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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十三章 国の跡
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ミリタリー先輩との再会

前半がアンゴラ視点、後半がアイラ視点となります。

 龍帝陛下がここへ来られてから三日が経った。今のところは特に目立った行動はしていない様子。すぐに視察とか行うのかと思っていたから、私としては少し意外だった。一旦休暇をとっているのだろうか?


「アンゴラ。いるか?」

「はい、お呼びでしょうか?」


 上司が声をかけてきた。


「今すぐ政務室へ向かえ。ラン首相閣下がお前をお呼びだ」

「首相閣下が私を?」


 ラン首相といえば、最近開催された武術の大会の優勝者だ。私は彼女と決勝戦で戦ったが中々強かった。

 元々不良グループのリーダーだったらしいが、前首相で最近処刑されたコアトルに拘束されて死にかけたところを龍帝陛下が助けたという話は今や国中で有名だ。しかも首相の座も龍帝陛下のご指名。何と言うか、上手く立ち回ったものだ。


「承知しました。今すぐ向かいます」


 私は仕事を上司に預け、ドラゴ宮殿の政務室へ向かう。しかし呼び出されるような事は何もしていないはずだが、騎士としての位も低い私なんかに一体どんな用があるのだろうか?

 …まさか大会の決勝戦で戦った事を受けて私の階級を上げようとしているのでは…?もしくは何か特殊任務?どちらにせよ命令であっても断ろう。いくら信念があろうと荷が重すぎる。





 政務室の前に到着した私は、身だしなみをチェックして呼吸を整える。思えば政務室の場所は知っていたものの実際に中に入るのは初めてだ。何だか緊張してきた。


 私は政務室の扉をノックする。


「下級騎士、アンゴラ・マラミュートであります!お呼び出しの命を受け、参上致しました!」


 扉の前で名乗ると、政務室の扉が開いた。


「はいは~い。待ってましたよ~。どうぞ~」


 とても美人な女性が陽気な口調で入室を許可してきた。この人は確かダーナ情報官だったか。正式の役職名は忘れたけど。


「失礼致します!」


 私は敬礼をして政務室へと入る。正面奥に、大会ぶりとなるラン首相がいた。


「お待ちしていました。アンゴラ殿」


 ラン首相は笑顔で私を迎えてくれた。身分も位も低い私は、他で表現するなら平民出身の一等兵から三等兵辺りの兵士。対するラン首相は族長の娘で国の首相。つまりエリートでキャリアの総理大臣のような存在。本来なら関わる事自体あり得ない。


「お忙しい中わざわざ来ていただいてありがとうございます」

「いえ、とんでもございません。首相閣下直々のご指名、非常に名誉であります」


 ラン首相は中々腰が低い。これで元不良とか想像が付かないんだが…。


「さっそく本題なのですが…、実はあなたを呼び出したのは私ではありません」

「…はい?」


 ラン首相が呼び出したのではない?…いや、確かに首相からの呼び出しでここにいるんだが…。


「あなたに用事があるのは私ではなくてですね。私は代わりに呼び出しただけなんですよ。でないと色々根も葉もない噂が立ってしまう可能性がありましたので」


 噂が立つ?話の理解が付かない。どういうこと?


「失礼致します」


 若干混乱していると、急に使用人が入ってきた。


「お待たせ致しました」


 使用人はラン首相に一言だけ言うと、ラン首相は頷いてソファから立ち上がった。


「アンゴラ殿、行きましょう。あなたを呼び出した方のもとへ」

「は、はぁ…?」


 ラン首相は誰が私を呼びだしたのかも、私が呼び出された用件も、これからどこへ行くのかも告げずに政務室から出ようとする。私も慌てて後を付けた。


 突然やって来た使用人先導でラン首相と廊下を歩く。一国の政治のトップと一緒に歩くだけでもすごい事だが、そういう感情や緊張が感じられない程私の頭の中は混乱していた。

 大会で準優勝したとはいえ階級の低い無名の兵士をわざわざ首相を使って呼び出す人物。つまり呼び出した人物は首相を使えるほど深い関わりを持っている。そして自ら動いてしまうと周囲に何らかの影響を与えかねないほどの立場にいる人物。ここまで絞ってみると考えられるのは……、まさか…。






*************************************






 龍帝国に来てから三日。ここまで私は休暇中だった。シャロルをここに慣れさせる目的も含めた休暇だから、決してただのグウタラではない。

 今日はランが呼び出した優先輩がこの龍帝居住区に来ることになってる。ランが呼び出して、ルルが二人を迎えに行く手筈。さっきルルが迎えに行ったから、もうそろそろ来るはず。


「失礼致します」


 あ、来た。


「失礼致します。お待たせ致しました。ご希望通りアンゴラ・マラミュートをお呼び致しました」


 ルルが扉を開けた直後に入って来たランが真っ先に私に声をかけた。


「アンゴラ様。どうぞお入りください」


 アンゴラさん、優先輩は扉の前で止まっていたようで、ルルに促されて入って来た。


「ご苦労様。ラン、忙しいのに申し訳ないわね」

「とんでもございません。龍帝陛下のご命令とあれば何なりと」


 ランは普段と違って私に畏まってる。まだ事情を知らない優先輩がいるから首相モードなのね。


「ルルもわざわざありがとね」

「勿体なきお言葉」


 ルルも一流メイドモード。なんだろう…。解ってるんだけどやりづらい…。


 そんな二人の後ろから若干おそるおそるな足取りでこっちへ向かってくる女性。彼女がアンゴラ・マラミュート、優先輩ね。

 黒髪をストレートに流していて、背中の中腹辺りまで伸ばしてる。前髪も目にかかるくらい長い。

 服装は赤色をメインにした鎧。見た感じ軽量そうな鎧で、ピッチリした作りになってる。スタイルがバッチリ分かる服装ね。ぱっと見引き締まった身体でかなりスタイルが良い。鍛え過ぎで筋肉ムキムキとかじゃなくて良かった…。優先輩がそんな身体だったら私軽く引くわ。

