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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十二章 舞台の下準備
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川の水の復活を

 翌日。私は朝から出掛ける支度を整えていた。……訂正、シャロルとジーナが全部整えた。シャロル一人じゃなくてジーナも参加してるおかげで私の準備が整う速さが今までよりスピーディーなのよ…。もう全くもって自分の準備を自分でする隙がないし、準備の仕方忘れかけてるのよね…。


 今回はフェニックスに乗って、アンプルデス山脈へと向かう。詳しく目的地を言うと、ノワールの領地内にある川の水が止まってしまって、上流でダム状態になっているという小さな湖。

 目的は、水をせき止めてしまっている物を決壊する前に意図的に壊し、川の水の流れを復活させる事。


 地図上で確認すると、目的地はディゼフォーグ地帯をアンプルデス山脈方面に出て、山の麓から少し登った辺り。範囲としてはノワールの領地ではなくアンプルデス山脈範囲となる。

 今回は普段同行しているシャロルやキリカは留守番となり、アテーナとアルテの護衛のみが同行する。

 これにはちゃんと理由があって、シャロルはそもそも酸素が薄い場所での活動が困難なため同行不可。ジーナとキリカは今回の内容的に手伝えそうな事がなく、危険な場所である可能性もあるため同行をやめてもらった。

 セリアは当然女王としての仕事があるから無理。ノワールには川の水が復活したかどうか確認してもらうため、小隊を連れてもう一度領地に向かってもらってる。まさかの陽が昇り始めた直後に出発したからね。早すぎだっての。


 というわけで今回はアテーナとアルテ、神獣からはフェニックス、精霊からはネロアさんが同行する事となり、かなりの小規模で動く。





 私達は桜区画へ移動。私は待機していたフェニックスに声をかけた。


「おはよー、フェニックス。今日もよろしくね」

「よろしくお願いします。アイラ様」


 フェニックスは既に準備万端な様子。いつでも飛べそう。


「んじゃアイラ。気を付けてね」

「うん、行ってきます。いつもの事だけど、サボらずちゃんと仕事してよね?」

「なんかいつも私が仕事サボってるみたいな言い方~」

「サボっているではありませんか」

「不思議そうな表情で言わないで…」


 セリアに仕事をサボらないよう注意したら、セリアは心外そうな反応を示した。そしたらアリスが「何を今更」と言わんばかりの顔でセリアの心外反応を否定した。


「シャロル、ジーナ、キリカ、爺や、カラス丸、オルトロス、ザッハーク、ファルコ。留守をよろしく」

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

「お帰りをお待ちしております」

「お気を付けて」

「留守はお任せくださいませ」

「ザッハークとファルコの事はアタシとオルトロスで責任持って見ておくわ。安心なさい」

「ワンワン」

「ピー」


 メイド二人と補佐官と最強執事。この四人の留守番は絶対的に安泰だろう。心配要素がない。カラス丸も神獣じゃないにせよ緊急時の対処法は解るだろうし、オルトロスは神獣だから問題ない。

