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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十三章 国の跡
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会議と、若き兵士との雑談

後半で視点がアイラから外れます。

 キャンプに戻った後は視察団の中心メンバーと明日以降の予定について会議を開いた。

 ドラゴ宮殿は既に内部崩壊、竜神殿は天井崩落によって入る事が出来ない。これで視察団の調査対象は実質なくなってしまったことになった。


「これならいっそ、パンゲアから距離はあるけど滝とかこっち側の海沿いとかを見に行く手もあるけど、どうかな?」

「しかし陛下。それだと数日は移動し続けることになりますが…」

「飛んでも?」

「行けないわけではありませんが…」


 こんなにも早い段階で現状の目的がなくなってしまった事に私は物足りなさを感じて、パンゲア以外の範囲を見てみる事を提案してみた。けどキリカは賛成できない様子。


「キリカは嫌?」

「いえ…、その…、私はてっきりもうドラゴ宮殿へ帰るものだと思っておりました故、まさかパンゲア以外の範囲まで見たいとおっしゃられるとは思わず…」


 キリカは賛成反対というよりも、私が突拍子もない事を言ってきたことに戸惑ってるだけらしい。


「ん~、じゃ帰る?」

「アイラ。視察団の人達の疲労もあるし、現状のみんなの様子を見る以上、帰った方が良いと思う。他の範囲の調査なんてまた出来るだろうに。

 それにいくらアイラが平気だとしても、一国の帝が一時的でも瓦礫の下敷きになったんだ。その時にみんなが精神に受けた影響を考えてほしい」

「私もアンゴラさんの意見に賛成です。お嬢様」

「シャロルも~?」


 アンゴラさんはキッパリ反対。そこにシャロルも同調してきた。


「はい。アンゴラさんの意見に付け加えるならば、突然自身が竜の巫女だと知らされたダーナさんへの負担もです。お嬢様が竜神殿で瓦礫に埋もれた際のダーナさんの混乱ぶりは他の方々と比べても明らかに異常でした。おそらくは竜の巫女絡みでダーナさん自身に負荷のようなものがかかっておられるのだと思います。このまま視察を続行した場合、ダーナさんが平常心を維持できるか疑問に思います」

「うん…、それは確かにだけど…」


 シャロルの言う通り、ダーナは自分が竜の巫女だと知ってから空元気のような時がある。今日私が瓦礫から脱出した後のダーナは明らかにフラフラだった。多分心のバランスが揺らいでいて、それが身体に出始めているんだと思う。あれはもしかすると、感情を持つ者が壊れる前兆というものなのかも…。


「あ、あの。私も今回は宮殿に帰った方が良いと思います。私もダーナさんが心配で…」


 ルルもダーナの事が心配らしい。もうこれは私の案は我儘というものね。…いや、そもそも発案するべきじゃなかったか。私もまだまだ周りが見えてない。


「解った。今回のパンゲア視察は本日をもって終了。明日ドラゴ宮殿に帰還します」


 こうして、今回のパンゲア視察は終了となり、明日ドラゴ宮殿に帰り次第解散となる方針が決定された。

 …よく考えてみれば今回のパンゲア視察そのものが私の我儘から始まったんだっけ…。今の私我儘ばっかだな…。私の今の課題は自分自身の見直しか…。







 会議後。みんなそれぞれ自由行動の時間になってるんだけど、みんながまだ動き回ってる中、キリカだけ布団の上で伏せてしまっていた。睡眠に入ったわけではなさそう。具合が悪いわけでもなさそう。でも何か様子がおかしい。少なくとも何かに悩んでいるとは思う。

 気になってるのは私だけじゃなく、シャロル、アンゴラさん、ルルも同様だった。どうしようか三人と話し合ったけど、今はそっとしておくべきという結論に至ったため、そのままにしておく事になった。


 その後アンゴラさんはオリガと話してくると言って去っていき、シャロルとルルは弱ってしまっているダーナのもとへ。私も一緒に行こうとしたけど、


「お嬢様が行かれてしまうとダーナさんが無理に気を遣ってしまう可能性があるので、今はご遠慮ください」


 ってシャロルに言われた。言ってる事は理解できるけど、何か悲しい…。


 というわけで一人で適当にウロついてると、偶然にもミハイとアルフェンが会話してるところに遭遇。

 今回のパンゲア視察で特に活躍した二人。お近づきにちょっと声かけてみますか。


「二人ともお疲れ~。元気~?」

「ア、アイラ龍帝陛下!お疲れ様でございます!」

「お疲れ様です」


 私が二人の肩を背後から叩いて声をかけると、ミハイは慌てて私に敬礼。アルフェンはゆっくり冷静に敬礼してきた。この二人、感情の出し方は正反対?


