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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十四章 渦の形成
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とある試験開催予定と、グリセリアの開発話

 リビングでくつろぎ始めた後は、アンゴラさんに現在までの私が持つ特殊能力や、私のここに至るまでの過去の詳細、私やセリアをサポートしてくれてる天神界メンバー、精霊達、神獣達、神龍等に関する説明に時間を費やした。

 そうしてなんだかんだ時間が経って夕方。セリアが今日の仕事を終えて別館に戻って来た。セリアの側近三人も一緒。


「アイラ~!」


 セリアは別館リビングに入るやいなや、たまたまキッチン近くに立ってた私めがけて飛びついてきた。…間にあったテーブルとかの家具全部飛び越えてきた…。浮遊魔法とかじゃなくてただのジャンプで…。

 ま、どれだけの勢いでも私が魔法や神力でうまく受け止めちゃえば問題ないんだけど。


「ただいまセリア。私がいない間にまた随分と仕事から逃げ回ったらしいじゃない?」


 私に抱き着いた後は私の胸に顔を埋めてぎっちりハグ状態だったセリア。だけど私がサボり話にシフトさせると、彼女はピタッと動きを止めた。


「な、何の事かなぁ?あははは…」


 とぼけつつ私から離れようとするセリア。でも私は既にセリアの身体を力を込めてホールドしてるから逃げることはできない。というか逃がすか。


「もう既にリリアちゃんからあんたが仕事放棄した情報は得てるのよ?逃げようたってそうはいかないんだからぁ」

「あ~!ごめんなさ~い!お許しを~!」

「あんたはいっつもそうやって許しを請うでしょ!もうさすがに私でも聞き飽きたわよ!今回ばかりはもう容赦しないからね!説教ではない別のお仕置きを与えてあげるわ!」

「そんなぁ~!うえ~ん!アイラがいじめる~!」

「いじめてないわ!リリアちゃんとオルシズさんの仕事の負担分とアリスが必死に追跡した労力分もしっかり償ってもらうからね!明日以降覚悟しときなさい!」

「うへぇ~…。…ん?明日以降?今じゃなくて?」

「今は無理よ。まだここに来たばかりの新しい仲間がいるし」


 私がアンゴラさんの方に視線を動かすと、セリアもアンゴラさんの方を見る。当のアンゴラさんは私とセリアを見たままポカーンとしていた。





 とりあえず私とセリアのやり取りは終了させて、改めて私はソファに座る。セリアも私の隣に座った。


「リリアから話は聞いてるけど、あんたが川端優さんで良いんだよね?」

「あ、あぁ。そういう君は宮本さんか…」

「そうだよ。今はグリセリア。この国で女王やってる」


 何故か上目線でアンゴラさんの前世の名前を確認したセリア。対するアンゴラさんは何故かセリアに戸惑ってる。両者何故に?


 それからはオルシズさんとアリスをアンゴラさんに紹介。その後は私から龍帝国での出来事を伝え、セリアからは私がいない間のグレイシア政府の動きとセリアの周辺環境を聞いた。


「竜の巫女か~。ネーミング的にカッコイイね。やっぱ竜族の民から崇められたりするの?」

「崇められるまではいかないと思うんだけど…。どういう状況であれ、果たして本人のメンタルがどこまで持つか…」

「その子にも仲良しはいるんでしょ?孤独じゃないなら大丈夫なんじゃないかな?ところで私もいつか龍帝国付いてっちゃだめ?」

「ん?セリアも行きたいの?龍帝国」

「個人的に言うとどういう所なのか見てみたいし、パンゲアっていう旧都市もなんか気になる。立場的に言うなら龍帝国の首相と会って正式な友好条約とか、政治的にも文化的にも国同士で交流できたら良いなって思って」


 個人としても女王としても龍帝国に行ってみたいと言うセリア。友好とか交流とか考えてるあたりちゃんと女王。これで日々の仕事をサボらずこなしてくれたら完璧なんだけどなぁ…。


「あんたが行くとなったら一旦グレイシア政府から使者を出して、龍帝国政府と打ち合わせしてからじゃないと難しいかも。まぁ、使者がいなくても私から説明できるけど。どっちにせよ突然他国の王様が来訪してきたら向こうは大慌てよ。ね?キリカ」

