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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十三章 国の跡
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視察終了から龍帝国出発まで

 パンゲア視察を終えた翌日。

 一緒にパンゲアを視察した兵士達は各々休暇中。同行者の中で役人であるダーナとオリガも同様に休暇中。ただしダーナのみ特別無期限休暇となってる。

 龍帝補佐のキリカ、龍帝専属使用人のルル、龍帝専属護衛のアンゴラさんの龍帝側近三人も一時的に実家に帰省中。今回のパンゲア視察は龍帝国民の誰もが心配していたという事もあり、三人にも「元気な姿を家族に見せてあげて」と私が指示して帰させた。だから龍帝居住区には今日は私とシャロルだけ。


 ダーナが竜の巫女である事は、昨日の報告会議が終わった直後に彼女の精神面を考慮して私から箝口令を敷いた。だから龍帝国の世間にはまだ知られていない。

 その代わりに既に話題となっている事がある。それがパンゲアでのミハイとアルフェンの活躍。この国ホント話が広まるの早いわよね…。

 ミハイは竜文字を解読したことで私が評価した事が話として大きくなってるらしい。早速いろんな憶測が飛び交ってるそうな。特に可能性が高い憶測というのが、私の側近入りらしい。今のところ側近にする気はないんだけど…。

 魔物に対して果敢に立ち向かったアルフェンに関しては、その勇敢さが龍帝国軍上層部の間で高評価だそうで、近々昇格する事がほぼ確実らしい。

 この若い二人の兵士はすっかり時の人ね。


 それからアルフェンがランの幼馴染だという点について、私は昨日のうちにランに興味深々を全面に出して訊ねた。そしたら若干引き気味になりつつ答えてくれた。


【疎遠と言いますか…、まぁ、疎遠ではありますが…。私が盛んに暴れ始めた辺りから距離を置かれるようになってしまいまして…。私は関係を切るつもりは全くありませんでしたし、時々姿を見かけては話をかけようとした事もあったのですが、どういうわけか逃げるようにいなくなってしまうばかりで…。

 私が荒れていたのもあったのかもしれませんが、何か怒らせるような事をした覚えもありませんし、彼の事は正直未だに戸惑っているんです】


 だそうな。結局のところアルフェンが一方的に距離を置いて、ランはずっと困惑したまま時が過ぎて行ったってわけね。これだとランが可哀想。そろそろまた友達関係を戻しても良いと思うんだけどなぁ。






 でもってさらに翌日。チェンハ業務長が頼んでいたシャロルによるドラゴ宮殿使用人講座が行われた。シャロルが指導役となって、チェンハ業務長を中心とした使用人達が生徒となる。

 私も会場の片隅で様子を見てたんだけど、使用人達みんなメッチャ熱心な表情になってた。みんな向上心があって良い事。そしてその間も時々ドジを踏むルルにほっこりした。






 さらに三日後。私とシャロルがグレイシアへ戻る日となった。もちろんこれまで通りキリカも一緒。そして新たに私の護衛としてアンゴラさんが一緒になった。

 今は龍帝居住区内でせっせと準備中。…訂正。私の準備はシャロルが……もう言わない…。


「なんか今回はバタバタな状態で去る事になっちゃったわね」

「そうですね。そもそもそれはお嬢様がパンゲアに行きたいなどと駄々をごねた事が原因でして…」

「シャロルおだまり」


 確かにシャロルの言う通り私が悪かったのかもしれないけど…、あぁ、言い返す言葉が見つからない。


「次に龍帝国へ戻った時、兵士達の状況が不安ですね。私は」

「なんで?」


 キリカは何故か龍帝国軍兵士達の事を心配してる。


「今回のパンゲア視察では、多くの兵士が同行を辞退しました。実際に最後まで同行した兵士の数は当初招集されていた数の4分の1です。

 龍帝陛下が罪に問わないと表明された事で、辞退した者達へのお咎めはありません。しかし罰がなくとも世間の目はそうもいきません。

 今回はミハイやアルフェンといった下級兵士が視察において躍進を見せました。軍上層部もこれを評価して相応の報酬を与えるでしょう。これは龍帝国軍に属する兵士として誇れる事ですし、世間からも評価されます。

