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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十二章 舞台の下準備
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廃村へ帰還

 魔物を殲滅して無事に村へ戻って来た私達。村に入った私達は、サウルスを拘束したまま村人達や調査団員達が避難している建物へ向かった。


「皆さーん!ただいま戻りました~!」

「あっ!アイラ様だ~!」

「アイラ様お帰りなさ~い!」

「ピー」


 私の声に真っ先に反応して建物から出てきたのは村の子供達。何人もの子供達が笑顔で私のもとへ駆け寄って来た。同時にファルコも私の肩に乗って来た。


「みんなただいま。魔物はやっつけたからもう大丈夫よ」

「アイラ様魔物やっつけたの~?スゴ~イ!」

「アイラ様強~い!」


 ちびっ子達が眩しい笑顔を向けてくれてる。もうホントカワイイし癒しよね~。同時にファルコの事も撫でておく。


「戻られましたか!アイラ侯爵閣下!皆さん!」

「ご無事で何よりでございます!」


 子供達から少し遅れてゴンゾさんやトウロさんを初めとする調査団の団員達、村の大人達もわらわら出てきた。レキシントン夫妻とキオサさんとギルディスさんはその後ろからゆっくり出てきた。


「皆さんただいま戻りました。魔物は殲滅しましたのでもう大丈夫です。今のところ別箇所での魔物の存在は確認されていませんから、これで事態は収まったと見て良いでしょう」

「そうですか…、良かった…」

「助かった…」

「またアイラ様やお仲間方に救われたな…」

「やっと安心できる…」


 私の事態収束宣言にみんな安堵の表情を浮かべてる。こういうの見ると良い事したって思う。


「ところで、お主達の背後にいる縛られとる者はなんじゃ?」


 ギルディスさんは私達の後ろで未だに気絶してる拘束状態のサウルスに目を向けた。


「見ての通り、さっきまで行方不明だった人です」


 私はサウルスの姿を見せようと立ち位置を変えようとした。でも私がずれた直後にさっきまでサウルスを持ってたアルテとキリカとジーナが私の前へサウルスを投げた。シャロルの糸に拘束されたままで。

 てか投げるなら言ってよ。ちょっとビックリしたわ。そしてこれでも気絶したままなのね…。


「さ、サウルス子爵閣下!?」

「こ、これは一体どういう…!?」


 拘束されて気絶してるサウルスの姿にゴンゾさんやトウロさんが驚きを見せる。他の調査団員達も驚いてる。私はそんな彼ら彼女らに現場でのやり取りをざっくり説明した。


「助けてもらっておきながら、なんと無礼な…!」

「個人的に貴族として相応しくない人物だと思っていたが、やはり間違いではなかったようだな…」


 私の説明にゴンゾさんは怒りを出してる。トウロさんは元々サウルスは貴族の器じゃないと思ってたらしい。他の調査団員達も不満を出していて、一緒に話を聞いてた村人達も引いた表情をしてる。


「初めてお会いした時に随分上目線な方だとは思いましたが、まさかここまで重役としての自覚と器がない方だとは…」

「世の中いつになっても愚か者はいるものじゃのう。ワシがまだ若ければとっくに暗殺しておったわい」

「師匠の動きは現在も健在ではありませんか。でなくては魔物に対処できませんし。今とてお若い頃と同様に暗殺できますでしょう?」

「シャロル…、さすがにワシにも老いはあるぞ…。昔と同じ扱いせんでくれ…」


 キオサさんはサウルスと初めて会った時の事を掘り返しながらサウルスを見てる。

 ギルディスさんも隣でコメントしてたけど、シャロルがギルディスさんの今と昔を同等扱いしてきてギルディスさんが困ってる。


「……」


 フィクスさんはサウルスを眺めながら腕を組んで黙ったまま。


「フィクスさん、どうかされましたか?」

「いえ…。彼を初めて見た時に何か問題が起きる気がしまして、やはりな…と。

 自分がアストラントにいた頃仕事上で対立していた連中がいたのですが、奴らは自分の仕事も立場も顧みず、無駄に権力を振りかざすどうしようもない連中でした。この者からも当時の奴らと同じ感覚を感じ取りましてな、孤立している話を耳にした時に近々問題を起こすだろうと思ったのです。まぁ、まさかこんなすぐに問題を起こすとは思いませんでしたが…」


 フィクスさんは過去の経験からサウルスが問題を起こす可能性を感じてたらしい。さすが元アストラント軍のエースよね。今となってはレジェンド騎士かしら?


