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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十二章 舞台の下準備
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魔物の動向と予想外の事態

 フィクスさんとリアンヌさんが十分に休息をとった後、健康状態等を確認した上で二人の聴取が行われた。聴取はトウロさんが中心になってやってくれて、サウルス子爵が横から入ってくることはなかった。良かった良かった。

 フィクスさんは聴取を終えた後、キオサさんやギルディスさんと初めて顔を合わせ、これまでの事や今後の事を話しこんでいた。

 夕方には村の周囲を調査していた兵士達が調査予定範囲を廻りきったらしく、ゴンゾさんから調査完了報告をもらった。

 さらに時を同じくして、トウロさんから村住人への聴取が全て完了したとの報告が来た。

 これで、今回の調査団による廃村住人およびフィクスさんとリアンヌさんへの聴取、廃村周辺の調査は全て終了。報告を受けた私は調査団代表として、村の住人達へ調査終了を宣言した。この間もサウルス子爵は動きを見せず。多分もう帰る事しか考えてないんでしょうね。






 そして翌日。私達調査団はキオサさん達住人と別れを告げて王都に戻る……はずだったんだけど、帰還は延期。滞在延長になった。

 調査団の誰もが王都に戻る気満々だった昨日の夜遅く。誰もが寝静まった頃になって私のもとに念話が飛んできた。念話は精霊、神獣の両方から来ていて「村からほど近い地点で魔物が複数体出現した」という内容だった。第一報告者は森に棲む野生動物。しかも一匹だけでなく多くの動物達から魔物出現の知らせが来ているらしいから、情報に間違いはないでしょうね。

 ここは前にも魔物の襲撃を受けてる。確率は分からないけど、ここが再び魔物に襲撃される可能性は否定できない。なので警戒のために私は滞在延長を即決断。調査団の帰還を延期させた。


 私の情報を調査団の面々は信じてくれて、滞在延期の判断にも従ってくれた。情報が人以外からのものだったから、信憑性を疑われる事を心配して超低姿勢で滞在延期をお願いしたのが良かったみたい。命令じゃなくてあくまでお願いでね。

 村の住人達にも話したんだけど、以前魔物の襲撃を受けている影響からなのか、「しばらく残ってほしい」と大勢から言われた。


 しかし唯一サウルス子爵だけが私の判断に反対してきた。「根拠も信憑性もない」とか「物的証拠を見せろ」とかしつこく言ってきていて、気持ちは解るけどメッチャ鬱陶しかった。シャロルも珍しく怒りで震えてた。

 けどそんなサウルスを止めたのが、その時周囲にいた調査団の兵士達と役人達だった。まるで今までの不満やストレスを爆発させるかのように、みんなしてサウルス子爵に説教したり怒鳴り散らしたり。これには私もビックリしたし、貴族への無礼な振舞いとして罰せられてもおかしくないんだけど、サウルス子爵も予想してなかった事態だからか、言葉を返すこともなく完全に圧されていた。


「我々調査団は皆アイラ様の指示に従う所存でございます。サウルス子爵がまた口出ししてきましたら我々で食い止めますのでご心配なく」


 ってさっきゴンゾさんから言われた。もう調査団からのサウルス子爵の信頼は欠片もないわね。そもそも側近がいない事が誰からも信頼されてない何よりの証拠だけど。


 結局サウルス子爵の反対は調査団員達によって強制的にもみ消され、私の指示通り調査団は魔物に対する警戒態勢に入った。

 以降サウルス子爵は馬車の中に籠りっきりだったり、人が集まっているところから離れていたりとずっと一人で行動してた。私が声をかけてみても無視されるし、感じ悪いからもう知らない。ホントこれはセリアに報告ね。


 それと今回の魔物出現情報を受けて、以前の領地視察時に滞在場所にしていた洞窟にいるセイレーンが村の近くまで駆けつけてくれた。私は一切呼んでないんだけど、オリジン様が「念のため神獣も」という理由で呼んだらしい。

 私は一旦村の外へ移動し、他に人が来なさそうな所でセイレーンと会った。


「ごめんね?わざわざ来てもらっちゃって」

「いえいえ。契約主が魔物に対処しようとしている状態で神獣が近くに誰もいない事は問題ですから。ここへは来るべくして来たようなものですよ。神獣代表として!」


 セイレーンはニカッと笑顔を見せて敬礼ポーズ。ホントいつでも明るいな~、この子。


「ところでセイレーン。以前一緒に温泉に入った時、ノワールの領地には水源がないって言ってたじゃない?オリジン様に聞いたら二百年前の情報だと言われたんだけど一体どういう事かしら?」

