきまでの慌てっぷりはどこへやら。真面目な顔で質問してくる美香利。私は彼女の唇に人差し指を当てて言葉を遮った。


「クイズよ。あなたが前世の頃百合な光景を眺めて鼻血吹いたり、興奮耐久値限界突破して気絶した度にあなたを介抱してあげてたのは誰だったかしら?」


 私は前世の頃、美香利が百合を眺めて興奮しては大量の鼻血を出したり、気を失ってぶっ倒れたりする度に介抱してあげていた。介抱してあげた回数は多分私が同級生達の中でダントツ多かったと思う。

 なんだかんだ仲良かったから放っておけなかったし、当時の周りの友達も美香利が倒れた際に私が傍にいないとわざわざ呼びに来てたくらいだし。しかも先生よりも私を先に呼びに来るっていう…。


「えっと、春華ちゃん。後藤春華ちゃんだったと思います。でもそれが何とどう関係してるんですか?」

「……」


 私はあえて美香利の質問に答えず、笑みを見せながらそっと彼女の頭を撫でる。


【春華ちゃんに頭撫でられると、不思議と安心するっていうか落ち着くんだよねぇ】


 前世の頃、美香利は私によくそう言ってくれていた。それが本当なら、そして私の事を本当に覚えているのなら、この感覚で分かってくれるはず。


 ちょっとの間頭を撫で続けていると、美香利が私を見たまま目を見開いた。


「春華ちゃん…?」


 ようやく気付いたみたい。鋭いのやら鈍いのやら。


「正解。久しぶり、美香利」

「…!!」


 直後、美香利は私に抱き着いてきた。


「春華ちゃん!ホントに春華ちゃんなんだ!頭の撫でられ方で分かったよ!また会えるなんて!嬉しい!嬉しいよぅ!」


 美香利は身体全体を使って最大限の喜びを表現するかのように私にくっ付く。私も優しくハグして撫でてあげる。


 これでアンゴラさんに続いてまた転生者に会うことができた。できればこの調子でどんどん再会を果たしたいものだけど。


 …にしてもこの状況。セリアが見たらメッチャ嫉妬しそう…。アナの時みたいにイジけるだろうなぁ…。

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