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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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試験内容と、会議後のトウロさん

 城の使用人になるための試験の希望者が続々とノーバイン城にやって来る中、試験期間開始前最後の関係者会議が開かれた。

 関係者には私以外に一緒に会議室へ入ったシャロルとノワール、他にはドイル将軍や城のメイド長、ベテランそうなメイドさん達。それからユートピア領の廃村調査で一緒だった役人のトウロさんもいた。……トウロさんいたんだ…。全然気付かなかった…。


 試験の採点および合否は試験期間開始から終了までの間での総合で判断される。

 採点内容はいくつかあって、


 ・世間的な知識や常識をどの程度認識しているかを確認するための筆記試験。ノワールはここで開始や終了の合図役をやるらしい。…それ貴族にやらせる必要ある?

 ・使用人という職業をどの程度理解しているのかを確認するための筆記試験。

 ・言葉遣いや態度、その他諸々を確認するための面接試験。私はここに試験官として出る予定。

 ・使用人としての技量を確認するための実技試験。シャロルはここで試験官になる予定。


 という感じに試験は行われるんだけど、試験外の時間でも試験期間中は城内での動きまでも採点内容に入るらしい。


 城での受験者の行動はかなり制限されるみたいで、受験者の宿泊部屋、トイレ、食堂、お風呂等の生活に必須となる場所以外へは一切立ち入り禁止。

 もちろん外出も禁止で、どうしても必要な物がある場合は試験官や城の関係者に申し出て買いに行ってもらう、または一緒に買いに行く事になっている。人によっては息が詰まりそう。

 受験者同士でトラブルが発生した場合も厳しくて、喧嘩または対立が確認された場合、その件に関わった者は問答無用でその時点で失格。強制的に城から追い出される。事情くらい聞くべきだと思うんだけどなぁ…。

 起床時間、就寝時間、入浴時間、食事時間、食事の献立(こんだて)も決められていて、受験者で変更することは原則不可能。これも破った場合は失格。

 ただしこれは前世の頃にもあった例だけど、入浴や食事等に関して何か事情がある場合は城で受付をした時点で申し出る事となっている。「肌質が弱くて専用の石鹸じゃないといけない」とか「特定の物を食べると蕁麻疹(じんましん)起こす」とか。


 さっきも言ったけど試験時間外の行動も採点に入るから、受験者は試験官や城の関係者が常にウロウロしている事を意識し続けながら常にメイドとしての動作をしなければいけない。こんな全く気の抜けない状況、私だったら疲労でぶっ倒れるわ。

 ちなみに試験期間中に体調不良者や途中棄権希望者が出た場合、その受験者は失格扱いとなる。

 ……なんか、メイド不足なのが納得できた気がする。シャロルもこういう厳しい内容クリアしてきたのかしら…?だとしたら尊敬するわ。

 気になったから会議中こっそり念話で聞いてみたら、


(私は幼少の頃に師匠が鍛えてくださったおかげで試験内容はほぼ問題ありませんでした。当時は子供ながらに何故周りの人達が規定に苦しんでいるのか理解できませんでしたよ。今となってはさすがに理解できますが)


 って帰ってきた。ギルディスさんに鍛え上げられた忍耐力やその他諸々がメイドの試験に対して有効に発揮されてたんだ…。やっぱシャロルってすごいわ。……当時のギルディスさんは幼女相手にどういう修行させたわけ?幼くして忍耐力身に付いてるって…。


 話を戻すと、合格者は合格通知後に使用人専用の部屋が各合格者に用意され、研修期間を経て晴れてメイドとして正式採用となる。なお研修期間は人によって異なるんだそう。元々のメイドに対する知識や理解が人によって差があったりするから、研修期間にバラつきが出てしまうのは仕方のない事なんだそうな。

 不合格者に関しては不合格通知時点で城から出てってもらう。その後は何もない。


 …とまぁ、これが試験のざっとしたルールと流れ。私は面接試験官やるだけだけど。






 会議終了後、トウロさんと話すことができた。というかトウロさんから声をかけてきた。


「お久しぶりでございます。アイラ侯爵閣下」

「お久しぶりです。調査団派遣時は大変お世話になりました」

「いえ、とんでもない!お世話になったのは私共の方です!事前に聴取を進めやすくしていただいていただけでなく、魔物の脅威からも守ってくださったのですから!」


 魔物の襲撃を回避させた事は確かだけど、村の住人への聴取をやりやすくした覚えはない。多分キオサさんやギルディスさんが住人達を説得しておいてくれた事を私がやったと勘違いしてるんでしょうね。

