アンゴラの今後は?
「えっと…、つまり龍帝の正体は春華で、私や春華以外にもこの世界に転生している人がいる。ということ?」
優先輩がフリーズしてからそのまま待ってあげて、10分後くらいにやっと再起動してくれて状況理解に至ってくれた。
「はい、その解釈で合ってます。ですが私の場合は他の人達と少し立ち位置が異なりますので、その辺の事を説明させてもらいますね」
私は優先輩に神の存在や転生までの経緯、私の周辺環境等を大まかに話した。
ハルク様の事、天神界の事、私とセリアの存在、神力の事、精霊や神獣について、その他色々。
「…なるほどな。私が見た不思議な夢は神様が誘導するために見せてきたものだったのか…。それに他にもそんなに転生者が…」
「信じられないような内容ばかりだと思いますが、全部事実です」
「別に疑ってるわけじゃないさ。あまりに唐突すぎて呑み込みきれてないけど。…しかし、充子や嘉穂までこの世界に…」
「ええ。充子先輩はクロコダイル魔王国在住のようです。私はまだ魔王国と接触を図っていませんので今はこれ以上の情報はありませんが。嘉穂先輩に関しては現在住所不定になっています。どこにいるのやら…」
「そうか…」
ここで一旦沈黙。…そういえば先輩の態度が完全に崩れてる。この場に慣れた?
「しかし春華が龍帝になることが元々約束されていたとはな…。…疑うつもりじゃないんだが、本当にいるのか?神龍って」
「なっ!?偉大なる神龍様の存在を疑うというのか!」
「まあまあ、キリカ。怖い顔しないの」
神龍の存在を疑問視した優先輩にキリカがすぐに反応して怒った。でも疑う気持ちも解る。実際に見た事ないんだし。
(アイラよ。ここは『龍の鼓動』を使うが良い)
(あぁ、あれね)
ここで神龍が念話してきた。いつも突然だからビックリするけどだいぶ慣れた。
龍の鼓動とは、つい最近になって神龍が突然教えてきた能力で、周囲に対して「私の中に神龍がいるぞ」っていう気配を感じさせることができる能力。なんでも魔法でも神力でもない神龍独自の能力らしい。
今まで教えずにいて最近になって教えてきた理由は単に忘れてたからだそう。無駄話ばっかりしてきてこういう事は忘れるって伝説の存在としてどうかと思うわよね。説教してやろうかと思ったら念話切りやがったけど。
私は身体から魔力を少しだけ解放させる。そこに私の中にいる神龍が自身の気を私の魔力に混ぜる。発動方法はこれだけ。
これを感じ取った人は、神龍の咆哮が幻聴として聞こえたり、神龍の姿が幻覚として見えたりするとかしないとか。
「!!」
龍の鼓動を発動した途端、優先輩が身体を引かせる動きをとった。ビックリした表情になってる。
「分かりましたか?神龍の存在」
「…あぁ、十分に分かったよ。疑って申し訳ない」
「別に謝らなくて良いですよ。ところで何か見えました?」
「一瞬…、ほんの一瞬だけ、神龍の顔が見えた。黄金に輝く迫力のある顔が。大きく口を開けていて、襲われるんじゃないかと思ってしまった」
「ほら、見なさい。神龍様は疑われた事に怒っておられる」
「ううん?キリカ。龍の鼓動の能力の感じ取り方は人によって違いが出るだけで、基本的に神龍は何も表現してないのよ?今だって神龍自身は全く気にしてないみたいだし」
「え?そ、そうですか…」
優先輩のコメントを聞いたキリカがざまーみろと言わんばかりに優先輩を責めようとしたけど、私が神龍が気にしてない事を伝えるとキリカは途端に恥ずかしそうな表情になった。なんかカワイイ。
「それで先輩。状況をだいたい理解してくださったところでこれからの事なんですけど、まず呼び方はアンゴラさんで良いですか?」
「あ、ああ。別に呼び方は何でも構わないさ。しかし立場から考えると、私はこれから龍帝陛下と呼んだ方が良いかな?」
「公衆の面前や事情を知らない者がいる状況の時はそれでお願いします。今みたいに事情を把握している人だけの時は態度も呼び方も自由で構いません」
「そうか。解った」
「それから…。キリカ、ラン」
「はい?」
「何でしょうか?」
「アンゴラさんの階級を上げて。出来るだけ高く」
「承知致しました。仰せのままに」
「喧嘩上等決定戦での強さを見込んで龍帝陛下が昇格を命じたって内容で広めれば批判は無さそうですかね。政務室に戻り次第すぐに手続きに取り掛かります」
私の話をキリカとランはすぐに理解して行動手順を構築する。さすが龍帝補佐と首相。理解力が高い。