 二人程の躍進を見せられなかった兵士達も、危険地帯へ踏み込んで無事に帰って来たわけですから、十分に誇れる事です。

 対して視察を辞退した者達は全く逆となります。巨獣が多く生息している危険な場所とはいえ、竜族にとって龍帝陛下と共に行動できるという事は生涯自慢し続けられるほどの事です。ましてやミハイやアルフェンのように活躍できたのなら尚更。それほどに貴重な機会であり重要任務だったはずのパンゲア視察を放棄した者達は、兵士としての民への威厳を失う事に繋がります。【あいつは与えられた任務から逃げた】【龍帝陛下をお守りする役目を嫌がった】【逃げた兵士なんて信用できない】そういった目で見られる事になるでしょう」


 キリカの言ってる事を整理すると、今回のパンゲア視察に同行した兵士達は世間的に評価される。ミハイやアルフェンみたいに活躍できた兵士はもっと高評価される。

 しかし視察を辞退した兵士達は、私の言で不問ではあるものの、今後の兵士生活に支障をきたしかねない程世間からの信用を失う。ってことか。


「ん~…、私に同行できた事が竜族にとって名誉だとして、いくらその名誉を自ら蹴ったからってそんな事になるもの?私一個人の感覚だとちょっと大げさな気もするんだけど…」

「キリカ補佐が言っている事はハズレではないと思うぞ」


 私の意見に返答してきたのはアンゴラさん。


「この国は今、およそ二千年ぶりに現れた龍帝の存在と、その龍帝が国を立て直して新政権を作った活躍で全体的にかなり沸き立っている。

 その最中である現在において龍帝と行動を共にできるのであれば、それは名誉中の名誉であり、多くの者に自慢できる。

 例え行動を共にした先で自分の命が尽きたとしても、それは命をかけて龍帝を守った英雄として祀り上げられる。生きて帰って来れたなら胴上げものだ。

 しかし自らその任務から離れてしまえば、それは龍帝の命よりも自分を優先した悪い奴という認識になってしまう。つまりは悪者扱いさ」

「えぇ~?そんな事なる~?」

「君はもう少し周囲への影響力を考えた方が良いかもな。今の竜族にとって、神龍を宿す君の存在は神様同然なのだから」

「だからってそんな胴上げやら悪者やらって…」

「今回同行した兵士の中に私の実家の近所に住んでる仲間がいたんだけど、私が実家帰ったらご近所さん達に胴上げされてたよ」

「マジですか…」


 実話だったんだ…。じゃあ竜族から見る私ってハルク様とほぼ同じ扱いってこと?私そこまで全能じゃないよ~ぅ!単純に神龍が中にいるだけだっていうのに~!私はハルク様みたいに中身残念美人じゃないよ~!


(誰が中身残念ですって?)

(仕事してください)

(うるさいと言わんばかりに即答してこないで…)


 ハルク様が念話でなんか言ってきたから、とりあえず仕事しとくよう即答しといた。……ハルク様、美人って部分だけ否定しなかったわね…。


(なんだ?既にアイラの方が上手うわてか?これはいずれ立場逆転となるのか)

(そんな簡単に逆転されてたまるもんですか。神への道のりは険しいのよ?私だって神として本気出せばアイラ以上の事を…)

(その本気とやらを出して仕事をする時はいつ来るのだ?頻繁にオリジンに怒られているようだが?)

(……)


 いやハルク様黙っちゃったよ。神龍がハルク様を黙らしちゃったよ。ていうか仲良いな。

 とりあえず放っておこ。


「あ、じゃあいつかまたパンゲアへ向かう機会が訪れたら、今回辞退した人達を連れて行けばいっか。今回同行した人達が無事に帰って来れた事は証明できてるし、前例がある以上少しは気持ちも楽でしょ」

