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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十二章 舞台の下準備
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グリセリアの怒りと逃走

視点がアイラから外れます。

 王都フェルゼン。ノーバイン城。

 別館にてアイラの帰りを待っているトンジットは、アイラからの念話を受けグリセリア達が仕事をしている政務室へ急行。

 グリセリアとオルシズ、リリア、アリスの女王側近三人は今日の仕事を終えて帰り支度をしている時であったため、トンジットはギリギリ間に合ったかたちとなった。


 トンジットはアイラが送ってきた念話の内容を四人に報告。王都へ戻る日時と、魔物の出現および討伐。そして貴族子爵サウルスの単独無断行動に関しての内容を話した。


「以上がアイラ様より受け取りました伝言内容でございます」


 トンジットが報告を終える頃には、グリセリアは怒りで震えていた。


「…あの勝手放題クソジジイめぇ…!何をしてくれてんだぁー!」


 グリセリアはサウルスに対する怒りを爆発させた。


「陛下…。サウルス子爵の事『クソジジイ』なんて思ってたんですね…」

「そうだよ!アイツいっつも何も出来ないくせに勝手な事していろんな奴に迷惑かけてたじゃん!クズのゲスのカスだよ!あんな奴!」

「分かりましたから少し落ち着いてください」


 リリアの問いかけに怒りの地団太をするグリセリア。アリスはグリセリアに落ち着くよう諭す。


「だから私はアイツから領地を没収した時に貴族の権限だけ残す事に反対したんだ!結局閣僚達の意見を聞いた結果がこれじゃんか!」

「女王陛下。今更その話をされても困ります。随分前の話になってしまってるので…」


 怒りを治めずに過去の話を掘り返したグリセリアに困惑気味のオルシズ。


「今回のアイラ達の調査団の指揮権と決定権はアイラにあるんだぞ!サウルスはただのお飾りだってのに!あの野郎そんな事も分かんないのかー!」

「いやさすがに自分はお飾りだなんて思う人いませんよ…」


 グリセリアの発言に呆れ気味なツッコミを入れるリリア。


「まぁ、ともかくアイラを無視して勝手な行動に出たアイツの責任は大きいよ。調査団が戻ってきたらサウルスにはじっくり反省してもらわないとねぇ…。フフフ…」

「ワー、ヘイカワルイカオシテルー。コワーイ」

「リリアなんで棒読みなの?なんで目を逸らしてるの?なんで無表情?私はツッコむべきなわけ?」


 サウルスへのお仕置きを企んで悪い微笑みを見せるグリセリアに棒読み反応のリリア。そんなリリアの反応にグリセリアは一変して困惑表情になった。


「とにかく。トンジット報告ありがとう。それとアイラに伝言をお願いしたい。『報告ありがとう。情報は閣僚達にも伝えておく。特にサウルスの件はね。城に戻って来る時を待ってるよ』って」

「畏まりました。必ずお伝え致します」

「頼んだよ」


 グリセリアからの伝言を預かったトンジットは、一礼して政務室を出て別館へと戻って行った。


「はぁ~…、また面倒事が増えるなぁ~…」


 怒った時とは違い、自分の机に力なく伏せるグリセリア。


「調査団の兵士達はサウルスを取り調べる気満々だとの報告もありましたが、果たしてサウルス子爵がそれで反省するかどうか」

「私はそれはないと思います。彼はドイル将軍閣下が何度も圧をかけても屈しなかった人物。そう簡単に兵士達に屈するとは思えません。むしろ持論を展開し、自分が正しいと主張してくる可能性もあるかと」


 サウルスは調査団の兵士達による取り調べで事態が片付くか疑問視。アリスはむしろサウルスが反撃するという可能性を出した。


「でもアイラさんがサウルス子爵閣下を叱ったら、子爵閣下にも効果はあるんじゃあ…」

「その可能性はあるとも言えるし、ないとも言えるね」


 リリアはアイラの存在でサウルスが反省する可能性を示唆したが、グリセリアはそれを五分五分とした。


「サウルスはアイラの事も無視して単独行動に走った。すなわちアイラの事を完全になめてるって事だ。となるとアイラでもサウルスを反省させる事は容易じゃないだろうね。

 ただ万が一サウルスがアイラを本気で怒らせてしまったら、反省の可能性も…。いや、反省する前に死ぬか」

「それは…、アイラ殿がサウルス子爵を殺害するということですか?」

「う~ん、そういう事じゃないんだけどね。なんて言うか…、まぁ…、通常な精神は保てないだろうね」


 グリセリアの言葉の意味が理解しきれず疑問を上げたアリスに、グリセリアは逆にどう説明したら良いのか分からず言葉を濁した。


「ま、私達は私達でやれる事をやるだけさ。というわけでオルシズ。明日緊急閣僚会議を行う。各省の大臣に伝える手筈を」

「今からですとどれだけ急いでも明日夕方頃の開催となってしまいますが?」

「構わない。強行開催だ」

「承知しました」

「リリアは城にいる兵士、役人、使用人に閣僚会議開催の通達を。既に帰った者へはそれぞれの部署に属する別の者から伝えるよう指示して」

「解りました。残業ですか…。はぁ…」

「アリスはトンジットから受けた伝言をノワールに伝えてきて」

「承知。ノワール殿も話を聞いたら憤るでしょうね」


 グリセリアは側近三人にそれぞれ行動を指示。三人もそれぞれの反応の仕方で了解した。


「ところで陛下。まさか私達だけに仕事させといてご自分だけ別館に戻るなんて事ありませんよね?」

「ギク…。そ、そんなことないよ?部下だけ残して自分だけ帰るなんて…、ねぇ?」

「私に目線を向けられましても」


 グリセリアが別館へ戻ろうとしている予想をしたリリアはグリセリアをジト目で見る。するとグリセリアは挙動不審になりながら視線をアリスに向けた。アリスは冷静に返す。


「怪しい~。絶対仕事しないつもりでしょ?」

「え、えっと~…。あ、なんだあれ?」

「え?」

「隙あり!」

「あー!コラ待ちなさーい!」


 グリセリアの反応のおかしさにさらに怪しみだしたリリア。追及しようとしたところでグリセリアの誤魔化しに引っかかり、隙を突かれて逃げられてしまった。

 リリアは咄嗟にグリセリアの追跡を開始。夕方に城の中で追いかけっこが始まった。


「これは…、アイラさんにはサウルス子爵だけでなく女王陛下も叱っていただく必要がありそうですね」

「そうですね。またアイラ殿の負担が…。やれやれ…」


 政務室に残されたオルシズとアリスは、アイラへの負担を懸念しつつ呆れた表情で静かになった政務室の扉を眺めていた。


 結局予定外の仕事とグリセリアの逃走により、オルシズ、リリア、アリスの三人は2時間以上の残業をするはめになったのだった。

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