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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十一章 視察からその先へ
279/396

龍帝国の政策難航案。そして、親と後輩の対面

前回の後半から引き続き、視点がアイラから外れます。

 シュバルラング龍帝国。ドラゴ宮殿。


「はぁ…」


 政務室にてため息をついたのは、龍帝国首相のラン。



「首相閣下。そのようにため息ばかりつきますと、部下達の士気にも影響を及ぼしますよ?」

「解ってます。解ってますけど出ちゃうんです」


 ランのため息を注意したのは、首相補佐官のニース。

 直後、政務室の扉が勢いよく開けられた。


「しっつれーいしまーす!ランちゃん、みんなの声を聞いてきたよ~」


 元気良く政務室へ入って来たのは龍帝国情報収集担当任務官のダーナ。彼女は龍帝国民が住む地域を駆け回り、調査すべき内容を一軒一軒訪ねて聞いて回っていた。


「お疲れ様です、ダーナ様。お飲み物をお入れしますが、何にしましょう?」

「も~、ルルちゃん!私に対しては様付けしなくて良いって言ってるじゃん!あ、今は白湯でいいや」

「お飲み物に関しましては畏まりましたが、様付け無しは畏まりません。使用人として当然の呼び方ですので」


 ダーナに飲み物を入れようとしていた使用人のルルは、ダーナの要求をキッパリ断った。


「調査ありがとうございます、ダーナさん。それで、どうでした?」

「ん~、やっぱり中高年層からの要望が多いな~。若年層は乗り気ではないみたい」

「そうですか…。やはり宮殿内での意見と分かれ方は同じ…か」


 ダーナからの報告を聞き、考え込むラン。


 ランが中心の新政府体制発足後、コアトル達の処罰も終わり、クラッセン政権が完全確立された龍帝国。そんな龍帝国では、民から政府へ新たな要望が上がっていた。それは『旧龍帝国都市パンゲアの復活』であった。

 アイラも既に説明をキリカやアテーナ、オリジンなどから聞いている。その旧都市であり巨獣が跋扈ばっこする山の反対側へ自治機能を戻し、過去の龍帝国の栄光を復活させたいという意見が、一部の高齢層から上がってきたのだ。

 しかしこの事はランを含めた若年層が難色を示した。理由は簡単。多くの巨獣が生息しているからである。


 竜族は他種族よりも圧倒的に戦闘能力が高い。しかし巨獣はそんな竜族をも上回る戦闘力とスタミナを持つ。

 竜族の先祖達は、巨獣と戦い続けること承知の上で生活してきた。しかし現在の竜族は巨獣がいない場所で暮らしている。でもそれはおよそ五百年前の事。

 つまり中高年層の竜族民は、パンゲアに住んでいた記憶がある。そのために今になって当時の故郷が恋しくなり、情勢が安定し始めたこのタイミングで声が上がった。


 しかし再びパンゲアに住むためには、パンゲア周辺の巨獣を掃討し続けるための戦力が必要となる。だが竜族の中で最も戦力になる若年層はパンゲアを知らない世代のため、この案件には乗り気ではなく、反対意見も出ていた。

 戦闘力が高い竜族でも、巨獣を一頭倒すには複数で猛攻撃しなければならない。旧都市を復活させるために、そこまで命をかけたくない。というのが若年層の意見だった。

 案が上がってから今に至るまで、若年層と中高年層の意見のすれ違いは続き、話は平行線を辿っていた。


「ランちゃんのお友達も反対派みたいだよ。他の事に時間とお金をかけてほしいってさ」


 ランがリーダーとして牛耳っていた元不良メンバーのもとへも、ダーナは調査のために会いに行っていた。


「まぁ、私も今の立場でなかったら反対していたでしょうね。巨獣を相手にするのは危険ですから」


 ランは首相として賛成反対の言は避けているが、本心は若年層派だった。


「街で意見が分かれ、宮殿内でも意見が分かれております。この状況から見るに、巨獣討伐隊は編成できないと考えた方が良いでしょう」

「やっぱりそうですよねぇ…」


 ニースの発言にランも同調する。


「この案件…、アイラ様だったらどう考えるのかな…」


 ランはポツリと、アイラの名を出して考えた。


「あはは~、アイラ陛下だと想像付かないね~。政府の再編やりきっちゃった方だし、考える事は頭が良いキリカちゃんすら追い付いてなかったし、話してみたらまたとんでもない奇策を打ち出すんじゃないかな?」