「え?え…?ちょっと?私別に大した功績もないのに階級を高くって…。一体何階級特進させる気?そもそも私階級とかに興味ないし、軍人として最前線に立ち続ける事が私の今の目標であって…」
「アンゴラさん?こうして龍帝と会談してて、首相とも関わりを持っている事はすぐに知られ始めますよ?ぶっちゃけ普通の生活には戻れないかもです。とすると今のうちに腹括った方が良いと思います。というかこれからを普通の生活を思えば良いんですよ!」
「え、えぇ~…」
アンゴラさんは階級とかには関心がない様子。でもこうして龍帝と会談しちゃってて、これからこの事が自然と噂として広まってく事を考えると何もしないわけにいかない。…というのが表向きで、本音はそれなりの地位にいてくれた方が龍帝国そのものとの繋がりが少し楽になる。キリカやランだけでも十分に力は足りてるけど、やっぱ自分と同じ転生者っていう共通点がある事を考えると…。
「で、でも、階級が上がれば書類仕事とかもあるわけで、私書類仕事苦手で…」
未だにあたふたしながら抵抗するアンゴラさん。
「あ、じゃあ『龍帝専属護衛竜騎士』になるのはどうですか?これなら私に同行して私を守ってくれれば良いだけなので、書類の束と格闘する必要はなくなりますよ?一緒にいろんな所回れますし」
「なるほど。それなら階級との釣り合いもとれるでしょう」
「さすがはアイラ様!名案ですね!」
「アテーナさんとアルテミスさん以外の護衛ですか。またこれで同行者が増えますね。メイドとしてやりがいも大きくなります」
「これはすぐに龍帝国中に伝わりますね!アンゴラ様、おめでとうございます!」
私の案にキリカは納得の様子。ランは私をヨイショしてきた。
シャロルは仕事量が増えるのに何故か喜んでる。普通は仕事増えたら萎えるはずなんだけど…。
ルルはアンゴラさんに祝福のコメントを送ってる。まだ階級決まってないよ?
「え?あ、…え?」
そしてアンゴラさんは絶賛パニくり中。
「階級は私の考えだと『竜大将』で良いかと思います。ちょうど空席なので」
「私もランに賛成です」
「良いんじゃない?任せるわ」
アンゴラさんを放置したままランが階級に関して案を出した。キリカもランに賛同。私は丸投げしといた。
龍帝国軍のトップ階級は『高竜督』と呼ばれていて、グレイシア軍でいう将軍にあたる。二番目が『竜督』で、ランが言ってる竜大将が三番目。つまりこのまま正式決定すればアンゴラさんは末端階級から一気に軍のナンバー3まで飛び上がることになる。特進どころじゃ済まされない飛び方よね。
前回龍帝国にいた時にランが療養してた頃、私は高竜督と竜督に会っていて、竜大将の座が長い間空席になっている事も聞いていた。
竜大将は軍の中でもメッチャ強い戦闘力とメッチャ高い知力を持ち合わせた者がなれる、いわゆるエースが座れる立場。聞いた話だと10年くらい前まで竜大将の座にいた人がいたらしいんだけど、高齢を理由に引退して、それ以降誰も引き継げないまま空席になってるんだそうな。
竜大将はとても偉い立場ではあるけど、戦闘面と知力と人柄を重視して選ばれるそうで、書類作業とかは割と少ないらしい。だから長年空席でも問題なかったんだって。これってよく考えるとアンゴラさんにピッタリじゃない?ランも上手く考えたわね。
「ちょちょちょちょっと待って!竜大将ってあの竜大将!?」
「他にどの竜大将があります?」
「いやいやいや!待ってくれ春華!そんな幹部クラスの階級なんて私には…!」
「って本人は言ってるけど?」
「「他に適する階級がないので決定で」」
「だそうよ」
「そ、そんなぁ~…」
ガックリ肩を落として落ち込むアンゴラさん。人の上に立つ重圧は私にもあるから気持ち分からんでもないけど、キリカとランは完全に竜大将で固まってるみたい。
でも受け入れてもらわないと、この国の世間の目とか考えると…。というのは建前で、ぶっちゃけ私の弱メンタル腹痛を共有させて…。
(お嬢様)
(ん?どしたのシャロル?なんで念話?)
(まさかアンゴラさんにもご自分と同じ精神的苦痛を味あわせようと考えてはおりませんよね?)
(まっさか~。前世で色々お世話になってる人にそんな事するわけないじゃん)
(本当ですか?)
(なによ。私を疑うの?)
(そういうわけではありませんが。まぁ、違うのなら良いのです。失礼致しました)
やっべ~、マジ焦った…。シャロルが私の裏の企み見抜いてきたよ。さすが長年私と一緒に居続けるだけあるわ。あ~、怖い怖い。変な汗かいた…。




