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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十一章 視察からその先へ
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鎮静香

視点がアイラに戻ります。

 二度目の報告会を終えて、アリス、オルシズさん、リリアちゃんのセリア側近三人組は帰宅。その後はみんなそれぞれフリーとなって自由に過ごした。私も視察中とゼーユングファーで異空間収納に入れた物の整理に勤しんだ。

 それから時間が経ち、夜も遅くなって人々の大半が就寝する頃。ノワールはとっくに仮住まいしてる部屋に戻ったし、別館住まいしてるメンツもそれぞれの部屋へ入った。オルトロス、ザッハーク、エスモス、ファルコ、カラス丸の神獣と動物達もリビングのソファで熟睡してる。

 私とセリアは最後まで起き続け、みんなが就寝した頃合いを図って消灯。一緒にベッドに入った。ちなみに別館のベッドに入るのは約一ヶ月ぶり。


「やっとアイラとの添い寝が再開できる~!やっと快眠できる~!」

「…何度も言うけど、いい加減私の依存症治しなさい。あんた私がいない度に同じ事なるじゃない」

「治んないよ。特効薬ないもん」

「自力で治せるでしょうが!あんたこのままじゃマジで将来結婚できないわよ!?」

「結婚かぁ~。相手はアイラみたいな人が良いなぁ~」

「私みたいな男性ってどんなのよ…」


 もうツッコむのやめよ…。疲れた…。


「はぁ…。もう私寝るからね?おやすみ」

「あ、ちょっと待って」

「なに?」

「ちょっとそのままじっとしてて。…クンクン……、ん~…」


 セリアは突然私の睡眠を制止してきたと思いきや、おもむろに私の身体の匂いを嗅いできた。


「なによ?急にどうしたの?」

「アイラ、香水とか付けてないよね?」

「付けてないわよ。寝る前に香水なんて付けるわけないでしょ。そもそも持ってないし」

「やっぱそうだよね~。いやさ、今日一緒にお風呂入った時に一瞬だけアイラから良い匂いがした気がしたんだよ。そんで今嗅いでみたらやっぱりアイラから良い匂いがするんだよね」

「私から?私自身匂いなんて感じてないし、特に何もしてないし、今日ハルク様と話した時だって何も言われなかったわよ?」


 これまでの行動の中で匂い関連で思い当たる事がない。他のみんなだって特に何も言ってこなかった。


「そもそもどんな匂い?」

「それがこれと言って近い匂いが思い当たらないんだよね。良い匂いなのは確かなんだけど、なんて言うか…、すごく落ち着く感じ。気持ちや感情をスーッと落ち着かせてくれるような香りっていうか…」


 今のセリアのセリフで私が思った物が『アロマ』の香り。でもセリアは「アロマ」とは言ってないから、アロマとはまた違うってことかしら?


「う~ん…、神力と何か関係あるのかしら?」

「どうだろうね。でもこれマジでメッチャ良いわ。スゴイ…心地…良い…」


 セリアはまだ横になってないというのに、私に寄りかかる状態でスヤスヤと寝息を立て始めた。私はそんなセリアを起こさないよう、彼女を抱いたままゆっくりと横になった。

 

 にしても匂いか…。あ、そうだ。ハルク様に聞いてみれば良いじゃん。せっかく今日からいつでも交信できるようになったんだし。でも夜だし、もう休んじゃってるかな?


(ハルク様~。夜分遅くにすいませ~ん。起きてらっしゃいますか?お聞きしたい事が…)

(バリバリ起きてるわよ~。むしろ交信待ってたわよ~。グリセリアが感じた匂いの事でしょ?)


 礼儀的な言葉を使うまでもなく起きてた。私からの交信を待ってた上に内容知ってるってことは、今のやりとり聞いてたわね?


(聞いてらしたのなら話が早いです。何か知っていますか?)

(知ってるって言うか、おそらく私が発してるものと同じものでしょうね。神の能力の一つよ。グリセリアは入浴中に感じ取ったみたいだけど、推測上おそらくその辺りで香りが出るようになったのかもね)


 ハルク様と同じもの?確かに天神界にいる時に時々良い香りが漂ってたけど、あれは周囲の花の香りであって、ハルク様の匂いを直接嗅いだことは…。


(ハルク様の発している香りってなんですか?私天神界にいる時は花の香りしか感じ取ったことないですけど)

(あら?アイラ。あなた天神界の香りは花から香ってるものだと思ってたの?)

(違うんですか?)

(天神界に咲いている花々は全て無臭よ。漂っている香りは全て私の身体から放たれてるの)

(そうだったんですか!?)