 ファルコは鳴きながら翼をバサバサさせてる。多分いってらっしゃい的な意味なんだろう。ザッハークもポヨンポヨンしながら「いってらっしゃ~い!」て言ってるのが解った。


「それじゃあ行きますか。フェニックス、出発」

「御意。揺れますのでご注意ください」


 私とアテーナとアルテはフェニックスの背に乗って桜区画から離陸。目的地の湖へと出発した。なお、ネロアさんが現地へ先行してる。


「アルテ。今回は場所が場所なんだから、途中でトイレとか言わないでよ?」

「言わないわよ。仮にトイレに行きたくなっても、湖の中にしちゃえば問題ないでしょ」

「「問題大ありだわ」」


 アテーナがアルテにトイレに行きたがらないよう忠告したのに対し、アルテが問題発言をしたので私とアテーナでツッコんだ。


「あんたそれ万が一行動に移したら大問題だし、それ以前に発言してる時点で大問題よ?」

「さすがに女性としてマズイと思うけど。…いや、男性でも問題か」

「え?ダメ?水の中にするわけだし、どうせ分かんないだろうから問題ないかなと…」

「もしもマジでやったら、私は水と一緒にあんたを川に流すわ」

「お手伝いします。アイラ様」

「あれ?私今グリセリア様みたいな扱いになってる?」


 全く乙女心やその他諸々がないアルテに呆れながら目的地へ向かう私達。それからしばらく飛行していると…。


「皆さん」

「あれ?ネロアさん」


 先行して目的地で待機しているはずのネロアさんが、突然私達の前に現れた。……上空にいるのに地上にいる時と同じ立ち姿でいる。もの凄く不自然。


「目的地の湖ですが、何故か魔物が大群で群がっていまして待機できません。ある程度距離を保って様子を窺っていましたが、状況が変わる様子がなかったため、こちらへ参りました」

「魔物が群がってる?」


 湖一面にたくさんの魔物がいるってこと?メッチャ邪魔じゃん。


「魔物が湖に群がっている原因は解りますか?」

「解りません。魔物の思考や行動は精霊でも理解不能ですので」

「神獣も同じくです。そもそも魔物が存在している理由も、どこからどうやって魔物が生まれているのかも、そして存在理由すらも分かりませんから」


 ネロアさんに続いてフェニックスも話に入って付け加えた。精霊でも神獣でも魔物の事については何も分からないのね。魔物も巨獣も謎だらけね…。





 というわけでネロアさんと合流し、目的地上空まで行き着くと…。


「うっわ…、気持ち悪…」

「アルテ。やっぱりトイレして良いわよ」

「あれじゃあトイレしたい感覚すら失せるわよ…」


 目的地には確かに水が溜まっている所があった。でもネロアさんが言ってた通り、水面と周囲に大量の魔物がウジャウジャしてる。なんかゴキブリの大群見てるみたい…。まぁ、ゴキブリの大群なんて見た事ないし、見る事もないだろうし、見たくもないけど。そしてアルテに外トイレ反対を撤回するアテーナ。


「なんでだろう…。あそこに何か引き寄せられる物でもあるのかな…」

「あるとは思えませんね。何か沈んでいるとも考えにくいですし…」

「実は単なる水浴び……なら他の場所でもできるか」


 アテーナやアルテと一緒に魔物が湖にいる理由を考えたけど、一切見当が付かない。…と、魔物から視線を感じた。


「アイラ様、魔物に気付かれたようです」


 フェニックスも気付かれた事を察知したみたい。


「そうみたいね。フェニックス、このまま飛行を維持して。魔物の攻撃を回避しつつ飛行を続けて」

「御意」

「アテーナとアルテは戦闘準備状態で待機」

「「御意」」

「ネロアさんもフェニックスの上で待機していてください」

「承知しましたが…、どうするのですか?」

「私がこの高度から魔法攻撃をします。ちょっと試してみたい魔法技があるんです」


 みんなに指示を出した後、私はさっそく魔法発動の準備に取り掛かる。準備って言っても秒で終わるけど。


「…!フェニックス、回避!」

「承知しております」


 魔物の一部がこっちに向かって遠距離攻撃してきたけど、フェニックスはアッサリ回避。


「さて、今度はこっちの攻撃パターンよ」


 私は湖上空にいくつもの大型魔法陣を展開。そこから大量の魔法を魔物目掛けて雨のように降らせて……ではなく、ミサイル型の魔法を一斉照射した。

 放たれた魔法は魔物達目掛けて飛んでいく。当然魔物達は回避を行おうとするけど、無駄な行為。

 実はこの魔法、一発一発が追尾式。魔法そのものが独自に標的をロックオンして飛ぶため、どれだけ逃げようと永遠に追ってくる。

 名付けて『追尾型ミサイル魔法』である。前世の頃、戦闘機などに搭載されていた追尾式ミサイルをモデルに私が独自で開発したオリジナル魔法。私以外誰一人使えないってね。

 しかも追尾するだけじゃなくて、追尾速度をマッハ並にして、威力も『光線型爆発魔法』と同等にしてある。


「ひゃ~!スゴイ!」

「周囲に魔法陣張って風を防がないと、こっちも簡単に吹き飛ばされますよ」


 アテーナとアルテは魔法の爆風に晒されながら楽しんでる。


「アイラ様の独自魔法ですか…。相変わらずすごいもの生み出しますね」

「この威力なら魔物と言えど掠っただけでも消滅は免れないでしょう」


 フェニックスとネロアさんはこの爆風の中でも全くブレない。さすが。


 しかし、いやぁ~、メッチャヤバイ爆発が連発してる。煙で見えにくいけど、多分魔物は避けきれずに消滅しているでしょうね。魔法弾自体の追尾の動きも複雑にしてあるし、避けようなんてないんだけど。

