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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十二章 舞台の下準備
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スンテノが作った装飾

 エウリアとメリッサが仕事に戻って行ってから30分程経った頃。私の髪の毛を理由も言わずに持って行ったスンテノさんが再びやって来た。


「アイラ様~。今別館の入口でメリッサから聞いたんだけど、おにぎりとかいうお料理作ったんですって?ウチの妹が我儘言っちゃってごめんなさいね?それとそのおにぎりっていうの、私も食べてみたいわ」

「おにぎりでしたら他にも希望者がいますので、今度作りますね。メリッサはお腹鳴ってたくらいですし、本当にお腹空いてたんでしょう。魔法に関して教えてもらったお礼も兼ねて作りましたから、我儘だなんて思ってませんよ。

 それと思ったんですけど、メリッサってけっこう大食いだったりします?あの子の一食あたりの食事量が平均よりも多いことは認識してるんですけど、食事以外の時も何か口にしてる感じに思って…」

「あぁ、あの子は大食いよ。私が知る限りで、一食で六人前の量をたいらげた時があったわねぇ」

「「ろ、六人前…」」


 またしてもシャロルとジーナのダブルメイドの息が合った。なんだか今日はシャロルとジーナの息がピッタリ。

 にしてもやっぱりメリッサは大食いだったのか。あの子って小柄で華奢だけど、一体身体のどこにそんな量の食べ物が入っていくんだか。


「それと、丸一日中何かを食べ続けてた日もあったわねぇ」


 思い出を思い出すように語るスンテノさん。でもそれって完全に暴飲暴食じゃん。身体に良くないなぁ。


「それはそうと用件なんだけど、はいこれ」

「…?なんですか?これ…」


 スンテノさんが渡してきた物は、細い黒い糸のような物が束になった状態で三つ編み上になっている紐のような物。


「衣服に着用するちょっとした装飾品よ。最近のアイラ様の服装を見てて背中が寂しいなぁ~って思って作ってみたの。ちょっと着けさせて」

「は、はぁ…」


 確かに私が普段着てるこのセリアから貰った服は、全体的な布面積が非常に少ない。必要最低限の範囲だけにしか布面積がないため、当然背中は肌が丸見えになってる。スンテノさんはされが寂しいと感じたらしい。

 スンテノさんは私の背中に回り込むと、紐らしき物をせっせと着け始めた。


「ちょうどグリセリア様が作った腕の装飾で止められるのよねぇ。この部分でこうして……はい出来た」


 スンテノさんはセリアから貰った腕の装飾の片腕上部に紐の端を取り付け、背中経由でもう片方の腕の装飾上部へ繋げた。

 腕を動かす分には問題ないとは思うけど、急に背中に紐が当たるようになったもんだから違和感がある。紐の中心部からは細い糸が垂れてるから若干かゆいし。


「あの、これって何か機能あるんですか?」

「ないわよ。単なる装飾」

「えぇ…」


 何もないんかーい。なんで今日はセリアといいスンテノさんといい機能を持たない装飾を渡しに来てるわけ?

 …ん?あれ?ちょっと待てよ。なんでスンテノさんがセリアの腕の装飾を知ってんの?


「スンテノさん、どうして腕の装飾がセリア作だって知ってるんですか?」


 スンテノさんが私の髪の毛を貰いに来たのが、セリアが腕の装飾を渡しに来る前。本来知ってるはずないんだけど…。


「アイラ様から髪の毛を貰った後にグリセリア様と偶然会ったの。それでたまたま話を聞いたのよ」

「あぁ、なるほど」


 なんだ会ってたのか。思えば同じ城の中にいるわけだし、よく考えなくても自然なことか。


「ところで、私が差し上げた髪の毛は何に使うんですか?」

「え?今アイラ様に着けた装飾にがそうよ。気付かなかった?」

「え!?これ私の髪の毛!?」


 たった今スンテノさんが私の背中に通した装飾が、私の髪の毛だったらしい。この細い糸みたいな物が私の髪の毛一本一本だったのか…。


「一応言っておくと、当然ながら神力や魔力も通せるわ。色も今は黒だけど、アイラ様が好きな色に変えられるようになってるから。見た目を楽しむ飾りとして受け取ってちょうだいな。ちなみに暗闇で蛍光色に変えれば光るわよ」

