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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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城を降ろす日

 セリアに対する一方的な危機感から説教をかました翌日。私は自身の領地開拓を再開。

 ノワールが開拓を行っているイストワール領は少しづつ着々と開拓を進めているそうで、アストラント王国側の要塞建設と国境壁建設およびその他大型施設以外に関しては遅れがありつつも順調だそう。と、セリアからは聞いてる。

 私はというと、主要道路の整備を進めつつ、アンプルデス山脈等を見に行った結果を踏まえた会議を精霊達や神獣達、自然界専門家のヘルメールさんと行い、ライフラインをどう敷くかを考えるところに来ていた。


 都市や街や村など、人が住まう場所はまだ予定地すらない。強いて言うなら廃村がある地点をヘイジョウキョウ市の一部にしたいと思ってるだけ。思ってるだけで廃村があのまま街として残るかは決まってない。

 ならば人が住む場所にライフラインを敷くのではなく、ライフラインを確保できる状態にした所に移住者には住んでもらえば良いじゃん。という考えに至った。

 人の営みが出来てから発展するのではなく、先に営みを構築してから住んでもらうという本来とは真逆の手法。けどこれが自然界に影響を少なくするための最善の策でもある。これが会議の結果だった。


 住むといえば、時間を見つけて妹のアナやいつものメンツと一緒にずっと放置状態だったハミルトン家王都屋敷を見に行った。中身はリースタイン家王都屋敷とほぼ同じだったかな。そのせいかちょっと懐かしさを感じた。


 さらに翌日。開拓を進めつつたまたま川の傍にいたところ、ヘルメールさんから桜に関する話をされた。内容は桜区画にある桜の木と同種の木々がユートピア領内各地に点在しているというもの。


「こちらの川に両岸に桜の木を移植させてみてはいかがでしょう?きっと素敵な桜並木になると思いますよ」


 と、ヘルメールさんはにこやかに言ってきた。

 確かにヘルメールさんが言ってるこの川は流れが緩やかで、尚且つ水面と地上の差がそれなりにある構造だから、船上でも川沿いに遊歩道を造って歩いても桜が十分楽しめる。

 前世の頃の日本でも川沿いに桜が咲き誇る名所があったし、ヘルメールさんの案は魅力的。地元民にとっても観光で来た人にとっても楽しめる場所になると思う。

 けどそれにはまず川の環境整備確保とか上流下流の造りも確認して、桜の木を植え直す作業もしなきゃいけないから、やるとしてもだいぶ後回しになりそう。






 なんてことがあってさらに翌日。確定している主要道路にはコベトを敷き終わり、ライフラインを通す場所もだいたい決まり始めた頃、ハルク様から貰った城を地上に降ろす場所が確定した。

 城を降ろす場所は平原地帯で、地盤や地質上深く掘っても問題なく、野生動物達の通行の妨げにならない場所になってる。しかも地図上で位置を表すと、三つの市の境界線がちょうど重なる位置になる。つまりユートピア領のど真ん中に私の城が建つということになる。

 城を地上に降ろす予定日時と場所はハルク様とミュウにも報告。ミュウには城のリフォーム許可も貰った。

 ついでにミュウには服をプレゼントしといた。平民の中で一般的に流通してる普通の洋服。

 最初はTシャツをあげたんだけど…。


「むぐぐ…、あれぇ…?」


 ミュウは洋服を着る事自体かなり久々だったようで、脱ぎ着に時間を要していた。なので着易さ重視でワイシャツをあげた。羽織るタイプの服の方がラクでしょうし。


 なお城は周囲に存在を悟られないよう透過状態になっている。透過解除は城を地上に降ろした後にして、透過を解除次第セリア経由でグレイシア政府に「ハミルトン家本邸の外観は完成」とだけ伝える手筈となった。かなりのサイズの城だし、高さもあるから万が一知らない人が城を見たら大変。通告は早めにしておかないと。






 城を降ろす日の前日。私は降下予定地で魔法を駆使し、現在空にある城の土台となっている土部分がスッポリ収まるサイズの穴を掘った。いざ掘ってみると改めて城のデカさがとんでもない事が分かる。マジで大きすぎる…。

 掘ってた時に普段一緒の面々もいたんだけど、シャロルやジーナやキリカやアンゴラさんからは「範囲が広すぎでは?」という疑問の声が飛びまくった。






 そして城を地上へ降ろす日。天候は快晴、風もほぼ無風。過ごしやすい陽気。まさに城を地上に降ろすにピッタリな日。……城を降ろすピッタリな日ってなんだろう…。


「オーライ、オーライ。もうちょっと右~。今度はちょっと行き過ぎ。左、左~」


 城の移動そのものはオリジン様とアグナさんとネロアさんとシルフちゃんで行い、位置調整を地上からベヒモスが行っている。

 けどベヒモスのその工事現場の人みたいなスタイルはなんなのよ…。しかも今被ってる黄色のヘルメットはどっから持ってきた?