 試験的に使ってみたけど大当たりね。本当は対人にも効果があるか試したいんだけど、コアトルみたいのがいないからなぁ…。


「あ、爆風で右目にゴミが…。私の右目の痛みよ、治まれ~」


 アルテのセリフに思わず「中二病か!」ってツッコみそうになったけど、通じなさそうだから止めといた。





 それから何分経ったか。煙が治まった湖周辺に魔物の姿と気配は確認されず。完全にいなくなったわね。

 安全が確認されたところで、湖の傍にフェニックスが降下。私は地上に降りて現場の状況を確認する。


 湖というと本来の定義では『四方を陸に囲まれた巨大な水たまり』という表現だけど、ここはアンプルデス山脈から水が流れ込んで、水が一旦ここに溜まって、それから川となってノワールの領地へ流れているらしい。だから正確には湖と呼んで良いのか分かんないのよね。

 そして川となって流れる方を見ると、情報の通り大きな岩が無数に重なって流れを塞き止めていた。でも今にも崩れそう。これが崩壊したらかなりの量の水が一気に放水されるでしょうね。最悪、土石流になるかも。


「ふむふむ。やっぱり予定通り塞き止められる前の状態に戻した方が良さそうね。これが崩壊すれば土石流になるでしょうから」

「それは解りますが、どう対処しますか?」

「そうねぇ…」


 アルテからの質問に私は少し考える。


「ちょっと時間かかるだろうけど、あの方法しかないか…。みんな、岩の反対側まで移動するわよ」


 私達は水を塞き止めている岩々の反対側に回り込む。こっちに来てみるとよく判るけど、本来水が流れていたであろう部分に岩がみっちり積み重なって、水の流れを完全に遮断しちゃってる。


「とりあえず…、えい」


 私は熱性の光魔法をレーザータイプで発射。岩に小さな穴を開けた。それを何度か繰り返して、岩々に無数の穴を開ける。水は穴から流れ出し、ひとまず水の流れは再開させることができた。


「とりあえず今はこれで。さてこれからどうするか…」

「え?これで解決なんじゃあ…」

「このままだと川の復活まで相当時間かかるわよ?」

「あ、そっか…」


 アルテは水が流れたのを見て問題が解決したと思ってたみたいだけど、岩がまだある以上は解決には至らない。

 本当ならさっさと岩をぶっ壊しちゃえば良いんだけど、それにはまず湖の水量が以前の状態まで戻ってくれないと、結局土石流級の流れが発生してしまう。

 だからと言ってこのまま放置すれば、流れる水の圧に岩が耐えられなくなって崩壊する危険性もある。だから次の策を…。






 ミシミシミシミシ…。





 あ、やっべ。既に岩が崩壊しかかってる。思ってたより耐久力弱かった。

 どうしよ…。急いで次を考えないと…。あ、そうだ。


「みんなもう少し下がって。流す量を増やすわ」


 みんなを川から距離をとらせた後、私は小型の魔法弾を岩に向かって連続発射。岩々を端から徐々に砕いていった。

 そして水の流れが強くなり始めたのと同時に、岩があった所に魔法壁を展開。二枚の魔法壁を形成し、魔法壁と魔法壁の間に隙間を作って、その部分から一定に安定した量の水が流れるようにした。


「よし。これなら短期間で元通りになるでしょ」

「なるほど。考えましたね。これなら水害も発生せずに済むでしょう」


 ネロアさんも評価してくれた。後は魔法壁を解くタイミングを見れば良いだけ。


 その後私達は近くにテントを張って、川の流れを監視。下流の方に行ってもらってたノワールからも「無事に水が流れてきました」と念話で報告があった。

 一応順調だけど万が一という事もあるから、私達はこのまましばらく待機することにした。

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