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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十三章 国の跡
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パンゲアの件、転生者の件、大会の件?

 龍帝国の島の半分、旧都市パンゲアがある領域に行ける可能性が高くなってきたことに心躍らせる私。ウキウキ気分になりながらランからの他の報告を聞きつつ、渡されていた書類仕事を全て終わらせた。


「それでは、パンゲアの件に関しまして対処法が浮かびましたら、すぐにお知らせくださ…」

「私が直接行って巨獣達を片っ端から倒せば良いんではなくて?」

「…アイラ様、巨獣を直にご覧になられた事ありますか?いくらアイラ様でも巨獣を壊滅させるなど、そう簡単には…」

「見た事あるし、戦った事もあるわよ。一応勝ってる」


 人魚の里ゼーユングファーに侵攻してきた巨獣ガブガとの戦闘で、私の魔法攻撃と物理攻撃が十分有効であることは確認済み。今回は地上戦になるであろうとはいえ、同じように巨獣に攻撃は通用するはず。


「アイラ様…、既に巨獣と戦闘を…?」


 私の発言をいまいち理解しきれていない様子のランは、首を傾げながら私に確認してきた。


「ラン。龍帝陛下は既に海底で巨獣と戦って勝利しているみたいなのよ」

「海底…?」


 キリカの発言にますます首を傾げるラン。私はランとルルにゼーユングファーの事、人魚族の事、ガブガという海の巨獣の大群を相手にして勝利を治めた事を話した。ランにもルルにも天神界の事話してあるから、言っても問題ない。


「…てなわけで周囲には絶対話さないでね」

「は、はい。解りました。巨獣の大群を相手にして勝ってしまうなんて…。やはりアイラ様に敵う者などこの世にはいませんね!」


 あ、ランの表情がキラキラし始めた。ノワールと同じやつ。やだ~、怖いよぉ~。


「あ、あの、発言してよろしいでしょうか?」


 ここで今まで静かに話を聞いているだけだったルルが控えめに挙手してきた。


「良いわよ。どうしたの?」

「疑問に思ったのですが、陛下が巨獣相手にお一人で勝てるとして、仮に正式に討伐を開始した際、同行してきた者達にはその状況をなんと説明するのでしょうか?」

<<<……>>>


 あー…、全く考えてなかったわ…。


「まぁ…、テキトーに何か言えば大丈夫でしょ。…多分」

「私は不安しかないのですが…」


 何の対策にもなってない私の回答に、キリカに軽く呆れられた表情で不安がられた。


「う~ん、でもアイラ様に頼る以外に方法が現状見つからないのも事実。このまま竜族同士で争いが始まってしまうのもマズイ事ですし、それを回避する方法としては最早パンゲアの復活のみということに…」


 ランは真面目な表情でマジに私の巨獣殲滅案を考え始めてる。そんなに若年層と高齢層の摩擦が酷いのかしら?


「龍帝陛下。この問題はこのまま話していますと長くなりそうですので、先に例の件を話しておいた方がよろしいのでは?」

「例の件?」

「陛下のご友人の件です」

「あぁ、優先輩の件か」


 キリカが言ってきたのは、龍帝国で竜族の女性騎士として生活しているはずの川端優先輩の事。確かにこっちの方が話は早く進むかも。


「会話の内容を聞くに、人探しか何かですか?」


 ランは私のキリカの会話だけで人探しであると察してくれた。


「えっと、実はね…」


 私はランとルルに前世で親しかった友人達がこの世界に転生している事と、その内の一人が龍帝国にいる事を説明した。


「私が探そうとしている人物は前世の頃に私の一つ年上だった人よ。当時の名前は川端優。現在は確か、アンゴラ・マラミュートという名前ね」


 ハルク様からの情報とオリジン様が渡してくれた転生者リストのおかげで、転生者達の現在の名前は分かってる。アンゴラという若い女性兵士を探し当てる事ができれば、その人が優先輩となるはず。


「アンゴラ・マラミュート…。あれ?何だか最近名前を聞いたような…」

「もしかしてあの大会でお会いしたのではないですか?最近開催した喧嘩上等決定戦」

「あっ!そうだ、思い出した!あ~、あの人か~!へぇ~、アイラ様と同じ転生者だったんだ~」


 なんかルルの発言でランが思い当たったようだけど、それ以上に『喧嘩上等決定戦』ってなによ。そっちの方が気になるんだけど。


「ねぇ、その『喧嘩上等決定戦』ってなんなの?」

「そんな大会、今までなかったはずだけど…」


 私の疑問にキリカも続く。


「国の状況が安定し始めた頃に龍帝国政府主催で開催した武術大会です。思いっきり暴れてもらってこれまで溜まったうっぷんを晴らしてスッキリしてもらおうという発想で企画されました」

