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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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アイラの妹?

 翌日。今日は一応休日ってことになったんだけど、私はセリアの銃等開発計画を受けて、幾人かに確認を取ることにした。

 まずはオルシズさんにこの件を相談。セリアの事だからきっとオルシズさんにすら言ってないんだろうなと思ったら、やっぱり案の定だった。

 オルシズさんに計画の詳細を説明した後は機械工業部門へ移動。セレス様とヘーパトスさんのもとへ赴き、セリアがどういう説明をしてきたのか確認した。

 どうもセリアはこの二人に対しては設計図と完成予定イラストを用いて詳しくプレゼンしていたらしく、二人とも内容を完全に理解してくれていた。でも私に相談してなかったっていう点からプレゼンを受けた直後に協力は拒否したそうな。うん、正しい判断。


「もうホントすいません…。突拍子もなくあの子は…」

「いーよいーよ。あの子の自由さには慣れてるから。私も自由に好きな事やらせてもらってる身だしね」


 私のお詫びをさらっと流すセレス様。さすが王族。心が広い。

 ちなみにヘーパトスさんは黙々と何かを制作中。何を作ってるのかは知らないけど、集中してる様子だったから声はかけなかった。


 機械工業部門の工場を出た後は別館に戻り、午後になってからアンゴラさんがジーナやアンと一緒に鍛錬を開始。ウォームアップした後に本格的な鍛錬に入る前にアテーナとアルテがアンゴラさんに動きの手本とか言って何か説明してた。

 どうやら私と同行して護衛を行う上での最低必須実力ラインを説明してたらしい。アテーナとアルテの説明と手本を見たアンゴラさんは何故か絶望の表情を浮かべてた。多分相当ヤバい鍛錬である事を悟ったんだろうなぁ…。


 私はシャロルとキリカの二人と一緒に自由行動。セリアから貰った拳銃の威力を廃材を使って確認したり、別館で料理したり。






 その日の夜。


「おかしいよ…。強さの基準が絶対おかしい…。鍛錬厳しすぎでしょ…。前世の世界のどこの特殊部隊でも、この世界のどこの精鋭部隊でも、ここまでは…、うっぷっ…」


 今日の鍛錬に関する不満を言いつつバケツに顔を埋めるアンゴラさん。アテーナとアルテが用意した鍛錬メニューがやっぱりキツすぎたみたいで吐き気が治まらないらしい。ジーナがアンゴラさんの背中擦ってる。

 龍帝国でずっと鍛え続けてて、大会でランと互角に戦ったレベルのはずのアンゴラさんでもキツイってどんな事したのよ…。


「も~…、ジーナの時といい、アンの時といい、なんで身体に支障をきたす内容の鍛錬させんのよ…。もっと順序や場数を踏んで毎日こなして成長していくのが鍛錬であり修行でしょうに…」

「甘いですねぇ、アイラ様は。私達は短期間でアイラ様の実力に可能な限り近づけるようにするための内容を組んでいるんですよ?」

「そーそー。じゃないといつまで経ってもアイラ様の動きに合わせて戦うなんて出来ませんからね」

「だからってやらせた結果がこれじゃないの。今はアンゴラさんが吐き気訴えてるし、アンだって一時期ダウンしたし、ジーナに至っては意識失った挙句に人格まで変わっちゃったし」

「でも今はジーナさんもアングリアさんも平然と鍛錬をこなしてますよ。鍛錬の成果が出てくれば問題はなくなります」

「成果が出るまでが問題だって言ってんの。お願いだから体調面に支障の出ない内容に変えてちょうだい…」


 もうアテーナとアルテには鍛錬に関して何を言ってもダメかな…。あー言えばこー言うで返ってくるし…。私も二人に鍛錬任せちゃってる身だもんね…。


「そういえばジーナ。私が不在の間セリアを起こしてくれてたんですってね?ありがと」

「いえ。起こし方が分からず少々戸惑いましたが…」

「なんかセリアが横っ腹蹴られたって言ってたんだけど?」

「揺さぶっても声をかけても起きるご様子がありませんでしたので、起こられる事覚悟で蹴らせていただきました」

「そんな覚悟決めなくても起きなきゃ放っておいて良いわよ?もしまた起こす機会があったら、あの子の鼻と口を軽く塞げば起きるわよ」

「お嬢様…、それでは呼吸困難に陥りますが…」

「塞ぎ続けろとは言ってないわよ。数秒手で塞げば良いだけ」

「なるほど、解りました」


 セリアの朝の起こし方について話し合った私とジーナとシャロル。

 私の場合はセリア専用目覚まし能力技を駆使できるから良いけど、他の人だとそうもいかない。だから単純かつ簡単な呼吸を止めさせるという内容をジーナに教えといた。さすがのセリアでもこれなら飛び起きるでしょ。