 とにかく今回の緊急事態はこれにて正式に収束。サウルスを除いて怪我人とか出なくて良かった。


 その後は私、いつもの私の側近、キオサさん、フィクスさん、ゴンゾさん、トウロさんとで話し合いを行い、調査団は今日と明日は村に留まって、明後日に王都へ戻ることになった。

 明日は調査団の兵士達がサウルスを尋問する予定。兵士達みんなしてやる気満々だった。どんだけサウルスは恨みや不満を買ってたのやら。






 明後日までのスケジュールが決まった後、私は他のメンツから離れて村の外れへ行き、精霊達のもとへ向かった。こっちの方に精霊達の気配があったから。


「うわあぁぁぁぁ!やめろ~!返せえぇぇぇぇ!」


 精霊達がいる方向へ向かって行くと、ベヒモスと思われる声が聞こえる。

 行ってみると、オリジン様とアグナさんとネロアさんが何か丸い物でキャッチボールしてた。しかも剛速球。ベヒモスはその丸い物を追いかけるように走って騒いでる。


「あ、アイラ様」


 キャッチボールには参加せずただ見ていただけのシルフちゃんが私に気付いて、元気よく駆け寄ってきた。超カワイイ。


「こんにちは、シルフちゃん。私が魔物と戦ってる間村を見てくれてありがとね」

「大した事じゃないよ~。えへへ」


 私の礼に謙虚にしつつも、私の頭ナデナデに照れるシルフちゃん。マジカワイイ。


「ところで他の精霊達は何をやってるの?」

「なんかね、【アイラ様の戦いを見てて身体を動かしたくなった】ってオリジン様が言い出してね、アグナさんとネロアさんが【玉投げをしよう】って言って、玉の代わりになる物がなかったからベヒモスの所有物を代わりに使って玉投げし始めたの」


 私がきっかけかい。それでベヒモスは自分の物がボール代わりにされるんだから可哀想に…。ていうか身体を動かす方法なら他にあったでしょうに。


「それとね、アグナさんとネロアさんが【もしかするとアイラ様がお礼を言いに来るかもしれないから、もし来たらお礼を言うほどの事じゃないって言っておいて】って」

「そ、そう…」


 私がお礼を言いに来る事を予期してたのか…。私の礼を蹴ってでもキャッチボールしたいの…?


「こら!ベヒモス邪魔よ!視界にチラチラ入って鬱陶しいのよ!」

「なんでだよ!俺の物なんだぞ!ふざけんな!」

「あまり騒ぐと投げから蹴りに変えますよ?」

「やめろ~!壊れるじゃねえか!ああぁぁぁぁ!」


 アグナさんにウザがられ、ネロアさんに脅され、無言でキャッチボールを続行するオリジン様。ベヒモスは再び丸い物を追いかけだす。そもそもベヒモスが返却を求めてるあれは何なの?


「まったく、こうなったのは自業自得でしょう?それにもう元々の形じゃないのですから諦めなさい」

「諦められねえよ!今ならまだギリギリ直せる状態なんだ!返してくれ~!」


 今オリジン様が発した「自業自得」という言葉が妙に引っかかる。ベヒモスが何か悪い事をして、その結果としてベヒモスの所有物が使われてるって事かしら?それにあれはもとから丸かったわけではないのね。


「シルフちゃん、今オリジン様が自業自得って言ったけど、どういうこと?」

「実はね、ベヒモスね、私と一緒に村で留守番してる時に、若い女性にこっそり近づいて触ろうって企んでたの。その直前にアグナさんとネロアさんが帰って来たからギリギリ防げたんだけど、オリジン様が帰って来た後に【ベヒモスにはお説教するよりこっちの方が有効だから】ってお仕置きとして精霊窟にあったベヒモスの物を没収したの。オリジン様が身体動かしたいって言ったのはその後なの」

「その没収された物があれよね?あの球体は元々何なの?」

「私はよく分からないの。でもオリジン様が【まだこんな卑猥な物を持っていたのですか】って言ってた」

「へぇ、そうなの」


 つまりベヒモスは自らの行いのせいで現状に至るわけか。これは確かに自業自得だわ。

 そういえば前にノワールが精霊窟でベヒモスの人形相手に鍛錬したって話してたけど、その時の人形はみんな公衆には見せられない姿してたって言ってたな…。ベヒモスはいわゆるそのシリーズを未だ持ってたわけだ。…なんか、親に内緒で隠し持ってた物がバレて没収されてるみたい。