 じゃあ私が今まで天神界で感じ取ってた匂いはハルク様の体臭…。


(どういうきっかけか私も分からないけど、神の能力がまた一つ解放されたと思って良いわ。悪い現象じゃないから安心なさい。これであなたはまた一歩私に近づいたわね。おめでとう)

(ど、どうも…。でも香り自体私はまだ感じ取れてませんし、それに一体どういう効果が…)

(順を追って説明するわね。アイラは過去に私に抱かれた時の事、覚えてる?)


 抱かれた時…、つまりハルク様にハグされた時。確か初対面の時と神気を見せてもらった時だったわよね…。


(なんとなくは覚えてますよ)

(じゃあ私に抱かれた時、あなたはどういう状態になったかは?)

(どういう状態…。確かすごく心が落ち着いて、身体の力が抜けて…)

(それがこの匂いの仕業よ。あなたから発せられるようになった香りは、それと同じもの)


 ハルク様にハグされた時のあの心地良さ!あれは温もりだけじゃなくて匂いで起こしてたものだったんだ!全然気が付かなかった!


(この能力の名前は『鎮静香ちんせいこう』というもの。人や動物の心や感情を落ち着かせて、一時的に脱力させる効果があるわ。神ならみんな持ってる能力でね、基本的に常時発せられ続けるからそのつもりでいなさいな)

(え?常時匂い続けるんですか?)

(ええ。今アイラが匂いを感知できないのは、まだ発動したてで香りが弱いから。明日の朝には自分で分かるほどの強さになってると思うわ。自分で分かるようになれば自然と制御できるようになるでしょうし、強くも弱くもできるから自分の体臭だと思って受け入れなさいな)


 理解はできたけど、ハルク様が「体臭」って言葉使うのなんかヤダ。


(しかしまぁ、アイラの鎮静香を浴びた第一号がもう一人の眷属とはねぇ。グリセリアはまだまだアイラとの差を埋められないわねぇ)


 もう一人の眷属たるセリアはすっかり熟睡状態。私を抱き締めた状態で寝息を立ててる。

 オリジン様は私とセリアの力の差は大きいって言ってたけど、ハルク様から見てもセリアはやっぱりまだ私と並んでないんだ…。もうホント不真面目だから…。


(ともかく明日にはあなたの周りの者達も気付くでしょう。別に気にされるような匂いでもないし、害があるわけじゃないから気にせず過ごすと良いわ)

(解りました。素朴な疑問ですけど、この匂いに釣られて虫とか寄って来たりしませんよね?)

(寄るわけないでしょ。汗臭じゃないんだから)

(ですよね~)


 冗談半分で質問してみたら、きっちりツッコんでくれた。


(ところで話変わるけど、レイリーが未だにメソメソ泣き続けてて正直うっとおしいんだけど何とかならない?)

(まだ泣いてるんですか!?もうノワールだって寝てるはずですよ!?それなのに!?)

(感動して泣いて、感動の余韻に浸って泣いて、感動を思い出してまた泣いてを永遠繰り返してるのよ。仕事はちゃんとこなしてくれてるから良いんだけど、それ以外のほとんどで泣いてるから私も困ってるのよ)


 なにその思い出し笑いならぬ思い出し泣きは。レイリーさんいくら何でも泣き過ぎでしょ…。そんなキャラだったっけ?あの人。


(すいませんが私じゃ何とも出来ません)

(やっぱりそうよねぇ…。無理よねぇ…。はぁ…)


 ハルク様の深いため息がよく聞こえる。レイリーさんの感動基準と涙腺はどうなってるのかしら?いくら感動対象が妹とはいえ基準低すぎだし、涙腺ユルユルすぎでしょうに。


(ま、レイリーの事は何か手を考えとくわ。今日はそろそろアイラも寝なさいな。神の眷属とはいえ人間としての要素もあるんだから睡眠は必要よ。視察で疲れたでしょう?)

(そうですね。そろそろ失礼します)

(ええ。あ、そうそう。今後も突然何かの能力に目覚める事があるかもしれないから、分からないことはどんどん相談してちょうだい。いつでも大丈夫だから)

(解りました。ありがとうございます。おやすみなさい)

(ええ、おやすみなさい。良い夢を。……出来れば新しい能力を目覚めさせてくれる夢を…)


 最後にボソッと自分の願望言ったの聞こえてんのよ。ハルク様。


 それはともかく眠いのは事実なので、私は既に熟睡してるセリアを撫でて、そのまま睡眠状態に入った。







 自分が神の眷属だと知ってからもうだいぶ経つ。それでもまだ神の能力は全開放されていない。ロックがかかったままの能力がまだ残ってる。そしてその状況は私の前世の記憶も同じく…。

 ハルク様から見ても、天神界メンバーから見ても、精霊や神獣や神龍から見ても、私やセリアはまだまだ未熟。早くそういった存在から認められる時が来ると良いな…。そうしたらその力を使って多少強引でも私が望む‘普通の生活’を…。……無茶あるか。

今回で第十一章は以上となります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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