帰還中止
後半から視点がアイラへ戻ります。
「急旋回したぞ!標的を見失うな!」
「攻撃しちゃダメって言ってるじゃないですかー!」
魔法弾をアイラ達が回避した後、再び砲撃の構えをする兵士達にリリアが叫ぶも、やはり兵士達は聞く耳持たず。オルシズは己の統率能力の低さに額を抑え、リリアは言う事を聞いてくれない兵士達に呆れかえり、その場にしゃがんだ。
「グリセリア女王陛下、ノワール様視察団、ご帰還!」
ここでグリセリア達視察団の馬車が、かなりの勢いで広場へ入った。
馬車に乗っていた視察団の面々は一斉に馬車から降り、城の者達と合流。グリセリア、アリス、ノワールの三人も、オルシズとリリアのもとへ向かった。
「オルシズ!リリア!これは一体なにがどうなっている!」
「申し訳ありません、女王陛下。大鳥二羽が見えた頃から兵士達が勝手に戦闘態勢に入ってしまいまして、止めるよう指示は出したのですが一切聞いてくれず…。結果魔法弾を飛ばしてしまった結末になりまして…」
「やっぱそうか~…。視察団の方でも問題ないって言ったのに兵士達が聞き入れてくれないんだよ。こいつら馬鹿か。まったく…」
合流したアイラと親しい面々は、視察団と本部の兵士達の状態が同じようになっている事を認識した。
「奴ら真上を通過するぞ!弓部隊、射貫けぇ!」
「やめろ貴様らあぁぁぁ!!あれはアイラの視察隊だ!!」
矢を発射しようとした兵士や他の兵士達にグリセリアは叫んだ。この時グリセリアは軽く神気を出したため、その効果で周囲の騒ぎが一斉に静まった。
「へ、陛下…。アイラ殿の視察隊が乗っているとはどういうことで…?」
戸惑い気味にドイルが質問を出した。
「どうもこうもそのままの意味だ。確実にアイラはあのどちらかに乗っている。よく見てみろ。片方は間違いなく龍帝国龍帝補佐のキリカだ。貴様ら竜族と我が友に喧嘩を売る気か!」
グリセリアは怒りで威圧を全開にさせていた。その結果グリセリアは簡単にその場の空気を支配し、兵士達は完全に沈黙した。
(さすがは女王陛下…。これほどすぐに場を治められるとは…。私はまだまだ未熟者だな…)
宰相という立場でありながらグリセリアのように場を治められなかったオルシズは、内心深く反省していた。
「まったく。あれらが敵か味方も判断せず、一方的に攻撃するとはどういう考えでそうなるんだ!ましてや上官であるオルシズやリリアの命令すら無視するとは!貴様ら馬鹿なのか!大人の言う事が聞けない子供か!」
兵士達の行為が許せなかったグリセリアは、威圧をそのままに兵士達に向かって説教を始めた。
そんなグリセリアの隣で、アリスとノワールは上を見上げていた。
「なんだか少しずつ高度を上げているような…。どうしたのでしょうか?」
「本当だ。もしかすると私達が乗って来た馬車が邪魔で着陸できずに困ってるんじゃ…」
アイラ達が上空にいたままになっている事に疑問を抱いたアリスだったが、ノワールが自分達が乗って来た馬車が広場の中心にあり、着陸を妨げている事に気が付いた。
そして、ノワールがその事に気付いたと同時に、アイラ達の方から何かが発射された。それは広場のちょうど誰もいなかった地面に刺さり…、
「…ん?うわああああああ!!!」
<<<わああああああ!!!>>>
<<<うおおおおおお!!!>>>
広場一帯を砂煙で包み込むほどの爆発を起こした。
そして爆発による砂煙が落ち着いてきた頃、アイラ達の姿は上空の遥か遠くに消えていた。
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「ん~、ダメね」
「え?」
私が一言呟くと、シャロルがそれに反応した。