「なるほど。そういった判断もできますね。辞退した者達の汚名返上にもなりますし。龍帝陛下のその慈悲深さには感銘します」

「別に慈悲で言ったわけじゃないんだけどな…」


 単純に思い付いた事言っただけなのに、キリカに過大評価された。


「さて、そろそろ行きましょうか。みんな忘れ物ない?」

「仮に忘れ物をしましても、私が命をかけてお預かりしますのでご安心ください」

「ルル。忘れ物に命かけるのはおかしいから。忘れた側が色々気を遣うから」


 何故か忘れ物に命をかけようとするルルにツッコむ私。冗談なのか…、本気なのか…。


「ルルさん。次回私はお伺いできるか分かりませんが、今回お教えした事を次にお嬢様が来られる前までに身に着けてくださいね。お互いに頑張りましょう」

「はい、シャロルさん。ご指導ありがとうございました。教えてくださった事は必ずものにして見せます。また来られる時をお待ちしております。また会えましたら、シャロルさんの事もお客様としてもてなす事ができるよう精進します」

「あら、言いましたね?ならばいつかルルさんからもてなしを受けられる時を楽しみにしましょう。期待してますよ」


 シャロルとルルの間にはすっかり先輩後輩?いや、師弟関係?分かんないけどなんか付いたらしい。

 別に良いんだけど、タッグ組まれて私の自由無くされたらヤダなぁ…。現にシャロルとジーナに外出準備時の行動ほとんど潰されてヒマしてるし…。






 龍帝居住区を出た私達は、前回と同様に宮殿広場へ向かう。

 広場にはラン、ニースさん、サララ、ヤマタさんが見送りに来てくれてる。他にも役人達や兵士達、今回シャロルから使用人講習を受けたチェンハ業務長率いる使用人達もいる。

 でも前回より数は少ない。今回は国家規模の事はしてないし、前回見送りに来てくれてたランの不良仲間も今は各々働き始めてるらしいし。それにパンゲア視察した面々は休んでるし、視察辞退した面々は動けないだろうし。


 ところでランが何故かしゅんとしてる。


「ラン、どうしたの?」

「今回は悔しかったなって思って…」

「なにが?」

「龍帝陛下の歓迎催しが出来ないまま陛下のグレイシア帰国日になってしまって…」

「その企画まだ存在してたの!?ラン一言も言ってなかったじゃん!」

「それはまぁ、陛下がパンゲアに行きたいとおっしゃったのでそちらを優先に…」

「なんかごめん。てかホントに歓迎催しとかなくて良いから!今更過ぎるわよ」

「それは個人的に納得できません」

「個人じゃなくて国民全体を考えた事を企画しなさい…」


 なんでこの子は未だに私の歓迎会を開く気でいるのかしら…?


「しかし国民からの要望を陛下自らパンゲアへ出向いた事で落ち着かせてしまわれたのですから、陛下が楽しんだとはいえ行動力には感服致します。それまではずっと政務室で頭を悩ますだけでしたから、また陛下に助けられるかたちとなってしまいました。これでは私もまだまだですね。もっと陛下に近づけるよう頑張ります。次こそは陛下がゆっくりくつろげる時間を提供できるようにしますので」

「そんな気にしなくて良いのよ。私はただ楽しんでるだけ。解決できない問題に当たったら何でも言ってちょうだい。私はいつだって力になる。それもまた龍帝の務めだから」


 ランはまだまだ成長段階。そもそも就任から一年も経ってないし。これから時間をかけて立派な首相へと成長していくでしょうね。

 そして成長途中なのは私も同じ。ハルク様に近づくためには、もっともっと多くの経験を広く深く重ねないと。だから神の眷属として、龍帝として、人として協力できそうな事には協力していく。その問題の先に悪党がいるなら容赦なくぶっ飛ばす。それが私のすべき事。

 だからこそ歓迎会とかいらない。まったりする時間なら時々あるし。


「ニースさん。ランの補佐、引き続きお願いしますね」

「はい。心得ております」

「サララ。ダーナの事、お願いできる?あの子が竜の巫女として悩んでるのは確かだし、悩んだ末に単独行動し始めないか心配なの。まぁ、いきなり竜の巫女だって言った私が言える事じゃないけど…」