 訂正しようと思ったんだけど、その時何故かキリカが無言のまま首を横に振った。「このまま自分の功績にしておけ」と伝えられている気がした。…念話で言えばいいのに。


「ところでノワール伯爵閣下の領地、イストワール領では領地開拓のための人員や行政に携わる者の募集をしていると聞いておりますが、アイラ閣下のユートピア領の方は…?」

「まだ特に募集はかけていませんよ」

「ですよね?しかし最近になって領地内のお屋敷が完成したと聞きました。人員もおらずどのように…?」

「精霊達や神獣達に協力してもらい、教えてもらった知恵や魔法を駆使して造りました。これ以上は秘密です」


 ハルク様から貰ったなんて絶対言えないし。そもそも説明のしようがないし。


「そうですか。精霊様や神獣様が関わってらっしゃるのであれば、これ以上はお尋ねすべきではありませんね。おかしなことを聞いてしまって申し訳ありません」

「いえ!こちらこそ不十分な返答しかできずすいません!」


 トウロさんは何かを察してくれたようで突っ込んで聞いてはこなかった。ていうか私が精霊や神獣と契約してることは信じてくれてるんだ…。


「ユートピア領での役人等の募集はいつ頃からになりそうですか?」

「それはまだ何とも…。もう少し先にはなると思いますが…。でもどうしてです?」


 トウロさんは私の領地、ユートピア領の事を中心に聞いてきてる。いくら調査のために入った事があるとはいえ、入った範囲は領地範囲のほんの一部。しかも古びた村と森林しか見てないはず。なのに何をそんなに気にするのかしら?


「実は…、今勤めている仕事を近々辞めようかと思っていまして…」

「え!?」

「それで、転職先として今度はユートピア領の役人として雇っていただけないかと…」

「ええ!?」


 苦笑いを浮かべながら衝撃的な発言をしてきたトウロさん。これってつまり私の下で働きたいって事!?トウロさん有能そうだし、来てくれるのなら大歓迎なんだけど!こうしてとっくに接してるわけだし、重役登用しても良い!


 ちなみに役人、国軍兵士や警備兵、貴族軍兵士、執事や使用人という偉い人に仕える仕事でもそれぞれで仕組みが色々異なっている。

 政府直轄の国軍兵士と警備省直轄の警備兵士の場合、国中に詰所等の兵士が関わる仕事場あって他職業よりも出張や転勤が多め。自ら所属地域を変更したい場合は異動届を提出して受理されれば異動が可能となる。

 爵位を持つ貴族直轄で各貴族領地で務める貴族軍兵士の場合、その貴族が持つ領地の範囲内であれば国軍兵士と同様に異動届を利用して異動が可能。出張や転勤は国軍兵士ほど多くはない。

 そして役人、メイド、執事等として働く人達は、管轄が政府だろうと貴族だろうと出張はあっても転勤がなく、自ら職場を異動することもできない。ただし貴族領のみ領主判断で異動を命じられた人はいるけど前例は少ない。

 基本職場異動不可能な役人や使用人がどうしても異動をしたい場合方法は一つだけで、転職という手段しかない。つっても退職して再就職しようとした先が雇ってくれるかは分かんないし、今までキャリアを積み上げてきた人が転職先でゼロスタートってこともある。

 つまり今回のトウロさんのように新領地とはいえ「行きたい」と言ってくれる人はそうそういない。だからメッチャビックリ。


「逆にお聞きしますけど良いんですか!?まだ何もない土地ですよ…?」

「だからこそなのです。以前の調査を経て、これからあの地をアイラ閣下がどのように変えていかれるのか。それを間近で感じたいと思いまして。

 ここ最近の私の仕事はほとんど同じような内容の繰り返しばかりでして、正直やりがいを感じられなくなってきておりました。そんな中参加させていただいた村の調査をしていく中で、若い頃に持っていた何かに挑戦するワクワク感が戻ってきたような気がしていたんです。それでもう一度、役人として若い頃のようなワクワクを持ちながら、アイラ閣下が造るユートピア領の行く先を見てみたいなと…」


 いや~、マジか。私の領地にいる間にそんな事感じてたんだ。私の領地開拓と経営が見たいと思ってくれるのは嬉しいけど、なんか変にプレッシャーが…。あぁ、お腹痛い…。


「そのように思ってくださっていただなんてとても嬉しいです。領民や領運営に関わる方々の募集開始はまだ未定ですが、王都屋敷もあることですしそろそろ一部は募集しようかと考えていたところだったんです。トウロさんとは以前から交流がありますし、この会話がほとんど面談のようにもなっちゃってますから、何なら今すぐにでも登用しますよ?」

