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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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ミュウの正体と過去

少々遅くまりましたが、

あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

 地下階まで降りてきた私達。地下と言ってもすごく深いわけではなく、感覚的には地下一階に相当する深さ。

 でもって階段を下りた直後に、目の前に扉がある。特に豪華でもない、ごく普通の扉。


「ささ、どうぞ」


 ミュウが扉を開けて私達を部屋の中へと招く。中に入ると、そこはこれまでとは全く違う光景だった。

 部屋は確認できる限り一部屋のみ。床は灰色のタイルが敷かれていて、壁や天井には端から端まで壁画が描かれている。絵画のような絵ではなく、古代文明を彷彿とさせるような絵。エジプトのピラミッドで見られる壁画と雰囲気は近い。


「周り全部絵じゃん。何ここ?」


 セリアも部屋の雰囲気が扉一枚を挟んでガラッと変わったことに若干戸惑ってる。


「ミュウ、ここは何のための部屋なの?」

「私の部屋です」

「へ!?」


 なんとここがミュウの自室だった。城中ほとんどの部屋が豪華な造りだったのに、どうしてミュウの部屋だけ地下のこんな異質的な部屋なのかしら…?


「アイラ様、あそこ見てください」

「ん?」


 ミュウが指を差した先。そこの壁を見ると、何故かその部分だけ絵が描かれていなかった。


「あそこだけ何も描かれてないわね。そもそもここの絵は何のために…」

「ちょっと見ててください」


 ミュウは私の発言を遮って、一人壁に近づいて行った。そして彼女が壁の前に立つと、壁画の描かれていない部分とミュウの身体のサイズがピッタリはまる事に気が付いた。

 私がその事に気付いた直後。


「え!?」

「は?」


 私とセリアは驚きの声を上げた。

 ミュウの身体は突然壁に引き込まれて行き、何も描かれてなかった部分にミュウの姿をした絵が浮かび上がったのだった。

 突然の事に私もセリアも訳が分からず呆然とするしかない。


「驚いたろ?これがミュウなんだよ」

「どういうこと!?全く理解できないんだけど!?」


 何故かニコニコしながら私とセリアに話しかけてくるヘーメス。私もセリアも状況の理解に苦しんでる状態で、私はヘーメスの言葉に反応したけど、セリアはまだポカーンとしたまま。


「ミュウの身体は壁画の一部ってことさ。ま、詳しいことは本人から聞きな」

「いや本人って…」

「絵になっちゃったけど?」

「よいしょっと。驚きました?」

「「驚く以前の問題」」


 突然ミュウが壁画の一部になり、ヘーメスから笑顔でよく分かんないこと言われ、混乱してるところにミュウが軽いノリで壁画から出てきたもんだから、私とセリアは真顔でツッコんでしまった。


「えっと…、とりあえず、落ち着くために移動しましょうか?」

「移動ってどこに?」

「う~んじゃあ、最上階まで行きましょう」


 ミュウの案で部屋を出る私達。最上階に行くのは別に良いけど、セリアが疲労感を全面に出した表情をしてる。また階段を上るのが嫌なのね…。






「ヘーメスさんが言った通り、私の身体は元々あの壁画の一部です」


 最上階へ移動した後、ミュウが発した第一声がこれだった。私は何も言わずに聞く姿勢をとる。

 ちなみにセリアは最上階入口付近で大の字状態でのびてる。


「大昔にこの世界に存在していた文明で生きていた人達が何らかの目的で描いた壁画の一部。それが色々あって時を経て遺跡となり、二千年前にハルクリーゼ様が引き取り、それから色々あって今の私が生まれました」

「その色々が気になるんだけど…」

「アイラ様、前に精霊達から人形貰っただろ?女性の姿したやつ」


 ミュウに疑問を投げようとしたら、ヘーメスが以前私が精霊達から貰った棺桶みたいな箱に入ってる女体人形の話を持ってきた。

 ちなみにあれはプレゼントされて以降、今も手つかずのままずっと私の異空間収納の中に眠ってる。


「誰かの魂を入れないと動くことのない精霊達が試作した人形のこと?」

「そうそれ。ミュウは言わばそれとほぼ同じ存在なんだよ」

「はぁ?」


 つまりミュウは元々普通の人間で、今私が接してるミュウは移魂魔法によって魂が絵に移された姿ってこと?

