表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十一章 視察からその先へ
289/395

人魚の事と、その後の事

 アリスの闘争心が落ち着いてくれたところで、私は話の続きを始める。


「ジーナを連れて洞窟に戻った後、いよいよ領地の廻ってない範囲の視察をと思ったんだけど、その前に爺やからストップがかかって、神獣であり人魚族の長であるスキュラさんっていう人魚の案内で人魚の住処に私と爺やで向かうことになって…」

「それでーすっ!!」


 話の途中で急にリリアちゃんが立ち上がって、私へ指を差して興奮気味に叫んできた。メッチャビックリした…。


「アイラさんが人魚族と会ってるって聞いてすっっっごく気になってたんです!是非!是非聞かせてください!詳しく!詳しく!」

「リリア…、解ったから落ち着いて…」


 超笑顔で目を輝かせながら興奮状態でテーブルを両手でバンバン叩くリリアちゃん。そこまで人魚族に興味あったんだ…。

 セリアが引き気味にリリアちゃんを落ち着かせて、リリアちゃんはテーブルを叩くのだけは止めた。でも表情は超キラキラしてる…。


「アイラ。リリアはね、アイラが人魚族達のもとに向かったって聞いてから、突然興奮し始めて、最終的に壊れて泣き始めたんだよ」

「ちょっと陛下!?確かに泣きはしましたが、壊れたとは何ですか!聞き捨てなりませんよ!?」

「壊れてたじゃん。よく分かんない発言してさ、それから勝手に泣き始めたんだから」

「少し興奮したために混乱していただけです!壊れてなんかいません!それ言うなら、壊れてるのは陛下のアイラさんに対する一方通行の愛情表現か、仕事サボるところじゃないですか!」

「おー?なんだ?私の頭がおかしいとでも言いたいのか、お前は?よーし、良い度胸だ。表出ろ」


 なんかセリアとリリアちゃんが喧嘩し始めた。これは珍しい。


「まあまあお二人とも」


 そんな二人の間に突然ネロアさんが入って来た。普段は傍観してるタイプのネロアさんが人の喧嘩の仲裁に入るなんて。これもまた珍しい。


「喧嘩は良くありませんよ?誰かにいかりたいのであれば、どうぞこれを代わりに殴ってスッキリしてください」

「俺を差し出すなぁ!俺は殴られるための存在じゃねえぇぇぇ!!」


 ネロアさんはベヒモスを片手で掴んだ状態で二人に差し出してきた。ベヒモスは掴まれながらジタバタしてる。これは珍しくないわね。


「え~、ベヒモス殴ったところでスッキリしないよ~」

「殴るよりもモフモフしたいですね」

「いやお前らは否定してんじゃねえ!別に意味で傷付くわ!」


 そして殴る事にいろんな意味で乗り気じゃないセリアとリリアちゃんにツッコむベヒモス。ていうかいつまで続くの?話が進まない。


「ねぇ、そろそろ話の続きしても良い~?」

「「あ、すいません…」」


 私が声をかけてセリアとリリアちゃんが謝罪したところで話を再開する。ちなみにベヒモスはすぐにネロアさんから離れて逃げたけど、逃げた先で何故かオルトロスに後ろ脚で蹴り飛ばされた。


「私は水の中でも活動できる魔法を発動していざ海に入ったんだけど、スキュラさんは目的地に直行せずに私の海の中を案内してくれてね。海の生き物達と交流してきたわ。

 たくさんの魚達やイルカと一緒に泳いだり、クジラが獲物を捕食する瞬間とか見れたし、深海生物も見れて中々楽しかったわ」

「え~?イルカと一緒に泳いだの?良いな~」

「自然界の捕食場面など、生物学者でもそうそう見れるものではありません。ましてや海の生物ともなれば尚更です。非常に貴重な経験をされましたね、アイラさん。やはり神獣様方と契約している特権でしょうか?」