「それは同感」

「確かに…。アイラ様の考えは参考にできないですよね…。予想付きませんし」


 ダーナはアイラを浮かべて考える事をするだけ無駄とし、ニースとランもそれに同調した。ルルは話を聞いてはいたものの、役人ではないため発言を慎んだ。しかし三人と同意見ではあった。


「次にアイラ様が戻られるのはいつになるのでしょうかね…」

「ん~、まだ自分の領地を全然開拓してないって言ってたから、それがある程度終わってからじゃないかな?」

「じゃあまだだいぶ先かぁ~…」


 龍帝であるアイラが龍帝国へ戻って来る時を待っている龍帝国政府だが、ダーナの話の通りまだ先であることは明確。ランは机に伏せた。


「龍帝陛下には龍帝陛下のご都合がありますゆえ。我々はできる事を着実にこなしていきましょう」


 ニースの締め括りにより、ラン達は話題を別のものへと切り替えたのだった。






*************************************





 アストラント王国。リースタイン子爵家王都屋敷。

 ここの主でありアイラの父親である子爵家当主ガウスと、子爵夫人でありアイラの母親であるマリア。二人の前には、子爵邸を訪れた客人が座っていた。アルテミア公爵家の令嬢でありアイラの学友であったティナ。そしてアイラの後輩であり弟子であったシャルロッテである。


 王子のリベルトやその友人達からシャルロッテの存在を聞いていたガウスは、彼女に興味を持ち、客人として屋敷に招いていた。

 ガウスが興味を持った理由。それは、アイラと親しい関係であり、アイラから多くの事を学び、アイラが残していった事を継承したはずの彼女が、アイラをグレイシアから取り戻す事に非協力的であるためからであった。


 シャルロッテは招待に特に何かするわけでもなく従った。彼女にとって断る理由はどこにも無かったからである。

 しかしいくらアイラと親しかったと言えど、立場は平民。貴族屋敷に一人で来させるのは可哀想だろうと判断したティナは、付き添いとして共にリースタイン邸を訪れていた。


「初めまして。シャルロッテ・ミストルートと申します。本日はお招きいただきありがとうございます。お会いできましたこと、大変嬉しく思います」

「初めまして。こちらこそ来てくれてありがとう。ようこそリースタイン邸へ。当主のガウス・リースタインだ」

「妻のマリアと申します」


 シャルロッテの挨拶に対し終始笑顔で挨拶し返すガウスとマリア。しかしその心境は驚きに満ちていた。シャルロッテの挨拶時のお辞儀、それ以前に屋敷に来た時からの立ち振る舞いや態度が、本物の貴族に引けをとらない品のあるものだったからだ。

 それはまるで、平民の服を身に纏った貴族令嬢と言っても過言ではなかった。


(貴族の令嬢達と挨拶の仕方がほとんど変わらない…。この子は平民だよな?アイラから時々話は聞いていたが、このような力を持っているとは聞いていない)


 ガウスは心の中で、シャルロッテが本当に平民なのか思わず疑ってしまっていた。


(彼女が周囲の状況や人に応じて顔を使い分けている事は知っていたけれど、まさかこんな貴族のような雰囲気まで纏うことができるだなんて…。一体どこで収得したのかしら…?)