 でも確かにそう考えれば、初対面時に気配や生気が感じられなかったのも、触れた手が異常に冷たかったのも納得できる。

 人の姿をしていて魂が宿っているとはいえ、身体の元は単なる絵。人としての気配や生気が感じられないのは当然となる。普通の絵に生気感じられたらメッチャ怖いしね。そして絵は熱を持たないわけだから、身体は冷たくて当たり前になる。


「私は元々、二千年前の時代を生きていた、ごく普通の人間でした」


 ミュウは語り出した。やっぱり人間だったか。


「私は小さな村で生まれ育って、そこで不自由なく幸せな日々を過ごしていました。しかし当時は各地で戦争や紛争が続いていた時代でして、ある時私がいた村も戦火に巻き込まれました」


 ミュウの故郷も戦争状態だったんだ…。本当ハルク様が活躍してた時代は戦乱の世ね…。


「私がいた村は敵対国の襲撃を受け、村のみんなは逃げる間もなく次々殺されていきました。もちろん私の両親や親戚も。

 しかし私だけは襲撃が収まった後も生きていたそうです。重症ではありましたが、かろうじて息の根は止まっていなかったみたいで」


 ミュウの話が~そう、~みたい、という言い回しになっているのは、おそらくその時既にミュウの意識はなかったからでしょうね。


「生きていたとは言っても状態はかなり酷かったみたいで、何も手が付けられない状況だったそうです。そこにハルクリーゼ様が現れ、死を待つだけだった私を引き取り、私の魂を壁画に移して現在の状態にしてくださいました。

 以降私はずっとあの壁画と共にあり続け、この城が完成したと同時に壁画がある地下の部屋で過ごすようになりました。

 今の私は簡単に言えば動く絵です。歳をとることも、病気になることもありません。壁画が壊れるか消えない限り、私の魂と存在はここにあり続けます」


 ミュウがどういう存在なのか、今の本人の話である程度理解できた。けどまだ疑問点はある。

 まず何故ミュウに移魂魔法を使ったのか。当時のミュウはごく普通の村人で権力なんてものとは無縁。そんな彼女に高位の魔法を行使したのは一体何故。

 そして彼女の魂の移動先としてあの壁画を選んだ理由は何なのか。

 そもそも当時のハルク様は何を目的として今のミュウを生み出したのか。善意だけとは考えにくい。

 最も大きな謎として、あの壁画はいつどこで誰が描いた物で、どのような経緯で遺跡として残り、ハルク様が引き取って城の一部にしたのか。


「なお今お話ししました内容に関する質問はハルクリーゼ様へお願いします」


 疑問点を聞く前に遮られた…。


「あ、言い忘れてた。今この城って絵が一切飾られてないじゃないですか?」

「絵って絵画とか風景画とか人物画とか?」

「そうです。そういう絵を各所に飾っていただければ、私の力で絵が飾ってある位置からその場を確認したり監視したりできますよ」

「そうなの?それってどういう…」

「どういう原理かは~」


 質問しようとしたらまた遮られた…。今度は答えてくれるっぽいけど、この子意外とマイペース?


「私の身体となっている壁画とこの城自体は、建設時に一体となりました。なので簡単に言ってしまえば私もこの城の一部なんです。だから誰かが入ってきたり、何か変な事とかしたら感覚ですぐに分かるんです」

「変な事?」

「建物の床や壁や天井を傷付けたり、落書きしたり、何かの魔法をかけたり」


 つまり城の全てを感覚で捉えることができるミュウからすれば、絵を通じてその場の視覚も捉える事ができちゃうってわけか。うん、全く分かんない。

 でも自分の身体のように城の状態がリアルタイムで分かるわけだから、前世の頃によく見かけた防犯カメラなんかよりもずっとスペック高いわね。もうそれなら良いや。


「ていうかさ。その質問答えられるんなら、アイラが疑問に思ってる事全部答えられるんじゃないの?」


 と、大の字のまま言うセリア。


「セリア。ミュウにだって答えにくい事があったりするのよ?」

「いや大半は単に話が長くなるのが嫌だったので」

「ちょっとあの壁画塗ってくる」

「わー!!ごめんなさいっ!答えます!どんな質問でも受けますから!お願いしますから塗料はやめてくださーい!!」


 せっかくミュウの過去を考えて気を遣ったのに台無しにされてイラっとしたから、異空間収納から蛍光塗料取り出して移動しようとした。そしたらミュウは全力で謝ってきた。


 結局ミュウは私の疑問に答えられる範囲で答えてくれた。けどハルク様がミュウに対して行った行動の真意に関してはミュウも未だに分からないらしい。ハルク様には何度も訊ねたそうなんだけど、いつもはぐらかされて教えてくれなかったんだとか。


 何はともあれこれで城の視察は終了。

 色々疑問点はあるけど城自体は綺麗で気に入ってる。…でも従業者かなりの数雇わないと維持難しいなぁ…。だんだん何を優先してやるべきか分からなくなってきそう…。

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