「それ…、出場者いたの…?」

「およそ30名程度を予想していましたが、実際の出場希望者数は137名でした」

「まさかの百人越え!?」


 いくら武術大会だからって、なんでそんな急に企画された大会にそこまで応募してんのよ。ここの国民。


「その大会って、具体的にどんな内容なの?」


 キリカは大会のイメージがいまいち浮かばなかったみたいで、具体的な内容をランに問いかけた。


「まず武器の使用は禁止。魔法も禁止。基本的に殴るか蹴るか。それと不正が見られない限り怪我は自己責任。治療費も自己負担」

「ただの喧嘩じゃん!」


 あまりに雑な内容に私は思わずツッコんだ。


「ちなみに優勝すると優勝者の生活費半年分を国が負担」

「待って、優勝賞品がおかしい」


 なにその送料は会社側が負担みたいな内容。


「危険すぎてよろしくない気がするわ。放っておけばいずれ死人が出るわよ?さすがに龍帝として異議を唱えます」

「えぇ…、せっかく好評だったのに…」


 好評だったんかい。竜族の感覚どうなってんの?そんなに暴れるのが好きなの?


「ちなみに今回の優勝者はラン首相閣下ですよ~」

「えへへ~」

「「あんた出てたの!?」」


 笑顔でランが優勝者である事を教えてきたルル。そして照れてるラン。しかし私とキリカはランが出場していた事に驚きしかなかった。


「ちょっとラン!あなた首相でしょうが!いくら元不良だったとはいえ、当時と今じゃ置かれてる立場が違うのよ!?万が一大怪我でもしたらどうすんの!そもそも主催者が出場して優勝しちゃったら大会の意味ないでしょうに!」

「もうヤンチャできる環境じゃないのよ。もっと大人になって見守る側に立ちなさい」

「ふぁい…、すいません…」


 私とキリカのお叱りにランは半泣きでシュンとなった。


「まったく、怪我でもしてまた前のような療養状態にでもなられたら困るのよ。あんまり心配させないでちょうだい」

「アイラ様…、私の身体を心配してくださって…」


 あ、やべ。またランがキラキラし始めちゃった。余計な事言っちゃったな。


「で、話を戻すけど、その大会にアンゴラ・マラミュートも出場していたと」

「はい。私とは決勝戦で戦いました。かなり強かったですよ。聞いた話だと普段は愛用の武器があるそうで、もしそれ使われたら多分私負けますね。拳で戦ってギリギリ勝てたくらいですから」


 へぇ~、優先輩まで大会出てたんだ…。自分を試すつもりだったのかな?

 にしても平均値よりも戦闘力があるはずのランが苦戦したくらいなら、優先輩の戦闘力はかなりのものって事よね?前世で自衛官目指してたくらいだし、それが今世に引き継がれて日々鍛えてるって事かしら?


「ランと互角に戦えるくらい強いのに、有名人ではないのね?」

「あくまで聞いた話ですけど、出世とかには興味がないらしくて。現在の階級もかなり下だったはずですよ」


 要は出世に関心がなくて目立つ気もないか。なんとも優先輩らしい。あの人前世でも目立たないポジションだったからな~。


「それじゃあ明日か明後日あたりにアンゴラ・マラミュートを呼んでほしいわ。私が直接呼んでるようにしてしまうと噂になっちゃうから、ラン経由か他の人を経由してお願いできる?」

「大丈夫です。承知しました」


 私が言った事をランはメモ書きしてる。普通こういうのって補佐官がやるべき事なんだけど…。


「そういえば、パンゲア復活を訴えている者達からは何か巨獣に対する対策方法は提案されているのか?」

「ううん。一つもない」

「…はぁ……」


 質問をしたキリカにランは短い言葉で返答した。キリカは呆れた表情でため息。


(訴えておきながら対策を提案せず他任せとは、なんとも無責任よな。竜族として恥を感じぬのか、まったく…)


 珍しく神龍が私の中でイラついてる。今回の高齢層の竜族達の訴えには神龍も疑問を抱いたらしい。


「ルル。紙とペン持ってきて」

「はい、お待ちください」


 ルルに紙とペンを持って来てもらい、私は思い付いた文章を書き始めた。パンゲア復活を望む、高齢層の人達に向けて。


【パンゲア復活を望む声がある事は龍帝陛下も承知した。しかしこの件を言い出した者達から巨獣に対する策が一切上がっていない点に疑問を抱いている。さらには偉大なる神龍もともに疑問をお持ちになられている。政府としても難航している議題故、是非とも対応策を上げてほしい。また、声を上げるのであれば責任を持って臨むよう龍帝陛下が仰せである】


「はい、この内容をパンゲア復活の声を上げた人達へ。これなら少しはマズイと思うでしょう。もしこれでも何も変わらないようなら、私自らその者達のもとへ赴くわ」

「解りました。言い出した者達の焦る顔が浮かびますね。ウフフ…」


 私からメモを受け取ったランは、内容を見て微笑みを浮かべていた。

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