「ノワール達の視察団が到着してから撤去される様子がない。もしかすると私達のせいで統率がとれなくなってるかもしれないわ。このまま着陸しようとしても、いくらセリア達がいても私達の安全は保障できない」
私は一呼吸置いて、念話魔法を発動。離れた位置にいる神獣達や、先行して城にいる精霊達に聞こえる状態にした。
(こちらアイラ。アイラより総員へ。本日の王都帰還は、危険が伴う状況となったため中止します。これより私の領地にて停泊していた洞窟へ引き返します)
というわけで、私はノーバイン城帰還の中止を宣言した。
「フェニックス、キリカ。旋回を止めて高度を上げて。洞窟へ戻るわよ」
「御意」
「やれやれですね」
私の指示にフェニックスは淡々と従ってくれてる。ていうかさっきから「御意」としか聞いていない。
キリカもため息交じりにオッケーしてくれた。どういう意味のため息なのかは知らんけど。
(アイラさん。ノーバイン城広場でのやり取りは我々精霊達で見ておりました。本日の帰還は諦めていただいて大丈夫です。フェニックスさんとキリカさんを見ただけで大混乱っぷりを見せていましたから、私達から見ても帰還は無理でしょう。我々は後程グリセリアさんと接触を図ってみます。どうぞお気を付けて)
(解りました。ありがとうございます)
オリジン様の状況説明によると、やっぱり広場はパニックになってたらしい。
(なんだか大変そうですね~。お待ちしてますよ~)
洞窟に残ってるセイレーンからも念話が入った。けど発言がメッチャ他人事…。
(そうだ、オリジン様。広場に一発お見舞いしても良いですか?)
(ご自由にどうぞ)
私のせいとはいえ攻撃された事を根に持っていた私は、一発やってやろうと考えていた。というわけで…。
「アルテ、出番。ただし人に当てないでよ?」
「待ってました。お任せを!」
さっきからずっと矢を放つ姿勢のまま固まっているアルテにお願いしといた。
アルテが放った矢は真っすぐ広場へ飛んで行き、地面へ到達した直後に爆発を起こした。
砂煙に包まれる広場を見ながら、私達は一気に高度を上げて洞窟へ方向を変えた。
「良い攻撃よ。アルテ」
「このくらいなら朝飯前です」
私が手の親指を立ててアルテを評価すると、アルテも同じ動作で返してきた。
「しかし視察を中止して帰還するのならともかく、視察を終えて帰還を中止するなんて前代未聞ですよ」
シャロルはため息交じりで一言コメント。
「私としてはあのまま無理に着陸するよりも、この方法の方が良い気がします」
ジーナもコメント。
「ねぇ、アルテ。前々から思ってたんだけど、今の時代の人達って知能低くない?この程度でこの騒ぎって…」
「そうね。平和ボケとは違う感じね。視野思考が狭いっていうか…」
アテーナとアルテは何やら真面目そうな話をしてる。今は割り込まないでおこう。
「ファルコ。あなたもお疲れ様ね~ん」
「ピー」
「ワンワン」
「オルトロスはあのまま対空地戦が見たかったと申しております」
カラス丸はファルコを労って、オルトロスの発言を爺やが訳した。
(今回は私が我儘を言ってしまったのにも問題があるわね…。それにしてもいくら見た事のない巨鳥とはいえ、近寄っただけで一方的に攻撃してくるなんて…。城にはオルシズさんやリリアちゃんといった司令塔がいたはず…。もしかして兵士達は命令無視で攻撃してきたのかしら?
とにかく今は一旦洞窟へ引き返して、落ち着いてから物事を整理しなきゃ)
セリアとノワールの視察団は、無事ノーバイン城へ帰ることが出来た。けど同じ日に同じタイミングで城へ着いた私達は、再び私の領地へ戻ることになってしまった。
こういう結果を招いてしまった原因は、今回は私にもある。その事を反省しつつ、みんなを連れて洞窟へ帰るのだった。