「そうですね。龍帝陛下のおっしゃる通りかと。時間をかけた事前準備は必須となるでしょう」


 キリカに話を振ると、キリカは頷いて私に賛同した。


「ん~、そーなると私が龍帝国行けるのはだいぶ先かぁ~…。まだ国内案件落ち着かないし…」

「龍帝国政府に知らせる前に、閣僚会議で賛成をとらないといけませんしね」


 ため息を付くセリアに、閣僚会議での賛否も必要と言うオルシズさん。


 セリアの言う通り、彼女自身が龍帝国を訪問できる日はまだ遠いと思う。グレイシア王国内に関してはまだ私とノワールの領地開拓が動き始めたばかり。私が閣僚会議でアドバイスした道路整備事業や医療費問題に関しても関係機関との話し合いを重ねてる最中らしいし、他にもセリアが自ら発表した事業案や改革案がまだまだ山積してる。その上でセリアは自分のやりたい事を仕事をサボりながらガンガン推し進めてるんだから、この子が落ち着く状態になれるのは何年先になるのやら。


 それはそうとやる事といえば、私がパンゲア視察をしてた間に、ノーバイン城においてある事が企画されていた。


「報告の中にあったけど、使用人募集するの?」

「うん。ノーバイン城で仕えてくれてる使用人の数は城の規模に対して少ないんだよ。今までずっと棚上げしてた問題なんだけど、最近ジーナ見てたらやっぱ増やさないとダメだなって思って」


 なんでジーナを見て思ったのかは知らないけど、セリアは城で仕えるメイドを増やす決心をして、国内に募集をかけたらしい。


「使用人増員案は既に閣僚会議で可決済みです。これまで棚上げされたままの事案でしたから、解決には閣僚達も賛同していました」


 ってオルシズさんも言ってるし、セリアがまた威圧をかけたわけではなさそう。

 そもそも城の使用人不足は先々代の国王、つまりセリアのお爺さんの代には既にあった問題らしい。使用人って城や屋敷に住めるし、勤め先で差はあっても他の職業と比べても給料良い方らしいし、礼儀作法も嫌でも身に着くから、仕事は大変だけどやりたいっていう人が多いんだそうな。

 なのに使用人不足になってる。この原因はさっきオルシズさんが説明してくれた。


「これまで過去の使用人募集要項では、使用人としての最低限の職務が出来る事。という項目が入っていました。これが使用人採用における弊害になっているという事で、今回項目から削除しました」


 ということらしい。こんな項目があるのはノーバイン城のみだったらしく、今回撤廃したとのこと。そりゃ採用試験段階から完璧を求められたら募集かけても来ないわな。


 なお、この使用人募集の件に関してはあくまでノーバイン城内の事なので、他の貴族達は基本的に関わらない。でもなーんか私自身も関わりそうな気が…。


「もしかしてなんだけど、この件で私に何か関わらせようとしてない?」

「お?さすがアイラ。解ってるね~」


 やっぱ関わる事になるか。セリアの事だからそうだと思った。


「私まだ自分の領地開拓で忙しいんだけど。開拓させてくれないならノンストップトライアスロン一週間やらせるわよ?」

「なんかカッコイイネーミングだけどただの地獄じゃん!休憩なしに一週間もトライアスロンやったら、いや休憩ありでも身体壊れる!そこはせめて普通のトライアスロン一回で勘弁して!」


 ノンストップトライアスロン一週間の刑にツッコミを入れるセリア。でも普通のトライアスロンは許容範囲内なんだ…。


「トライアスロンか…。そういえば前世でやりたかったけど出来なかったな…。できる環境があればやりたいが…」


 アンゴラさんだけトライアスロンに反応してる。やりたかったんだ…。


「勿論ユートピア領の開拓は進めて良いよ。でも今回の件にはアイラに手伝ってほしいんだ」

「使用人の職務知識には私は疎いけど…。何を手伝えば良いの?」

「それはね、オルシズ説明たのも」

「はい」


 セリアは説明をオルシズさんに丸投げした。でもオルシズさん冷静に頷いてるから、多分オルシズさんも振られるの分かってたわね?


