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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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妹の行動は突然に

 シャロル、ジーナ、キリカを連れて足早に桜区画へ向かう。


「そういえば、桜区画は以前お花見を開催して以降、他の方々へも自由に公開する手筈でしたよね?」


 ふとキリカが質問してきた。確かに前にみんなでお花見した後、セリアは誰でも桜区画に出入りできるように立入禁止を解除した。…全くというほど出入りはないけど。

 ちなみに桜区画にはフェニックスが常駐してるけど、精霊や神獣はみんな人目を誤魔化せる術を持ってるから、大勢人がいても見つかることはない。


「そうよ。もう立入禁止も解除してるから、基本的に許可無しでも出入り自由よ」

「しかし誰かが入ったという話を全く聞かないのですが…」

「そうねぇ。私も聞かないわね」


 桜区画が解放されてから月日は経ってる。なのに桜区画は無人状態の時がほとんど。やって来るのは私やセリアに近しいメンツばかり。…って最近フェニックスが言ってた。


「城務めの同僚と桜区画について話した事があったのですが、どうやらあの区画に入る事に未だ恐怖心があるようです」


 ここでシャロルが理由を知ってる発言をし出した。


「桜区画に恐怖を感じてるの?」

「桜区画そのものというより、女王陛下に対して、かと思います。元々は女王陛下が直々に立入禁止にして管理されていた区画ゆえ、立入可能になった事を知っていても、どこか入りづらい気持ちがあるようです。

 入った先で何かを傷付けてしまったら、何かを壊してしまったら、汚してしまったら。そのような事が万が一起きてしまったら、女王陛下の逆鱗に触れて殺される。城の者のほとんどがそう思っていると、同僚は言っておりました」

「あー…、なるほどね~…」


 桜区画に入る=セリアの怒りを買う。みたいな感覚がまだあるのね…。別にただ居るだけ、ただ見るだけなら木々に傷は付かないし、大丈夫だと思うんだけどなぁ…。今度リズベッドあたり連れてみるかなぁ。


 こうして話してる間に桜区画の桜トンネルに到着。けどトンネルに人影は見当たらない。どうやら桜の大樹の方にいるっぽい。

 相変わらず幻想的で美しい桜の大樹と木々。そんな場所の大樹の前にアナはいた。…なんかカゴらしき物を持って上見上げたまま動き回ってる。もしかして降ってる桜の花びら回収してる?


 ここでフェニックスがこっちへ飛んできた。私が腕を出すとフェニックスは腕に乗った。


「お疲れ様でございます。主様」

「うん。なんか急にごめんね?アナの相手してもらっちゃって…」

「いえ。相手というほどの事はしておりません。大半の時間はアナ様が自由に動いておられたので。私はただ見ていただけですよ」

「あれ?でもさっきアナはフェニックスと話してるって…」

「ご挨拶程度ですよ」


 てことはアナが自由に動いてた時の方が長いのか。自由だなぁ、あの子…。そんなアナをフェニックスは突然の事とはいえ様子を見てくれたんだからありがたい。


「アナ」

「あ!アイラお姉様!見てください!花びらこんなに溜まりましたよ~。ここの景色は天神界からも見てましたけど最高ですね!花びらもとてもきれい!」


 私が声をかけたらアナは小走りで私の前に来て、カゴに溜まった大量の桜の花びらを見せてきた。ここの景色と桜の花びらにテンション上げてるらしい。


「最高なのは同感だけど、その前に…えい」

「あいたぁ!」


 私はアナにデコピンした。


「まったく。地上に降りるなら事前に連絡をちょうだいよ。私だって予定を作って動いてんのよ。それに降りた先で人がいたらどうするのよ」

「え~、大丈夫ですよ。降りるタイミングは自分で決められますから」

「そういう事を言ってるんじゃないの。報告、連絡、相談は必ずしなさいって言ってんのよ。これは相手が上でも下でも基本だからね」

「んあ~…、そういえばエーファ様も同じような事言ってたような…」


 私にデコピンされたおでこを擦りながら何か思い出した様子のアナ。エーファ様って確かこの世界の先代神様だった方よね?エーファ様も報連相解ってるってことかしらね。


「とにかく、次から何か動く時はちゃんと伝える事。良いわね?」

「はぁい…、すいませんでした…」


 私の注意にアナは反省してる様子。…思えばこの子だけじゃなくて私の専属護衛コンビとか、別館警備姉妹とかも報告無しで動いてる時あるわよね…。他の天神界メンバー普段何してるか分かんないし、みんな自由なのかな…?