「はぁ~…、良いなぁ~…」


 セリアは私がドルフィンウォッチングした事を羨ましがっていて、オルシズさんは自然界における現象を見れてる事に感心を見せてる。私やセリアの前世の世界と違って情報端末類がないから、そういったところは興味惹かれるのね。

 でもってリリアちゃんは私を羨ましそうに見つめながら一言呟いてる。アリスは静かに紅茶を飲んでる。


「ちなみに海に入った後、爺やだけ先行してたんだけど、合流した時にリヴァイアサンとしての巨大な姿で現れたからビックリしたわ。爺やすごい大きくて、爺やが泳ぐと海中なのに振動を感じるぐらいだったのよ」

「へぇ~、私も見てみたいな~」

「いずれ見ることになるかと思いますぞ?まぁ、わたくしめとしましては、今の人間の姿の方が動きやすくて良いのですがな。はっはっは」


 海の神獣なのに人間の姿の方が動きやすいのは問題でしょ。本来の姿が動きにくいとか、海の王者が言っちゃダメなセリフでしょ。


「それから深海へ入って、人魚族が住む里のゼーユングファーという所に着いたわ。海の中特有の幻想的な光景が広がっててすごかったわよ。とてもきれいな所だった」

「はぁ~、良いな、良いな~」


 リリアちゃんは未だにキラキラした表情をしてる。人魚への興味すごいわね…。


「人魚ってやっぱ伝説の通りの姿なの?上半身人間で下半身魚っていう」

「うん。みんな美男美女ばかりだったわ。お年寄りの人魚も見かけたけど、男性はダンディだったし、女性も品があってキレイだったわ」

「はぁ~、見てみたい…」


 普通に質問してきてるセリアの隣で、リリアちゃんのキラキラ具合が増してる。


「里に着いた後はリュウグウ城っていう里の中枢に通されて、そこにある族長の部屋に泊まったわ。そこで働く人魚達とも交流したし、里の中限定で私についてくれる専属の人魚メイドまで出来たおかげで満足だったわ。まぁ、里に巨獣の群れが攻めてきた事態もあったから、全部が全部楽しめたわけじゃないけどね」

「巨獣!?巨獣が現れたんですか!?というか海にも巨獣っているんですか!?」

「世界中に歴史の記録においても、海に巨獣がいることを確認した記録はありません。事実ならば新たな発見です」


 巨獣が海にいた事にリリアちゃんは驚いて、オルシズさんは淡々と歴史的発見であることを話す。


「オルシズ。確かに海に巨獣がいたことは新たな発見だけど、アイラが人魚族と交流した事自体箝口令を敷いてあるから発表は出来ないよ?歴史の闇に消え去る運命だからね?」

「そうですね。言われてみれば」


 セリアはオルシズさんが言った新たな発見をもみ消した。


「巨獣の出現を受け、人魚族の戦士達と族長のスキュラさん、およびわたくしめも迎撃に入りまして、アイラ様の中におります神龍様も参戦してくださいました。しかしそれでも苦戦は避けられない状態でしてな」

「神獣と神龍がいるのに苦戦すんの?」

「神獣および神龍様の実力を以てしても、巨獣が相手ですと単独で一頭倒せればというところです。今回は群れで襲撃してきていた上に、里を防衛しなければいけませんでしたので、かなりの苦戦を強いられました」

「ふ~ん、そっか。神獣も敵なしってわけじゃないってことか…。そして巨獣もそれだけの力があると…」


 爺やの当時の状況説明に、セリアは少し考え込んでる様子。


「セリア、どうかしたの?」

「ん~、もしウチの国に巨獣が出現したらどうなるのかと思ってさ…」

「確かに他人事には出来ませんね。いつどこで現れるか分かりませんし、生態や習性も何も解っていませんから」

「具体的な対策も立てられないから歯がゆいよねぇ」


 どうやらセリアはグレイシアに巨獣が出現した場合を想像してたらしく、セリアに同調したオルシズさんと協議をし始めた。セリアもなんだかんだでちゃんと一国の主よね。


「しかしアイラ様が途中から参戦しましてな。その直後から状況が一変しました。アイラ様が次々と巨獣を倒していった上、わたしくめもスキュラさんも見た事のない強力強大な魔法で巨獣を一気に倒していきました。いえ、倒すどころか巨獣そのものを完全消滅させるという素晴らしい力を見せてくださいました。この一件以降、アイラ様は人魚族にとっての英雄となっております」