「使用人希望者が集まりましたら、まず希望者の出身地や身分、家族構成等を確認しなければなりません。しかしこれらは全て希望者が書面に記入してもらう項目です。ゆえに一つの懸念が発生します。それが虚偽を書いて侵入してくる潜伏者の存在です」


 あぁ、なるほど。使用人希望者に紛れてスパイとか暗殺者とかが入ってくる可能性を考えてると。まぁ、セリアは女王だし、それは懸念するわよね。


「女王陛下からお伺いしたのですが、アイラさんはその者が嘘をついているかどうか見極める事が出来るとか」

「えぇ、できますよ。セリアも能力的にできるはずですけど」

「習得してないそうです」

「……」


 私と同じくハルク様の眷属であるセリアなら、虚偽探知能力を持つ事はできるはず。でもどうやらセリアはまだ習得に至ってないみたい。私もセリアがあれを使えるって聞いた事ないし。

 私がセリアに視線を向けると、セリアは壁がある方向へ首を向けたまま動かない。必死に目を逸らしてる。ちなみにアテーナとアルテもセリアをじーっと見てる。普段セリアが鍛錬嫌がるから、言いたい事積もってるんだろうな…。


「つまり私の虚偽探知能力で、危険人物がいないか確かめてほしいって事ですね?」

「おっしゃる通りです。それと同時にもう一つお願いがありまして、シャロルさんをお借りしたいのです」

「え?」

「シャロルを?」


 虚偽の見極めは了承したものの、オルシズさんはさらにシャロルのレンタルをお願いしてきた。これにはずっと黙って聞いていたシャロルもビックリしてる。


「実は試験官を決める上で、試験官の一人となっている使用人長よりシャロルさんを試験官の一人にしてほしいと要望がありまして…」

「わ、私が試験官ですか!?」


 シャロルは自分で自分を指差して、信じられないという表情をしてる。


「現在ノーバイン城で勤務している使用人は皆、シャロルさんの実力を認めております。使用人長もその一人でして、是非シャロルさんの試験官としての眼も見てみたいと」

「シャロル、同業者から認められてるわよ。良かったわね」

「…認めてくださっている事は嬉しゅうございますが、試験官は少々荷が重いと言いますか…」


 あ、シャロル断る気ね?


「解りました。シャロルお貸しします」

「お嬢様!?」


 私が突然オッケー出したせいか、シャロルは絶叫の表情。


「シャロル、これは良い機会よ。今後私の領地で使用人を雇う事になった時、今回みたいに募集をかける事になるわ。そしたらその統括試験官は必然的にあなたがやるのよ?その練習だと思えば、今回の件は思わぬ特訓になるじゃない」

「え?お嬢様のお屋敷で働く使用人を私が統括して決めるのですか?トンジットさんではなく?」

「わたくしめは眺めている程度しかできませんな~。はっはっは」


 シャロルからの振りを爺やは笑って流す。


「確かに爺やは執事として長年経験を積んできたし、執事を相手にするなら爺やにお願いするかもしれないわ。試験官として統括するだけの能力もあるでしょうね。でも今私が言ってるのは使用人が相手の場合。そもそもあんた、神獣に試験官やってもらうつもり?」

「それは…」

「現状爺やを除いて最も使用人経験が長くて豊富な知識に精通してる使用人はあなたよ?シャロル。私から見れば他に適任はいないわ。あなたがそっちをやってる間、代わりはジーナが務める。それもジーナにとって修行の一環になる。

 それに人を見る力を養えば、シャロル自身の視野も広がるはずよ。あなたが私のために使用人として高みを目指してくれてるのなら、これほど都合の良い機会はないと思うけど?」