 話を戻して、ふとアナの服装を見ると、天神界で会った時と服装が変わってた。

 髪型はそのままなんだけど、服装は紺のワンピースだったのが、黒色と灰色の柄の着物に変わってる。

 帯はちゃんと着けてるんだけど、上部は着崩してて肩から胸の谷間まで丸見え。下も丈が腰下辺りまでしかない。しかも靴が下駄。サブエル学院時代のホウの服装に近いかも。


「アナ、天神界で話した時と随分格好が違うのね?」

「はい!お姉様が普段されている露出の高い服装を私もしようと」

「なんでわざわざ…?別に合わせる必要はないのよ?」

「姉妹として合わせたいだけです。別に無理に着てるわけじゃないですよ」

「まぁ、あなたがそれで良いのなら別に良いんだけど…」


 この子自身が自ら進んで露出の高い服装をしてるだけみたいだし、私も露出高い格好してるから気にはしないけど、このままだと露出の高い服装をする姉妹みたいなレッテルを張られそう…。


「ところでその花びら、そんなに集めてどうすんの?」

「新薬開発の材料に生かせないかなって思って」

「そこは真面目なのね…」


 お遊び的な理由で集めてるんだと思ってたら、割と真面目な理由だった。


「三人とも。この子がアナよ」

「アナです。よろしくお願いします」

「メイドのシャロルと申します」

「同じく、ジーナと申します」

「龍帝国龍帝補佐のキリカと申します」


 初対面となる私以外の四人は、それぞれ自己紹介で挨拶。


「それじゃあそろそろここを出るわよ。フェニックス、どうもありがと。アナ、付いて来て」

「あ、もう少しだけ花びら集めさせてください」

「別に良いけど…、そんなに量必要…?」


 まだ花びらが集め足りないようで、再び舞い落ちる桜の花びらを集め始めるアナ。

 桜区画の桜はセリアの研究のおかげで無限に咲き続けるし、無限に舞い散るから桜の絨毯は維持されるし、景色や環境的には問題ないから良いんだけど、果たして新薬開発の材料としてそんなにも必要なのか…?


「なんと言いますか…、不思議な方ですね…。笑顔で可愛らしくも見えますが、同時にどこか気品に溢れているといいますか…」

「私も同じような感覚でした。やはり只者ではない雰囲気は間違いなくありますね」


 シャロルとキリカはアナに対して、明るさの他に気品を感じ取っていたらしい。ジーナも同じようで、二人のコメントにうんうんと頷いてる。

 確かにアナは美人だし、挨拶の仕草は優雅で丁寧。子供っぽく自由な点以外なら貴族令嬢にも引けをとらない。天神界で鍛えたのか、生前がそういう高貴な家系だったのか…。


「お待たせしました!行きましょう!」


 と言って戻って来たアナは、両腕でカゴを抱えたまま。しかもカゴが一つ増えてる。マジでそんなに花びら要るの…?