 顔はキリッとしたタイプ。同じキリッとした顔つきでも美人系のキリカとは違ってちょっとボーイッシュな印象を受ける。


「は、初めまして!アンゴラ・マラミュートと申します!」

「アイラ・ハミルトンです。わざわざ来てもらってありがとう。どうぞ座って」

「失礼致します!」


 優先輩からは緊張が強く伝わってくる。この人前世の頃はそこまで緊張とか表に出さないタイプだったんだけどなぁ。あ、そっか。神力影響しちゃってるかも。


 私はソファに優雅に座り、私の真正面に優先輩が姿勢を正して座ってる。ランは私の横に座る。未だ首相モード。

 キリカは私の後ろに立ってて、シャロルはずっと部屋の扉付近で立ってる。シャロルの場合は一応客人だし、普段みたいにメイドの行動はしないみたい。ルルは飲み物を出した後はずっとキリカの横に立ってる。


「いきなり呼び出した挙句にこんな所に来させてしまってごめんなさい。あなたに用があるのは首相のランではなくて私なのよ」

「…ラン首相閣下に呼び出したのが自分ではないと言われた時は困惑しましたが、その後向かおうとした場所で想像は付いておりました。龍帝陛下にお招きいただきました事、大変光栄でございます。…して、私にどのようなご用でしょうか?」


 優先輩は自ら用件を聞きにきた。本来こういう時は目上の人に合わせるのが正解だと思うんだけどなぁ。


「用件なんだけどね、ちょっと特殊な内容なのよ~。どう話そうかなぁ」


 私が考えるポーズを見せると、優先輩はクエスチョンマークを浮かべた表情をした。


「唐突に聞くけど、最近変わった事はなかったかしら?」

「と、言いますと?」

「例えば、不思議な夢を見た。とか」

「…!」


 私が質問の返答例に夢を上げると、優先輩は明らかにドキッとした表情を一瞬だけ見せた。ハルク様が夢に入り込んで接触を図ったわけだし、見てないとおかしいもんね。


「…いえ、特には…」

「広大な花畑に立つ白くて美しい女性」

「…!!」


 優先輩は何故か誤魔化そうとしたから、天神界とハルク様の特徴を言ってみたらやっぱり動揺する素振りを見せた。

 私は言った事がビンゴなのがなんとなく嬉しくて、つい微笑んでしまう。


「見たんでしょう?不思議な夢を」

「……」


 優先輩は少し警戒しているのか、黙秘権を行使してきた。


「アンゴラ殿。龍帝陛下は相手の心情を見抜く力に大変優れておられる。黙秘したところで無駄だぞ?」


 私の後ろからキリカが優先輩へ警告を出した。思いっきり黙秘権を破り捨てたわね。


「…確かに龍帝陛下のおっしゃる通り、花畑に立つ女性の夢を見ました。しかし何故それを陛下が…」

「その女性はあなたに何か言ったかしら?」

「…昔の仲間に会いたいなら、龍帝を頼れと…。そうすれば龍帝が導いてくれると…」


 へぇ~、ハルク様そういう伝え方してるんだ。もしかして夢で接触図った人達全員に私のもとへ行くよう言ってる?なんかアンもそういう感じの事言われたっていつだかの食事中に話してたような…。


「昔の仲間…、つまり前世の頃の友人達ですよね?」

「…!?」


 明らかに動揺し始めた優先輩。既に感情隠せずか。


「まぁ、確かに充子先輩とか~、嘉穂先輩とかとよく一緒にいましたもんね。優先輩」


 私は優雅さを消し、前世の頃と同じ接し方で充子先輩や嘉穂先輩の名を出した。そして最後に「優先輩」と直に呼んだ。これに優先輩は完全に固まった。


「あなたは…一体…」

「私も転生者なんですよ。覚えてませんか?充子先輩に料理を教わってたり、嘉穂先輩が作った服を着ていた後輩の事を」


 私がほぼ回答のヒントを出すと、優先輩は食い入るように私を見てきた。多分記憶がどんどん掘り返されてる。


「……春華?…後藤、春華?」

「大正解です!お久しぶりですね、優先輩」

「…本当に?本当に…、春華なのか…?」

「いやだからそうだって言ってるんですが」


 優先輩は現実として今の状況が受け止められてないんだろうなぁ。フリーズに近い状態になってる。


「転生しているのは自分だけだと思ってました?実は複数いるんですよ。あ、今この部屋にいる面々は事情は把握していますけど転生者じゃないので」


 つらつら喋る私に対して優先輩は未だフリーズなう。とりあえず再起動まで待ってあげるか。ところで…。


「ルル」

「あ、はい」

「今、大あくびしたでしょ?」

「えぇえ!?ど、どうして分かって…」

「動きで分かったわよ。生物の自然現象としてしょうがない事ではあるけど、堂々とし過ぎ。するならもうちょっと隠れてしなさい」

「はい…、すいませんでした…」


 実は私が話してる途中でルルは突然動き出し、飲み物が置いている場所へと移動していた。何か整理かと思いきや、思いっきりあくびをする動きが見えた。

 私を含めて部屋の全員に背を向けてたからバレないと思ったんでしょうけど、あまりに分かりやすい動きだった。

 キリカとシャロルは揃ってひたいを手で抑えてため息をついてる。後で二人から怒られるでしょうね…。

 ルルってホントどこか抜けてるのよねぇ。それがルルのカワイイところでもあるんだけど。

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