「爺や、完全消滅じゃなくて粉々にしただけよ。それともうそれ以上私の行動を語らないで。恥ずかしい…」


 状況を語るのは別に良いけど、私の戦闘をこうも語られると恥ずかしくて悶える。


「やっぱアイラは最強だね。私も安心できるわ~」

「それは何をどう思って安心できるの?私を最強としてどうやってそこに至るの?」


 セリアがなんか満足そうに訳分かんないこと言ってたから、とりあえず疑問形でツッコんどいた。


「まぁ、死者が出ちゃったから、私としては悔しいけどね…」

「どのくらい犠牲が出たの?」

「正確な数は分かんないけど、10人もいないわね」

「そっか…。私は現場を見てないから言える立場じゃないと思うし、人魚族に対して不謹慎かもしれないけど、逆を言えばそれだけの数で済んで良かったと思うよ?巨獣なんて普通なら軍隊レベルで立ち向かって勝てるかどうかの相手。半端じゃない犠牲者が出るはずなんだ。人魚族がどんだけ強いかは知らないけど、群れで攻められて少数の犠牲で済んだんなら…。

 巨獣が攻めてきた時は人魚族だってみんな死を覚悟したと思うし、大きな犠牲や被害が出る事も考えたと思う。それをアイラのおかげで最小限に留められたんだから、亡くなった人魚達もきっとアイラに感謝してると思うよ?」

「ゼーユングファーでも同じようなこと言われたわ。自分を責めるつもりはないから安心なさい。ありがとう、セリア」


 セリアは私が落ち込んで自分を責めてるんだと思ったみたい。真面目にフォローしてくれた。

 私はそんな優しい親友に笑顔を見せて、頭を撫でながら礼を言った。


「その後なんだかんだで地上に戻ったんだけど、私が海にいる間に留守番組がジーナにめちゃくちゃな修行をやらせてたみたいで、私が状況を知った時にはジーナは意識不明だったわ」

「そうなの?」

「しかしまぁ、あの修行のおかげで皆さんに付いて行くことが何とかできるようになったのですから、最終的には良かったのかなと…」


 私の話にジーナを見たセリア。ジーナは納得している的な事言ってるけど、苦い顔してる。


「あのね、ジーナ。私的は良くない事なのよ。私はあなたのお父さんであるフィクスさんから頼まれて一緒に居させる事にしてたのよ。その時点で私はあなたを健全な状態で見守る義務があったの。なのにちょっと目を離したら意識不明で横たわってるし、おまけに目覚めたら人格変わっちゃってるし、私次にあなたの両親と会った時にどう説明したら良いか困ってるんだからね?」

「そ、そうなのですか…?何だかご迷惑お掛けしました…。しかしこの表現から以前の状態へ戻す方法は未だに…」

「解ってるわよ。無理に戻さなくて良いから」


 ホント、ジーナの人格はこの先戻る時はあるのかしら?


「私まだこの子の事よく知らないけど、元々の人格は違ったの?」

「違ったの。この話はまたあとで話すわ。先に視察の説明ね」


 セリアが首を傾げて質問してきたけど、まずは領地視察の話から。


「視察を再開させた後は、神獣達に乗せてもらって領地を見てきたわ。オリジン様の話だと巨大地下洞窟が私の領地内にあるらしくて、中に地底湖や鍾乳洞とかがあるらしいんだけど、そこはオリジン様との話し合いで視察を見送ったわ」

「え?地下洞窟なんてあんの?初耳なんだけど」


 セリアは地下洞窟に食いついてきた。


「グリセリアさんが初耳なのはおそらく当然の事でしょう。洞窟の入口付近は過去誰一人として近づいた事はないはずですから。場所は森奥深くですし、完全未開拓の地ですので」