 それから時間が経過して、みんなが就寝に入ろうとする頃。


「ふあぁぁ~…、ねむ…」

「お疲れ様、セリア。今日もちゃんと仕事したんでしょうね?」

「え?なんで寝る直前になって圧かけられてんの?私」


(ちょっと二人とも寝る前に良いかしら?)

(ダメです)

(良くない)


 私とセリアがベッドに入ろうとしたタイミングでハルク様から念話が届いた。私とセリアは揃って拒否。


(ちょっとちょっと。神様が来いって言ってるんだから来なさいよ。待ってるわよ)


 結局ハルク様は私とセリアの要請拒否を弾き返してきた。


「何なのさ。まったく」

「仕方ない。行きましょう、セリア」


 私とセリアは仕方なく天神界へ飛んだ。







「来たわね、二人とも。どう?睡眠意識以外の方法で飛んできた感覚は」

「う~ん…、別になんとも」

「感覚は今までと変わんないかな」

「あれぇ?もっと驚きの感想が出ると思ってたのにな…」


 ハルク様は一体何を期待したのやら、私とセリアの感想に軽く戸惑ってる。


 そう、私とセリアは今回夢から天神界へ引っ張ってもらっているのではなく、収得した能力を使って身体ごと天神界へと移動している。

 以前は私しか使えなかった天地転移能力をセリアも今は使えるようになっていて、いつでも身体ごと天神界に行けるようなった。


「というか呼び出すならもっと早くにお願いします。なんで寝る直前に呼び出すんですか。せっかく脱いだ服をまた着ないといけなかったじゃないですか」

「今までは睡眠妨げるように意識飛ばしてきて、今回は寝る直前に目を冴えさせておこうみたいなタイミングで呼び出しとか、間違いなく悪質行為じゃん」

「いい加減ホントに訴えますよ?他の神様方にハルク様がわざと睡眠の邪魔してくるって言いますよ?」

「そうだ、この際ハルク神様の睡眠を妨害するか。徹底的に目を冴えさせて眠れなくして、気持ちを解らせてあげるよ」

「良い案ね。のるわ」

「待って待って!寝る直前に呼んだ事は謝るから!何度も言ってるけど説教はヤメテヨ!そして迫って来ないで!怖い笑みで迫って来ないでぇ~!」


 私とセリアの説教と睡眠妨害企画に後ずさりするハルク様。ホント神様らしくないな。

 その後ハルク様を半泣きにさせた上で、本題に進む事になった。


「それで、今回はどういったご用件ですか?」

「私達としては早く寝たいから三分で済ませてね」

「用件はちゃんと言うけど三分は無理」


 うん、ハルク様の言う通り三分は無理だと思う。セリアは何を基準に三分に指定したのかしら…?


「二人は日頃から、私や天神界にいる者達があなた達の行動を見ている事を理解してると思う」


 ハルク様は本題を切り出す。私からすれば見られてる感覚はないけど、時々ハルク様がツッコミ入れてきたりもしてるから、毎日常時誰か見てるんでしょうね。レイリーさんも頻繁にノワール見て泣いてるんだろうなぁ…。あ、そういえば今回はレイリーさんがいない。


「地上でのあなた達の活動を見る者達の中で最近、地上に降りる希望を出した子がいるのよ」

「地上に降りるって、今地上に降りてる人達みたいに?」

「そうそう」


 セリアの解釈に頷くハルク様。つまり地上にいるアテーナやアルテといった天神界メンバーに新しいメンバーが加わるのか。


「ただその子は私の直接の部下ではなくてね。私からその子が属する所の総括に掛け合って、今回地上に降りる許可が下りたの。今回はその子を紹介しようと思ってね」


 ハルク様の直接の部下じゃないってことは、会社でいう違う部署の人ってことか。


「てわけでさっそく紹介するわ。来てちょうだい」


 ハルク様が合図をとると、ハルク様の隣に女性が現れた。転移してきた?