「今はわざわざ敬礼なんてしなくて良いわよ。気楽にしてなさい」


 私は再び二人の肩を軽く叩いて、気楽にするよう促した。


「ミハイ。今回のあなたの竜文字解読は非常に役に立ったと思ってるわ。今後パンゲアだけでなく龍帝国の歴史そのものを調べる上でも貴重で重要な知識となるでしょう。また必要になったらよろしくね」

「は、はい!ありがとうございます!お役に立てますよう、もっと知識を磨きます!」


 私が褒めてあげたらミハイは嬉しそうに敬礼した。彼は感情が分かりやすい。


「アルフェン。魔物に対して一切引くこともなく果敢に立ち向かった事、一人の騎士として立派な行動よ。あのように勇敢さを持って国民を守る事が騎士の仕事の一つ。でもいざという時に出来なくなってしまう事でもある。それが出来たのは優秀だわ。龍帝としてあなたを称えます」

「ありがたきお言葉。竜の騎士として誇りに思います」


 アルフェンは常にクール。やっぱミハイと正反対。


「にしてもなんで魔物戦になった時にあれだけ攻め込んだの?」

「と申しますと?」

「それまでずっと静かで目立たなかったから。なんで急に前に出てきたのかなーって」


 住宅街で魔物と戦ったあの時まで、アルフェンは他の兵士達に混じって目立つ事はなかった。なのに魔物との戦闘になった時、何故か死を覚悟するレベルで魔物と勝負した。それが何故なのか私はずっと気になっていた。


「別に魔物だけではなく、巨獣に対しても攻める気はありましたよ。しかし遭遇した巨獣はだいたい陛下が倒されておりましたので、単に出る幕がなかっただけです。出る幕がなかったのは他の兵も同じですが」

「…もしかしてアルフェンって、あの戦い方が通常なの…?」

「そうですが…。なにか?」


 この時私は思った。このアルフェンという兵士は、今のままだと間違いなく早死すると。あんな戦い方が通常運転ってマジ危険過ぎるわよ…。


「悪い事言わないからもう少し身を引く戦い方も覚えなさい。あなたあの戦い方続けたら間違いなく死ぬからね?本当に」

「善処します」


 私の言葉に即答で返してきたアルフェン。ホントに直す気あんのか?この子。


「ところでアルフェン。キリカから聞いたんだけど、あなたランと幼馴染なの?」

「ええ、まぁ…」

「え!?ランってまさかラン・クラッセン首相閣下!?アルフェン、ラン首相閣下とそんな間柄だったのか!?」


 私の質問にアルフェンが頷くと、ミハイがビックリしていた。ミハイのアルフェンへの態度を見る限り、この二人は同期か同い年っぽいわね。


「幼馴染とは言っても、今は関わりないけどな」


 驚くミハイに冷静に返答したアルフェン。キリカが言ってた通り、やっぱり今は疎遠になってるんだ。


「今は疎遠みたいね?聞いた話だと私がこの国に来る前よりもずっと前から疎遠になってるようだけど?」

「ええ、まぁ…。幼馴染同士がずっと関係を続けるというわけではないですからね」

「それはそうかもしれないけどさ。なに?喧嘩でもしたの?」

「何故そう思われるので?」

「今はもうあの子とは関わりたくないって感じが見えたような気がして」

「別に関わりたくないわけではありませんよ。ただアイツが他の不良連中とつるみ始めた頃から関係を絶とうと思っただけです。その頃の俺は既に騎士になる事を目指していましたので。国軍に入ろうとしている奴の友人に不良の中心格がいるなんて知られたら、行動に支障が出ると思っただけです」

「なら、あの子が不良ではない今は?」

「龍帝陛下のお導きとはいえアイツは今や龍帝国の首相の座にいます。対して俺は下級の無名兵士でしかありません。あまりに立場が違いますし、今更関わろうと思いません。仮に再会したところで付き合い方に困るだけですし」


 あー、なるほどなるほど。アルフェンは割と物事を決めつけちゃうタイプだ。今アルフェンが言った内容だって、彼自身が勝手に思って会ってないだけで、ランの気持ちを確認してない。

 あ、でもランも自分から会いに行ってないだろうし、もしかしてお互いに会わない方が良いとか思ってる?


「私の個人的な意見として言わせてもらうと、昔一緒に遊んだような仲に立場とか関係ないって思うわよ。私が住んでるグレイシア王国でも身分がどうとか言う奴いたけど、そういう立場云々以前から関係があるじゃない?