 ティナは学院で活動するシャルロッテを観察し、態度や表情を複数に使い分けていることを認識していた。


 リベルトやティナ達元学院会創設幹部メンバーに対しては、強気で冷たく反抗的な怒りの態度。

 学院会会長としての立場に立っている時は、アメとムチを上手く使って部下達から慕われるカリスマ。

 それ以外で学友等と普通に会話する時は、単純に明るい女の子。


 これだけでも雰囲気を変えて使い分けるのはすごいことなのだが、今回のリースタイン邸訪問にまた新たな一面を持ってきた事に、ティナは驚いていた。


「突然招待なんてしてしまってすまなかったね。精一杯もてなすよ」

「お構いなく。むしろ招待してくださって光栄です。平民が貴族から家に招待されるなど、通常あり得ない事ですから」

「あなたの事は娘やいろんな方から聞いていましたよ。情報誌にまで掲載されるのですからスゴイですね」

「いえそんな。それでしたらアイラ様の方が大々的に上げられています。私など活動幅が狭いものですから、評価されるなど恐れ多いです」


 リースタイン夫妻の言葉を謙虚さ全開で返し続けるシャルロッテ。この返答の仕方も、アイラが様々な人と会話していた際のアイラを観察して、それを書き留めたり記憶したりして自分なりに復習、分析をして収得したスキルなのである。


「実は、ある筋から気になる事を聞いてね。君がウチの娘と親しかったのに、娘をここへ帰す考えに賛同していないと聞いてね。それで…」

「その理由と真意が知りたいということですね」

「まぁ…、そういうことだ」


 少し遠回しにクッションを入れて話を聞き出そうとしたガウスに対し、直球で返してきたシャルロッテにガウスは戸惑う。


「理由は簡単な事ですよ。確かに私もアイラ様とのお別れは辛いものがありました。私が賛同していない事に疑問を持たれるのも解ります。しかしアイラ様はアストラント政府の日程を無視し、自ら行方をくらましました。未だグレイシア王国側からは何の発表もありませんが、私はアイラ様は既にグレイシア王国に入国し、活動し始めていると予想しています。

 アイラ様が自らアストラントを出たということは、アイラ様は行方をくらます前のどこかで決意を固め、その上何らかの考えを持ち、あえて夜中に出て行かれたということでしょう。つまりは意図的です。

 とすればアイラ様をアストラントに戻そうなど言語道断です。グレイシアに対して返せと言って突けば、それがアイラ様にとって行動の弊害や負担になりかねません。

 私は常にアイラ様の味方でいます。アイラ様がどこに居ようと応援しています。ただそれだけです」

「アイラにはアイラなりの考えがあり、自分はあくまでそれを尊重すると?」

「はい。仮にアイラ様が牢獄に閉じ込められた、実はグレイシア入りしていなかったという事態になったとしても、私は何もできません。ですので私は、アイラ様の無事と幸せを祈りつつ、アイラ様の行動が予定通りに進んでいる事を前提に考え、自分がすべき役割をこなす。私はただそれだけのことをしているまでです」

「うむ…」


 シャルロッテの話に、あごを指でなぞりながら頷くガウス。


(この子は既に己の力量と役割や立場を明確に理解している…。どうやら思っていた以上に有能な子のようだな。そしてアイラへの忠誠心がやたら強い。ただアイラの跡を継いでいるというわけではなさそうだな…。こんな子が政府の閣僚にでもなったら、周囲の者を利用して政府組織を丸々変えそうだな)


 シャルロッテの能力は政府役人顔負けの実力である。政府の内部を知る一人であるガウスも、そんな彼女の淡々とした返答と切れ者の雰囲気には目を見張っていた。


「そこまできっちり持論を言われてしまっては、私達が返す言葉がないな。話を変えよう」


 ガウスは頭をかき、苦笑いの表情を浮かべつつ話を変えた。


「アイラは学院に在学していた頃、時々君の事を話してくれていたんだよ。娘は君の事を随分気に入っていた様子でね。私はてっきり貴族の子だと思っていたから、平民学院生だと聞いた時は驚いたよ。本当は学院祭の時に君に挨拶したかったんだが、時間的なすれ違いで叶わなかった」