「この子が今回地上に降りることになったアナよ」

「初めまして。アナと申します」


 ハルク様が紹介したアナという女性は、私とセリアへ礼儀正しくお辞儀してきた。お辞儀にちょっと品がある。元々お嬢様系なのかしら?

 濃い灰色の腰辺りまで伸ばした長髪。前髪も軽く目にかかってる。瞳の色は濃い黒色…だけど若干赤みがかってる。

 見た目の限り年齢は私やセリアと同じくらい。…いや、もう少し若いか。


 私が容姿観察してる間に、アナは何故かモジモジしてる。そして視線が私だけに向いてる。まるで何かの衝動を抑えているかのよう。


「あ、あの、ハルクリーゼ様…。動いてしまって良いでしょうか…?」

「別に良いんじゃない?判断はあなた次第よ」


 落ち着かない様子のアナはハルク様に何かを相談。私とセリアは何のこっちゃと二人で顔を見合わす。

 すると突然アナは衝動を解放したかのように動き出し、一直線に私へ向かって来て…、


「お姉様!」


 と言って私に抱き着いてきた。


「うわぁっと!お、お姉様!?」

「はあ?」


 突然抱き着かれた私はバランスを崩しかけるも何とか持ちこたえてアナを受け止めた。

 てかお姉様って何よ!?私に妹はいませんけど!?セリアも隣で困惑してるし!


「なんかね~、ここからアイラの事を見てるうちに、アイラの事を勝手に尊敬しだしちゃってさ。地上に降りてアイラの妹として生活したいって言い出したのよ」

「「はぁ?」」


 ハルク様の説明に私もセリアも困惑を強める。


「アイラお姉様。お姉様のご活躍や人々の信頼を集めるお姿に感激致しました。どうか私をハミルトン侯爵家の次女として迎えていただけませんでしょうか?」


 アナは私に抱き着いたまま目をキラッキラに輝かせながら願いを乞う。表情がノワールやランが見せるキラキラ表情と同じっていうかそれ以上でメッチャ怖いんですけど…。


「え、え~っと…」

「おい待てやコラ」


 困惑し続ける私の隣で、セリアはアナへ圧をかけ始めた。


「アイラと同じ神の眷属である私を放置して、会った直後にアイラに抱き着いて何を生意気なお願いしてんだよお前は。

 私はグレイシア王国の王でもあるんだぞ?私に一切の許可をとらないとはどういうつもりだ?あぁ?」


 あー…、セリアは自分がほったらかしにされた上に私に抱き着かれちゃったから悔しいんだ…。

 圧をかけるセリアに対して、アナはキョトンとしてる。


「とにかくアイラから離れろ!アイラにくっついて良い許可を出した覚えはない!」


 そもそもセリアにくっつく云々の権限を与えた覚えはない。


「お姉様~、この人怖いです~」

「アイラを盾にするんじゃねぇ!大人しく私に捕縛されろ!」


 私を挟んでセリアとアナが喧嘩し始めた。うるさいしうざい。


「あらあら~、さっそく仲良くなれたようで良かったわ~」

「微笑んでないで何とかしてください。ハルク様」


 ハルク様は完全に他人事になっていて、微笑みながらクスクス笑ってる。一方私はイライラが募っていく。


「ちょこまかするな!いい加減にしろ!」

「いい加減にするのはグリセリア様じゃありませんか!初対面の人にしつこく掴み掛ろうとするとか、暴力的でどうかしてますよ!」

「何も知らない相手に抱き着く方がどうかしてるわ!」

「ずっと直にお会いしたかった方に抱き着いて何が悪いんですか!」

「理由はなくとも十分悪いわ!クソガキが!」

「なんですかその理不尽な理由!しかも暴言とか王として問題ですよ!部下の方々に言いつけましょうか!」

「んだとこの野郎!」


(あー、もう…。マジうるさい…)


 私のイライラはそろそろ限界を迎えつつあった。


「いいから大人しくしろ!いい加減アイラから離れろ!」

「そちらこそいい加減ムキになるのを止めれば良いじゃないですか!大人げない!」

「……言い加減にするのは、あんたら二人ともよ!」

「「ぎゃあああああ!!!」」


 私はセリアとアナに雷系の魔法で同時に強めの電撃を浴びせた。

 電気を浴びた二人はその場に倒れて痙攣してる。


「まったく…、ギャーギャーと鬱陶しい」

「あははは…、アイラこわ~…」


 ため息をつく私の前では、ハルク様が苦笑いを浮かべながら何故か距離をとっていた。

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