「え?たった二百年前じゃないですか?」

「最近の事みたいに言わないでよ。その二百年の間に水源が確保されてるじゃないのよ。すっかり誤解してたわよ」

「自然界じゃ最近の事ですよぉ~。百年やら二百年程度の間なんて、動物の一生で言う瞬き程度でしかないんですから」

「そんなの私だって解ってるわよ。人間の感覚と自然界の感覚をごっちゃにするなって言ってるの。セイレーンだって元人間なんだから解るでしょ?」

「さすがにもう人間だった頃の感覚なんてほとんどありませんよ~。人間辞めて千年以上経ってるんですから」


 神獣達の中で一番人間に近い姿してるセイレーンだけど、やっぱ中身は神獣なのね。人間だった頃の思い出も名前も記憶してるのに、感覚的なものは既にないわけか…。


「まぁいいわ。今度からはもっと新しい情報を頂戴。古い情報が欲しい時は改めて聞くから」

「は~い」


 手を上げて応える姿は可愛らしい女の子なんだけどなぁ…。


 とにかくセイレーンには魔物がいる方面の森を巡回してもらって、魔物の動向を探ってもらうことになった。





 それから午後になっても進展はなく。魔物は定位置で止まったまま動かないらしい。

 警戒態勢継続で過ごしていると、私はある事に気が付いた。それは本当にたまたま、村にいる人達を見ていて気が付いた。


「ねぇ、サウルス子爵は?」

「そういえばお見かけしませんね…。馬車の中では?」


 シャロルの予想を信じて馬車の中を覗いたけどサウルス子爵はいない。

 それ以降村中にいる人達全員に聞いて回ったけど、マジでサウルス子爵がいない。あの人はいくらアウェーとはいえ貴族なわけで、行方不明は冗談抜きでヤバイ。


「うっそでしょ?マジでどこに行ったわけ!?サウルスのおじーちゃーん!」

「こんな時にでも迷惑をかけるおつもりですか!あの人は!」


 私がサウルス子爵をお爺ちゃん呼ばわりして呼んでも見つからない。シャロルはだんだんイラつき始めてる。


「あの人なら魔物と遭遇しなくても森に入ったら死ぬわね」

「そうねぇ。そうなったところで自業自得だけど」


 アテーナとアルテはまるで他人事のように話してる。


「アイラ様。森へ探しに行かれますか?」

「私が竜になって上空から捜索する事もできます。ご指示を」


 ジーナとキリカは私に判断を求めてきた。二人はサウルス子爵が森に入ったと予想しているらしい。


「う~ん…、この状況下で勝手に、しかも一人で村の外に出るなんて考えにくいし…」

「しかし可能性がないわけではありませんよ?」

「そうだけど~…、う~ん…」


 サウルス子爵自身も自分が貴族子爵という要人である事は自覚しているはず。だから勝手な行動を単独でするとは思えない。でもシャロルの言う通り村に姿がない以上、村の外へ出た可能性はある。

 この村の外へ出た場合、道は王都へ続く道か、アンプルデス山脈方面へ続く荒れた道しかない。他にあったであろう道は全て草木に覆われていて消えている。

 他は全て森となっていて、野生動物が多く生息している。もちろん肉食獣や有毒生物もいる。冒険家や探検家のような者でない限り、一人でうろつける所じゃない。


(アイラ様~。応答願いまーす)


 考えてたら突然セイレーンから念話が入った。


(はいはい、どうしたの?)

(魔物を発見しましたよ。かなりの数です。村がある方面へ進行を開始してますよ)


 やっぱり来たか…。魔物の意図は分からないけど、以前の襲撃を失敗している点はありそうな気がするわね…。


(それと~)


 あれ?まだあるの?


(魔物を発見する前に一人で森の中を歩いてる男性を見つけまして、このままだと位置的に魔物と遭遇しちゃうんですけど~)

(なんですって?)


 森の中を歩く一人の男性…。嫌な予感しかしない…。


(男性の特徴とか分かる?)

(老人ですね。貴族の人が着そうな服着てます。あと頑固そう)


 あー…、多分サウルス子爵だわ…。嫌な予感が当たっちゃったよ…。


(アイラ様~、男性と魔物との距離はもうそこまでありませんよ~)


 どうやら考えてる時間はないらしい。ええい!行動あるのみ!


(セイレーン。あなたはどこかに潜んで男性と魔物の動向を監視していて。万が一男性が死にそうになったら助けてあげて)

(了解しました!)