「……」


 シャルロッテは特に反応を見せない。しかしガウスを見る目つきは、まるで全てを見透かそうとしているかのような目をしていた。


「娘が気に入っていた君の才は、王子殿下も評価している。今私から見ていても、君は非常に優れた人物だと思う。そんな君からの視点で…」

「アイラ様がどう映り、私がどうしてアイラ様に大きな信頼を寄せ、忠誠心を持っているのか知りたい。ということですか」

「あ、あぁ…。そうだね。あはは…」


 シャルロッテはガウスの質問の真意を読み取るどころか、ガウスが言いたい事をまさかの先読みしてみせた。これにはガウスも大きく戸惑う。


(少々遠回りにし過ぎたか…。だとしても質問になる事は一切言っていないのに、まさか質問を先読みしてしまうとは…。人の思考を読み取って先を読む力まで一級品…、いや、もはや国宝級と言っても過言ではない。気を付けなければ表情と言葉だけで簡単に思考を読まれてしまう。…なるほど、アイラが気に入っていたわけだ)


 アイラの観察から始まったシャルロッテの観察眼は、今や鍛えられ過ぎて相手の思考を先読みする事までできるようになっていた。

 世間一般的な常人領域にいるシャルロッテだが、こうした面だけは超人の域に達していたのだ。

 そしてガウスはそんな彼女の力に感心し、アイラが気に入っていたことに納得した。


「私から見たアイラ様を言葉で表現するのであれば、才色兼備、容姿端麗、文武両道、頭脳明晰、その他諸々ですね」

「その他諸々?」

「ええ。アイラ様の事を短く語るには、こうしないと言いきれません」


(言い切れないって…。この子はアイラから何を感じ取っていたの?)


 話を聞いているマリアは、内心不思議がっていた。


「それと、信頼と忠誠心に関してでしたか。これには、私の過去が関係しています」

「過去?」

「これはアイラ様にも言っていなかった事なのですが、私はサブエル学院に入学するまで、友人はいたものの、誰ともとても浅い関係でしかありませんでした。表面的にちょっと会って話すくらいの。そして集団の中ではほとんど目立たない存在でもありました。

 しかし入学後、私には気の合う学友ができました。もっと多くの人と交流し、もっと深く関わりたいと思っていた私は、その想いを持って学院会へ入る事を決めました。

 ですが加入希望者が集められた時、振り分けの際に当時指揮をとっていた王子殿下が私を省いてしまい、私だけ一人取り残される状況が起きていました。

 周囲で私に気付いてくれた人はおらず、困り果てた私は、学院会の加入を諦めて帰ろうと思いました。そこに声をかけてくださった方がアイラ様でした。これがアイラ様との出会いでした。

 あの時の私は喋りが上手くなく、かなり失礼な発言を繰り返していました。でもアイラ様はそんな私を許してくださって、優しく頭を撫でてくださいました。そして私を学院会特別顧問補佐という特殊な立場に迎えてくれました。

 優しく温かい慈愛に満ちた人柄と、自分の仕事をこなす時の姿勢に惚れ、アイラ様に憧れを持った私は、アイラ様に認められたい、褒めてもらいたいという一心で、今までにないほど懸命に勉学に励みました。学院の講義科目にはない分野や知識もありとあらゆる事を調べ上げて、アイラ様にとっても、そして自分にとっても力となるよう必死でした。

 アイラ様はそんな私をちゃんと見ていてくれていました。そして私が得た知識の使い方を、アイラ様は丁寧に教えてくださいました。それが私の更なる活力に繋がりました。

 おかげで私は自分の勉強法を収得して成績が上がり、さらに友人も増やす事ができました。浅はかな関係ではない、たくさん笑って話せる友人を。これにはアイラ様に感謝せずにはいられませんでした。

 アイラ様のおかげで自分の見る世界を明るく見れるようになった私は、いつかアイラ様に必ず恩返しをしようと決めていました。…でもその直後、アイラ様が国を追放される事を知りました。