「あ、ありがとうございます。使わせていただきますね」


 背中が寂しく感じていたとはいえ、どうして突然こんな物を作ったのか謎だけど、変な物ではないし、ありがたく貰っておこう。


「そういえば、スンテノさんのお店の話はどうなったんですか?」


 以前、スンテノさんの散髪の腕が評判で、お店を出すっていう趣旨に話が浮上していた。

 ずっと進展を知らされてなかったから聞いてみたんだけど、質問した途端にスンテノさんは苦笑いを浮かべた。


「あ~、あれね。…頓挫しちゃった」

「へ?お話自体無くなっちゃったんですか?」


 なんと話自体が消えていた。どうりで何も聞かないわけね。


「王都にはお店を開ける所が今のところなくて、既存のどこかのお店が閉業するのを待つしかない状態なのよ。だからと言って他の領地にお店出すのも嫌だし、アイラ様の領地はまだ開拓に時間がかかるでしょ?だから別のやり方で運営することにしたの」

「別のやり方?」

「完全予約出張制」


 お~、なるほど。お店を構えず、既存店にも入らず、フリーランスで動くのね。よっ、フリーランス美容師。


「ちなみに今のところ、出張可能範囲はノーバイン城を中心にしてウォーム街手前くらいの範囲よ」

「出張の範囲狭っ!それもうほぼノーバイン城のみじゃないですか!強いて言っても城の城門から数十歩しかありませんよ!?そもそも出張と呼べる距離ではない!」


 もはや徒歩ですらない距離範囲。おかげでツッコみを入れてしまった。ていうかそんなんでやっていけんの?


「アイラ様の領地の開拓がひと段落したら、一部の範囲を出張範囲として入れさせてもらうわね」

「なんでそんな部分的な範囲なんですか…?」

「だって広範囲でやっちゃうと予約が殺到して同業者に影響与えちゃうじゃない。それにアイラ様やグリセリア様からの予約を優先に出来なくなっちゃうし」


 競合に対して競うんじゃなくて配慮する姿勢なんだ…。もの凄い自信…。


 なんかこのままこの話を続けるとツッコミどころが永遠に出てきそうな気がしたから、内容を変えてみることにした。


「スンテノさんって、エウリアとメリッサのお姉さんじゃないですか」

「そうね」

「でも三人で一緒にいる時をほとんど見かけないんですけど、一緒にいる時ってあるんですか?」

「あるわよ。今はお仕事が違うから会わない時が多いけど、たまに一緒に食事をしたり、念話を使って遠距離会話したりしてるわよ。天神界にいる時は基本的に一緒だったし」


 じゃあ三姉妹の仲は良いのね。私の見てないところで会ってたわけか。なんか安心した。


「なぁに?もしかして不仲だと思った?」

「失礼な話ですが、ちょっとだけ…」

「ウフフ、アイラ様は私達が会ってるところを見かけないだろうから、そう思っても仕方ないわ。私は妹二人とは母親が違うけど、けっこう仲良くしてるのよ?」

「え?母親が違う?」


 スンテノさんとエウリアとメリッサは異母姉妹ってこと?


「当時私が生まれた後、両親は離婚して私は父親に引き取られたの。その後父親が別の女性と結婚して、そして生まれたのがエウリアとメリッサなのよ」

「そうだったんですか…」


 姉妹で髪色や雰囲気がまるっきり異なってる理由はそういうことだったのね…。なんだかこの三姉妹にも過去に色々ドラマがありそう。

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