 ランが不良だったのは既に過去の事。今は首相とはいえあの子の本質は変わってはない。そこに立場だの身分だの、私にとってみれば面倒の一言よ。ま、今後あなたやランがどうするかは自由だけど」


 初対面だったり関係性が薄ければ、畏まったり敬語使ったりして立場身分や上下関係を気にする事は当然。でも幼馴染や親友といった深い関係性が存在していたのなら、立場気にしただけ疲れるだけだと思うんだけどな。表向きに上下関係があっても、二人だけになった時とかは砕けてたりとか。私とアンゴラさんがそうよね。

 ちなみに私がアストラントにいた頃。私はサブエル学院にいた友達の中で唯一リベルト王子にのみ敬語で畏まってた。あれは立場や身分以前に、王子の本心や本質が常に読めなかったから。今考えると、リベルト王子にだけは薄くとも壁があった気がする。もし王子が今も当時と変わらなかったら、今後再会したとしても私は敬語だと思う。

 なお自分より遥かに年上の人には自然と敬語を使う。当然だけど。


「ミハイはどうなの?素敵な相手とかいる?」


 アルフェンにランの事の話をしても盛り上がりそうになかったから、ずっと話を聞いてるだけだったミハイに話を振った。私が質問した瞬間にミハイの身体が一瞬ビクッてなったよ。


「い、いえ…!自分にはまだ…。お恥ずかしい限りで…」

「あら?何を恥ずかしがるの?まだまだこれから素敵な出会いがあるかもしれないじゃない。別にいないからって誰も怒りはしないわよ。恋愛に年齢も立場も関係ないもの」

「そうですか…?両親からは頻繁にお見合いの話を持ち掛けられるのですが…」

「…ミハイって歳いくつ?」

「え?16です…」


 16歳って仕事も恋愛もその他経験もこれからな年齢なのに、もう親は見合い話持ち掛けてるんだ…。この国の平均結婚年齢がどのくらいなのか知らないけど、16歳で息子の嫁を探すって早すぎない?


「16歳ならまだこれからよ。親の意見だけじゃなくて、ちゃんと自分で決めた人と付き合いなさいよ?まぁ、あんま歳も離れてない恋愛もしてない奴が何言ってんだって話だけど~。あはははは」

「あ、あははは…」

「……」


 私の最後の締めにミハイは苦笑い。アルフェンは無言。


「じゃあ、そろそろ私は戻るわ。おやすみ、二人とも」

「は、はい。お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした」


 私は二人に手を振って背を向ける。ミハイは竜文字の解読、アルフェンは敵に果敢に攻め込む勇敢さ。これは今後必ず二人にとっての強みと自信に繋がるはず。あの二人はこれから期待できそう。

 ドラゴ宮殿に戻ったら高竜督に二人の事話しておこう。有望株として。






*************************************







「あ~…、すごい緊張した…。まさか龍帝陛下が声かけてくるなんて…」

「……」


 アイラが去った後、ミハイは胸に手を当ててため息をついた。アルフェンは無言でアイラが去って行った方向を見ていた。


「…?どうした?アルフェン」

「ミハイ。これから覚悟しておいた方が良いぞ」

「え?何に?」

「色々だ。考えてみろ。普通、国の頂点に立つようなお方が、いくらこういう場とはいえ声なんてかけてくるか?」

「いやまぁ…、普通だったらあり得ない事だろうけど…」

「そう、普通じゃない。その普通じゃない行為を龍帝陛下が自ら俺達にしてきたんだ。そして他愛のない話をしてきた」

「あ、あぁ。そうだな」

「龍帝陛下はおそらく、俺達がどんな人物なのかを確認しに来てたんだ」

「確認?なんで?」

「龍帝陛下が俺達に興味を持ったからだ。俺は魔物討伐の時に、お前は竜文字を解読した時に。龍帝陛下は俺達が有能な存在である可能性があるとして注目したんだ。そしてこうして雑談をして、人柄から将来活躍できるかどうかを測りに来たんだ」

「え…。それってもしかして、龍帝陛下は俺達にすごく期待してるって事…」

「そういう事だ。もし今の会話で龍帝陛下が俺達に良い印象を持ったとしたら、逆に悪い印象を持ったとしても、間違いなく軍や政府の上層部には言うだろうな」

「え、ええぇぇぇ…。それじゃ俺達良くも悪くも色々注目されるんじゃ…」

「そういうことだ。だから覚悟を決めといた方が良い。じゃないと精神が持たなくなるぞ」

「ひええぇぇぇ…。今後の行動気を付けないと…」


 真剣な表情のアルフェンと、狼狽えるミハイ。二人に声をかけたアイラにアルフェンが言うような意図はなく、アイラも単なる偶然で二人に話しかけただけなのだが、当然二人がそんな事を知るはずもなかった。

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