 さすがにベヒモスがいじめられてると感じて擁護しようか考えた私だったけど、その前にベヒモスがセクハラしようと企んでたなら庇う理由もないわ。というか魔物討伐で村を出る前にアルテが予想してた事がばっちり的中しちゃったよ。


「じゃあシルフちゃん。私は村に戻るわね」

「うん、またね」


 ベヒモスのセクハラ企みエピソードですっかり気分が下がった私は、シルフちゃんと別れてさっさと村に戻った。





 村に戻った後、私は一旦馬車の中に入って、ノーバイン城にいる神獣達と天神界メンバーへ念話を送った。内容は今回の魔物出現および討伐の件と、サウルスの独断危険行動および警告無視およびその抵抗による拘束について。

 セリアはまだ念話魔法を習得してないから、爺やにセリアへ伝言をお願いしておいた。


 私が念話を送り終わった後、たまたま兵士達が群がってる馬車を見つけた。傍にシャロルもいる。


「シャロル」

「あ、お嬢様。お疲れ様でございます。精霊様方とのお話とノーバイン城への念話はお済みなられましたか?」

「うん、済んだわ。それでこれは一体何事?」

「調査団の兵士の方々がサウルス卿の衣服や荷物に危険物がないか検査しているそうです。危険物でなくとも大半は没収するつもりだと皆さんおっしゃっていました。

 先程まで私の糸での拘束でしたが、現在は兵士の方々で持っていた手錠と縄に変えてあります。私もちょうど今、使用していた糸の調整が終わりましたところでして」

「そういうことなのね。サウルスはまだ気絶してるの?」

「はい。まだ目を覚ます兆候は見られません」


 それならサウルスに対しては今日はこれ以上の事はできないわね。しかしアテーナの顔面キック一発でここまで気絶しっぱなしって、あの人はどんだけ弱いの?






 その日の夜の夕食時。気が付くと村人達と調査団で宴会が行われてた。いつの間にか仲良くなってる…。

 キオサさんいわく、


「避難した際に一緒にいました事がきっかけですっかり意気投合したようです。特に若い方々が仲良いですよ」


 ということらしい。まぁ、これからの事を考えると仲良くなってくれた方が私としては嬉しいけどね。今の調査団員の中から私の領地へ転属してくる人がいるかもしれないし。


「アイラ様」


 宴会してる光景を傍で眺めてたら、フィクスさんが声をかけてきた。なんとなく表情が真剣に見える。


「フィクスさん、どうしました?」

「実はアイラ様にお願いがございまして」

「なんでしょうか?」

「…自分と、ひとつ手合わせ願えませんでしょうか?」

「……はい?」


 フィクスさんの申し出に私は固まる。そして固まったのは私だけでなく、私の傍にいた側近達、宴会してた村人達や調査団員達、宴会組ではない普通に食事してた面々、いつの間にかファルコと遊んでた子供達、とにかく今この時にこの場にいる誰もがフィクスさんの申し出に静まり返った。


「い、今、手合わせしたいって言ったか?」

「言ったな…。アイラ様の強さ解って言ってるのか?」

「でもフィクス殿も元アストラント最強の騎士だぞ?強さは相当なはず…」

「どちらにせよ本気で言ってるのか…?何かフィクス殿の闘志に火でも点いたのか?」


 沈黙の後、宴会組を中心にみんなボソボソ話し始める。子供達だけ状況がよく分かってない様子。


「えっと、つまり…、私と模擬戦がしたい。という事ですか?」

「はい。山奥の家であなた様と再会した時、あなた様からは異様なまでの強者としての何かを感じていました。自分はアイラ様の戦い方も実力も知りません。しかし魔物相手に無傷で勝って戻ってきている上、今回のサウルス殿のように人命救出を同時にやってのけている以上、相当な実力をお持ちだと推察できます」

「いえいえ、それほどでもありますよ」

「お嬢様…、そこは謙虚に否定されるべきところだと思いますが…」


 フィクスさんの私が強い人認定に照れてると、シャロルが呆れ気味にツッコんできた。

 まぁ私もノリで否定しなかっただけで、今回の事は一緒に現場に行ってくれた仲間と精霊達やセイレーンのおかげだと思ってるんだけど。これマジでね。


「自分はもう長い事戦闘をしていません。強いて言うならば山奥で大型の熊数頭と格闘した程度です」


 うん、それ十分戦闘だよ?


