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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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メイド試験の打ち合わせ前

 翌日。ヘレナの体調は昨日よりは良くなっている様子。しかし念には念をということで、ヘレナは今日も一日別館内で過ごしてもらうことになった。別館メンバーとかと交流してくれた方がヘレナの悩みも紛れるだろうし。

 朝の段階で早速オルトロスが可愛さ全開でヘレナに寄って行き、ヘレナはオルトロスに心奪われたみたいで癒されまくってた。

 ザッハークも寄ってはいたんだけど姿が何の動物の種類にも属さないコロコロスライムだから、ヘレナは最初のうちは困惑してた。けどこういう生物だという認識で勝手に収めたみたい。今は可愛がってる。これで本当はザッハークもオルトロスも神獣だったって知ったらどういう反応見せるんでしょうね。

 なおファルコとカラス丸はヘレナから距離を開けて様子見。エスモスは我関せず状態でボーっとしてる。


 今日は政府閣僚会議が予定されていたため、私もセリアと共に会議室へ赴きヘレナ保護の件を閣僚達に説明。私の責任でヘレナの身柄を預かることに関しては誰からも意見や疑問は出なかった。…出なかったというよりも、閣僚達の様子を見た限り内容がレアケース過ぎて何も言えないように見えた。まぁ、無理ないわよね…。でもおかげでセリアが閣僚達へ圧をかける事はなかった。


 圧と言えば昨日セリアが困り果てていた女王様モードとプライベートモードの切り替えタイミングの事なんだけど、今朝セリアの寝起きの姿をヘレナがたまたま見てしまったことで話が解決に至った。ヘレナには私から「あれが素」とだけ言っておいた。


 王と言えば私がシュバルラング龍帝国の龍帝であることをヘレナは未だに信じてくれていない。そして何故かキリカがこの件でやや怒っていた。


「龍帝陛下!彼女に何か証拠を見せるべきです!何なら直接龍帝国へ連れ出しても良いと思います!責任は全て私が負います!」

「落ち着きなさいな。どうしてキリカがそんなムキになってんのよ?」

「ムキにもなりますよ!陛下が龍帝である事を信じていない時のあの顔が私には陛下を馬鹿にしているようにしか見えないのです!正直不愉快です!」

「解った解った。キリカが言いたい事は理解できたわ。けど私が龍帝国の龍帝である事はまだ他国には知られてないのよ?信じられなくて当然じゃない?」

「それは…、そうかもしれませんが…」

「キリカ殿、今は引きましょう。龍帝であるアイラ本人が気にしていないわけですし、部下である我々が怒ったところで何ともなりませんよ」

「……解りました」


 私なりの意見とアンゴラさんの引き止めでキリカは怒りを収めた。

 でもまぁキリカの怒りも分からなくはない。というのもヘレナの表情は「まっさか~」と言わんばかりの表情だったわけで、人によっては馬鹿にされている、舐められていると思われてしまっても仕方ない感じだった。この辺ヘレナのちょっと悪いところね。







 話は変わるけど、私は今日予定していたユートピア領内でのスケジュールを全てキャンセル。今日は一日をノーバイン城内で過ごす事になった。

 理由は二つ。一つはヘレナの様子見のため。もう一つはノーバイン城で予定されている新規使用人採用試験の関係によるもの。

 既にシャロルは他のメイドや役人達とともに会議に参加していて、私も後で会議に混ざる予定。

 というのも実は試験開催まで一週間を切っていて、今日から受験希望者、つまりメイド候補達が集まって来る。…って今朝になってセリアから言われた。なんで誰ももっと早く言ってくれなかったのか…。

 私も試験には一部関わる予定になっている上、私に近い存在であるシャロルが全体的に関わっている件を放ったまま領地開拓するわけにいかない。


 メイドの新規募集に関してはグレイシア国内全域に告知がされていて、通常の場合受験希望者は事前に郵送等で応募届を出す手筈になっている。そしてその希望者達は試験開始前々日までに城へ向かい、受験希望の最終チェックを受けなければいけない。その最終チェック開始日が今日。