「ご心配されずとも、ダーナならきっと本来の明るさを取り戻すと思います。私もオリガも勿論助言補助しますが、彼女は昔から短い期間で心の沈みから上がってくる子なので」


 ダーナの事に関しては、今ここにオリガがいないからサララにしか頼めない。サララは大丈夫だと言ってるけど、私はやっぱ心配。


「そもそもダーナの件は陛下がもっと早い段階で周囲や本人に伝えていればこうはならずに済んだのです。それをずっと黙ったままで突然告げるから…」

「解ったから…。悪かったってば…。話はグレイシアでいくらでも聞くから…。次にこっち来た時は改めて本人に謝るから…」

「本当ですか?言うからにはちゃんとしてくださいよ?」

「ちゃんとするわよ。セリアじゃあるまいし」

「自らのご親友を悪い例に出すのはいかがなものかと…」


 未だにダーナの件に関してキリカからネチネチ言われる私。でも全面的に私が悪いから何も言えない…。


「ヤマタさん。ダーナの無期限休暇分のお金、すいませんが管理お願いします」

「ええ。分割でダーナちゃんに渡しておきます。お任せください」


 私が出すと言っていたダーナの休暇に伴う有給のお金は既に私がランを通じてヤマタさんに渡した。金額的に大きいので、ヤマタさんに管理をお願いしておいた。クラッセン親子に任せておけば問題ないでしょ。


「よし。じゃあそろそろ出発するわよ」

「「御意」」


 キリカとアンゴラさんは同時に竜化。私とシャロルはキリカの背に飛び乗った。


「じゃあまたね。ラン、ニースさん、サララ、ルル」

「はい!今度こそ歓迎の催しを!」


 ランまだ言ってるよ…。歓迎会はしなくて良いって…。


「またのお越しを」

「お待ちしております」

「次はもっと良いご奉仕が出来るよう頑張りまーす!」


 ニースさんとサララは一つのセリフを二分割したかのような発言。ツッコみたかったけど、ルルにほっこりしたからやめた。


 見送りに来ていた他の面々にも手を振って、私達は龍帝国を離れた。こうして私は二度目の龍帝国での活動を終えた。今回は大半パンゲアだったや。

 アンゴラさん、優先輩とも無事再会を果たして、一緒に行動できる事になった。きっとこんな感じで前世の頃の人達増えていくのかな。


「さて、グレイシアに戻ったら領地開拓を再開しなきゃ。政府の閣僚達がまた新しい要求してないと良いんだけど。あとノワールの方もどの程度進んだのか気になるわね。それからジオのノワールへの片想いも…」

「お嬢様。三つ目はお嬢様の活動と関係ないように思えますが?」

「関係あるのよ。前に王都フェルゼンの公園でセリアと一緒にジオに圧かけたんだから。ジオがノワールを諦めようものなら私とセリアが動き出すわよ?」

「他所様の恋愛事情に女王陛下と貴族侯爵が首を突っ込むのはいかがなものかと」

「いーじゃないのよ別に。そこまでの邪魔はしないわよ。あくまで見守るだけ。それにあんただってこのまま良い相手に出会わないようだったら私が探すつもりでいるんだからね?他人事だと思わないでよ?」

「はいぃ!?お嬢様何ですかそれは!?全くの初耳なのですが!?」

「だって今まで言ってないもん。個人的にあんたの私への忠誠心見てるうちに婚期逃しそうで怖かったから考え始めてるのよ」

「いやまぁ…、確かに相手はいませんが…。これから見つけられるかと言われれば…、そうではないかもしれませんが…」


 私のシャロルの結婚相手探し企画の暴露に、シャロルは言葉がゴニョゴニョし始めた。シャロルなら良い見合い話とか来そうな気がするんだけどなぁ。美人だし。


「アイラ…。どんどん他所様の中に突っ込んで行くな…」

「ホント変なところ厳しいのですから…」

「言っておくけどキリカとアンゴラさんもだからね?」

「「まさかのとばっちり!?」」


 アンゴラさんとキリカがボソッと言ったのが聞こえてた私は、二人も相手探しの対象である事を伝えた。そしたら二人してビックリしてた。

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