「まさかその花びらの入ってるカゴを抱えたまま移動する気?」

「え?ダメですか?」

「ダメっていう決まりはないけどなんかダメ。異空間収納とか使えないの?」

「使えますよ。よいしょっと」


 アナはカゴをあっさり異空間収納に入れた。使えるんなら最初から使いなさいよ…。






 改めてフェニックスにお礼を言って桜区画を出た私達は、そのままセリアがいる政務室へ直行した。セリアがまた仕事サボって逃げてなければ居るはず。

 政務室の前には門番兵がいるけど、私は顔パスで出入り可能。


「失礼しまーす。今だいじょ~…」

「陛下もっと早く片付けられないんですか!?それともっと小範囲でやってくださいよ!さっきから積んだ書類が崩れそうなんですよ!」

「無茶言うな!これで最高速だし、これ以上縮こめられんわ!」

「もう神力でどうにかしてはいかがでしょう?」

「できるか!それができてるならこんな苦労しなくて済むよ!」

「そもそも陛下が仕事を放棄しなければ、このような状況にはならなかったはずですが」

「オルシズ、冷静にド正論言うのやめて?私の精神に効く」


 政務室の扉を開けて中を覗くと、何やらセリアと側近達が口論してた。

 セリアの机の上と周囲には高く積まれた書類がいくつもあって、リリアちゃんの言う通り、時々書類タワーがゆらゆらしてる。その度にアリスが書類のバランスを整えてる。

 オルシズさんはいつもの通り、自分の仕事をひたすら片付けてる。


「ナニコレ…。これはどういう状況なの…?」

「あ、アイラさん!」

「お?アイラじゃん。どしたの?」


 私に気付いたリリアちゃんは、席を立ってその場で私にお辞儀。

 セリアは軽く手を上げて、アリスとオルシズさんは軽く会釈。


「用があって来たのよ。それよりこの現状は一体なんなの?」

「溜まり続けた陛下の仕事です」

「普段の仕事放棄の結果ですね」


 私の質問にリリアちゃんはプンスカしながら、アリスは冷静に答えてくれた。オルシズさんだけ何も言わずに黙々と自分の仕事をこなしてる。


「アイラ~、これどんだけやっても終わんないよぉ~…」

「あんたが仕事サボってばっかだからでしょうが。でもサボりつつも最低限仕事はしてたでしょ?やたら溜まり過ぎてない?」

「タイミングの問題なんだよ。各部署が私に送ってくる仕事は普段はどこもタイミングバラバラなのにさ、何故か今回はいっぺんに渡してきたんだよ。しかも何故か量まで普段の倍以上あるし…」


 なるほど。状況への納得は出来るけど、仕組みの納得ができないわね。今度ここの書類提出ルール調べてみようかな。今はアナの件があるから言わないけど。


「んで?なんか話?」


 セリアは一時的に手を止めて、私に要件を聞いてきた。


「話っつーか、アナ連れてきた」

「へ?」


 ポカンとするセリアをよそに、私は扉の傍で待機してたアナは手招く。


「どうもグリセリア様。書類に囲まれながら仕事なんて、神の使いらしからぬ事してますね。まぁ、天神界からも仕事放棄する光景は見えてましたし因果応報あいたぁ!」

「対面早々喧嘩を売るんじゃない」


 さっそくアナがセリアへのイラつきを仕掛けようとしてたから、とりあえずアナの頭を平手でぶって注意しといた。

 対するセリアはアナの発言に怒る事なく、アナを見たままポカンとしてる。


「なんで既にアナが地上にいるわけ?」

「この子ったら事前報告も無しに地上に降りてきてたのよ。突然念話で地上に降りたって言ってきてね。桜区画で桜の花びら集めて動き回ってたし」

「…私が言える立場じゃないけどさ、自由だな。お前」

「それほどでも。あ、桜の花びら貰いますね」

「は?どうするつもりだよ?」

「新薬の開発に使ってみたいんですって」

「真面目か」

「少なくともグリセリア様よりは真面目いたぁっ!」

「だから喧嘩を売るなっての」


 私は今度はアナにげんこつ。懲りないなこの子は。

 セリアは予想よりも早く地上に降りて来たアナに戸惑ってる様子。アナの喧嘩売りに全然反応しない。


 その後リリアちゃん、アリス、オルシズさんにアナを紹介。それから少しの間セリアと話し合って、既に降りて来ている以上どうにもできないということで、このまま一旦別館に住まわす結論になった。私の領地に私の家が完成したら、そっちへ引っ越してもらう運びとなる。

 一応リフォームが終わってる私の王都屋敷もあるんだけど、未だ誰一人住んでいない点から別館に住まわすこととなった。

 城の関係者等にアナの存在を認識された場合は、天神界で考えた説明をする事となる。


 とにかく突然で驚いたけど、これで後は書類提出だけすれば、アナは正式に私の妹となる。前世からずっと一人っ子だった私に妹ができる。

 ……そういえばアストラントにいるお母様のお腹の子供はどうなってるかしら?出産まで順調であれば良いんだけど…。

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