 黄色のヘルメット被ったサングラスかけてる二足歩行のモグラ…。ツッコミどころありすぎでしょうが。


「よーしっ!きれいに収まったぜ!」


 ガッツポーズを決めるベヒモス。

 城は無事に降下完了し、地上の地面にズレることなくピッタリ収まった。

 若干地面が揺れて土埃りが上がったけど、これは想定済みで周囲への影響はない。何らかの影響や問題が発生すれば神獣達から報告が上がってくる手筈になってるから、何も交信がなければ問題ないということになる。


 次の段階としていよいよ透過を解除する。解除自体はオリジン様がやるんだけど、何がどういう仕組みで透過されてて解除できるのか、私は全く知らない。疑問に思ってオリジン様に聞いたら、


「すいません。ハルクに聞いてください」


 て言われたからハルク様に訊ねたら、


「正式な神々の一員になるか、オリジンみたいに精霊王クラスの立場にならないと答えられないの。ごめんね?」


 と言われた。

 つまり私がこの透過機能の詳細を知る時が来るのはまだ遥か先の未来となるみたい。


 ただ代わりに教えてくれたことがあって、この透過機能はその範囲内に一回入る、今回の場合は城の敷地内に入った場合、透過は通じなくなるんだそうな。

 だから現状で言うと、精霊、神獣、神龍、神の関係者を除いた中では私とセリアだけが城を認知できるということになる。現に私今城見えてるしね。

 なので今一緒にいるメンツでいうと、シャロル、ジーナ、キリカ、アンゴラさん、アンの5人には城が見えていない。

 アテーナ、アルテ、アナの三人は城に入った事がないため同様に見えてはないものの、天神界から見たことがあるためどういう建物かは知ってるとのこと。

 それからマギルカさんにも城は見えてる。


「私も二千年前に城で居候させていただいていた身ですから、城の事はよく知っています。当時は魔法の研究に明け暮れて、時々失敗しては城の一部を爆破してしまってハルクリーゼさんから怒られた事もありました。懐かしいです」


 と、マギルカさんは語った。

 いや平然と懐かしんでるけど居候してたんかい。雇われてたんじゃなくて。しかも城の一部爆破って何したのよ…。懐かしむ事じゃないでしょ…。


「では、透過を解除します」


 オリジン様から解除の予告念話が届いた。直後、城が一瞬何となく揺らいだ気がした。多分これで透過が解除されたんだ。


「な…、な、な、な…!」

「お…、おぉぉぉ…」

「……」


 直後、シャロルとジーナとアンの三人は上を見上げて口を開けたまま動かなくなった。透過で見えてなかった人達にとっては突然目の前に巨大な城が現れたように見えるわけだから、三人のリアクションも分からなくはない。


「天神界から見たことがあったとはいえ、改めて見ると大迫力ね」

「そうね。これからここに住むって思うとウキウキするわ。あとはトイレに困らない改築をすれば…」


 アテーナとアルテはさすがに落ち着いてる。けどアルテは相変わらずトイレの事ばっかり。


「想像以上…、だな…」

「……」


 想像以上と小声で言ったのはアンゴラさん。口調は落ち着いてる方だけど、表情はビックリ顔。

 その隣でキリカは黙ったまま。何故か真面目な表情で胸に手を当てている。


「キリカ?どうしたの?」

「あ、いえ…。これが我ら竜族の象徴たる龍帝陛下のお住まいになるのかと思うと、素晴らしいと思うと同時に身が引き締まる思いがありまして…」

「そ、そう…」


 キリカは城の話が出てからずっと私に相応しい城なのかとやたら気にしていた。

 彼女は私の事をあくまで‘龍帝’として見てるから、建物の雰囲気が自分の国の帝に相応しいものか気がかりで仕方なかったんでしょうね。今の彼女の反応を見る限り、この城は合格点みたい。てかこれで不合格だったら何が良いのか理解出来なくなるけど。


 ちなみにマギルカさんはみんなの反応を楽しんでるのか、何も言わずにニコニコしてる。


「そろそろ中に入りましょう?内装の改築案とかみんなと話し合いたいし、ミュウも中で待ってるだろうから」


 私は手をパンパンと叩いて放心状態だった三人を復活させ、みんなを城の門へと誘導した。


「あれ?ヘルメールさん!?」

「こんにちは。土の状態を見たかったので来ました。お気になさらず」

「は、はぁ…」


 元々の地面と城敷地の地面の境界線に、気付いたらヘルメールさんがいた。いつの間にいたんだこの人…。


 そんなヘルメールさんの傍を通り過ぎて城の正門前に到着。


「「「……」」」


 シャロルとジーナとアンの三人は再び放心状態に。


「あ、あそこに気になる草が…」

「薬草作りはまだ早いですよ?」


 アナは気になる草が目に入ったようでそっちへ向かおうとした。すぐにマギルカさんが止めてくれたけど。


「私は先行してトイレ巡りを…」

「させるか」


 私達よりも先に行ってトイレ探しをしようとしたアルテ。当然アテーナに止められてた。


「この門構え…。龍帝陛下のお住まいの門として相応しい…。そう思いませんか?」

「…私は景観や建物装飾に詳しくありませんので…。聞かれましても…」


 完全に独自目線モードになってるキリカ。アンゴラさんはそんなキリカからのフリに困ってる。

 みんな反応がバラバラ。ていうか自由。


「みんないい加減城の中に入るわよ。色々考えるのは城を見回った後」


 私はみんなに声をかけて正門の扉を開けた。さっさとミュウを紹介しないとね。待ってくれてるだろうし。

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