 ただし今の説明はあくまで通常の場合。受験希望者の中にはイレギュラーも存在する。例えば、

 

 ・国外から来ていて、グレイシア王国に入国した後に偶然知って応募した。

 ・親族や知人の家に居候していて自分の家がない。

 ・スラム街や外での生活を余儀なくされていて住所不定。

 ・家はあるものの転勤等による移住が頻繁過ぎて住所が定まらない。


 等々。こういった事情を持つ人で受験を希望したいという人は、直接城まで出向いてもらって応募受付という手筈になる。その受付も今日から。


 てなわけで今日は朝から希望者がぞろぞろ来てる。ってリリアちゃんから聞いた。

 早朝のうちにアリスがこっそり受付窓口を覗いたらしいんだけど、早朝の時間帯でも割と多くの人がいたそう。


 そんな中、会議までの時間を待つ私。


「あー…、癒される…」


 別館リビングではヘレナがオルトロスに癒されまくって表情がとろけてる。


「ホントごめんってば!本気でヤバいから!お願いだから入らせてぇ~!」

「嫌だ。絶対どくもんか」


 トイレの前では何故かアテーナがトイレの扉の前に仁王立ちし、アルテがトイレに入れないよう妨害し続けている。対するアルテはトイレに行きたくて仕方ないらしく、焦りながらアテーナをどかそうと必死になっている。

 やり取りから推測すると、おそらく何らかのきっかけでアルテがアテーナを怒らせ、アテーナがその仕返しとしてアルテをトイレに入らせないようにしていると思われる。一体何があったのやら。


「アイラ様。会議のお時間が迫っております。そろそろご移動をお願いします」

「あら?もうそんな時間?なら行きましょうか」


 オルトロスに癒され続けるヘレナ。トイレの前で喧嘩してるアテーナとアルテ。そんな三人と一匹を眺めていたらジーナに移動を促された。


 ササっと身支度を済ませた…訂正。ジーナに済まされた私は、シャロルと合流した後に会議に参加をするため別館を離れた。

 なお、普段私の護衛を務めてくれているアテーナとアルテの二人がトイレの前で謎の喧嘩を展開していて終わる様子がなかったため、今回は代わりにキリカとアンゴラさんの竜族二人が護衛代行を務めてくれることになった。もちろんアンも陰から動いてくれる。まったくあの二人は…。


「あ、ノワール」

「アイラ様。お久しゅうございます」


 会議の会場前に到着するとノワールがいた。彼女と会うのは久しぶり。


「久しぶりね。体調とか崩してない?」

「はい、元気に過ごせております。アイラ様もお元気そうで何よりです」

「毎日楽しく過ごせてるからね。元気でいられるのよ。ところでイストワール領の開拓の進み具合はどう?順調にいってる?」

「何とか進んでいる状態ではあります。当初は順調だったのですが、開拓のために募っていた人員が想定していたほど集まらず…。今は参加してくれている方々が頑張ってくれているおかげで予定通りの進み具合ではありますが、そのうち遅れが生じ始めるかと…」


 ありゃ、ノワールの表情が落ち込んじゃった。


「その思ってる遅れは想定内?」

「一応想定内ではありますが、あまり遅れるのは…」

「そもそも人員が足りてない状態で予定通りは無理よ。現状の人員での速度で予定を考えて、想定外による大幅な遅れも予備として入れておかないと」

「それはそうかもしれませんが…」


 ノワールの開拓の進め方には焦りが見える時がある。この子は何をそんな焦ってるのかしら?