 アイラ様とお別れの際、泣いて嫌がる私にアイラ様は言いました。


【あなたなら遥か上を目指せるわ。きっと大きな役目を持つことができるはずよ。更なる高みを目指してちょうだい。あなた自身の力で!】


 当時の私は別れの悲しさに囚われ、この言葉の真意を読み解けませんでした。しかしその後私が学院会次期会長への立候補を決めた頃に、アイラ様が次期会長に私を推薦していたことを知りました。あの時の言葉は、私を責任ある地位へ押し上げるために言っていたんだと、その時に理解しました。

 未来を予測してその基礎を事前に構築し、自身が窮地に陥っても周囲へ助言をし続けた事は、私は今でも尊敬に値すると思っています。

 今私が申し上げた内容は、一見するとただの先輩と後輩の間柄でしかありません。他人から見れば些細な事ばかりです。しかしその出来事一つひとつが、私の心に歓喜と感謝として入り込んでいます。これで信頼しないなどと言えるでしょうか?

 勉学や知識の向上が出来たのも、人を指揮するようになれたのも、こうして物事をハッキリ言えるようになったのも、ほとんどアイラ様が教えてくださったお話や知識のおかげなんです。だからこそ私にとってアイラ様は絶対的存在。忠誠心なくしてお相手できない方なんです」


 自身の過去と想いを一気に述べたシャルロッテに対し、ガウスは反応に困っていた。


(アイラの行為や言動に強い恩義を持っているわけか。アイラ指導の下研鑽を積み、現在の自分を確立させたと。だからこそアイラに絶大な信頼と忠誠心を持っているのだな。

 そしてだからこそ、恩人の弊害にならないようにするためにアイラの取り戻しには参加しないというわけか)


 ガウスはようやく、シャルロッテが王子達と動かない理由を理解し、同時に彼女から物事を押し通せるだけの力を感じ取っていた。


「君のアイラへの恩義や信頼はよく解った。これは少し意地悪な質問なのだが…、もし今後、政府や王子殿下などからアイラの取り戻しの協力要請が来て、従わないと罰すると言われたとしたら、君はどうする?」

「現状のまま協力を要請された場合はお断り致します」

「協力する条件があると?」

「何らかの理由で事態が大きく急変し、取り戻さないとアイラ様が危ない。というような状況になれば協力するでしょう。そうでない限りお断りします。かと言って、罰せられるつもりもありません」


 ガウスの問いに、シャルロッテはイエスでもノーでもない回答をした。さらには罰則すら受け付けないと宣言までもした。


「ならば、君は一体どうやって罰則を逃れる?」

「そんなの、簡単なことですよ」


 シャルロッテは微笑みを見せる。その微笑みは友人やアイラへ向けられていたものとは全く異なる、人の上に立つ強者の、余裕の微笑みのような表情であった。


「その時は、アイラ様が歩いた道を私が辿るだけです」


 シャルロッテの発言に、ガウス、マリア、ティナの三人は表情を強張らせた。彼女の今の発言は、今後のアストラント政府やリベルト達の動きによっては、アイラと同様に国を混乱に陥れてグレイシアへ渡る。と宣言したのも同然だからである。


 ごく一般的な平民が同じような発言をしたところで、根本的に説得力はない。しかしシャルロッテは天才アイラの後輩弟子。誰からも将来活躍を期待されている存在である。そして同時に、その気になれば何らかの方法で他国に寝返る、または国内に反乱をもたらすという事すら出来てしまう可能性を持っている。

 ガウスとマリアの二人はこの会話で、ティナの場合はもっと前からシャルロッテが有能で知能的であることを認識している。だからこそ、シャルロッテの発言を軽く受け止めることはできなかった。


(((この子、敵にまわしたら本当に危険かもしれない…)))


 ガウス、マリア、ティナの三人は、シャルロッテの力が危険と隣り合わせであることを、今ここで感じ取った。


(アイラは彼女の秘めた能力や本性を知っていて育て上げたのか…?だとしたらアイラはとんでもない子の力を開花させたものだな…。そしてそんな彼女をここまで有能にさせたアイラもまた、危険分子に数えられるほどの天才だったということか…)


 ガウスは改めて、自分の娘が天才であり、危険と隣り合わせになるほどの能力を持っていたことを認識したのだった。

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