 ここでセイレーンとの念話は途切れた。


「お嬢様、どちら様からの念話ですか?」

「あら?シャロル。よく念話だって分かったわね?」

「突然静かになられて真剣な表情でしたので、おそらく念話かなと」

「察しが良いわね。さすがシャロルだわ。それはそうと緊急事態よ。すぐに村にいる人達で中心になっている人を集めて」


 私はキオサさん、ギルディスさん、ゴンゾさん、トウロさん、フィクスさんを呼び出すようシャロルとジーナに頼んだ。

 その直後、オリジン様が現れた。


「アイラさん。セイレーンより状況は聞きました。我々もセイレーンと合流します。念のためシルフとベヒモスが村に残ります」

「解りました」


 オリジン様とアグナさんとネロアさんも現場へ急行してくれるらしい。一部のみとはいえ精霊と神獣が一緒にいてくれると心強い。


「お嬢様!お連れしました!」


 シャロルとジーナが指定したメンツを集めて来てくれた。私はすぐに現在の状況を伝え、今から私が現場へ向かう事を説明した。


「あの貴族は愚かじゃのう。自分の力量を弁えておるのじゃろうか」

「あの人は…!いくら自分が孤立しているからってなんと勝手な…!」


 私の話にギルディスさんは顎を指でなぞりながらコメント。ゴンゾさんは怒りに震えてる。


「キオサさん。村の方々は引き続き避難態勢を維持させてください。戦闘可能な方々の警戒態勢もそのままで。今の話を伝えても構いませんが、混乱が起きないようお願いします。それとファルコの事もお願いして良いですか?」

「心得ております。どうかご無事で。ファルコもお預かりしますよ。ギルディスさん、戻りますよ」

「分かっとるわい。年寄りを急かすでない。シャロルといいまったく…」

「ピー」


 足早に去ろうとするキオサさんとは対照的にギルディスさんは至ってマイペース。「シャロルといい」と言ったということは、シャロルもギルディスさんを急かしてたわね…?

 さっきまで私の肩にいたファルコもキオサさんの移動と同時に飛び立って、村の避難場所の方へ飛んで行った。本能的に今が緊急事態だと認識してるみたい。賢いわね。


「トウロさん。現在役人の方々は馬車にいると思いますが、村の住人方と同じ場所への避難指示をお願いします」

「わ、解りました!」

「ゴンゾさん。兵士の方々は役人の方々と馬車から避難場所まで移動していただき、村の戦闘要員の方々と共同防衛態勢に入ってください」

「承知しました。アイラ閣下、どうかご武運を!」


 これまでは魔物がこっちに来るかどうか分からなかったから、警戒態勢を敷いていたとはいえ自由行動はオッケーにしていた。しかし魔物の村への進行の可能性が高まったため、警戒態勢から厳重警戒態勢および緊急防衛態勢を敷かせる事にした。

 村の住人および調査団の役人達非戦闘員を一ヶ所に避難させ、村の戦闘要員と調査団の兵士達で共同防衛線を張らせるというのが厳重警戒態勢および緊急防衛態勢。

 私の指示を聞き入れたトウロさんとゴンゾさんは慌てて調査団員達のもとへ走り去って行った。


「アイラ様、自分も共に参りましょう。足手まといになるつもりはありません」


 フィクスさんは魔物迎撃に参加を希望してきた。さすが元アストラント最強騎士。魔物にも立ち向かおうとする考えはあっぱれ。でも私は首を横に振った。


「お断りします。フィクスさんはここに残ってください」

「何故です?」

「今この村には大勢の人がおります。子供からお年寄りまでです。私や仲間が迎撃に出ている間に万が一村にも魔物が出現してしまったら大変です。その分の戦力は出来る限り残しておきたいのです。その万が一に備え、フィクスさんも他の戦闘要員の方々とここで皆さんを守ってください。

 戦う力なき者を守る事も騎士としての務め。十分騎士の誇りが立つとは思いますが?」

「……そういうことであれば解りました。どうかお気を付けください」


 フィクスさんは納得してくれた。貴重な強力戦力だしね。残ってくれた方が私は安心。いくらフィクスさんでも魔物に敵うとは思えんし。


「これで事前にやる事は済んだわね…。時間がないわ。現場に急ぐわよ!」

「「「承知!」」」

「「御意!」」


 私はシャロル、アテーナ、アルテ、キリカ、ジーナを連れて、魔物とサウルス子爵がいる現場へと移動を開始した。

 ちなみに「承知」って言ったのがシャロルとアテーナとアルテで、「御意」って言ったのがキリカとジーナ。


(シルフちゃん、ベヒモス。留守をお願いね)

(気を付けてね。行ってらっしゃい)

(留守は任せな!安心して行ってこい!)

(ベヒモスは留守の間に村の女性をセクハラしそうで安心できない)

(わかるわかる。穴掘ってそこから女性のスカートの中とか覗いてそう)

(んなことしねえわ!)


 私がシルフちゃんとベヒモスに念話で留守をお願いしたら、直後にアテーナとアルテがベヒモスいじりし始めた。この状況下でそういう会話はやめてほしい…。

 とにかく話に構ってる余裕はないから聞かなかった事にして、私達は光速移動で現場へ急行したのだった。

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