 土地の開拓なんてそう軽々できる事じゃないし、ご先祖様達だってみんな時間をかけてやってきた事なんだから、時間と苦労は費やして当然なんだけど…。


「ユートピア領の開拓の進み具合はいかがでしょうか?そういえば開拓人員の募集等を聞いた事がありませんが…」

「開拓人員の募集も移住者募集もしてないわよ。今のところは全て私と、普段一緒にいる面々のみで開拓に勤しんでる」

「そんな少人数でですか!?あれ?でも最近お屋敷の建設が終わったって…」

「屋敷の建設は終わったし、主要道路の整備もほぼ終わってる。どうやったかは今度教えてあげる」


 つってもほぼ神力と創造魔法と貰い物で済ませたけどね。


「は、はぁ…。まぁ、また何か仰天的な発想をしたのでしょうけど…。しかしそこまで開拓が進んでらっしゃるのに何も募集をかけていないのですか?」

「うん。だってまだ領内全域の調査が終わりきってないもん」

「領地調査と同時並行で開拓されているのですか…。さすがアイラ様ですね」

「範囲が広大だからね。複数の物事を並行してやらないと終わりが見えないのよ」


 と言いつつも実際だいぶのびのびやらせてもらってるけどね。


「ところでジオはどうしてるの?私最近会ってないけど」

「私も最近会ってはいませんが、側近にお誘いした件に関しては未だ何も返答なく…。しかし最近、ジオさんの同僚の兵士の方から倒れたと聞きまして…」

「はあ!?」


 なんでジオ倒れたの!?それ内容次第によってはノワールの側近どうこう以前の問題になっちゃう!


「聞いた話ですと精神的な疲労だとか。私もお見舞いに行きたいとは思っているのですが、どうにも予定が開けられず…」

「そうだったの…」


 精神疲労か…。だいぶ悩んでる様子だったからなぁ。何か思って行動して倒れたか、悩み過ぎてストレス過多になったか。だから一旦私の下で鍛えろって言ったのに。私も近々また総菜屋さん行こ。


 ところで私は今のノワールとの会話の中で気になった部分があった。


「ノワールってさ、自分の身の周りの世話役とかは付けたの?」

「いえ?いませんが…」

「護衛は?」

「いません」

「執事は?」

「いません」

「メイドは?」

「いません」

「補佐官も?」

「いません」


 やっぱりだった。スケジュールが開けられないって言った時に誰がノワールのスケジュールを管理してんのか気になったんだけど、予想通り未だにこの子自身で管理してた。


「予定が開けられないって聞いてもしかしてとは思ったけど、開拓とか進める前にせめて護衛か執事かメイドは傍に置きなさいよ。あなたはそういう人を置くべき立場なのよ?アストラントの頃とは違うんだから」


 アストラント王国にいた頃のノワールであれば、家の事情から考えると専属がいなかった事は仕方ないと思える。でもここはグレイシア王国で、ノワールは既に実家から独立している。専属の何かを置いたところで誰も責めることはない。


「それは理解しているつもりではいますが…、良い出会いに巡り合えず…」

「だからって自分の周りの環境が整わないうちに開拓を推し進めるのはどうかと思うけど…」


 私は少人数で開拓を進めてるけど、専属で護衛も執事もメイドもいる。そう考えると私ってもしかしてノワールより恵まれた環境で過ごしてる?


「ノワール様は今回の試験を通して、ご自分のメイドになってくださる方を探すおつもりのようですよ」


 ここで別行動だったシャロルが来た。


「シャロルお疲れ様。試験官としての準備は順調?」

「はい、おかげさまで。とは言いましても特にやることは今のところありませんが」

「まぁ、まだ会議だけだもんね。んで?ノワールは今回の試験で自分のメイドになってくれそうな人を探すつもりなの?」

「探すと言いますか、たまたま相性の良さそうな方がいれば良いなと」

「でも今回はノーバイン城で働くメイドを採用するかどうかの試験なのよ?不合格者が出た場合はその中から拾って交渉して私達に仕えてくれるかもしれないけど、全員合格だったら無理よ?」

「ええ、承知しております。誰とも縁がなくともその場合は現状と何ら変わりありませんのでご安心ください」

「安心できないのよ。ホント何らかの方法で側近でも何でも誰かしら置きなさいよ。伯爵位を持つ者が常時単独行動って駄目でしょ」


 う~ん、ノワールの何でもかんでも自分でこなそうとするところはアストラントにいた頃と変わんないなぁ。当時よりだいぶ開放的になってくれていろんな人と会話してくれるようになったけど、もうちょっと深めに接することは難しいかしらねぇ。

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