「……」

「シャロルさん。わたくしめも悪い話ではないと思いますぞ?」


 考え込むシャロルにトンジットさんも私に賛同する声を上げた。


「…解りました。試験官のお話、引き受けさせていただきます」

「うん、ありがと」

「感謝致します。試験官の役目に関しましては後日詳細をお伝え致します。使用人試験が終了次第、報酬はお渡しします」


 シャロルの引き受けにセリアとオルシズさんが礼を述べた。シャロルももう指導をする側のメイドなんだから、そろそろその辺は意識してもらわないと。

 多分私に仕えてるメイドがシャロル自身とジーナしかいないから、指導役やまとめ役っていう感覚がないんだろうなぁ。


「良かったぁ~。シャロルさんが協力してくれて一安心ですぅ」


 何故か急にホッとして脱力するリリアちゃん。


「使用人は城の関係者、つまり兵士や役人の方々とも接します。その点を踏まえ、試験官の中には軍や役人の中でまとめ役となっている方々もいるのです。

 その関係で試験官として招集されている方の中にリリア殿のお父君の名前もあったのですが、辞退されてしまったためにリリア殿はずっと頭を抱えていたのです」


 というのがアリスの説明によるリリアちゃん脱力の理由。つまりリリアちゃんのお父さんも試験官をやる予定になってたけど、断られたと。というか拒否権はあるんだ。


「まったくお父さんときたら、責任持てないし胃が痛くなるから嫌だとか言って一方的に断っちゃって…。私が何言ってもヤダの一点張りで。ホンット仕事出来てないんだからこういうところで頑張ってほしいのに…。結局私がいろんな人達へ謝りに行く羽目になったんですよ!」

「そ、そうなんだ…」


 リリアちゃんが私に向かって自分のお父さんの事を愚痴り始めた。普段城でセリア相手に色々苦労してるリリアちゃんだけど、もしかして家ではお父さん相手に苦労してるんじゃ…。

 にしても胃が痛くなるから嫌だって…、逆に断る勇気で胃が痛くならない?


「まあまあ、試験官招集に法的権力的強制力はないんだからしょうがないよ。こっちから拒否権も与えちゃってるしね。ここはリリアが引いときな。誰も責めやしないよ。……仕事できないらしい点は否定しないけど」

「何度も説得して駄目だったのですから、今回は諦めましょう。……仕事ができない点は否定しませんが」

「無理やりやらせたところで互いに気分良くありませんしね。……仕事できない事は確かですけど」

「も~!みんなして仕事できない事を肯定しないでくださいよ~!事実ですけど私に刺さります!」


 セリア、オルシズさん、アリスの三人がリリアちゃんに諦めと励まし送ったけど、同時に三人してリリアちゃんのお父さんが仕事できない事を肯定してきた。リリアちゃんはプンスカしてるけど、女王であるセリアや首相であるオルシズさんが言うくらいだから、リリアちゃんのお父さん、職場で相当足引っ張ってるのかな…。


「あ、そうだアイラ。これは私から案を出して採用された事なんだけど、今回の採用試験の受験希望者が予想より多かった場合で、もし勤務先がノーバイン城じゃなくても良いって人がいたら、アイラかノワールに割り振ろうって事になったんだけど、どうかな?」

「それって今回の試験を利用して私とノワールの領地へ採用しちゃっても良いってこと?」

「そーいうこと。あくまで希望者が多くて、本人がオッケーした場合っていう条件付きだけどね。ちなみにノワールからは了承済み」


 セリア、ナイスアイデア。いずれ使用人を雇わないといけないと思ってた私にとって、こんなかたちで雇えるチャンスとは朗報中の朗報。受け入れない理由がない。


「解った。私もノワールと同じ。案を受け入れるわ」


 私もセリアの案に乗っかり、後は試験開催を待つのみとなった。…開催日はまだ確定してないらしいけど。







 その後はリリアちゃんのセリアサボり記録の公表に移った。セリアが何度も逃げようとしたから、最終的に私はセリアに絞め技をかけてリリアちゃんの報告を聞いていた。

 報告を聞いてるうちに陽が暮れてしまったため、セリアの側近三人は帰宅。シャロルとジーナはアンゴラさんを部屋へ案内し、城の内部に関して説明をしている。

 他のみんなも各々フリータイムとなり、私とセリアは早めのお風呂。


「ところでさっきの会話の中でさ、リリアちゃんのお父さんが仕事できないとか言ってたけど、それって仕事が遅いとかそういうこと?」

「まぁ、そーいうことだよ。一応娘のリリアが私の側近っていう事もあってそこそこのポジションに就かせてるけど、正直リリアの影響力がなかったらとっくにクビだよ」

「ほぼお荷物扱いじゃん!そんなにヒドイの!?」

「私も直に仕事してる光景を目にしたことがあるんだけど、他の役人達が一時間程度で終わらせてる仕事に半日かけてるからね。気弱なタイプでコミュ力もあるわけじゃないからさ、報連相が上手くいかない時も多いらしいし。リリアもしょっちゅう頭抱えてて、頻繁に同じ部署の人達に頭下げてるよ。