「今すぐ!?本当ですか!?」


 驚きのリアクションのトウロさん。人員募集は頭の隅では考えていたけど、正直今のは思い付き。自ら志願してきてくれた嬉しさでつい思い付いたこと言っちゃった。

 でも住める状態の城と王都屋敷を放置しちゃってるような現状況だから、それを考えるともう募集し始めても良くはあるのよね。


「はい、今すぐ可能です。ただし現状的に勤務地はしばらく王都の屋敷やノーバイン城になります。私自身まだ活動軸を王都に置いていますし、ユートピア領内もまだ完全に安全が確保されているわけではありませんから。

 なので書類上で雇用されただけであり、現状やる事はもしかすると大きく変わらないかもしれません。突然の異動や仕事が急に激務になってしまう可能性も…」

「それでも構いません!いずれユートピア領で働かせていただけるのであれば、その程度の我慢は当然です!」

「そ、そうですか…」


 トウロさん完全に食い付いてる…。そんなに私の領地に関心あるのかしら…?というかトウロさんの発言的に王都には置いたままにできないわけか…。


「ところでトウロさん、ご家族は?」

「妻と娘がいます」

「では本気で転職をお考えなのであれば、まずは奥さんと娘さんとで話し合いをしていただいて、結論が出ましたらまた…」

「家族には以前から転職したい思いは話しておりました。しかしこうも形になるのであればこうしてはいられません!アイラ閣下、私はこれにて失礼させていただきます。早く業務を終えて家族に話さなければ!」

「あ、あのトウロさん!まずは城の使用人試験の方に集中していただいて…、行っちゃった…」


 トウロさんは走って会議室を後にした。私に雇ってもらえる事がそんなに嬉しいのかしら?


「お嬢様、調査団の方々とともに廃村で活動した時の事は覚えておいでですか?」


 トウロさんが走り去って行った直後、やり取りをずっと傍で見ていたシャロルが落ち着いた口調で話しかけてきた。


「うんまぁ、覚えてはいるけど…」


 キオサさんがヘイジョウキョウ市の市長の座を受け入れてくれたり、魔物討伐したり、フィクスさんと模擬戦したり、子供達と遊んだりね。約一名だけ思い出したくないのがいたけど。


「城で働くメイドの方々を通じて聞いた事なのですが、あの調査団の一員として派遣されていた役人や兵士の一部の方々が、ユートピア領で働いてみたいと口にしているそうです。その影響かイストワール領と同様にユートピア領に興味を持ち出す方が少しずつ増えてきているようですよ」

「そうだったんだ…」


 てことはトウロさんだけじゃなくて、もしかするとゴンゾさんや当時の調査団にいた他の人達も…。

 廃村の住人達と仲良くなれてたし、それも理由に繋がってるかも。





 その日の夜。別館にはオルシズさんが来ていた。帰宅前にセリアが政務室に忘れて行った物をわざわざ届けに来てくれたらしい。


「はぁ~。こうして忘れ物をしちゃう事を考えると、ホントに自分専属のメイド付けなきゃなぁ…」

「メイド付ける以前に忘れ物をしないよう意識しなさいよ。その調子でメイド付けたら余計忘れ物増えるわよ?…あ、そういう時にみっちり説教してくれる人をセリアのメイドとして付ければ良いのか」

「私忘れ物しただけで説教受けないといけないの?そんなメイド嫌なんですけど…」


 私の案を即座に却下してくるセリア。


「ところアイラさん、今日トウロさんと何か話しましたか?」

「トウロさんとですか?確かに今日会話しましたけど…」

「実は自分がまだ宰相に就任する前、トウロさんには色々とお世話になっておりまして。今もたまに会話をするのですが、今日会ったらもしかすると近いうちに辞表を出すかもしれないと言っていましてね。アイラさんの所に転職するつもりだと言っていましたので、少々気になりまして」

「そうだったんですね…。えっとですね…」


 私は今日のトウロさんとの会話の内容をオルシズさんに話した。


「…という事でして」

「なるほど。まぁ、以前の調査団派遣以降彼はユートピア領に興味がある様子でしたから、近々こうなるとは思っていました」

「えっと…、何かマズかったですか…?」

「いえ、個人的に気になっただけですので、お気になさらず」


 オルシズさんとトウロさんって元々知り合いだったんだ。お世話になったって事は昔のオルシズさんにトウロさんが色々教えてたりとかしたのかな?そう考えるともしかしてトウロさんって役人の中でもエリート?

 にしてもトウロさんがユートピア領に興味を持ってくれてる事は話してて分かったけど、改めてガチで転職する気みたいね。これで家族がオッケー出したら、ソッコーで私に「辞めてきました!雇わせてください!」って言って来そう…。

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