「しかしこの村に入ってアイラ様のご活躍を見ていているうちに、自分の中の奥底にあった闘争心が湧き出してきまして。自分の親友の娘様が一体どこまでの実力をつけておられるのか、大変興味があるのです」

「それで私と戦ってみたいと…」

「はい。当然無理にとは言いません。あくまで私個人の我儘として聞いてくだされば」


 私と戦いたくてウズウズしてるって事かしら?そういえば私やジーナが幼かった頃にもガウスお父様とフィクスさんって模擬戦してたっけ。フィクスさんも当時の事思い出したのかな…。

 と、ここで突然ジーナがフィクスさんの前に立った。


「父上。お話に割り込むようで申し訳ありませんが、アイラ様が今日魔物と戦われた事は父上も重々承知のはずです。いくらアイラ様がお強いとはいえ疲労は感じます。お気持ちは解りますが、ゆくゆくは騎士団長としてアイラ様にお仕えする立場であれば、自身の欲求を抑えて主の事を一番に考えることが部下の務めであるはずです。それが分からない父上ではないと思いますが?」


 なんとジーナがフィクスさんに物申した!これは意外!


「ジーナが言っている事は当然理解している。しかし私にも騎士として抑えきれぬものがある。だからこそ我儘として言っているのだ。アイラ様がお断りしたところで何も問題はない」

「我儘を口に出す時点で問題だと言っているのです。アイラ様は既に様々な重責を担ってらっしゃいます。余分な負担をかけないでいただきたい」

「お前はあくまで反対というわけか…」

「ええ、反対です。どうしてもと申されるのでしたら、私が相手となってその闘争心を消して差し上げましょう」

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 突然のジーナの参戦宣言。これには私も他のみんなもビックリ。


「ほう…、父に対抗するか…。お前が素早い動きができた事は認めているが、果たしてそれ以外で私に対抗できるか?」

「さあ?少なくとも山奥にいた頃よりはマシな動きができるでしょう」


 フィクスさんはジーナに圧をかけてるけど、ジーナは全く動じてない。

 ジーナは山奥にいた頃とは様変わりして、魔物を単騎で消滅させれるほどの強さを保持するところまできた。しかも戦闘に関しては神の使い達と精霊達と神獣達の直伝。

 今や超人クラスの動きができて普通の人の概念を超えているジーナ。いくらフィクスさんとはいえ敵わない。マシな動きどころじゃない。


 フィクスさんとジーナは睨み合ったまま動かない。親子の間に火花が見える。完全にバッチバチ。

 なんか嫌な空気だったからリアンヌさんに何とかしてもらおうと思ったんだけど、リアンヌさんは近くでいつの間にかファルコを撫でながらうたた寝してる…。なんでこういう時に母親が我関せず状態なのよ…。ファルコも寝てるし…。


「あの~…」


 仕方なく私が控えめに間に入った。


「親子で睨み合われても困るんですけど。私はまだ何も言っていませんよ?」


 私がイエスもノーも言ってない事を言うと、フィクスさんもジーナもポカンとした表情になった。


「ジーナ。あなたの私を想う気持ちは嬉しいけど、私がまだ『はい』も『いいえ』も言ってない状態で話に入らないでちょうだい。私が返答してからにしてちょうだい」

「も、申し訳ありません…。失念しておりました…」


 ジーナは静かに退いて行った。


「フィクスさん。手合わせ、お受けしましょう。こんな私で良ければお相手しますよ」


 私はフィクスさんの申し出を承諾。フィクスさんの言う「我儘」に付き合う事にした。

 別に魔物の戦闘で体力消耗したわけじゃないし。サウルスのせいでムダに気力を消耗したけどね。


 というわけでこの夜の廃村で、住人達と調査団員達が観客となって、私対‘不屈の騎士’のスペシャルマッチが行われることになった。


 ちなみに私が手合わせを受け入れた後にジーナが再びフィクスさんに何か言いに行こうとしてたんだけど、ずっとシャロルに止められてた。

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