「う~ん、そっか…。アイラ、洞窟視察の時が来たら詳細を事細かに教えて。政府の正式な調査団を送り込まないといけない可能性もあるから」

「解った。今はまだ放置だから放っておいてね」


 オリジン様の説明で納得したセリアは、私に確実な情報を送るよう言ってきたので了解しといた。


「やはり精霊様や神獣様が関わりますと、知っている情報範囲が違いますね」

「教えてもらわなければ、洞窟がある事など永遠に知らなかったでしょうし」

「こうして考えると、人の手が入ってない所ってまだまだ多いんですね…」


 オルシズさんとアリスとリリアちゃんのセリア側近三人組は、何やら小さな会議をしてる。いいや、そっとしておこう。


「あとは収穫した傍からすぐに実が出来る桃の木とか、大きな滝もあったわねぇ」

「ちょっと待って。滝は解るけど、収穫直後に実る桃の木ってなに?どこのファンタジー?」


 セリアが桃の木に食いついてきた。


「そのままの意味よ。私も実際見た時はビックリだったわ。神獣達はとっくに知ってたらしいんだけど」

「それ食べても問題ないの?」

「平気よ。美味しかったわよ」

「食べたんだ…」


 なんで私が桃を食したことに若干引くの?解せぬ。


「他に言うこととすれば、さっき話した温泉とか、領地内に生息してる野性動物達と交流したりとかね。詳しく言おうとすると時間がかかり過ぎちゃうから、今は割愛ね。これで以上よ」


 私はだいぶザックリな状態で報告を終えた。あとはみんなの反応や疑問に準じて話していけば良い。視察内容をいっぺんには語れない。


「はぁ~、温泉も滝も桃の木も洞窟も全く知らなかったんだけど。これまでグレイシアのご先祖様達が何度も行ってる場所なのに…」


 セリアは自分が思っていた以上にいろんなものがあると実感したのか、感心しつつ考え込んでる様子。


「私はオリジン様が中心となって精霊達や神獣達が色々教えてくれたから知っただけ。それに従来の視察なら、既存の道を馬車で移動するだけじゃない?人里か、気になる場所か、休憩できる場所でない限り馬車からは降りない。ノワールの視察団だってそうだったでしょ?」

「まぁ、それが発展してない領地の基本視察行動だからね」

「私の場合は神獣の乗せてもらって、道のない未開拓の場所や、人類未踏の地を見てきたの。そもそもの視察視点が違うのよ」


 私が視察視点が異なる事を言うと、セリアは「はあ~」と大きくため息をついた。


「やっぱ地上からだけじゃ全ては見れないかー…。航空機開発して空から見た方が楽かな…」

「私は賛成しかねるわね」


 セリアが発想してきた航空機案に、私は賛同せず反対に回った。


「なんで?」

「この世界には浮遊魔法があるし、制空権は飛行型の神獣と竜族にあると私は思ってる。私にとっては仲間であり友人でもある神獣や竜族の世界に一方的に侵入するのは抵抗があるわ。もし本気で考えるなら、計画と使用目的を明確にして、神獣達や龍帝国を納得させてからよ。勝手は許さないわ」


 前世の世界なら航空機はたくさんあったし、いろんな用途の機体が飛んでいた。この世界でも航空機は偵察や輸送とかに便利なのかもしれないけど、前世の世界と違って鳥以外でも多くの存在が空を飛べるから危険性は高いし、何より現在の技術に突然航空機をぶっこんだら、異次元技術過ぎて混乱を招きかねない。


「ん~、そっか。ならアイラの意見を尊重するよ。今は止めとく」

「そうしてちょうだい」


 セリアの知識があれば造れないことのない物だけど、今はその時じゃない。セリアも解ってくれたようで、素直に退いてくれた。でも「今は」って言ったから、いずれは造る気ね…。

活動報告を更新しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