進級試験
視点がアイラに戻ります。
ノワールのストーカー行為からしばらく経ち、私への視線も徐々に収まり始めている。
ノワールは相変わらず一人でいるものの、ストーカー行為はしなくなった。私が一人になった時のみ声をかけてくる。他の人への関わりも薦めているんだけど、ノワールは未だに嫌がっている。う~ん…、どうしたら良いものか…。
そんなある日、ステラからこんな事を言われた。
「あんた、よくあんな掴めない人と付き合っていけるわね」
ステラが言う『掴めない人』というのはノワールの事。
これを言われて気付いたのだけれど、ノワールはセリアと似てるかもしれない。
周囲への警戒心の強さや私以外の人との接触を避けるところなんかはそっくり。セリアと交流させたら気が合うんじゃないかな?
そして大きな出来事も起きず過ごしているうちに、入学から一年が経とうとしていた。
今、学院生達はピリついている。私は平常心。
理由は簡単。まもなく進級、三年の場合は卒業を認定するためのテストが行われるから。私としては学院の授業なんて内容簡単すぎてあくびが出るんだけどね。
ちなみに私は武術大会で優勝したため、テストは免除され、進級が確定している。
なので当日暇なのだろうと思っていたら、学院長とナナカ先生から先生達と一緒に不正防止の監視役をしてほしいと頼まれた。なかなか重要な役目じゃない?これ。
とは言っても私はテストの内容を知っているわけではないので、今はみんなのテスト勉強のサポートをしている。
私はそもそも次席で入学、一学年の中で王子殿下の次に頭が良いと認識されているため、みんなから頼られている。時には普段接する事のなかった人まで私に聞いてくる。
そんなある日の放課後。いつものメンバーで集まり、教室で勉強会を開いた。みんながいる位置から数席となりにノワールもいる。私以外の発言には全く反応しないけど。
「アイラ様、ここを教えていただけませんか?」
「ここは難しいな…」
「う~ん…、解らないです…」
「あ~も~!超絶面倒臭え~!」
「みんな大変そうだね」
「殿下…なんでそんな他人事なんですか…」
「アイラさん、先生方に試験の内容聞いてきてくださいな。報酬はいくらでも払でふりぃ!!」
「ホウ、不正はいけませんよ?」
ノワールは真面目に質問してくる。
レイジとニコルは問題に苦戦していて、リィンはイライラして叫んでいる。
王子殿下はニコニコしながら何故か他人事。そんな王子殿下にステラがツッコむ。
ホウは私を使って不正を企んだが、ティナのチョップを脇腹にくらって倒れた。
三日後、テストが開始された。内容は筆記試験。実技はない。
私は自分のクラスの監視を頼まれた。みんな真剣にやっている中で、問題ある奴が一人。
「ぐぅ…、ぐぅ…」
リィンだ。開始直後から寝てやがるんだ、こいつ。
私は平手でリィンの頭を殴り、無理やり起こす。
「いてぇな。殴る事ないだろ~」
「うるさい。寝るな。真面目にやれ。次寝たら椅子に座らせないからね」
そして試験が終わり、後日結果が出た。
トップは王子殿下。次にティナとホウが続く。ニコル、レイジ、ステラ、ノワールもなかなか良い位置にいる。リィンだけギリギリだった。
留年する人はおらず、一学年は全員無事に進級が決まった。
「アイラ様のおかげで無事進級出来ます。ありがとうございました」
「ノワールが頑張ったからよ。私は何もしてないわ」
「みんな無事に進級出来るようで良かったよ」
「やっと気分が軽くなるな」
「疲れたわね~」
「もう試験はゴメンだぜ。俺は」
「試験内容が分かっていればもっと点数をとれたああぁぁぁぁぁ!!」
「ホウ?不正はダメと言っているではないですか」
「あははは…」
ノワールがお礼を言ってきたので、私は謙虚に返答する。
王子殿下はみんなが進級出来る事に安心しているらしい。普段からニコニコ顔だから本心が分からない。
レイジとステラはホッとしていて、リィンはテストに懲り懲りな様子だ。
ホウは不正を出来なかった愚痴を漏らし、ティナがそれを注意しながらホウの服を掴んで脱がそうとしている。
ホウは抵抗するのに必死。そのやりとりを見たニコルが苦笑いしている。
その後、三学年の卒業式、在校生の終業式を終え、私達は準備休暇に入るのだった。
今回の投稿で第二章は終了となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。