 こういう言い方悪いのかもしれないけど、リリアが尻拭しりぬぐいしてくれてるおかげでクビにならずに済んでるようなもんだよ。そのくせして休憩はガッツリ一時間とるし、今回の使用人試験の件だってソッコーで断ってくるし、もう同業者からの印象最悪になってる事に気付いてないのかな?って感じ」


 そこまでなんだ…。単純に仕事が合ってないのか、職場環境の問題か、マジで技量の問題か…。


「リリアちゃんのお母さんはその事知ってるの?」

「リリアが話してるらしいから知ってはいると思う。でもリリアのお母さん超温厚な人でさ、基本的に誰かを指摘する事はないんだよね。常に黙ってニコニコみたいな。リリアもお母さんが怒ったところ、過去に一度も見た事ないって」


 元々イライラしないタイプなのかな?リリアちゃんのお母さん。よく普段ニコニコしてる人ほどキレると怖いっていうけど…。


「あ、でもリリアいわくお母さんは家事をこなす早さが半端じゃないんだって。リリアの仕事スピードの早さは母親譲りなのかもね」


 半端じゃない家事の早さってどんなんだろう?ちょっと見てみたい。

 でも確かに自分の仕事を片付けて、セリアの仕事サボりで空いた穴を埋めて、自分の父親のバックアップまでしてると考えれば、リリアちゃんの職務速度は凄まじい早さって事になる。ここでお母さんからの遺伝が出てるのね。


「ところでお風呂上がったらちょっと相談したい開発案があるんだけど、時間良い?」

「あぁ、サボりの賜物?」

「……」

「せめて誤魔化すか謝るかしなさい。黙秘してんじゃないわよ」

「…ごめんなさい」


 サボりでアイデア作ったって認めたよ。まったく。


「で?今度は何を開発しようって?」

「……銃」

「は?」

「拳銃、猟銃、ライフル、バズーカー砲、対空地上ミサイル…」

「待った待った待った!てっきり生活用品かと思いきや何を物騒なもん作ろうとしてんのよ。これじゃあんたまでノワールと一緒でアストラントとの戦争意識しちゃってる事になるわよ」

「別にアストラントは意識してないよ。ただ軍備に新しい物をって王女の頃から思ってて、銃の開発、製造、量産ができるようになれば、その流れで家電も作れるかなって…」

「何をどう繋げたら家電の構想になるのよ…」

「実はもう姉さんとヘーパトスに相談はしたんだけどさ…」

「セレス様とヘーパトスさんに!?まさかもう開発始まってるんじゃ…」

「相談したらアイラからオッケーが出るまで案は凍結って言われた」

「二人が真っ当で良かったぁ~!」


 まだ銃の開発が始まってない事に安堵する私。


「……」


 そんな私の隣で顔の下半分まで湯の中に浸かり、目線を逸らしたまま黙りこくるセリア。こりゃまだ何かあるわね?……まさか一人で既に銃の開発に着手しちゃってるとかじゃないでしょうね…?


「あんたまだ何か言い残してるでしょ?」

「……実は…」

「実は?」

「…一人で勝手に拳銃の試作品作りました」


 予想当たっちゃったよ~!ホントこの子は一人で色々と~!


「セリア」

「は、はい!」


 セリアは何かお仕置きされると思ったのか、私に対しておっかなびっくりになってる。


「お風呂上がるわよ」

「へ?」

「上がって銃見せなさい。壊すから」

「壊すのは確定なの!?待ってぇ~!断じてやましい気持ちで作ったわけじゃないからぁ~!怒らないでアイラぁ~!」


 先にお風呂から上がって脱衣室に向かう私の後ろを慌てて付いて来るセリア。

 しかしまぁ…、銃なんてまた物騒な物を作るとはね…。さすがにセリアでも銃は作れないだろうと思ってた私が甘かったわ。

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